2021/12/17

リスク中心思考 九州クライミングの思考の続き

■ 安全ブックを読んでも、クライミングのリスク管理能力は身につかない

私は、『安全ブック』とは、クライミングを初めてすぐに出会ったし、自分が行く身近な岩場での事故がたくさん掲載されているので、クライミングをスタートして初期に、目を皿のようにして読んだのですが…、

例え、『安全ブック』を読んだとしても、

公開されている岩場でノーマットで登るのは、非常識だとは、どこにも書いていない…

という指摘を受けて、確かにそうだよなぁ…と思っています。

基本的に九州の岩場での事故情報は全く載っていない。どこかよそ事のような内容になっている。

よそ事感があれば、ジブンゴトと感じるのは難しいでしょう…

では、一体どういう情報を与えたら、現代の初心者クライマーは、ちゃんとしたクライマーになるための知識が得られるのでしょうか?

■ ボルダリングにおけるリスク中心思考のスタート地点

ボルダリングは9割落ちているクライミング形態です。

つまり、リスク管理としては、

 安全な落ち方をマスターしている

が第一義的に大事です。

ムーブを上げるというのは、それができたあとのこと。

安全に落ちるスキルがないと、練習すら積めません。

そしてボルダリングにおける安全に決定的に必要な道具がマット。クラッシュパッドとも言います。

インドアジムでは、どこで落ちても大丈夫なように、マットが敷き詰められていますが…アウトドアでは、それは当然期待できない。

自分が所有できる数のクラッシュパッドで何とかせざるを得ません。

ということは、

自分が所有できるクラッシュパッドで、最大の安全を確保するというノウハウ=ボルダリングにおけるクライミング技術

ですね。

■ クライミング技術=登攀グレード、ではないですよ

奥村さんも言っていますが、一般の人はクライミング技術というのは、ムーブが上手なことだと勘違いしているのだそうです。

もし登れるだけがクライミング能力なら、それこそ、クモが一番偉い、みたいなことになってしまいます。

これは案外見過ごされている点で、指導者クラスの人でも、高グレードが登れる方がえらいと勘違いしている人もいます。

安全にクライミングに行って、帰って来れる、自己完結したクライミングを出来ること=クライミング技術

です。

■ 何をどこでやるか?でクライミング技術の中身は違う

なので、活動の内容により、クライミング技術の意味する内容は、バラエティがあります。

例えば、登山であれば、誰か助けて!と山小屋に駆け込んだりしたら、自立していない登山者、つまり、登山技術がない、ということになります。

テント泊で宿泊している登山者が、山小屋の談話室に入室するのがNGなのは、このためです。

他には、水や食料といった必需品を持ってこないで、”山小屋にください”、という登山者も自立してない登山者と言われます。山小屋では、買い物はゆとりの範囲で行う募金、です。必需品はもって上がります。

■ ヘリでレスキューされたことは勲章にならない

夏の本チャンに行って、他人が作った支点に足を掛けて落ちてヘリを呼んだら、それは”本チャンクライミングを分かっていない”という意味になります。

なぜなら、本チャンで、残置を信用してはいけないことなど、当然の常識、だからです。なので、ヘリレスキューになっても誰も同情してくれません。

私の先輩も、春山の前穂北尾根でアイゼンを付けたままグリセードして、足を骨折してヘリレスキューになっていましたが(笑)、誰も同情していませんでした…(笑)。

アイゼン付けたままグリセードしてはいけない、ということは、雪山で滑落停止技術を学ぶ初日に、一声目に言われることだからなのです。げんこつが飛んできます。

■ クライミングの自立

クライミングが自己完結できることが、クライミング技術。

一般的なショートのフリークライミングなら、自分のロープと自分のヌンチャクで登って、降りてこれないといけないです。

それができるのに必要な技術は、人工壁で学ぶリードとローワーダウンだけではなく、結び替えと懸垂下降、支点構築、途中敗退の捨てビナ、程度が必要です。それがあるのが、外岩クライマーとして技術がある、という意味の中身です。まちがっても、”カラビナ直がけが九州ルール”という人にクライミング技術がある、と言えることはありません。

誰かにトップロープを上げてもらっていたら、自立したクライミングではありません。

当然ですが、自分が登る課題を選べない、トポを持ってこないというのも、自立したクライマーではありません。

そもそも、岩場に自分の足で来れない、というのも、自立したクライマーではありません。ということは、車で行かないといけない岩場に誰かに載せて行ってもらうのは、半人前です。

マルチのセカンドだったら、登れなくなって、ライジングされないと終了点に行けない、などというのも自立したクライマーではありません。行く前に登り返し技術や多少のエイド技術は身に着けてからいくものです。

https://allnevery.blogspot.com/2017/08/blog-post_13.html

ところが、現実的には、一回目の初心者は仕方ないね、と、自立しようとすると色々と面倒が多いので、多少は、多めにみられています。

問題は、多めにみられているという状況を分からないで、当然のように、要求し始める人を是正できない指導者が多いことです。

なので、多めにみられていることを当然の権利のように要求する人がいる会は、はてな?という感じです。5.12が登れるのに、結び替えを知らない、とか、自分は運転できないで載せてもらっている側なのに、運転者にえらそうに指示するとか、まるでモンスターチャイルド?みたいな感じです。

基本的に、その場所で事故になったとしても、自力で帰って来れる、あるいは、一緒に行った人と帰って来れる、というのが伝統的に最低限のマナーとなっています。

そのために必要な知識を一通り持っている必要があります。つまり、

 岩場での事故を想定したセルフレスキュー

です。それがないと、思い切った行動は普通は取れません。し、取りません。

山梨で登っていた時は、私は体が小さいので、私と登りに行って無茶をする男性クライマーは、常識上、皆無、いませんでした。

レスキューになった場合、相手は私を担げますが、私は相手を担げないからです。私にとっては保険付きだが、相方の男性にとっては私は大した保険にはなりません。もちろん、走って出るくらいのことは当然できますが。また私は日赤救急救命を受けています。しかし、それでも事故になって良い、というのとは違うでしょう。

ですので、チャレンジクライミング、をしたいときはお互いがお互いの保険になるようなパートナーを選びます。

私の中では、ゲレンデは基本的に誰と組んでも行けますが、準本チャンの沢…例えば祝子川は、誘われてもお断りしました… 膝を怪我したのでそもそも行くのは無理でしたが、ゴルジュってエスケープがないです。囂々と流れる水の中で、たとえば転倒したとして、現代の確保術では、流さないといけないということを知らない人もいます…沢ではATCではなく、そのため8環を使いますが…そういう知識のすり合わせを初級の沢でするのが普通ですが、その人はその発想はなくいきなり本番…なのでお断りしました。彼とではなく、別の人とだったら行きました。あとは2名でなく、3名とか別にメンバーがいれば行けます。

まぁ、フリークライミングしている人が、沢に行くような、大きなリスクを取るというのは、自己矛盾なので、考えにくいです。一般にフリーのゲレンデは、基本的には携帯電話が入れば、安全圏と考えられています。

