2025/11/14

オキシトシン欲しさにクライミングすると事故になる

 心理学的に見ると、クライミング事故が起きる背景には「承認欲求・自己肯定感の報酬ループ」が強く働きすぎることが大きく関係しています。整理するとこうなります。


1. 承認欲求・自己肯定感の報酬ループとは

■ 仕組み

  1. 難しい課題に挑戦する

    • 脳内でドーパミンが分泌される

    • 「できた!」「すごい!」という達成感が得られる

  2. 他者からの承認・評価

    • コーチや仲間から褒められる → オキシトシン分泌

    • 社会的承認が自己肯定感を増強

  3. ポジティブRPEの強化

    • 成功と承認が報酬として学習される

    • 「もっと難しい課題に挑戦すれば、さらに自己肯定感が得られる」という期待が強化

  4. 次の挑戦に反映

    • より危険な課題や無理なムーブに挑戦しやすくなる


2. このループが事故につながる理由

要因 影響
達成感・承認欲求の報酬が強い 危険認知やNegative RPEが無視されやすい
社会的比較・承認の期待 周囲ができているから自分もできるだろうと過信
報酬の即時性 危険は潜在的で遅延 → RPEで学習されにくい
恐怖感の抑制 オキシトシン・ドーパミンが恐怖信号を一時的に抑える

3. 心理的に見た構造

  • 成功体験・承認・自己肯定感 → 強力なPositive RPE

  • 危険信号(落下やミス)は 報酬の強さに押し潰される

  • 結果、安全行動よりも「挑戦・達成」の学習が優先される

  • 脳の学習回路が「危険より達成を重視する偏り」になる


4. 安全ループを作るには

  • 承認・自己肯定感を安全行動に結びつける

    • 例:「準備・確認が完璧だから安心して挑戦できる→褒められる」

  • 小さな安全行動にもPositive RPEを与える

  • 危険体験は小規模で管理された条件で経験させる

    • 脳がNegative RPEを学習できるようにする


💡 まとめ

クライミング事故の心理的背景には、承認欲求・自己肯定感が強く働くことで、危険認知や安全学習が抑制される報酬ループが存在します。
このループを安全行動に結びつけることで、事故のリスクを下げながら達成感も維持できます。


そうです。簡単に言うと、クライミング事故の心理的背景の根底には「オキシトシンのニーズ」が絡んでいます


■ なぜオキシトシンが関係するのか

  1. 承認欲求・社会的つながりのホルモン

    • オキシトシンは「信頼・絆・社会的承認」を感じると分泌

    • 仲間やコーチから褒められると「うれしい・安全だ」と感じやすくなる

  2. 恐怖や危険信号を一時的に抑制

    • 高いオキシトシン分泌は、危険認知や不安の感覚を弱めることがある

    • 「仲間がいるから大丈夫」「自分はできる」と過信しやすくなる

  3. Positive RPEとの結合

    • 達成感+承認感 → ドーパミンとオキシトシンが同時に分泌

    • 脳は「危険よりも挑戦・承認の方が報酬」と学習

    • 結果、事故のリスクが過小評価されやすくなる


🔑 要点

クライミングでの事故リスクは、単なる技術不足ではなく、オキシトシンによる社会的報酬欲求が強く働き、危険信号(Negative RPE)が抑制される心理的構造に起因している。


では、心理学・生理学的視点を踏まえて、オキシトニンニーズを安全行動に変換するRPEループを作ってみます。


■ クライミング安全RPEループ(オキシトシン活用版)

1. 社会的承認・オキシトシンのニーズを明確化

  • 仲間やコーチからの「褒め」「承認」を意識する

  • 「みんなに認められる=報酬」を安全行動に結びつける


2. 安全行動に報酬を紐づける

  • チェック・確認・装備点検を行う

  • 言葉がけ例:

    • 「準備完璧!みんなも安心できるね」

    • 「このフォームだと落ちても安全に止まる、ナイス判断!」

  • ポイント:安全行動自体を承認・達成感の源にする


3. Positive RPEの強化

  • 安全行動 → 仲間やコーチから承認 → ドーパミン+オキシトシン放出

  • 脳は「安全行動+社会的承認=報酬」と学習

  • 達成感と安全がセットで学習される


4. 小規模で管理された危険体験

  • 軽い落下やバランス崩しなどを安全環境で経験

  • Negative RPEを学習させ、危険認知を強化

  • 恐怖体験がオキシトシンによる安心感と結びつくことで学習が過度に避けられない


5. 可視化・進捗フィードバック

  • 安全チェックリスト、自己評価、成功回数などを見える化

  • 小さな安全達成を毎回承認 → Positive RPE増幅

  • 「自分は安全も守れるクライマー」と自己肯定感強化


6. 次の挑戦への応用

  • 安全行動が習慣化 → より高度な課題に挑戦

  • 達成感・承認・安全の三重報酬ループが回る

  • 危険に対する認知と安全行動が自然に維持される


■ 特徴

  • オキシトシンの「承認欲求」を危険学習・安全行動に置き換える

  • Positive RPEを最大化 → 達成感も維持

  • Negative RPEも適切に学習 → 危険認知が機能

  • 結果:事故リスクを下げつつ挑戦意欲を維持


💡 ポイントまとめ

  1. 承認欲求・自己肯定感(オキシトニンニーズ)を安全行動に結びつける

  2. 小さな成功体験でPositive RPEを積み重ねる

  3. 管理された危険体験でNegative RPEも学習

  4. 可視化・言葉がけで報酬を強化