■ 昔アルパインをしていても、理解できない、”現代のフリーが困難ではあってもリスクフリーである”ということ
先日、”ん十年前だが、かつて大学山岳部で雪山をやっており、アルパインという言葉くらいは分かる”という年配の男性とお話しする機会がありました。
初対面の方だったので、アイスブレークで、”アイスクライミングですか~すごいですね~”というセリフを貰いました… 私のズーム背景がアイス登っているところだったから。
ただ、真実を言えば、アイスクライミングのほうが、豪雪の雪山より、100倍リスクが低いのです。
…その方の想定している、”すごい”は、全然すごくないです。
つまり、40年前の基準ではスゴイですが、2022年の基準では、まぁ、岩登りしたことがないずぶの素人でも、3年みっちりやれば、私が登ったくらいなことは誰でもできます。
40年前だと、5.9がリードできるだけで、会でトップクライマーって時代なんですよ。その実力で、パーティの命を背負っていたなんて、今のフリークライミングのレベル感から見ると、ひょえ~全員死んでもおかしくないね!ですね。全くよくやるよ、っていうあきれ顔が出てくるレベルってことです。
2020年代のレベルでは、5.9がリードできることは、まだまだひよっこ…新人さん、です。つまり40年前は現代の新人さんのレベルがベテランさんだったわけですねぇ…。
この男性は、私が説明しても、この誤解がどうしても解けないようでした。つまり、一般人の理解力しかないということです。
その微妙な誤解に基づく敬意をくださったのですが… その方の好意ですから、その是非はおいておくとして、起きていることを要約すると?
少ない努力で、大きな敬意を勝ち得ることができる、
というリスペクトのレバレッジ、が働いていることがわかります。
■ リスペクトのレバレッジ
この、”リスペクトのレバレッジ”こそが、おそらく、多くの男性をクライミングに魅了しているんではないでしょうか?
現代は、競争社会ですが、個人誇示人の強みを持って自負を持っていても、なかなか相手から、リスペクトを勝ち取ることは容易ではありません…
例えば
郵便局で働いています、と言うのと、外資で働いています、というのでは?
岩場の開拓をしています、と言うのと、子供のコーチをしています、というのでは?
結局、比べられない、ですよね。その立場にいないと、苦労や強みすごさって分からないからです。
人を同列の基準で比べるということは、実は不平等ですが…例えばグレーディングシステムは不平等です、つまりリーチが長い人に有利で、リーチが低い人にとっては、同じ5.9でも、困難度が全く違います。
センター試験とかも同じですね?勉強が得意な人に有利になっている。世の中には、グラフィックラーナーというものもあり、文字ではなく、画像的記憶の人もいるわけです。そういう人には、なかなか厳しいのが社会。
5.14を登れるようになる!っていうのは、大人からクライミングを始めた人にとって、かなり困難ですよね。
ところが、クライミングだと、5.14と5.9の差が分かる人が超少ない訳なんですね(笑)。
■ 男性の瞬発力を最大に評価できるのがボルダー
だって、5.9が登れない奴でも、男性だったら瞬発力で、エイハブ船長は登れてしまうんですからね…
気軽に、
俺スゲー!!!
を実感する活動としては、これほど楽に評価を稼げるもの、ないですよね…。つまり、ボルダーは、男性の瞬発力、一気に力を出し切る能力、を最大限に生かしたスケール(モノサシ)と言えるわけです。
ちなみにアイスクライミングは、アックスを使うので、バランス感覚と体幹だけで登れるので、女性向きです。リーチも指力も関係ないです。ので女性の能力を最大に生かしたスケールと言えるでしょう…
それだけ、リスクペクトに飢えている男性が多いということなのでしょう…