2024/12/10

【クライミング心理学】自分は特別なクライマーだ?

■ 今日はジムで印象的な出来事があった

女性客が多いジムに通っているんだが…今日はいつもの受付のお姉さん…たぶんオーナーさん…ではなく、なんかなーと前回感じた、若い男性スタッフだった。

で、ちょっとがっかりしたのだった…。というのは、女性同士のよしみ、的な話がちょっと楽しいから。子供クライミングの話とか…。

で、印象的な出来事っていうのは…

その男性バイト君?が、「私は〇〇です」と自己紹介してくれたことだ…。いや、いいんですけどね…。普通の自己紹介って感じではなかったんだな…。こちらの名は尋ねず、一方的に自分を名乗りたいみたいだった。ので、違和感。

私が壁に取り付こうとしていると、視線を感じたので、「恥ずかしがり屋だから見ないでください、あっち見ていて」と言ったら、「いやダメ」という話でした(汗)。

なんで…(涙)と思いつつも、とりあえず、その課題は登れてよかった…。7級とかせいぜい6級とかしか、今は触っていないので…なんかなぁ…。値踏みされるようで、微妙だった。私は、小瀬の壁を一人で行ったり来たりするような人だったので、あんまりみんなでわいわい、がやがや登るタイプではないのです…。

…という自己紹介に関する行動が、ナルシスティックだなぁ…と思ったのだった。

ナルシスティックさが、漏れ出ているというか…。

私は名前を間違って呼ばれても、別に必要がなければ、訂正しないけれど…する人いますよね。そういうのって、なんでなんだろう?と、以前は不思議に思っても、ただスルーするだけでした。わざわざ突っ込んで、精神医学を調べたりすることはなかった。

九州に来てから、なんか、”?”な出来事が多くなり、明らかに変だと感じるので、ナルシストに関する心理学上の知見が増えました。

つまり、九州では、

 ”自己愛の傷つき”

を抱えた人が、とても多かった、ってことかもしれません。

誰にだって自己愛はありますから、人を呪わば穴二つ、で、自分にもそういうところがあるからなぁ…と一般的に良い人は思ってしまう。私もクライミングを経験するまでは、全くナルシシズムについて考える機会がなかったです。

でも、ナルシストには明白に特徴があり、ナルシストの弊害を避けることは、ほとんどクライミングライフの成否を分ける要素と言えるかもしれない…。

クライミングで、いろいろと問題になるナルシシズムの特徴というのは

 1)相手の立場や、相手のニーズを感じることができない(=共感性が低い)

です。 要するに全体最適が分からず、自分にとっての局所最適しか分からないのです。例えば、一升瓶を抱えて厳冬期のバリエーションルートに行くとか…。そりゃ、自分は豪傑気取りができて満足かもしれませんが、周りは大迷惑ですよね。

こうした”特異事例”は、積もり積もって、意外で身近な問題につながる。例えば、ピンが遠いとリーチがない人にとっては、たぐり落ちの危険が増えますが、ナルシストにとっては理解ができない。自分には危険がないから、分からない。そういう人が多数だと、20m5ピンでも、普通になってしまうし、自分の初登権利が拡大解釈されてしまい、斜陽みたいなことになるし、さらにサバージョババージョみたいな、排斥事件につながる。

つぎは

 2)反省力がない

です。事故の前には、ヒヤリハット、がありますが、ヒヤリハットをヒヤリハットと気が付く、ということができない。これは能力の問題らしい…。そもそも、単純な能力の欠落ですが、それでも家の中で末っ子だと大事にされてしまい、無敵の自己肯定感を持っていると、単純なミスを修正できないし、さらに文化的土壌次第では、助長されてしまいます。例えば、ロープ出さないことを九州では助長して、武勇伝にしてしまうから、悪い特徴が強化されてしまうということになってしまいます。もともとそうでない人も、悪い特徴を継続することになる。同調圧力にはナルシストでなくても負けます。ただナルシストとの違いは、本当にヤバイときと冗談の区別がないです。

最後がネーミングの元になっている自己誇大感なんですが…

 3)自分は特別な存在だから、特別扱いされて当然だ、と思っている。

です。もう、山梨でも同じでしたが、周りは、いろいろと振り回されます…。

おれのために酒を担げ、みたいな感じ。お前の存在は俺を引き立てるためにあるに決まってるだろ!みたいな。

さらに、その自己誇大感が、自己愛の傷つきになると、

 4)自己愛憤怒

という、周囲から見たら、え?!という不思議な、怒りの爆発になります。這っても黒豆みたいな、感じです。

そして、

 5)モラハラ体質

大体、パワハラとか、モラハラとかする、古い体質の社長さんみたいな感じ。大したことない会社で、自分を「社長」と呼ばせるような。そういえば、高校のころバイトしていたパン屋さんでは、オヤジさんを社長と呼んでいたなぁ…。あの頃、学習機会があったのに、あんまり気にしないでスルーしてきたんだなぁ…当時の生活が大変すぎて、社会監察どころではなかったので…。こうした無関心がナルシシズムを助長してきたとも言えますね。

