2025/11/23

回想録その15。クライミングは「技術×知識×判断×自己管理」で成立するスポーツ

さて続きが出てきました。

ああ、あれかな?

Mさんは、もしかしたら、県体壁で登るのと外岩は違うよというのをどう教えたらいいか分からなかったのかな?

もしかしてそうなのだったらですが、山梨では、古瀬に公共のリード壁がありますが、古瀬の壁では、結び替えが使用者試験になっています。結び替えできないまま、人工壁でも、監視のないまま利用させることはしません、さらに外岩に進ませることはしません。

山梨時代は、ビレイを習得するためだけの目的で週2日、半年は毎週、人工壁に通いました。登る方を習得するのはジムに行っていました。古瀬の課題は、ビレイを習得する目的のためで、自分のクライミングムーブの習得のためではないです。

その用途の差のところが初心者は混乱しているのではないですかね?ビレイを習得しようとせず、ムーブを習得しようとし、ビレイは松井さんみたいな”善意の人”にお任せなのかなぁ?

私は熊本の会には参加していないのでよくわかりませんが、
  • ビレイ能力の習得をスキップしてクライマーになる
  • 結び替え(および懸垂下降)をスキップしてクライマーになる
  • 自分のロープを買わないでクライマーになる

の3点が、起こらないようにすること、が将来的にゲレンデオンリークライマーで、マルチに行かないとしても、決して見過ごしてはいけない最低基準だと思います。

私もされましたが、古いロープを4mくらい切って渡し、結び替えは自宅で練習させます。懸垂下降のセットもです。

セットが確実になるくらいのことは、クライマー本人が確実に自習でできることです。

ビレイ器のセットも同じです。ロープの直径がビレイデバイスとマッチしていないとよく流れないので、自分のビレイ器と自分の体重、そしてロープの直径を合わせて買わないといけないので、リードしたければ、自分のロープで登らないといけないのです。

逆言えば、ロープ買う人はリードしたいですの意思表示です。

この辺の機微を人工壁で教えず、ただ登れるか登れないかだけのゲームにしてしまうため、ロープは会の共有ロープ、ビレイデバイスは自分で持っていない、ただコーチにビレイしてもらうだけ、となると、ロープのタイプでどう、自分の安全を守っていくのか、理解できるようになりません。

たとえば、私は体重が軽いクライマーなので、ロープは柔軟で伸びの良いものを選んでおり、それに合わせて、確保器も選んでいます。

人工壁の時は、太めでデュラブルなものを使います。なので確保器も違います。

結局、外岩でもトップロープしかしないなら、シングルの太目ってことになりますが、リードに進む人は、自分でロープを買うころ合いです。そのタイミングでしっかり店に相談するなり、本を読むなりして、メーカーのカタログをしっかり読むなりして研究しないと、ロープがどうクライマーの安全を確保しているのか?分かるようになりません。

そういえば、ラオスに行ったとき、もうこれ以上ないというくらいくたびれたロープを持ってきている関西のクライマーがおり、ガイドの新保さんから注意を受けていました。

ガイドは、登るたびに、ロープをしっかりお手入れしています。一般的に言って、関西人はケチで、そのために、自分の命を危険にさらしています。

たとえば、アイスクライミングでは、毛羽立ちが凍り付きにつながるので、岩場で使うロープとは別にアイス専用のロープを用意します。そうしないと、けば立ったところに雪がつき、それが凍って、確保器の中を滑ります。懸垂下降で、これが起きて、墜落事故が起きています。また、登り終わったら家に帰って、ロープを乾かし、シリコンを吹き付け、次のクライミングに備えるまでが一連の作業です。

こういう裏方作業、そういうものを見せずに、登るところだけやらせる、というのは、体験クライミングの在り方で、高校生クライマーというのは、体験クライミングのママ、5.12、5.13、5.14と進んでいる人たちなのかもしれませんね…。親が光熱費持ってくれているから、いくら使っているのか知らず、湯水のようにお湯や電気を使う子供と同じことなのかもしれません。

そういう状態を作らないのが、人工壁のクライマーに対しては大事なことです。

また、人工壁ではバンバン落ちてよくて、ダイナミックムーブを出してよくても、外ではだめだということは、山梨ではちゃんと指導者から言われていたと思います。

長ぬんについても、リーチが短いと人工壁ですらクリップ遠くて危険になりますから、背の低い人には、指導する側が長ぬんを選んでかけていました。人工壁でも結構振られるルートとか作られていますよね?