要点は、誰と登るかによって取れるリスクの量は違う、ってことです。

一般に、フリークライマーは、パートナーを組むのですが、一緒に登ろうぜとなった最初に、人工壁で、お互いが持っているセルフレスキューの知識のすり合わせをします。

具体的には

 ビレイ

 リードフォロー

 懸垂

 宙づり登り返し

 ビレイヤーの事故脱出

 ライジング

です。互いにすり合わせて、知らないところやずれたところは、補います。斜バリまで行く必要はないと思いますが…熱心な人はやっています。

これには、

 ザックやストックを使った背負い搬送

 ロープバスケット

 救急救命法

などが入っていませんが、どちらも、ハイキングに行くレベル、登山レベルで、すでに練習しているもの、という暗黙の前提です。

ただ昨今は、ハイキングからステップアップしてクライミングをするようになった経緯の人の方が少数派で、山登りは全くせず、いきなりクライミングジムでクライミングして、その流れでアウトドアクライミングに進む人が多いので、やったほうがいいかもしれません。

その際は、具体的な場所を想定したほうがより実状に添ったシナリオができると思います。

例えば、九州で言えば、

・日向神の愛のエリアで

・グランドフォールが起き、

・クライマーは自力歩行ができない

と想定すると、下の林道までは、背負い搬送をしないと、救急車は入れません。

ので、クライミングを自己完結するスキル、の中には、

 背負い搬送を知っていて出来る

が入っていないといけません。それがそこでクライミングする者の最低限のスキルということになります。

■ ボルトルートクライマーなら、ボルトの見極めスキルはクライミング技術の一つですよ

私がいた山梨では、ボロい支点であることが、そもそも前提の三つ峠、と、フリークライミングの岩場である小川山では、全く違う登攀スタイル、ということが、誰の常識でも明らかでした。登り方自体を変えます。

小川山では、テンション!と叫ぶのはアリですが、三つ峠ではありえません。

なにせ、腐ったハーケンとかが支点で、後は自分でカムをもって上がって支点を取ります。岩の突起とか、チョックストーンになった岩とかに、スリングを掛けて、ランニング支点にする、とか、そういうのが、三つ峠における、”クライミング技術”なのです。

終了点は、一般的には普通に登山道を歩いて帰ります。山にある本チャンで懸垂で帰るというのは、敗退時以外ないです。支点はカムで3点で作ります(2点で作ると厳しく注意を受けます)。

小川山のほうは、フリークライミングの岩場でも、歴史的経緯からアレヤコレヤと細かい注文が色々ある岩場ということなので、その辺に詳しいガイドさんが詳細な、ステップアップに使うべき課題をネットに上げています。

ので、本州の人は、クライミングのステップアップ…クライミング技術というのは、具体的にどういうことなのか?が、分かりやりやすい。ある段階で今何が自分にとっての課題なのか?が比較的把握しやすいと思います。

その辺が九州ではきちんと区別して教えられていないように思います。アルパインとフリーとスポーツクライミングが混同しています。スポーツクライミングのノリをフリークライミングで要求するのは変です。

何kNの耐荷重があるか怪しいボルトで、落ちれ落ちれと言われて謎でした。やっぱり落ちるのはNGのカットアンカーでした。

もし、ボルトが崩壊して、落ちるクライミングを周囲がはやし立てたために、死者が出たらどうするのでしょうか?責任を取れるのでしょうか?

小川山はフリークライミングの岩場としては、100%落ちれるわけではないので、一般的に初心者は、落ちても大丈夫な岩場としては、城山、などが、ケミカルにリボルトされた岩場、初心者のリード向きの岩場として知名です。 

小川山は日向神と同じで落ちてはいけない岩場ですが、違うのは、そう認識しているかどうか?かもしれません。うちはボルトがヤバいとか、ランナウトしていて初心者には登らせられないと、岩場として自覚がある、あるいは課題として自覚があるかないか?が大きな違いなのかもしれません。

小川山は初心者向けではないという認識は、大体のクライマーが持っていた認識のように思います。その証拠に初心者クライマーは、目を皿のようにして、歩いてトップロープがかけれる課題を探します。

なにせ、先輩に連れて行ってもらって当然、というのは、基本的に ”ない” のです。

連れて行ってくれる人がいたら、かなり奇特な人として感謝されるものです。そこがだいぶ違います。

大体の人が、フリークライミングにデビューする前に、インドアジムでボルダリングをして、その後に人工壁でスポーツクライミングを経験して、ビレイを確実にしてから、外岩に来ると思いますが… そのコースの場合、

 外ではインドアのように安易に落ちてはいけない

というのが、実際のところなぜなのか、初心者は分からなかったりします。私もそうで、初期のころは、私は背が低いので、大体、ホールドはデットで取っていました。普通の人にとって何にもしなくても手が届くところが、大体デッドしないと取れないからです。

そんな登りをアウトドアでできるか?当然ですが、ダメですね…。外岩リードは基本的にスタティック、が定石です。それがすぐに分かったので、ボルジムでの登りも変えました。

しかし、そこのところが分からない段階の人用に、城山みたいな場所が用意されています。

先輩後輩のシステムで登っている人には、自動的に小川山の前に、城山が上がってきて、その経験から、なんとなく分かるようになっています。

城山はケミカルボルトの岩場です。小川山では、基本的にはボルトルートですが、えらい1ピン目が遠いとか、ジョコンダなどハーケン混じりです。え?ここアルパインの岩場?みたいな感じですが、まま、気やすく落ちるなよ、という警告を含めて、そういうものが残されています。

先輩曰く、ハーケンはオブジェ。もちろん信頼はしないですが、意外にしっかりしている場合もあります。

小川山におけるリングボルトも同じで、起点に打たれた課題もあり、大体がビレイ位置が不安定で、ビレイヤーも転がり落ちそうな課題などです。

そうしたリングボルトは、ビレイヤーのセルフビレイ用ですが、インドアクライミングでは、ビレイヤーがセルフを取ることはないので、ビレイヤーとして自立したクライマーになるにも、小川山でリングボルトを見て、”なんでここにリングボルトがあるのかな?”と思考し、その結果、”そうか、ビレイヤーも落ちそうでヤバいのか”、と理解することによって、ビレイヤーのセルフを取るという安全技術を知ります。

アウトドアでは、ビレイヤーもセルフがいるか要らないか、自己判断ができるようになって一人前。

私は軽いので、ビレイヤーとしては、自分を守るために、セルフが必要な場合があります。

例えば、大柄なクライマーに1ピン目で落ちられると、パチンコ状態になってビレイヤーとクライマーがぶつかります。”ビレイヤーのセルフ”が必要です。

”ビレイヤーのセルフという技術”、そういう知識があり、対策を知っているというのが、クライミング技術、の具体的な中身です。

一言で、”ビレイができる”、と言っても、中身の濃度は色々です。

前にアルパインのクライマーに、ゲレンデでの練習会で”ビレイできますか?”と聞いたら、元気よく”できます!”というので、お任せしたら、リードクライマーが落ちた時、真っ青になっていたので、交代してあげたのですが、聞いたら、彼は落ちたクライマーを確保したことはなかったそうです。

”落ちるクライマーをキャッチしたことがある、グランドフォールさせないスキルがある、ということが最低限ビレイができるということですよ”、と後で教えたら、”そう言われたら、そのとおりなのに、全く思いつきませんでした”と言っていました…。

彼は、”先輩は落ちないから、ロープは持っているだけでいい”、と教わったのです。

■ リスク中心思考=落ちたらどうなるか?

