クライミング界における「停滞の名誉化」の具体例を掘り下げてみました。
1. ボルト設置への過度な忌避
→ 伝統的なクライミングスタイル(トラッド・アルパイン)を重視し、新しいボルトの設置を「冒涜」とみなす風潮。安全性向上のためのボルト整備が進まない。
2. 岩場のグレーディングの固定化
→ 旧来の課題のグレードを「昔のまま維持する」ことが美徳とされ、現代的なムーブの発展や強度の変化を考慮した再評価が行われにくい。
3. 伝統的なトレーニング方法の神格化
→ 科学的トレーニングが発展しているにもかかわらず、「昔のクライマーは懸垂と登り込みだけで強くなった」という精神論が尊ばれ、最新のトレーニング(フィンガーボード、エナジーシステムの最適化、ストレングストレーニングなど)が軽視される。
4. 外岩 vs ジムの対立構造
→ 「本物のクライマーは外岩を登るべき」「ジムばかり登っていてもダメ」といった価値観が残り、ジムでの最新のトレーニングや課題作成技術が軽視される。
5. 「ダウンジャッジは恥」文化
→ クライマーがグレードの再評価を行うことが「弱さの証明」とされ、時代に応じた適切なグレードの見直しが進まない。
6. 昔ながらの「登れたらOK」主義(体のケア軽視)
→ ウォームアップやクールダウン、リカバリーの重要性が軽視され、「とにかく登り込めば強くなる」といった考え方が根強い。結果として怪我が多発。
7. 「フリークライミング vs ルールの厳格化」の対立
→ 「クライミングは自由であるべき」として、環境保護やルールの厳格化に反発する層が一定数おり、持続可能なクライミング環境の整備が進まない。
8. 「マットは甘え」文化
→ 「昔のクライマーはマットなしで登っていた」という価値観があり、パッド(クラッシュパッド)を使うことに対する暗黙のプレッシャーがある地域も。安全対策が十分でない。
9. 女性クライマーへの過度な特別視
→ 「女性クライマーはサポートされるべき存在」といった古い価値観が残り、実力での評価ではなく「女性初」「かわいいから人気」といった形での評価が優先される場面がある。
10. クライミングシューズの進化への抵抗
→ モダンなソフトシューズや攻めた設計のシューズに対し、「昔の硬いシューズで登れなければ本物ではない」といった考え方が残る。結果として、新しい技術への適応が遅れる。
クライミング界も進化し続けていますが、こうした「昔ながらの価値観」に縛られている部分はまだ多いですね。特に安全性や科学的トレーニングに関する部分は、変化が求められる領域かもしれません。