人工壁で、自分がそういったルートを登らなくても、ビレイを習得することを目的にクライマーを凝視する時間を持てば、どこで危険でどこが安全か、しばらくすると分かるようになります。一般的に直上は安全で、トラバースは振られて危険です。かぶっているところで落ちるのは安全ですが、下にテラスがあるとぶつかります。かぶっているルートでは落ちると元に戻れません。

などなど…人工壁でもわかることはいっぱいあります。そういうことが他人を見てある程度分かってからリードに取りつかせないと、マジでどこでも落ちます。

山梨時代に、立派な体格の30代男性で、1ピン目から落ちた人がいて、指導していた2段が登れる先輩クライマー(と言っても私よりうんと年下の人です)が、びっくり仰天していました。人工壁の1ピン目って、落ちるはずがないような作りになっているからたいていの人は落ちないです。それでも、新人さんは落ちます。

同じ新人さんが、リードフォローの練習中、終了点間際の最終クリップ前にどか落ちしました。これも、非常に危険で、墜落係数2の落下でした。係数1の落下と2の落下の違いも、人工壁で教えないと、知らない人は知らないまま進んでいきます。

基本的に、基礎的な知識の取りこぼしが顕著なのが、クライミングの指導の世界で、その取りこぼしが少ない人と多い人の違いは、よくクライミングの本を読んでいるかいないか?です。

独学力が少ない人は、人工壁に現れるその場のその時間しかクライミングに費やしていません。それでいいと思っているんです。そもそも、そんなにクライミングしたいとすら思っていないと思います。

同じく山梨時代ですがサッカーの試合があるからクライミングの練習をしない人がいましたが、結局外岩にデビューするに至らなかったと思います。

運動している人なのでそこそこグレードは稼げていたと思いますが、私が人工壁は3か月しかやっていないのに、岩場にデビューしたときに、彼は人工壁でも数年レベルで登っていましたが、それだけでした。みんな同じ経験を、という平等主義は良くありません。

知識の量、リードをとらせてもいいかどうか?というのは、リスク認知ができるかどうか?です。そこらへんは菊池さんが本に書いています。

落ちそうだ、自分は落ちるかもしれない、という認知ができない人は、リードしない方がいいです。

ムーブが上手ならば、インドアのボルダリングに進む方がいいです。

外岩はリスク認知ができる人が向いているクライミングの様式であり、リスク認知が必要最低要件です。

それができないといくらムーブが上手になっても、時限爆弾を抱えたまま進むことになる。

それをはっきりとクライマー本人に告げれば、外に登りたい子ならば、自分で勉強するでしょう。

そういう動機付けが不足している場合、連れて行ってもらえると思って甘えて来て結局、連れて行ってしまって何も悪いことは起こらないので学習もしないということになり、連れて行き損になります。

これを避けるには、毎回、何をこのクライミングで学んだか?記録を書かせると良いです。

それすらしないならば、厳しいかもしれませんが、クライミング適性がないということだと思います。

この適性があるなしは、なくても登らせてもらえる最大期間は、18歳とかそれくらいまででしょう、なんせ、水泳では18までが選手で、あとはマスターズです。つまり大人と認知されています。100歩譲って世界水泳では、24歳からがマスターズ。24歳以降は自立しているのが普通ってことです。

私はいつも思うのですが、5.9が入門で、5.12が中級者、5.13以上で上級者という現代のクライミングのモノサシは、グレードだけしか表現していないので、クライマーの実力を図る手段としては非常に偏っており、このモノサシを使うデメリットの方が現代では多いのではないでしょうかね?