落ちたらどうなるか?

ということと突き詰めて考える、ということは、登る楽しさゆえに見過ごされてしまうのが、クライミングの悲しい宿命なのかもしれません。

が、逆に考えると

落ちたらどうなるか?すでに保険を掛けてある、

という状態だと、後は何をしてもいい、と考えることができます。

ショートのフリークライミング、つまりいわゆるクラッギングなら、2名で行ったとしても、ちゃんと行って帰って来れるスキルが、どちらもないといけません・・例えば、片方が運転できない、とかダメです…。

完全にリスクフリーというのは、ありえないので、リスクが何か、分かっているというのが大事です。

例えば、私は50kgないくらいの体重ですので、一緒に登っていた相方が74kgで、彼がドカ落ちするとビレイヤーの私の方が危険が迫ります。

なので、落ちることが分かっている、ランジで取りました、みたいな登り方は、相方もしません。下のビレイヤーの方がリスクだということが共通理解だったからです。

インドアから普通にいつも落ちている登りをアウトドアでやってしまう人だと、たぶん、そのようなことも分からず、当然のように、下のビレイヤーが誰か?など考慮せず、普段通りのクライミングをしてしまう人が多数だと思います。

つまり、こういうことも、”クライミング技術”の一例なのです。クライミングは、”ビレイヤーの内容”が、どう登るか?にも影響して当然なのです。

それを分かっているのが、クライマーです。

誰彼構わず、じゃんじゃん落ちているということは、クライミング技術、がまだ育っていない、ということです。

奥村さんなら、クライマー以前というのではないでしょうか?

つまり、まだクライマーではなく、今からクライマーになるところの人、という段階ということです。

■ リスク中心思考への切り替え

これは私の考えですが、山と同じで、クライミングは、リスクから考えれば、すっきりします。

リスクを中心に考える思考回路を身に着けたら、それがクライマーとしての完成となるのではないでしょうか。

世の中には完全なリスクフリーはありません。

数あるクライミング形態のうち、もっともローリスクであるのが、トラッド。命がかかる支点を他人任せ(ボルトを打ったのが何年の事なのか分からないとか、誰なのか分からない)にしない。カムによる支点のクライミング形態だと思います。

私もまだカム設置の能力は完成しているとは思いませんが、それなら、落ちないようなところを登るというリスクコントロールが可能です。

なんせ、カムは100% 自己責任ですから、ボルトの信頼性が分からなくても、カムの信頼性は分かります。

支点間の距離も、自分の見極めで、怖ければたくさん取り、大丈夫だと思えば、落ちたとき保険にならないことはない程度に間隔を広くとることもできます。(まあ、岩に強いられて、クラックがあったとしても、浅かったりフレアしていたりして、取れないことはありますが。それこそが岩との対話で、クライミングの愉しみの一つです。ランナウトに耐える能力は、そのような時…ここぞというときに取っておくものです。)

ボルトだとそんな芸当はできません。見ず知らずの人…つまり施工が上手な人か?それとも下手くそな人か?も分からず、さらに言えば、そのボルトはいつ打ったのか?もトポにあることは日本では稀です(台湾の龍洞ではエクセルで管理されていました)。

ボルトだから大丈夫だと思っていると、グージョンではなくカットアンカーかもしれません。

そして、それは、見た目では全然判断できなかったりするのです。私の山梨時代にも、カットアンカーとグージョンの見分け方を教わった覚えはありません。

(山梨では、もはやレガシーレベルのカットアンカーを使うような人がいなかったためかもしれませんが…。私も開拓者に出会ったとき、当然のようにFixe社のボルトを物色しました)

■ ボルト配置の不利・有利 グレードは相対的なものですよ

ボルトルートのボルト配置は、トラッドのピンクポイントと同じで、クライマーにとってはなんの合理性もない配置というのもあります。

特に背が低い人にとっては、背が高い開拓者が選んだボルトの配置は、ムーブ的な整合性は全く取れない位置かもしれません。

つまり、そのピンに行くまでに、ワンムーブ多く必要で、そのムーブのスタンスが極小、ということはありうるということです。極小スタンスに乗らないといけないとすれば、それは全然クリッピングチャンスではありません。安定したところで一本入れるべきです。

背が高ければ、そのスタンスに乗る必要はないので、背の高い人にとっては同じグレードでも易しくなります。180cmある男性クライマーは、核心部が飛ばしてしまえるそうです。

つまり、同じ5.9でも、小さい人にとっての5.9は一般的な人にとってより難しく、大きい人にとっての5.9は易しいことが多いということです。

もちろん、これは傾向であり、逆に小さいほうが有利な課題もあります。例えば、リン・ヒルは手が小さくてクラックに手を入れられるために登れることが多く、大柄で手が大きいクライマーは頻繁に愚痴っていたそうです。

そういう知識があることも、”クライミング技術”の一つに入るかもしれません。

■ コンペはクライミングの本質ではないですよ

なにせ、クライミングをスタートしてすぐは、

  クライマーとしての優劣をクライミンググレードで付ける

のが当然だと思い込んでいます。つまり、ハイグレードを登れるほうがえらいと思い込んでいます。

 クライマーの優劣が、クライミンググレードでつくのは、コンペの世界だけ

です。もちろん、コンペで優勝することは喜ばしいことですし、努力の証と言えますが、だからと言って、人間として優れているというわけでは当然ですが、ありません。

お受験の勝者が人間として優れているわけではないのと同様に、あるモノサシで計った時に、たまたま、その人が一番だったというだけで、別のモノサシで測れば、別の人が一番になる。

          『ビヨンド・リスク』 より

さらに言えば、10aでひいひいやっている人と、15でひいひいやっている人は、別のグレードで同じことをやっているだけです。本質的になんら変わることはありません。

クライミングを何年もやっていて、なぜ、それが分からないのか?そのほうが私には不思議です。

グレードで人間が一直線に優劣で並んでいる、という見方は、高速道路で隣の車とスピード争いをしてしまうと同じくらいの短絡した見方です。

スタートも違えば、目的地も違うのですから、どっちが登れるか?で、上下を決めることほど、愚かなものの見方はありません。

10歳でスタートした人は20歳でスタートした人より有利ですし、30歳でスタートした人は40歳でスタートした人より有利です。50歳でスタートした人が、15歳でスタートした人と比べて、そう伸びしろがないのは、誰が見ても明らかです。15歳の人が50歳の人を馬鹿にすべきでしょうか?

年齢は一つの例にすぎません。性別、持っていまれた体格、握力、指力など、色々個人差があり、それぞれです。ハッキリ言って、背が高くて、ひょろ系体形、指力強い人が有利です。

グレードが高い事が一つの有利になるとすれば、

 取り付いてよい課題の選択肢の幅を広げる、

ことです。5.9しか登れない人は一つの岩場で大体1つか二つしか登れる課題がありませんが、5.13が登れる人は、同じ岩場でも、大体全部の課題が登れます。

偏差値50の人が行ける大学の数は限られますが、偏差値74の人が行ける大学の幅は選り取りみどりです。

これで回答になったでしょうか?


