■ 日本的悪習慣
いきなりリードで取りつくのは、日本的クライミングの悪習慣ですので、改めましょう。
以下は、カム落ち練習の様子。
■注意点
嫌がっている相手に無理やり落ちるように薦めるのも辞めましょう。
人にはその人の固有の成長スピードがあります。
事例として、私は2歳の時に、父にプールに落とされ、溺れかけ、それ以来水が怖くなったようでした。赤ちゃんですので、まだ言語獲得しておらず、フラッシュバックで、その記憶を取り戻すまで、なんで水がそんなに恐怖なのか?謎でした。
その後、48歳の時にスイミングクラブに入って、先生に手を引いてもらって、頭を水につけるところから水泳をならい、恐怖を克服しました。
なんとバタフライが得意で、泳ぎはむしろ平均より上手な方でした…。今ではプールで羨ましがられる側です。
トータルで見ると、私は、46年、水の恐怖(トラウマ)を克服するのにかけた、という意味になります。
死の恐怖というのは、それくらい強固なものです。
当然ですよね、死んだら一巻の終わりです。
■ クラックの教授法が確立していない日本
ベテラン師匠の青ちゃんもトラッドの教え方を知らず、また、適切なカムの位置が個別であることを知らなかった…(汗)。
この記事は、トラッドの師匠の青ちゃんが、たった3回の湯川でのクライミングののち、私に、彼が設置したカムでの、ピンクポイントのリードを、強要しようとしてきたので、それは危険であると指摘するために書いた記事です。
この時の様子から、一般的な身長がある男性クライマーは、ボルトルートであっても既存のボルト位置を疑うだけの機会がないのではないか?と思います。
同じところに立って、手が届かない、というのは、クライミング能力のあり・なし、の問題ではなく、身長のあり・なし、の問題です。
そこは、分からないみたいでしたし、セットしたカムの位置も、なんか微妙でした(上記)。
■ 相手の立場に立ってモノを見るという能力の有無
一般に経験は強烈で、自分のクライミング経験から学ぶとなると、相手の立場を想像することが難しいです。
特にナルシストという性格傾向が強いと、共感力が低いので、人にとっては、やったことがないことは、存在しないことです。
したがって、自分が経験しない限り、真実であっても理解できないタイプの人も存在します。
そういう人は、このボルトの配置(カム位置)は危険だ!と別の人が主張しても、そうだな、とは思いません。
俺にとって危険でなければ、相手にとって危険である、と受け入れること自体ができません。
これは、研究者も指摘しています。長らく人種差別が続いた理由の一つになっています。
一般の人には、相手の立場に立つという”能力”は、普通のことですが、その能力を欠いた人もいるのだ、ということです。
成功者にはナルシストが多いと言われていますが、その無感覚さ、のおかげで、無慈悲なことができるからだ、と言われています。
つまり、過去のクライミング界で活躍してきた人が、無謀なことができたのは、共感力が低かったため、とも言えます。
本当に危険やリスクを感じないために、記録を出すということもできたということです。
さて、話が脱線しましたが、トップクライマーだから、ベテランだから、と言ってトラッドを正しく教えることができるか?というと別話ということです。
お客さんを保護する必要がある、ガイド業のクライマーは、お客さんへ対する保護責任があるので、そのような無謀なクライミングをする人である可能性は低いのではないか?と思っていますが、その辺は使ったことがないので想像です。
以上のように見て見ると、結局、日本クライミング界にはトラッドでカムのプレースメントを習得する際の確立した方法論が存在しない訳です。
したがって、今からトラッドに進もうという人は、カムのプレースメントを習得するのに、自分で練習方法を編み出さないといけません。
以下は当方の試案です。
■ カムのプレースメントの練習法
1)観察力を磨くため、充分にセカンドで登った経験を貯め、正しいプレースメントを観察する
期間は、観察力の有無による。一般的に、3年~5年はセカンドでついて回れ、と言われています。
私は30山行程度のセカンド経験がありますが、易しいルートであれば、2度目からリードしてします。これで偏差値74くらいの人です。なので、もっと理解力が低い人相手であれば、もっとセカンドでの経験数がいるかもしれません。
■ カムのプレースメントの練習方法 その2)実際に自分が設置する
1)トップロープで確保した状態で、カムエイドをし、カムに静的に荷重する
2)これをノーマルサイズカム、スモールカム、ビッグカムで行う