インスボンのリードをすいすいとれる青ちゃんは、クライミンググレードではせいぜい5.11でしたが、インスボンでは全く安定していて一回も不安な様子を見たことがありませんでした。

このような安定を表わすことが、上記のグレード表示では全くできません。しかたがないので、私はクライミング歴40年です、という時間の長さを自己申告することになりますが、クライミング歴40年も実力は適切に表せず、年に一回山登りをして40年の人もそういいます。

区別ができないのです。そんなの、ベテランが面白く無くて当然。

逆に、昨日出てきたところの、ビレイもダメ、懸垂下降もいい加減、結び替えしたことない、けどボルジムで登りこんでいるから4段です、みたいな人をもてはやすことになってしまっていませんかね?九州では。

もちろん、ボルダーでやってくれるかぎり、それでいいですが、リード適性はないし、ましてやマルチピッチなど…とんでもないです。自殺行為です。

マルチに相手を誘いたいときの作法は、青ちゃんがしたみたいに、レスキューの技を見せて、ビレイヤーを実力で説得することです。

マルチに行くには、保険として、最低限のロープワークをリード、フォローの双方がマスターしていることが大事です。

私がフォローに選択されたのは、変なことしないからで、変なことというのは、セルフを勝手に解除してしまうとか、ビレイが遅いとか、懸垂のセットを間違うとか、そういう、トップのクライマーが面倒を見切れない部分です。ロープがスタックしてアップできないとき、トップのクライマーがフォローを助けようと何とかするのは、非常に難しいです。悪いけど、フォローは登ってきて、となります。逆に、ロープいっぱいなのに、まだ確保点を作っていないときはリードクライマーのミスです。自分で何とかしてください。っていうかリードを取るのは、早かったね、ってなるかもしれません。

こうしたことは、ちょっとしたシミュレーションでできます。3ピッチのマルチでも十分予習できますから、5.4とか5.6の歩けるくらい簡単なところでピッチ数を稼ぐために、リードフォローの練習をしてみればいいと思います。意外に時間がかかることに気が付き、課題が明らかになるでしょう。

そういうことをしないでいきなり、穂高の屏風岩に昔は連れて行かれたそうですが、これはその後の研究をされていないようです。山梨で知っている事例では、このいきなり作戦で、男性クライマーは、適性がある人とない人に分かれ、ないと自覚した人は、ショート限定のクライマーになるようです。つまり、アルパインやマルチピッチに適性があるかどうかは、本人が判断できる材料のためのいきなりマルチ、であり、常にそれをしているのは変だということです。

連れていく山をし始めると、この人は連れていく山をする人だと認知されて、連れて行ってほしい人だけが集まり始めます。

これを人気だと勘違いしないようにするのが大事ですね。

  • ロープ径とビレイデバイスの相性
  • リードのリスク認知
  • 1ピン目落ちの危険性
  • 落下係数
  • 地形の読み
  • 長ヌンの必要性
  • 岩と人工壁の「落ちてもよい/落ちてはいけない」の違い

「主体性と自学力の欠如」が最大の問題

繰り返し指摘した「自習しない」「資料を読まない」「危機感がない」は、
技術不足よりも根深い問題です。

クライミングは「技術×知識×判断×自己管理」で成立するスポーツなので、
主体性のない人を外へ連れていくのは、誰にとってもリスクが大きすぎるのです。

「山梨方式」

  1. まずビレイ・結び替え・懸垂下降・リスク認知を徹底的に訓練

    • 古瀬の壁での使用者試験

    • 自習(ロープ4mを切って渡し家で練習)

    • 知識の確認

  2. 登る力とは別に“安全管理能力”を育てる時間がしっかりある

  3. 外岩に出るのはその後

実は国際基準に沿った合理的な教育体系で、あなたが特別に厳しいわけではありません。海外のクライミングジムはほぼこれです。むしろ、最近の日本のジムや部活動が「登るゲーム」に偏りすぎているのです。

  • リスク認知がない
  • セルフビレイを知らない
  • 倒木・テラス・ランナウト・落下係数などの理解がゼロ
  • 人工壁&岩場の“落ちてはいけない場所”を判別できない