   こういうのが高いクライミング技術の証なんですよ。パッシブ1ピン目のとり方



2021/12/15

現代クライマーのレベル感=お粗末系です

 現代クライマーというのは、

1)クライマーがやっていないクライミングジムで、ボルダリングに目覚め

2)山岳会にも入らず

3)誰とも登らず

4)当然フリークライミング協会も知らず

5)雑誌も読まない

で、外岩ボルダーに行く人

です。

そういう人が、岩場のある地方自治体にボルダリングがしたいからと言って、移住してくるのが現代のクライマー事情なんですよ。

普通は移住して来るくらいクライミングに熱を上げているとすれば、クライミング史くらい知っていると思うでしょう…ところが。

ボルダラーなのに、”黒本”って言葉も知らないんですよ。”御岳ボルダー”って言っても、きょとんとしています。

当然、ノーマットで登った記録のすごさとかを見聞きしたことがあるわけでもなく、ただ単に、”金がないから”とか言う理由でノーマット。

ちなみに単独で誰からも何も教わらずに登っていると言われたとき、私が聞いたのは、

「マットは何枚使っているの?」

でした。なんせ、ボルダリングは、マットを運ぶのが大変なので、マット担ぎ要員としてメンバー揃えるのが核心の一つです。

一人で登っていたら、マットを運び入れるだけで大変です。

ところが、答えは「マットは使っていない」でした。

ですので、別にポリシーがあってそうやっているわけではなさそうです。

そして、誰からも教わっていないし、フリークライミング協会が出している『安全ブック』などを置いているクライミングジムもない。ので、当然のことながら

1)ボルダリングは9割落ちているクライミング形態であるとは知らない

2)ランディングのセルフコントロールがすなわちボルダリングのリスクコントロールである、ことも知らない

3)ので、ランディング技術を磨く=ボルダリングのスキルの一つとも知らない

4)ロープが出るクライミングより、ボルダリングのランディングでの事故が多いことを知らない

5)頭を切っても翌日から登れるが、足首をやると数か月は最低登れないことも知らない

6)仮にノーマットで外ボルダリングして、事故になった場合、岩場が閉鎖になる恐れがあると知らない

7)そのため、公開された岩場でのノーマットが非常に迷惑な行為であることを知らない

8)ソロで登る場合、事故の際、発見が遅れて、大事になることが多いということを知らない

9)もし発見が遅れて死亡などにでもなったら、岩場の閉鎖の憂き目にあう可能性がある

10)したがって、分かっていないクライマーのソロは、迷惑行為の一つであり、勧められない

と10個くらいの無知が重なっています。

どのような内容のクライマーか?というと、50代でクライミング歴2年、13Kgの歩荷でヘロヘロになってしまうそうで、今登れるグレードは3級が限界グレードだそうです。

一般的な話ですが、アルパインのクライマーは女性で25kg、男性なら30kgを担いで大倉尾根をノーマルコースタイムで登って帰ってこれないと、アルパインルートに連れ出してもらえません。そのくらいの強さは最低限って意味です。なので13kgでへばっていると聞いて、ビックリ仰天です。前にいた会では、60代の太ったおばちゃんだけが12kgで限界、と言っていました。

さらに言えば、3級が限界グレードの人がいきなり2段。その2段の課題を登るのに、マットを使わないとか言っている…それが迷惑行為だとも知らず…です。

そんなレベル感であるので、クライミング史に残る偉業のノーマット主義とは話が違います。

これが、クライマーがやっていないクライミングジムが町中にうじゃうじゃできて、これまで絶対に岩場に来る機会がなかったような人たちが岩場に来始めたときに起こることです。

対策としては

 岩場ごとにノーマット禁止を告知しておく

ことだと思います。というのは、公開された岩場でノーマットで登るなどというのは、非常識なことだという”常識”も、基本的に見聞きするチャンスが現代クライマーには存在しないからです。

先輩後輩の絆で登るわけでもなく、

友達と登るわけでもなく、

ジムのお兄さんと登るわけでもなく、

山岳会は人間関係がめんどくさいから嫌、

本を読むのは字が煩わしいから嫌、

クライミング技術を学ぶのは、カタカナが多いから嫌

そんな人だってボルダリングなら外岩に来れてしまう時代が来ているのです。

つまり勉強する気もなければ、岩場に対して熱い思いもない。岩を愛しているのではなく、単純に

 登りたいだけ

なのです。何のためにいきなり2段なのか?それは本人しか知る由がありません。

なんで3級しか登れない人が2段なのか?

普通は遠くの目標、憧れのルートにとどめて、目の前のもっと身近な目標をこなすのが普通だと思います。なにしろ、ボルダーは課題が短く一瞬なので、飽きちゃいますし、指を痛めます。痛めたら登れるところも登れなくなります。

成長戦略として非常に非合理的である、”いきなり2段作戦”。

これと似ているケースで、”いきなり四尾根”というのが過去にありました。

アルパインのクライマーでも、インドアジムで5.11が登れるからという理由で、北岳バットレス四尾根にそのまま行こうとしていた人を知っていますので、要するにリスクを因数分解するだけの知性がないだけかもしれません。

つまり無謀って意味です。そのような人は、自分では無謀とは思っていないので、何を言っても聞く耳を持たないかもしれませんが(何しろ、本人は大まじめで二段にトライ中ですので…)、それでも、

 各岩場側の自己防衛

として、

岩場としてノーマット禁止

くらいは言っておかないと、このような極端に無知な人からの弊害を防げないと思います。

もちろん、きちんとした技術的裏付けがあってのハイボル&ノーマットの伝統は、それなりのきちんとしたクライマーが引き続き文化伝統としてつないでいけばいいと思います。

そんな伝統とは似ても似つかない、お粗末系ノーマットクライマーは、あらかじめ予防していないと、クライミング自体が成立できなくなってしまう、と思います。

それではこれまでの多くの人が流した汗と涙…苦労が無駄になってしまいます。岩場の公開までは長い長い交渉の時間がかかるものです。

例え、クライミングに昨日来たお上りさんが起こした事故だとしても、世間は、その人だってクライマーでしょ、と思います。世間はクライマー界とは違って、”常識”で成り立っており、いくら、その人が例外的お粗末クライマーでも、事故ったり、死者が出れば、町は迷惑であることには変わりありません。すぐに閉鎖になってしまうでしょう。

そのような目に遭わないためにも、岩場の側が、無知なクライマーから、自己防衛しておく方が、良い策だと思います。

このような人が、例外で少数派、である保証はどこにもなく、一般的現象、である可能性もあるからです。

初見フリーソロで登った厳冬期阿弥陀北稜。途中のモタモタした男子を抜きました
    ほとんどアックスで登るフリーソロ・ハイボルダーです(笑)


2021/12/13

レスキューを組織するススメ

■ 暗示の力

心と体の関係は、まだ解明されていないのですが、私は自分の親指と人差し指にできたイボ(クライミングジムで貰った)を暗示で取り除いたことがあります。ただイボイラナイと念じたら気がついたら取れていました。それまで色々な方法でイボ取りを試したのに、よく使う右手なのでどうしても薬が効かず取れなかったのに…です。

