2025/02/26

【クライミング心理学】マニピュラティブ権威主義 VS 健全な不服従(Healthy Dissent)

操作的権威主義(マニピュラティブ権威主義)の事例 10 選

  1. 職場での評価基準の恣意的運用

    • 上司が、自分にとって都合の良い部下を昇進させ、都合の悪い部下には不明瞭な基準を持ち出して評価を下げる。
  2. ルールの選択的適用

    • 教師が、気に入った生徒のミスは大目に見るが、気に入らない生徒には厳しく罰を与える。
  3. 専門知識を使った権威の誇張

    • 医師や弁護士などの専門職が、一般人には分からない専門用語を多用して、自分の立場を誇示しつつ、不都合な質問を避ける。
  4. 家族内での支配

    • 親が「お前のためを思って言っている」と言いながら、自分の価値観を押し付け、子どもに異論を許さない。
  5. 不明瞭な基準での統制

    • 「お前は態度が悪い」といった抽象的な理由でイジメたり、生徒を叱り、明確な改善基準を示さない。
  6. 「実績」や「経験」を盾にした発言封じ

    • 「私は長年この業界にいるんだぞ」と言い、自分の意見を押し通し、新しいアイデアを封じる。
  7. 「公平さ」の名のもとに操作

    • 「みんな平等に扱うべきだから」と言いつつ、実際には一部の人だけに利益を与え、反論されないようにする。
  8. 情報のコントロール

    • 政治家や上司が、都合の悪い情報は隠し、都合の良い情報だけを強調して支持を集める。
  9. 「伝統」や「習慣」を盾にした支配

    • 「昔からこうやってきた」という理由で、改革や新しい考え方を拒否し、自分に都合の良い権力構造を維持する。(←まずいボルト位置の擁護)
  10. 「被害者」を装って責任回避

  • 上司や権力者が、自分が批判されたときに「私はこんなに苦労しているのに!」と感情的に訴え、批判を封じ込める。(頼まれていないのに開拓し、リボルトはしない開拓者)

どれも、「自分に都合の良い範囲でのみ権威を発揮し、それをコントロールする」という特徴を持つね。

■ 男女バージョン

女性にのみ注意し、男性には注意をしないことで男尊女卑を作る「操作的権威主義」の事例 5 選

  1. 職場での態度指導の偏り

    • 女性社員には「笑顔が足りない」「言葉遣いに気をつけろ」と指導するが、男性社員の無愛想な態度やぶっきらぼうな言葉遣いは問題視しない。
    • 結果として、女性だけが過剰な「気配り」や「愛嬌」を求められる環境になる。
    • 男性はコミュニケーション能力の開発が遅れる
  2. 服装や外見への二重基準

    • 女性には「服装が派手すぎる」「化粧が濃い」「髪型を整えろ」と注意するが、男性のだらしない服装や無精ひげはスルー。
    • これにより、女性だけが「見た目を整えること」を義務づけられ、不公平な圧力がかかる。
  3. 家庭内でのルール適用の差

    • 娘には「遅くまで外出するな」「家事を手伝え」と厳しく言うが、息子には自由にさせ、家事も手伝わせない。
    • こうした教育により、女性は「慎ましく」「家庭的であるべき」という価値観が強制され、男性は無意識に「優遇されることが当たり前」と思い込む。
  4. 学校での振る舞いの指導の偏り

    • 女子生徒には「大人しくしなさい」「品位を持ちなさい」と厳しく指導する一方で、男子生徒が騒いでも「元気があっていい」と見逃される。
    • これにより、女性だけが「おしとやかさ」や「従順さ」を求められる環境になる。
  5. 公共の場でのマナー指導の不均衡

    • レストランや電車で、女性には「行儀よくしろ」と注意するが、男性が大声で話したり、足を広げて座ったりしても咎められない。
    • こうした態度が「女性は控えめにするべき」という文化を強化し、男尊女卑を助長する。

こういう「言いやすい相手…つまり女性…に対してだけの権威行使」が、気づかないうちに社会の不平等を作ってるんだよね。

■クライミングバージョン

クライミング界における「女性にのみ注意し、男性には注意をしない」ことで男尊女卑を作る操作的権威主義の事例 5選

  1. リスク管理の偏った指導

    • 女性クライマーには「危ないから無理するな」「慎重に行け」と指導するが、男性クライマーが無謀なチャレンジをしても「ガッツがある」「攻めてる」と称賛する。
    • これにより、女性だけが「守られるべき存在」とみなされ、男性は不要な危険にさらされ、女性は実力を伸ばす機会を奪われる。
    • 逆に男性は、明らかに無謀なチャレンジを制止してもらえない。
  2. 装備や技術の指摘の不均衡

    • 女性クライマーには「ギアのセットが甘い」「ちゃんと確認しろ」と細かく指摘するが、男性クライマーの雑なセッティングやチェック漏れは見逃されがち。
    • これにより、女性だけが「技術的に信用されていない」空気が作られ、男性は「技術的未熟さが見過ごされる」。
  3. リードやトップロープの機会の差

    • 女性には「まずはトップロープで練習しろ」と勧めるが、男性には「どんどんリードしろ」と促す。
    • これにより、女性がリードに挑戦する機会が減り、経験の差が開くことで「やっぱり男のほうが強い」と誤った認識が固定される。
    • 一方男性は、リードに進むべきでない未熟な時期から強要されるため、死亡事故につながる。
  4. クライミングスタイルへの偏見

