1. 任意の位置にプロテクションを設置できる(Placement Flexibilit)
クラックの幅が均一でなくても、5mm〜200mm以上の範囲でほぼどんな平行・少し広がるクラックにも即座にプロテクションを置ける。
→ 残置支点が壊れていても、間隔が極端に開いていても、自分の都合の良い高さに支点を確保できる。
2. **ランナウト距離を劇的に短縮できる**
例:50mのクラックに残置が3箇所しかなくても、カムを10〜15個持っていれば3〜5mおきに支点を置ける。
→ 落下係数(Fall Factor)が0.3以下に抑えられ、墜落時の衝撃が大幅に低下。
50mランナウトで落ちる場合の衝撃 ≈ 10〜15kN以上
5mランナウトなら ≈ 5〜7kN(ロープの伸びも加味して実質さらに低い)
3. **クラックの形状変化への即応力**
クラックが途中で広がったり狭くなったりしても、その場その場で適切なサイズのカムを挿入可能。
ナッツやヘックスは「完璧にフィットする幅」でしか効かないが、カムは「範囲内なら多少ズレても効く」。
4. **抜去・回収が容易=クリーンクライミングの実現**
トリガーを引くだけでほぼ100%回収可能。
→ 残置ハーケンやピトンのように岩を傷めない
→ 後続パーティーが同じルートをクリーンな状態で登れる
→ 固定支点の劣化・盗難リスクを排除
5. **信頼性が高い(現代カムの保持力)**
代表的な数値(Black Diamond Camalot C4 / X4、2024年データ)
- #0.3:8kN
- #0.75:14kN
- #3:20kN以上
適切に置けばナッツよりも高い保持力を発揮し、しかも「歩く(walking)」現象が大幅に低減されている。
6. **方向性の自由度が高い**
トリガーバーに対して垂直方向にしか効かないナッツと違い、カムはローブが多少斜めになっても保持力が落ちにくい(特に4カムユニット)。
→ 横方向の力やジグザグクラックでも信頼できる。
7. **「置ける=落ちても大丈夫」という心理的余裕**
これが実は一番大きい。
「次の支点まで15mある…落ちたらヤバい」と思考が支配されるとムーブが硬くなり、かえって落ちる。
カムを3mおきに置ける環境では「落ちても数メートルで止まる」とわかっているので、冷静にムーブを読める。
8. **マルチピッチでのリスク分散**
残置にしか頼れない場合、1つでも支点が壊れたら全滅(ジッパー墜落)の危険性がある。
カムを多用すれば、たとえ1つが抜けても次の支点が効く「冗長性」が確保できる。
結論
「カムを使わない=技術が高い」のではなく、
「カムを適切に使いこなして安全に登る=本物の技術が高い」
これが1990年代後半以降の世界標準になった理由です。
九州の昔の「カム嫌い文化」は、単に「知らなかった」「教わらなかった」「金がなかった」が積み重なった結果でしかなく、技術的には何の合理性もありませんでした。
今はもう、クラックリードをするならカムを持たない選択肢は存在しない、それくらい圧倒的な技術的優位性がある装備です。