暗示というのは、ものすごく簡単にかかってしまうもののようです。アンドルー・ワイス博士によると、医師が「この病気はどんどん悪くなるタイプのものだ」と一言言っただけで、悪くなる、という暗示がかかってしまい、患者が自ら治ろうとしなくなる事例があります…。

同じことが、大なり・小なり、思い込み、ということに言えるのではないかと思います。自分は〇〇だ、という思い込みです。

それが人間関係にも影響している、というのは、本人の思い込みが相手の態度を決めることがあるから、ではないか?と思います。

〇〇と思われている、と考えると、本当に相手は〇〇と行動するようになります。あるいは、なぜ相手は○○するのだろうか?と原因究明を考えるようになると、なぜか相手はそのように動くようになるのだそうです。

これが、ノーマットボルダラーに起きたことかなぁ…。私はこの人に会いたくて巡り合ったわけではないのですが…なぜか、こんな人にばかり九州に来て合うような気がしますが、九州だからというよりも、現代だから、という現象のような気がします。

しかし、ランナウトによる命知らず自慢の伝統、というのはどこから来ているのか?を紐解くと? 花崗岩、人工登攀 あたりに原因が求められそうです。まぁ、ブランクセクションでは、仕方がないランナウトというのは、昔は当然あったでしょう…

そこから進化していないのではないかったんでしょうかね?カットアンカーでリボルトしようとしてる人たちは、比叡と日向神でしたので…。一般的な若い人たちではない。

しかし、指導者のクラスが、カットアンカーでリボルトして良いと考えているとすると、それが修正されない儒教文化…目上の人は100%正しい…の九州では、本州で20年前にすっかりお払い箱になったとしても使い続けられる、という成り行きになる訳ですね。

もう指摘したので、今後、そのようなことが起こるとは考えにくいですが…。

しかし、「カラビナ直掛けが九州ルール」と女性のジム店長さんに言われ、ビックリ仰天したり…、ビレイを教える立場の人が、「待機時はグリップビレイ形にして保持するように」と一般クライマーに指導していたり、ほんと九州では色々ありました。

大抵は、その場で、”変!”とすぐ気がつきましたが、まだその場では気が付けないものもありました。

3年後になって気がついたのが、指導者クラスの人が、アルパインと、フリーと、スポーツクライミングの切り分けができず、たぶんご本人もレスキューのトレーニングなしで、つまり、万が一の場合の想定なしで、本ちゃんに出かけていたのだろう、それを反省しそこなっているのではないか…という記録でした。

だから、その会では全然クライミング技術が身についていない…登れても、危急時対策が出来ていない、ロープのアレヤコレヤ、クライミングのあれやこれやが分かっていないクライマーばかり、その会では出会うので面食らいました。

余りにも何度も、分かっていない人ばかりに合うので、もう嫌…となっていました。

■ レスキュー隊長

クライミングする男性の、クライミングに対する情熱の”昇華”の対象は、開拓者になって栄誉にあずかる、というものや、ボルダリングジム店長になって登りたいときに登れる、というものが定番です。

しかし、もっとも尊いのは、レスキュー隊長になる、というものではないかと思います。

弱きを助ける…のもっとも高貴な形が、レスキュー…。

私がもっともパートナーを長く組んだのは、青ちゃんでしたが、もともと日本で初のレスキュー隊の隊長をしているときに長野に講演に呼ばれて行ったのだそうです。

レスキューをすることで、どういうケースで死者が出るのか?ヒヤリハット事例が溜まりますし、どうやって、周囲の人がリスク認知をせず、自分も巻き込まれそうになる状況から身を守るか?という術もたまっていくでしょう…

インドアのスポーツクライミングにレスキューの想定がないのは、インドアなので仕方がありませんが、アウトドアになったら、例え2名での行動、1名での行動であっても、セルフレスキューを前提としたレスキュー訓練をするべきでしょう…

とくに近年、マスメディアは偏った情報しか報道していません。フリーであっても、例えば八面で墜落が起これば、担ぎ上げるのは大変です。背負い搬送のスキルがないとヘリピックアップの場所まで移動させることすらできないかもしれません。

ヘリが来やすい場所とそうでない場所でもリスクに違いがある、という発想自体も、現代の九州クライミングには、想定されていないかもしれません。

2021/12/11

九州で一回目の岩場 比叡&雌鉾岳

2018年4月17日の記録からです。

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 比叡&雌鉾岳2

比叡&雌鉾岳は、初めていく初見の岩場でした。

1)トポだけを頼りに、

2)自分たちの調べられる範囲の情報だけで、なんとかする、いうタイプの山で、

3)登攀が含まれる山

は、私にとって、北アの明神主稜以来です。乾徳山旗立岩もか。しかし、今回は、不安なく行きました。というのは、

1)相手が知っている人で、

2)自分より登攀力2、3ランクくらい上

3)ロープワークや下降、読図、運転などは私がフォローできそう(私の意見を無視しない)

4)ちょっとしたミス(試行錯誤と言う)にイライラしないおおらかな性格の人、不安がるタイプではない

と分かっていたからです。実は、情報が乏しく、

・ニードルは人気があるが、フリークライマーに人気があるのであってアルパインの人は第一スラブとかだし、もしかしてトポに表れているより難しいのでは???

・庵・鹿川の人と連絡がが取れず、場所も不明で、行きつけるか不安

・トポに下降が詳しく書いて無く、岩の3Dの姿が理解しづらく、下降(敗退)に不安

・トポのグレード感で、登れると思ったところを登っていいのか?

でした。

岩の登りも、山も、

 未知の部分

を自分たちの力で解決するのが楽しいのに、未知の部分を異様に怖がる人だと、何もかも、予定通りでなければ、精神的に動揺したりします。私はそういう人と行くと、未知の部分を楽しめないので嫌なのです。

最低限、自分の身を守るスキル、ビバークとか、衣類とか、懸垂下降とか、ちゃんと携帯電話を持つとか、そういうことを達成したら、あとは、あまり調べこまず、未知の部分を楽しみたいなと思います。

が、これは下限が難しく、全く何もかも相手にお任せ、の人と一緒だと何とかしてあげないといけない側になってしまうし、なんとかしてよオーラを出す人もいます。それどころか、どうしてくれるのさオーラを出す人もいるので、そういう人とだと、あまりにも計画通りの山しかできないことになる…。

今回は、あまりベータを調べずに行って、その結果分かったことは

ニードル

・ニードルは超風強い。そのため声も聞こえない。すごく寒い!ウィンドブレーカー必携!

