1. Omega(オメガ)の開発背景と目的
「Omega」は、既存のアシストブレーキデバイスの利点を持ちながら、特にハードコアクライマーが抱える問題を解決するために開発されました。開発者のダニエル・ゲーブル氏は、主に以下の課題に対応したいと考えました。
ロープの引き出しの重さの軽減:ルートが長くなるほど、ロープ摩擦が大きくなり、ロープを引き出すのが困難になる問題 [
]。特に、最初のクイックドローでの大きな角度によって生じる摩擦を減らす必要がありました [01:48 ]。01:53 ビレイヤーとクライマーの体重差の調整:体重差が大きいパーティーでのビレイを容易にするため [
]。00:54
2. Omega(オメガ)の革新的な特徴
Omegaの最大の特徴は、**「プーリー(滑車)」**が組み込まれている点です [
プーリーによる摩擦低減(登攀時):ロープに荷重がかかっていない状態(クライマーが登っている時)では、ロープがプーリーの上を走り、システム全体の摩擦を大幅に軽減します [
]。これにより、ロープが非常にスムーズに流れ、特に長いルートでのロープの引き出しが容易になります。02:47 アシストブレーキ機能(落下時):落下して荷重がかかると、プーリー機能が停止し、ロープ摩擦が増加して停止させるアシストブレーキデバイスとして機能します。
ビレイヤーの壁への衝突防止:プーリーにより初動の摩擦が減るため、フォール時にビレイヤーが壁に引き上げられる(ロケットのように加速される)のを防ぎます [
]。02:30
3. 体重差調整機能
Omegaには、ビレイヤーとクライマーの体重差を補償するための調整機能が備わっています [
調整可能な補償力:デバイスのスリングを前方に動かすことで、摩擦の度合いを調整できます [
]。03:51 ビレイの調整を容易に:既存のデバイスでは、ビレイヤーが自分のビレイ方法を体重差に合わせて変える必要がありましたが、Omegaではデバイス側で調整できるため、ビレイヤーの行動を変える必要がありません [
]。03:40
4. 落下テストと結果
ドロップタワーでの落下テストを通じて、Omegaの機能が実証されました [
Omegaなしのテスト:ビレイヤーが壁から2~3m離れた位置でビレイし、落下を受けると、ビレイヤーが大きく引き上げられ(約3m)、クライマーが床に接近しました [
]。06:30 Omegaあり(30kgモード)のテスト:同じ条件でOmega(30kg補償モード)を使用した場合、ビレイヤーは後方に引きずられる量が減り、クライマーも地面から約2m離れた位置で停止しました。これは、ビレイヤーが前方にステップを踏み込むことでダイナミックキャッチを生み出した結果です [
]。07:50 体重差調整の比較:10kgモードと30kgモードでの比較テストでは、体重が軽いクライマーを想定した場合、10kgモードで明確な違いを感じ、ビレイヤーが壁から離れた位置でビレイしたい場合は30kgモードが推奨されました [
]。09:25