3)すべてのカムで信頼が作れたら、同じ状態で、動的に荷重する (落ちる)
4)リード状態で同じことを行う
カムの選択能力も同時に磨いている必要があります。
■ カム選択
1)トップロープの状態で、カムを設置しつつ登る
2)すべてのサイズが素早く見極められると、そのクライマーが自信が着くまで行う
3)疑似リードを行う
4)疑似リードが行えたら、本番リードに進む
■ 間違った練習方法
1)トップロープで登れたら、いきなりリードで取りつく
2)トップロープで登れたら、いきなり、ピンクポイントで取りつく
まぁ、雑な指導法というか、雑な習得方法で、みなさん登っている日本のクライミング界…。
なんか、雑であることがかっこいいことになっているので、サボりを助長している。
そりゃ、魅力ですよね、雑なことをかっこいいことにしてしまえれば…。楽ができる。
5.14とか登る人でも、ほとんど同じです。高い登攀能力は、そのクライマーが、カムのプレースメント能力に優れるということは、全く意味していないようでした。
ちなみに、トップクライマーはみな、ギリギリクライミングですから、カムプレースメントはバッチリだったのです。故・吉田さんが、スモールカムに墜落している動画を持っています。
■ 普通がおかしい…赤信号をみんなで渡ってはいけない
問題は、トップロープで登れたら、カムのプレースメントの練習を行わず、いきなりリードで取りつくという方法論を、みんなが普通だ、と思っていることです。
それで、グレードを上げていけば、信頼がおけない、ぐらぐらのカムに論理的にいつかは、落ちることになります。
現に、私の最後のパートナーは、そうなって、3つカムが飛んだそうです。
いや~。3つ飛ぶってどれだけカムの設置がいい加減だったのでしょう…?
問題はさらにありました。これが、自慢話、になるということでした。
そこは、深く反省すべきところです。
■ クライマーのあるべき姿
私の蒼氷の先輩は、私がセカンドでカムを回収したときに、
「このカム効いていませんでしたよ」
と言えば、
「すいません」
というのが通常の会話でした。
私にすいませんって言っても…と、セカンドの私は感じていましたが…というのは、危険になっているのはトップだからです。
でも、トップが登攀に失敗していたら?もちろん、セカンドがレスキューを担当するわけですから…嫌ですよね?そんなトップ。
■ アドレナリンジャンキーのクライミング
カムが三つ飛んで俺すげえ、となるクライマーのクライミング動機は、バンジージャンプと同じで、興奮すること、そしてアドレナリンの快楽でしょう…
たぶん、平時の人生が退屈だとそうなる…。
平時の人生に冒険が足りない人はほかで満たしたくなりますよね?
クライミングに確実性があることが、ウザくなります。そういう人はアルパインクライミング向きではないです。いちかばちか大好きだったら、どっちかというとスポーツクライミング寄りです。
実際、フリークライミングの世界では、いちかばちかを行えるから、楽しいのです。ボルトにぶら下がって、死なない、という前提だから、です。ドーンウォールで、トミー・コールドウェルが100回も200回もトライしていましたが、そのうち一回カムがハズレました、ってないでしょう。
アルパインクライミングの場合は、落ちたらゲームオーバーですから、ゲームオーバーを起こさないように登るわけですが、あまり安全すぎても遅くなるだけですので、そのバランスを考える知性が必要になります。
その安全とスピードのバランスを見出す知性が、適性の有無です。これは、一般的な登山しかしていなくても、かなり表現されています。
別に失敗したとしてもどうにも修正が効くようなことにこだわっていると適性がない、です。
あくまで見極めは、保険があることには果敢に挑戦、ない場合は、きちんと勝算をあげてから行く、という行動です。
旗から見たら無鉄砲と紙一重ですので、よく本人に話を聞いてみないと理解ができないでしょう…
しかし、このカムのいい加減さで落ち続けると、まぁ最終的にはかならず死を迎えることになります。
さて、私はカムのプレースメントのところで、躓いたまま、カムに対する信頼は今から作るところで、九州に、転勤で来ることになったので、この7年間、カムに対して信頼感は作る機会がないままです。
一体どういう方法論があるかなぁ…と思っていました。日本では、
クライミングの教授法について
情報が乏しく、海外に求めましたが、海外でも、あまり教えられているようではありませんでした。
きちんとした教授法が確立されるのを待っている、のが日本のクライミング界です。
だれか、心あるベテランの方、教授法の本を書いてくださいね☆