・下降は下降点が不明瞭。不安があったので、同ルート下降とほぼ同じインディアンサマー側から下降したら、ブッシュが多く苦労して、下降にだいぶ時間がかかった。

・ここはフリーでフェイスの相当のスキルがないとリードは厳しい。突破力が必要なところが、登り始めなど、落ちれないところにある。

・ダブルじゃなくてシングルでもいいのかも。

大長征ルート

・ルートが錯綜して分かりづらいと思ったがその通り

・スラブはインスボンよりもノーピン区間が長い

・登攀終了してから、一の坊主と二の坊主の間までのトラバースは2級だが、ザイルは必要、どこか支点にロープを通してさえいれば、簡易的なビレイ、グリップ程度で良いのでは?屈曲が多くロープが流れない

・最後に短いハンドサイズのクラックが出てきてトップアウト

・下降は登山道だが、登山道がまた分かりづらい 薄い踏み痕が多い荒れた登山で、数回、獣道へ

・ダブルが良いと思う 弱点を突くクライミング

・大滝左の最初の5.6も5.7も、ショートの5.9はある感じでかなりピンが遠い

今回は、合ってよかったロープワーク技術&総合力って感じ!!

・ニードルでコールが聞こえず、ロープアップもされず、ロープも動かないので、しびれを切らせて、登攀。とはいえ、そのまま上るわけにはいかないので、自己確保をロープクランプでとりながら、ニードル最終ピッチをセカンドで上がる。上がったら、やっぱり聞こえていなかった。たるんで余ったロープはループに巻いて回収しながら登攀したので、登攀がグレーディングより難しくなった。

・ニードルてっぺんで寒かったので、ロープワークが雑に。結局、きちんとたたんだほうが早かったと理解。

・ニードル終了し、正面壁へ最終ピッチの出だし、IV級A1は、フリーで超えられず、3回落ちたので、あきらめて、エイド。エイドもスリングで鐙を出すだけだと無理で、プルージック登攀も併用。あってよかった登り返し技術。ここは、デシマル返還で、5.7ならリードできるんじゃないかなどと、甘く見ていたところでしたが、一目みて、無理と思いました。フットスタンスの位置がどうみても、5.7レベルじゃない。A1ということは、昔の人は鐙を出したはずで、これは鐙を持っていけばよかったなと思いました。ぬんちゃくはセカンドだったので、もっていなかったので、スリングで切り抜けました。こんな登攀をしたのは、初めて連れて行ってもらった小川山のクラックで登れずエイドに切り替えたとき以来…  屈辱(笑)?

雌鉾岳

・一般ルートの地図を持っていくべきでした。ゲレンデ感覚で下降も明瞭だと思って調べずに行ったので、なんとなく歩いていると、薄い踏み後に導かれ、ルートを外すこと数回。毎回すぐに気がついて補正しました。山歩きの経験値のたまもの。

・一枚岩のスラブが素晴らしく、ほんとにインスボンみたいでした。登攀はインスボンより若干易しかったと思う。

・インスボンよりもランナウトはひどい

どちらも、適度なスレスレ感があり、楽しめた。ニードルの登攀はアップアップ感がありました… 最近アップアップ感があることよりも、確実感で登っていたので、久しぶりのアップアップ感でした。

成長を実感する山で、なおかつ、山が素晴らしくきれいで、モミジつつじなど、お花がいっぱい。新緑が美しく、素晴らしい場所でした。泊りこんで登攀三昧でもいいな、という感じ。

2018年12月11日の不可解な出来事

 FB回想から…

もう3年前の出来事ですが、今振り返っても変な出来事だと思う。新人を最も危険だという野北で鍛える提案を貰ったんですが、その新人は懸垂下降もまだできない人…。

この出来事の解釈としては、旧態以前の教え方、というものです。で、私の考えとしては、この教え方では死者が増える。

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野北
ハーケンを購入しようかとしたら、なんと先輩の返事、”冬の野北は寒いからやめましょう”
はぁ?意味不明。
散々、新人さんを連れてマルチの練習を野北でするように説得を受けたのに(しかもその説得している人なしで)。
私は、ビレイも確実でない状態で、外岩行ったことは無いし、もちろん、マルチのセカンドでライジングなんかしてもらったことは一回もない。
初めて行ったマルチでも、1Pで易しいが後続を確保したし、懸垂下降はATCを落としてしまったこともあるが、カラビナで降りた。すでにカラビナ一枚で降りる方法は知っていた。

女性の私に向かって自立していないと苦情を言う人が多いが、むしろ自立していないのは、どうみても男性新人のほうだと思う。
ビレイできない人にビレイしてもらうなんて、リードは命がけになるわけだから、そうするべきでないと思うし、ライジングして登らせるなんて、フォローが自立していない。ガイド仕様だからするべきでないと思う。
少なくとも、自分がかつてそうだったくらいのレベルの、セカンドは私だってつけてもらって当然だと思う。
あーどこかにいないかな、ちゃんとしたセカンド。
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2021/12/04

トップクライマーの言葉の重み

■ボルダリングでのマット使用

公開されている岩場でノーマットはなぁ…。怪我でもされて明るみに出たら、岩場閉鎖の憂き目にあうこともある…というので、めんどくさいことを知ってしまったぜ、ちぇっ!と思っていたんだが…、あるトップクライマーの言質を取って、伝えたら、気持ちを変えてくれたようで、

 ”マット買います”

という返事が来て一安心。でもほんとに買うか?は未知数です(笑)。

■ ジムしか知らず、誰とも登っていないクライマーもいる

しかし、現代クライマーの情報源は、クライミングジム一択。誰とも一緒に登らず、クライミングの雑誌も読まず、フリーファンの存在すら知らない(フリーファンは、日本フリークライミング協会が出している無料の冊子だが、九州のジムで配布しているジムを見たことがない)クライマーがほとんどだ。つまり、安全に関する情報を得る、きっかけや情報源が皆無。

クライミングジムが、クライミングのマーケティングを担っているということは、つまり、安全に関する、必要で、良心的な情報を決定的に、誰もクライマーに流していない、ということだ。

クライミングジムが流しているのは、”どうやって、かっこつけるか?”という情報だけである。

ネガティブ面を言わず、ポジティブ面しか言わないというのがマーケティングでは当然の行いなのだ。

トップクライマーの皆さんには、このような現代的な状況を理解いただき、かつての山岳会の先輩から、あれやこれやを教えてもらった自分の境遇の優位性を考えてみていただき、同じことを大衆に向かっているのだと、率先して自分がどんな風に安全を確保しつつ記録を更新したり、プロジェクトを完成させているのか、ということを公開していってもらいたい。

なにしろ、クライミング界の常識では自分より登れる奴の言うことしか聞かなくていい、ということになっています。

ですので、11が精いっぱいの私が言っても、誰も言うことは聞きません(笑)。

こちらは、V16(6段)がどのように登られているか?分かる動画です。ご参考に。9割落ちています。

https://allnevery.blogspot.com/2021/12/ryuichi-murai-floatin-v168c-fa.html

ジョコンダで抜けたハーケン



2021/12/03

ノーマットは許されない

■以下引用

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ボルダーの公開されているエリアではマットの使用は、最低限の安全を守るという意味で、半ば義務的なものだと思っています。

マナーとしてもマットを使わない場合、靴底が泥などで汚れてしまい、そのまま登ると課題を汚してしまいます。

クライマーに、何かしらのポリシーが有る無いに関わらず、マットを使用して欲しいとの意思を伝える事ができるならば、そうした方が良いかと思います。

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■ ノーマットがえらいという文化

実際は、ノーマットでハイボルダーを登る人が尊敬される歴史を作ってしまっていますが…。

ノーマットの方が偉いという価値観を作ったのは、過去のクライミング史上のクライミング界のリーダーたちですので、ノーマットへの憧れとかいうものは、クライミングの歴史に無知な現代クライマーの責任というよりは、リーダーたちが作り上げた文化そのものに問題があると思います。

現代の事情だと、そもそも、3級とか4級とかしか登れないクライマーが、2段をチャレンジするのにノーマットとか言い始める時代みたいです。え?その実力で?!と、私もびっくりしましたが、そう言われた。

そもそも、ノーマット自慢というのは、命知らず自慢ではなく、ノーマットで登れるほど、ゆとりがある、っていう自慢です。自慢の中身を取り違えている。

3級の人がノーマットしていいのは、5級の課題です…

しかも、ボルダリングって9割落ちているクライミングです。(アルパインは、落ちたらゲームオーバーの落ちないクライミングです)

その現実を見たときに、どうすべきか?を考えるのは、私の仕事というよりは、そもそも原因…ノーマットのほうがエライ!という文化…を作ったリーダークラスの人たちの仕事であるような気がしますが…。どうなのでしょうか?

