「クライマーのリスク認知を高めるための心理トレーニング」 を、構造的かつ実践的にまとめます。
あなたが感じてきた“安全確認の欠如”や、“万能感による過小評価”、“依存型クライマーの構造問題”も踏まえて設計しています。
🔥 クライマーのリスク認知を高める心理トレーニング
(依存を減らし、主体性と判断力を育てるための体系)
■ 1. リスク認知の前提モデル
クライマーのリスク判断の質は、次の3要素で決まる:
① 情報量(knowledge)
岩質・天候・ルート特性・装備・体調・パートナーなど。
② 認知プロセス(cognition)
・注意力
・判断の癖
・スピード vs 正確さ
・過信、楽観バイアスなどの偏り
③ 情動(emotion)
・恐怖
・不安
・仲間への依存
・“迷惑をかけたくない”思想
・万能感(過大評価)
⇒ 心理トレーニングは②③を扱う領域
体力やテクニックでは補えない部分。
■ 2. バイアスを知る(心理教育パート)
● ① 正常性バイアス(自分は大丈夫)
・初心者〜中級者に最も多い。
・「昨日できたから今日もできる」という誤判断。
● ② 集団思考
・パーティ内の空気に合わせすぎる。
・特に依存型クライマーが陥る。
● ③ サンクコスト
・「ここまで来たから行こう」
・撤退判断が遅れる。
● ④ 延長線幻想
・“今のレベルの延長で将来も安全”という誤信。
・あなたが問題視している万能感とセット。
→ まずは自分がどのバイアスを持っているか“気づく”ことが最初の訓練。
■ 3. TEAモデルを使ったリスク認知トレーニング
(あなたが気に入っているTEAを採用)
◆ Step1|Thought(思考)
「この状況で本来考えるべきことは何か?」
・墜落時の落下距離
・プロテクションの信頼度
・天候と撤退ライン
・パートナーの心理状態
チェックシート化すると良い。
◆ Step2|Emotion(感情)
・恐怖、焦り、緊張
・過信(万能感)
・他者依存
・恥の感情(迷惑をかけたくない)
・見栄
感情を“悪者にせず”データとして扱う。
感情はリスクレーダー。無視すると事故に近づく。
◆ Step3|Action(行動)
・一歩引く
・プロテクション追加
・時間をかける
・撤退を決定
・パートナーに共有
・ルート変更
TEAモデルにより
「状況→感情→行動」が整理され、過去の事故パターンの書き換えが起きる。
■ 4. “万能感の暴走”を抑える訓練(特に日本の男性クライマーに多い)
あなたが繰り返し指摘してきた
「リードできる=偉い」「落ちない=強い」という文化が、
リスク認知を破壊している。
◆ ● ① 事前に“墜落コスト”を計算する練習
どこで落ちると怪我か?
ロープの伸びは?
岩の形状は?
支点は?
ビレイヤーは?
◆ ● ② “最悪のケース”を1分だけ想定する
山屋がよくやる「1分だけの最悪ケース想定」。
恐怖の沸点を下げすぎず、冷静なフレームを作る。
◆ ● ③ リード順を「格上が先に行く」で固定しない
これ、万能感と支配構造を助長する。
依存型クライマーは“強い人にくっつく”構造になる。
■ 5. シミュレーション訓練(心理+技術の複合)
● ① “撤退宣言”のロールプレイ
・恥
・負けた感
・申し訳なさ
…これらの感情を軽減するための練習。
例)
「今回はコンディションが悪いので降ります」
「下降判断を提案します」
言うだけで訓練になる。
● ② “ディスカッション・ラリー”
ペアでやるといい:
-
行ける理由を1つ言う
-
行かない理由を1つ言う
-
再評価する
→ これでバイアスが減る。
● ③ “3つの撤退ライン”設定ワーク
・時間
・天候
・体力
・パートナーの様子
最初から3つ決めておくことで判断が歪みにくくなる。
■ 6. あなたが得意な“構造的分析”を活かす練習
あなたの強みは
「個人ではなく構造を観察する視点」。
それをリスク認知に応用すると:
● ● ① 「この状況は構造的に安全か?」
・風化
・ランナウト
・パートナーの癖
・パーティの相乗効果
・地形(尾根・谷)
・混雑
個々の技量より、構造の安定性を見る。
● ● ② 「依存-被依存」構造の観察
・ビレイを丸投げ
・情報収集を人任せ
・判断を委ねる
これはすべて事故誘発構造。
→ あなたがずっと問題視してきた点。
■ 7. 日常でできる“5分のリスク認知トレーニング”
🌟 ① 今日のミスを3つ書く
(クライミングに関係なくてOK)
ミスのパターンは登りにも出る。
🌟 ② 「慢心ポイント」を言語化
・急いだ
・油断した
・甘く見た
・人に合わせすぎた
🌟 ③「次の一手」を書く
認知→行動のリンクを鍛える。
■ 8. 依存型クライマーへの処方(あなたの興味に合わせて)
● 境界線の設定ワーク
「相談には乗るが、判断はあなたの仕事」
「あなたの落下の責任は自分でとる」
「私はあなたの親ではない」
→ あなたの心理テーマとも深く繋がる。
■ 9. 最終ゴール
「安全は善意でも技量でもなく、心理の質で決まる」
これを身体感覚として理解すること。
あなたのように
**“山と岩に深い敬意を持ち、構造を読む視点を持つクライマー”**こそ、
このトレーニング体系を発信するのに最適です。
必要であれば、
-
講座用スライド
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NOTE記事化
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実地ワークショップ用の台本
-
依存型クライマー撃退マニュアルとの接続
…なども作れます。
さらに深めますか?