    • 女性クライマーの「慎重なムーブ」「バランスを活かした登り」を「臆病」「パワーがない」と評価するが、男性クライマーの「力任せのムーブ」には何も言わない。
    • これにより、女性が自分の強みを活かした登りを評価されにくくなり、不必要に「男性的なパワークライミング」を求められることになる。
    • 逆に男性は、力任せのクライミングを強いられたまま、ムーブの未熟さやロープワークの習得不足に気が付いてもらえる機会がないまま、高度なルートを登ることになる。
  5. ビレイ技術へのダブルスタンダード

    • 女性がビレイすると「ちゃんとブレーキハンドは持ってる?」「落とさないように気をつけて」と念を押されるが、男性がビレイする際には特に何も言われない。
    • これにより、「女性のビレイは信用できない」という偏見が強化され、女性がビレイヤーとして認められにくくなる。
    • 逆に男性は、全くロープを持っているだけで何もしない…先輩は落ちないからロープは持っているだけでいい…とされ、持っているだけビレイを続けるだけになり、いざクライマーが落ちたときは、クライマーの責任とされる。

➡ こうした偏った注意が、女性の成長を阻害し、「女性は補助的な立場にとどまるべき」という固定観念を作り出す原因になっている。

同じ原因が、男性に対しては、過剰評価につながり、死亡事故など取り返しのつかない事故へ、つながる温床になっている。

■ 歪んだ価値観

「過剰な勇敢さの強制(Forced Bravery)」

または
「リスクテイキングの圧力(Risk-Taking Pressure)」

これは、「勇敢であること=価値がある」「安全を重視する=弱さや依存」 という歪んだ価値観によって、合理的なリスク回避が否定される現象だね。

特にクライミング界では、「落ちることを恐れるな」「ガンガン攻めろ」 という精神論が過剰に求められ、合理的で慎重な判断をする人が「臆病」「依存的」と見なされることがある。

実際には、リスクを適切に管理することこそが、長期的な成長と安全を支えるのにね。

■ 本物のクライマーはリスクを恐れつつ その先へ行く

「リスク美化の伝統主義(Risk-Glorifying Traditionalism)」
または
「危険至上主義(Hazard Supremacism)」

これは、「昔からこうやってきた」「本物のクライマーはリスクを恐れない」という精神論を絶対視し、合理的な安全対策や新しいアプローチを軽視する態度を指す。

特に、「クライミングとは勇敢さを試すものだ」という旧来の価値観を盾に、安全意識や技術の進化を否定することは、**「伝統の名を借りた硬直した精神論」**とも言えるね。

実際にも、現代のスーパーアルパインでは、ビヨンドリスク、つまり、リスクを取りながらその先を目指すという姿勢が一般的で、リスク無視とは似て非なるものだ。

■ 「やらされない(自分軸=健全な不服従)」が、本当の伝統

守るべきクライミングの伝統とは?

クライミングには革新を続けながらも大切にすべき伝統がある。単なる精神論やリスク美化ではなく、本質的に価値のある伝統を受け継ぐことが重要だね。

1️⃣ 自己責任と主体性

🔹 登るのは自分の決断、リスクを取るのも自分の選択

  • 他人に流されず、自分のスキル・状況・限界を理解した上で、登るかどうかを判断する。
  • 「やらされる」ではなく「自分で選ぶ」ことがクライマーの基本姿勢。

2️⃣ 技術と安全管理の継承

🔹 「安全」と「挑戦」のバランスを取る技術の発展

  • ビレイ技術、リスクアセスメント、レスキュー技術など、命を守るための技術を学び、後世に伝える。
  • 「昔はこうだった」と盲信せず、進化するギアやシステムを受け入れ、合理的な安全性を高めることも伝統の一部。

3️⃣ 自然との共存

🔹 岩場・山の環境を守り、敬意を払う

  • ルート整備やクリーンクライミングの精神を受け継ぐ。
  • チッピング(人工ホールドの削り出し)や不要なボルトの増設を避け、岩場の自然な形を尊重する。
  • クライミング文化が存続できるよう、地元コミュニティや他の利用者と良好な関係を築く。

4️⃣ 仲間との相互信頼

🔹 強さよりも「信頼できるクライマー」であること

  • ビレイの精度、パートナーとの意思疎通、チームワークの重要性を守る。
  • 他人を支え、学び合う文化を継承する。

5️⃣ 挑戦する精神(だが無謀ではない)

🔹 「限界に挑む」というクライマーの精神を大切にする

  • ただの無謀な突っ込みではなく、「どうすれば登れるか?」を考え抜く知恵と努力を重んじる。
  • 目標を持ち、計画的に成長し続ける姿勢を尊重する。

🧗‍♂️ クライミングの伝統は、決して「リスクを美化すること」ではなく、「自己責任・安全管理・自然との共存・仲間との信頼・挑戦する精神」だね!

■ 健全な不服従(Healthy Dissent)

「やらされない=健全な不服従(Healthy Dissent)」と言えるね。

クライミングにおいても、人生においても、**「ただ従うのではなく、自分で考え、納得できる選択をする」**ことが重要。

健全な不服従とは?

権威や伝統に盲従せず、自分の頭で考える
「みんながやっているから」ではなく、「自分にとって本当に意味があるか?」を問う
危険な美学や不合理なルールに「No」と言える勇気を持つ
ただの反抗ではなく、合理的な根拠を持って判断する

クライミングにおける「健全な不服従」

🧗‍♂️ 「登れと言われたから登る」のではなく、自分の判断で挑戦を決める
⚖️ 「リスクを取るのが本物のクライマー」という価値観に流されず、自分の安全基準を守る
🔄 「昔からこうだから」ではなく、より安全で合理的な方法を模索する

つまり、健全な不服従とは「思考停止しないこと」。

自分の意思で動くクライマーこそ、本当に自由なクライマーだね!🔥