ボルダーで情報発信力のあるクライマーは、公開された岩場でのノーマットは、控えるような通達を各岩場ごとに出すくらいなことはしてよいのでは?と思います。特にノーマットで有名な人とかはそうかもです。

しっかし、ボルダーって、試登でも、ノーマットなんでしょうかね???ボルダー界の事情は分からないんですが。ボルダーの本気トライって、オンサイトとか聞いたことないから、ぜんぶレットポイントなのでしょうか?

■ 自分より強いクライマーの教え以外聞かなくていい文化

なにしろ、クライミング業界は、自分より強いクライマーの言うことしか聞かなくていい、という伝統です…。

危険なビレイという、相手の命がかかる、つまり、相手を殺してしまうかもしれないという、ものすごいミスですら、女性が言えば、無視=スルーして良いと若い男性クライマーは当然のように思っているのですから、いくら心配した人が口を酸っぱくしたところで、誰も言うこと聞かない(笑)です。

オヤジ雷火事じゃないけど、トップクライマーが言うことしか聞かないので、トップの方の責任は、どうもそこらへんにありそうです。



ぶら下がり筋トレボルダー

2021/12/02

エイドでリングボルトに荷重し墜落しているロッククライミング指導者

■アルパインクライミングは支点を自作するクライミングですよ

これは、ふとした調子で出てきたある方の以前のコメントですが、

山岳地帯での本チャンクライミング(=雪のないアルパインクライミング)とフリークライミング、ボルトのあるスポートクライミングの混同

が、指導者クラスであっても、九州ではあるのではないか?と思います。

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核心部は抜けて、あと2ピッチで稜線というところで、「大岩溝」という所があります。相方の二人が恐いというのでその左にあった古い人工ルートを探って見ました。20mくらい登ったら、ボルトも無くなり、無理だと思い、クライムダウンしていて古いリングボルトに体重をかけた時ボルトが抜けました。その下の2本も抜けて、20mくらい落ちて止まりました。

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これは、ずいぶん昔に起こったことらしいのですが…10年以上前と思いますが、それでも

  リングボルトに足を掛ける=問題外の行為 ではないのだろうか?と思います。

■アルパインでは支点を信用しない

私も山岳総合センターで、山登りの延長線としてのクライミングを教わりましたが、最初に教わった支点は、スノーボラート。その次が立木とかです。つまり、100%信頼するってできない。とくに朽ちたリングボルトやハーケンの類は、信用してはならないもの、として最初に教わるもののように思います。

私も初級の無雪期アルパインルートには行っていますが、支点を信頼したことはないです。アルパインでのロープは墜落からクライマーを守るためのロープというより、死体が迷子にならないためのロープです。

一度でも、前穂北尾根などに行けば意味が分かると思います。墜落したら、どこに落ちたのか、見つけられないようなのが山岳地帯での本チャンルートです。

■アルパインでどれほど支点を信頼しないか?というと??

三つ峠などのアルパインの本チャンに行くためにゲレンデでは、猫の頭ほどもある、懸垂支点がありますが、そんな支点ですら信頼すると怒られるくらいです。

■ 支点用ギアを持って出るのが普通ですよ

現代の無雪期のアルパインクライミングで、自分で支点を作ろうと、スリングやハーケン、あるいはカムなどを持って行かない人も稀です。

そもそも、そのような人には、フォローができないはずです。最初から残置を期待していくというのは、しないのが山岳地帯のクライミングの建前です。

もちろん、昨今は情報が充溢しているために、人気ルートでは、残置の存在があらかじめ分かってしまったりもしますが、それでも、一応は用意していくのがマナーというものでしょう。沢登りですら、ハーケンとハンマーは持っていくのが当然です。

その前提が崩れているのが、古いリングボルトに足を掛ける、という行為をしている時点で、見受けられます…。

■ マルチピッチが人気と言っても

マルチピッチというのは、複数ピッチ数があるというだけの意味ですので、マルチピッチと言う言葉でルートの性格を表せるわけではありません。

ルートは固有のそれぞれの性格があります。乾徳山旗立岩は、本州の本チャンクライマーのデビュー戦では定番ですが、ハーケンしかないです。つまり、全く支点に関する信頼性ゼロです。それで、登れないようでは、そのルートに行く資格がないということです。

そのようなルートもあれば、フリークライミングの対象として、ボルトが打たれたスポートのルートもありますが、これはボルトがあるだけに、安全であると勘違いされやすいです。

ボルトがあったとしても、どのような内容のボルトなのか?が昨今は問題です。さらに言えば、ランナウトの問題があります。

もっともよいスタイルは、クリーンクライミングができるルート、つまりクラックルートだと思います。残置を期待することなく、自分で、安全度合いの大小を自分でコントロールすることができます。

■ 事故から学ぶ

大事なことは事故から学ぶことだと思います。


登山という遊びは失敗の反省から始まります… 失敗をやってから、それでも、不味い支点を使い続けるというのでは、失敗から学んでいないと結論せざるを得ません。


悪い施工は自分で施工者に伝えてください

■事例

Aさん:「この画像にある資材はちょっと…」

→ 本人にAさんが言えばいいでしょう、良くない資材だと分かった人はAさんなんだから。

私:Bさんへ 「Aさんがこれはどうか?と言っていますが?」

  Bさん 「これはこうこういう理由で、強度が足りないと思われますね」(同意)

私: 「じゃ、施工者に連絡しましょうか?」

Bさん: 「いや、言わないでください」

はー!! 人を介さず自分で当人に直接やり取りしてください。仲間のミスは仲間なんだから、仲間うちでしりぬぐいすべきでしょう。

2021/11/28

自分の育てられ方は、正しかったのか?

 ■ 師匠が必要かどうか?