特徴として、ナルシストは、こうした行為で、自分の異質さを客観視していない。

ので、ほとんどの人が、俺、変かも?と思わず、精神科を受診することはないです。

大抵は、周りが困って、本人は困っていない(笑)。本人は、俺を評価できない周りは、アホだ程度の理解です…。困ったことに、似た者同士が集ってしまうので、自己を客観視する機会も、なかなか起らないのです。

そういう意味では、ホモソーシャルな山岳会という小さな閉じた島では、こうしたナルシシズムをインキュベーション…育んでいる、とも、言えますね。

 6)理性の縛りが弱い、(してはいけないことと自分の欲で欲が勝つ)

ということになっていると思います。これ、その悪いことがバレた場合も、相手が悪いことにして他責、というのが特徴だと思います。

…というので、こういう人は、チッピング行為も、自己正当化できてしまいます。欲と社会のルールでは、欲が勝ってしまうのです。いとも簡単に…。普通の教育を受けた人なら、持って当然の葛藤がないのです。

たぶん、自分のミスで人を大怪我させたり、死に至らしめても、ナルシストは、そういう奴と一緒に行く奴が悪い、で事を片付けたがると思います。

■ 自己愛性パーソナリティ障害【「自分が特別」と思う認知の偏り、精神科医が17.5分でまとめ】

山の世界から冒険がなくなったのは、ナルシストのたまり場になってしまったからかもしれません。

■ 回復

回復は、本人が気が付くしかないのですが… その気づきの内容が以下です。

 1)自分は少なからぬ人を傷つけていた (加害の自覚)

 2)自分は、自分が思ったほどは成功していない (実力の客観視)

 3)自分はむしろ疎まれていた (人気がないことの自覚)

です。

これに気が付けるか?どうかが分かれ道。その後は、受容のプロセスをたどる。

1)否認 
2)怒り
3)取引
4)抑うつ
5)受け入れ

です。 クライマーバージョンに直すと…

そんなはずはない!俺は特別なクライマーだ!そう言ってくれ!→ なんでみんな、俺を認めてくれないんだ! → 俺だって、いいところがあるだろう? だから… → 俺は普通のクライマーだったのか…と落ち込む → 今の俺にできることは何だろう?

…と進むようになるようです。このプロセスは、ほとんどの人に同じです。

挫折などの逆境体験は一般に、昇華によって結実・解消されますが、昇華にも良い昇華と悪い昇華がありますが、良い方に昇華すると

 人間的成熟

へ。ここへ進むのは、ナルシストにとっては大変難しいそうです。

うーむ。山岳会でも、クライミングジムでも、ナルシストが増えて目につくのは、少子化で、子供が減り、子供間の競争がないことで、親の注目の中心にいる時間が長いからですかねぇ・・・ ナルシストって、若い男性の間に、ものすごく増えている気がします。

ナルシスト日本代表選手だったのは、栗城さんでした…。どのような事情で栗城劇場ができたのか?九州に来て分かったけれど…。

 自己誇大感 × クライミング教育不在 

のかけ合わせの結果でした。 40年前の知識のままで(古い本を読んで)、自分のインドアジムでのクライミンググレードを考えると、俺ってもしかして天才?ってなりますよねぇ…ものすごいルートが俺だって登れる!ってなってしまいます…。

特に周囲にリアルにトップクライマーが存在しないと…間違った自己像が矯正される機会がない。

特にナルシシズムがない男性でも、女性からヒーロー扱いされるのが男性は大好きです。

しかし、女性の側も、男を立てる、なんていう古臭い因習から自由にならないと、男性たちの人間的成熟を阻害してしまうことになりますね…

だって、医学部入学で合格者の8割が女性っていうくらい、女性のほうが正直、知性という面では、少なくとも18歳時点での能力では勝っているのです。

なぜか社会が男性中心主義のまま、変わり損ねているのですが、それは生理による女性の気分の変化がほとんど一生続くこと、出産にまつわるまとまったタイムアウト時間が必要なことによると思います。

本来、男性は、そうした女性をサポートすることができるのに、その逆に弱みに付け込む、という結果が男性中心主義というわけだったのですね。

■ 現代基準でのトップクライマーの要件

トップクラスのアルパインクライマーの人たちって、5.13、5.14は登っているみたいです。

ただ、フリーのクライマーではないから、再登記録に名前が出ないだけで。佐藤ユースケさんとかは、フリーの記録にも名前が出ていたような気がしますが、ジャンボさんが5.14を登っていたとは全く気が付かず…。古いクライマーに教えてもらいました。

ということなので、現代の若者は、

 5.12 × 40kg 

では、もう古く、

 5.14 × 40kg

を目指さないといけないみたいです。スーパーアルパインへ進みたいという人は、ですね。

5.13でも、もはや一般人って意味ですよ。5.12なら、なおさらですな。

倉上さんは亡くなってしまいましたが、心臓のことがなければ、アルパインに進んでも、トップクライマーになれた、最も近しい立場にいたのかもしれません。冬山の印象はないですが…新潟大学だったら、雪になれていたのでは。

全く冬山のイメージがなかった宮城さんも黒部横断に行ったくらいなので、冬山経験値というのは、基本的な山岳会での経験があれば、ツッコんだ知識に関しては、周囲のメンバーで補いあえるものなのかもしれません。

今日は、ナルシシズムについて、ちょっと印象深い出来事があったのでした…。

もう一つ、喜ばしいことがあったので、そちらも今から書きます。