2025/11/02

【クライミング指導法】高度版:懸垂下降の教え方

 了解 — あなたはすでに「手を変え品を変えて懸垂下降を教える」を実践している、ということですね。良い確認。じゃあ、あなたが今すぐ使える実戦的アップグレード版を出します。目的は「技術定着」と「安全文化の醸成」と「指導者/教わる側双方の心理的負担軽減」です。

下は短時間で使えるテンプレ群:セッション構成(60–90分)、ドリル、指導フレーズ、トラブル対応、評価チェックリスト、デブリーフ質問。全部そのまま現場で使えます。


1) 60–90分セッション構成(テンポ良く回す)

  1. 5分 — ウォームアップ & 目的宣言(今日の「安全目標」を1つ決める)

  2. 10分 — 基本レビュー(ハーネス、アンカー、末端確認、デバイス通し)※マイクロデモ×2

  3. 20分 — ハンズオン反復(地上での結び・デバイス操作を目を閉じ含めて)

  4. 15分 — 低所での懸垂(恐怖処理・感覚確認)→ 2往復

  5. 15分 — 実地(本チャン)懸垂(各自1〜2回)+パートナー観察フィードバック

  6. 10分 — トラブル演習(ロープつっかえ・止滞・末端忘れ)

  7. 10分 — デブリーフ(下記質問テンプレ使用)


2) ドリル集(短い・反復・状況変化)

  • A)Blind-bindドリル:目隠しで結び→確認。感覚優位化。

  • B)Glove-switch:手袋有無で結び替え。寒冷対応。

  • C)Switch-Device:ATC→Figure8→Autoblockの切替練習(30秒/セット)

  • D)Stuck-rope scenario:意図的に「スタック」作り、仮固定→自己脱出ルート練習

  • E)Panic-stop:被下降者が静止→支援者は落ち着かせて手順で動かす(声かけ練習含む)


3) 指導フレーズ(逆切れや羞恥軽減を想定)

  • 事前(指摘に先んじる):「ちょっと安全確認を共有します。これは命のための習慣です」

  • 指摘(中立短文):「そのカム、少し上に置くとロープが流れます」

  • 相手防衛が出たとき:

    • 「驚かせてしまったならごめん。意図は安全だけ。」

    • 「確認で言っただけ。議論するつもりはないよ」

  • フィードバック受け取り時に促す言葉:

    • 「どの部分が気になった?」(相手自己言語化を促す)

    • 「やってみてどこが違った?」(観察→学習化)


4) トラブル対応・即席スクリプト

  • シチュ:デバイスの挙動がおかしい(ロープが滑る)

    1. 即座にブレーキ確保(自分のブレーキ)

    2. 指差し声出し:「ブレーキ確保!」

    3. 仮固定(カラビナでセルフバックアップ)

    4. 末端確認 → ロープ抜き・再通しorアンカーにエイド設置

    5. 反省点を即座に1文で共有(「デバイス通し直した、原因は〜」)


5) 評価チェックリスト(指導者が現場で1分で使える)

  • ハーネスの着装(ベルト緩み/レッグループ)

  • 末端ノット確認(エイトorセイフノット)

  • デバイス通し向き正しい

  • ブレーキハンドの確保姿勢(常に)

  • アンカー荷重方向の理解(矢印で説明)

  • ペアでのコールアウト(声の規律)

  • 緊急停止・仮固定手順をスムーズにできるか
    → 合格ライン:上から6項目中5つ以上OK


6) トラブル予防のルーチン(導入すべき習慣)

  • 「末端ノット+声出し」ルール(必須)

  • 交代時は必ず「確認3点」を口にする(ハーネス/末端/ブレーキ)

  • 新しい参加者には“初心者タグ”(目印)をつける(観察優先)

  • 毎セッションの初めに“今日の危険行動ワンポイント”を共有


7) デブリーフ(5分で使える質問テンプレ)

  • 今日、最も安全だと感じた瞬間は?(肯定強化)

  • 今日、怖かった瞬間は?(恐怖の外在化)

  • 一つ直したら良くなることは何?(行動化)

  • 次回の目標は?(短期のコミットメント)


8) 指導者のメンタルプロトコル(自分が消耗しないための処方)

  • 指摘の前に「目的ワンセンテンス」を作る(安全/学習/効率)

  • 逆切れが来たら:①謝罪的クッション(短く) ②境界宣言(安全最優先) ③距離化(巻き込まれない)

  • 毎回2分で自己リセット(深呼吸+身体感覚確認)


9) 初心者向け手札(配布用:A4一枚)

見出し:懸垂下降 — 安全3原則

  1. ブレーキは自分の命のハンドル(常に握る)

  2. 末端ノットは最後の命綱(声出しで確認)

  3. 仮固定は恥じゃない、賢さ(止まる勇気)

裏面:簡単トラブル対応フロー(図)


10) 応用:心理介入ワンポイント(羞恥・逆切れ対策)

  • 学習文化の宣言:失敗は共有資源、非難は禁句(合言葉)

  • 指導者は「普段の声のトーン」を必ず低く保つ(威圧感低下)

  • 恐怖を感じる人には「1回だけ見せる→1回だけやらせる」方式で自己効力を積む


もし欲しければ、これをさらに「1回分のワークシート(印刷可)」「現場での短い口頭スクリプト集」「逆切れ対応の台本(ロールプレイ用)」に展開します。
どれを先に出しますか?