最近、クライミングを学習するにあたって、自分の育てられ方は正しかったのだろうか?とよく考えています。

最初の師匠の鈴木さんとは、師匠が必要かどうか?でまず喧嘩しました。

私は、それまで、一人で登ってきた登山者でした。八ヶ岳の中では、ピッケルがなくても登れる最も難しい山である権現岳を登れる程度までは、独学してから、来ていました。

独学って何を?というのが、一般の人には分からないと思いますが、主に天候予測です。山には近づいてよい危険と近づいてはならない危険があります。八ヶ岳なら積雪30cmは大雪なので、雪崩の危険があり、逆にただの寒さ…-25度とかは特に問題がないです。

寒いところで、濡れた手で金属を触れば、皮膚を持って行かれますが…そういうリスクも独学済み。八ヶ岳の縦走路始め、問題が起こった時のエスケープルートも、頭に入っているという具合に、山のリスクを自分の考えでカバーする方法が頭に入っているということです。チャレンジする前に、主要な尾根と谷は知っていないといけません。

そんなの誰だって分かっている、当然だろ、と思う人は、昨今の登山者を知らないかもしれません。

山岳会に属しているような人でも…いや、属しているような人だからこそ、かもしれませんが…富士山が目の前に見えているのに、北とか言ってしまいますからね。(実際にいた高齢女性登山者)

あるいは、美濃戸と言っているのに東側の尾根に歩き始めたり…。基本的なことを抑えていない人は、ただ、誰かに連れて行ってもらっていた、という人です。

そのあと、師匠が現れたわけですが…私は当初から、ずっと一人で登っていきたいと思っていたので、師匠は要らないって思っていたんですよね。だいぶ口説かれました。

■ スポーツクライミングでムーブを習得

そのあとも、問題でした。私の当時の考えでは、

  スポーツクライミングを身に着けるべき時期

でした。積雪期登山が単独でできるようになったクライマーが次に行うべきことは、クライミングムーブの習得かなぁ…と思っていたためです。

ところが、これに師匠が猛反発したんですよね…。スポーツクライミングが、あまり身についていないのは、そのためです。

しかし、私の考えでは、師匠の反発は、間違っていたと思います。

師匠がどのように考えて、インドアクライミングは要らない、と考えたのか分かりませんが、多くのクライマーは

フリークライミングこそ、登山の基礎力の底上げ

と言います。登山の生活能力(テント泊など)、ナビゲーション能力(読図ややぶ漕ぎなど)、積雪期登山(アイゼンワークなど)と並ぶのが、フリークライミングの基礎的力、と思います。

大体、外岩グレードで、限界グレードが5.12くらいまで必要です。インドアジムだと2級が登れるくらいかな?昔の山岳会のリーダーでも、そのくらいまでは努力で到達していたもののように思います。

数あるクライミングの中ではもっとも安全であるインドアで、片手でビレイするとか、壁からものすごく離れてビレイするとか、そう言う人たちと登らないようにするのがミソかもしれません。

■ リーチの問題

これは、背が低いともっと厳しくなるので、女性の場合はもっと高度なムーブ処理能力が必要になると思われます。同じ5.9でも、背が低い人にとっては10になるので。その辺りは、一般のリーダーがほとんど男性なので、40年、50年、登っていても、リーチとプロテクションの問題は理解が及ばないかもしれません。

むしろ、シットスタートがあるボルダラーのほうが、リーチの差による難易度の変化は良く理解できるかもしれません。その辺は、個人がどれくらい女性とのクライミング経験があるか?によります。大体の人は、女性と登った経験値が皆無だったり、元アスリート選手の女性と登っているとかで、一般人にアスリートを押し付けるみたいなことになってしまっていたりで、一般登山者の普通のラインが見いだせないケースが多いと思います。

私の観察では、3年毎週登るくらいの頻度でやっていれば、普通の運動能力の人でも、外岩の10代に登れるようにはなると思います。

■ 外岩リードの問題

一般に、古い教え方だと、いきなりリードです。5.6でも、5.5でもいいからリードさせます。

私もそういう教え方で、育てられたので、会で一緒に行った先輩が、小川山で私にリードさせる課題がないので、困り果てていました。

小川山はアルパインの岩場ではなく、フリーの岩場だからです。フリーの岩場というのは、5.9から上がスタートと言うことに日本ではなっており(海外は違う)、小川山にある、5.8とか、5.7とか、苔が生えんばかりの勢いです。もしくは絶賛ランナウトしており、5.8が限界の人が登ることはできないです。

それを解説する能力がほとんどの人は欠けているので、新人は、「先週、人工壁で10Aが初めて登れました!」とか言って、小川山の10Aにチャレンジ権ができたと思ってしまいます。

先輩はやれやれ、と思って、自分が登った10Aをトップロープさせるしかないわけですが…新人の側は、リードクライミングこそ、クライミングだ、とか聞かされているので、結局、「先輩、この隣の5.5を登っていいですか?」とか聞いてくるわけです。

見るとそれはコケコケでプロテクションがハーケン…つまり、誰も登らないので、リボルトも後回しだし、登られていないからコケまみれなわけです。登らせるわけにもいかないので、先輩は後輩の意欲をそがないように考えて、しかたねえなぁと掃除しながら、ハーケンの強度をチェックしつつ登る以外なくなります。

ということなので、教える側からすると、プロテクションの確かなインドアの人工壁に1年くらい通って、プロテクションの意味だの、ロープの流れだの、逆クリップだのを覚えてくれた方がうんと楽なわけです。

一方、菊池さんの本によると、昔の新人は、一年くらいは、先輩の登攀に ”金魚の糞”だったそうです。つまり、リードはお預けで、ずっとセカンドってことです。

当然、新人には難しすぎる課題を登っていることになるので、楽しくはないようです。この学び方だと、外岩しか使わないですが、どちらかというと、クライミングはあまり上手でないクライマーが出来上がるようです。

 




一体なぜこれまで、誰も指摘しなかったのだろうか?

リボルトも教育も、ここまで放置が進んだ理由はなんだろうか?

九州に来て、自分の了見で、初めての岩場でも登るということになり、ボルトに対する知見がものすごく広がった。

とくに、2000年以降の開拓の岩場とそうでない岩場の事、つまりボルト品質のことは大きい。

いまだにカットアンカーで新規開拓をする人がいる、ということも、本州の開拓者が、

「え?!まだいるんですか!」

と驚くレベル感だということが分かった。

私はもちろん、カットアンカーがそんなに不味いボルトだということは、九州に来るまで知らなかったが…。

しかし、一体どういう理由で… これほどまでの長い時間…20~40年も…無視や放置が行われたのであろう???

ボルトに人命がかかっていることとか、ランナウトが危険であること、などは、クライマーであれば、当然、分かり切っており、新人クライマーから教わるよりも、ベテランであればあるほど、ツマラナイ見栄やちょっとした魔が差した程度のことで、クライマーが死んでしまったとかいう話は、長年やっていればいるほど見聞きしているハズだ。

そういうことを含めて、なぜ、これほどの放置や、終了点の作りのまずさ…が発生したのか?

一体これまで、誰も指摘しなかったのだろうか?

なぜ私以前に誰も指摘しなかったのだろうか?

上級クライマーだと自負する人々が…だ。

自己責任で登っていると豪語する人たちが…、だ。ボルトの見極めなど、自己責任の最たるものだからだ。

  正しいビレイヤーの立ち位置。海外の動画を見るだけでも、見れば分かる。




2021/11/27

日本には海外クライマーをもてなせる楽しい岩場がない

 ■ 日本には海外クライマーをもてなせる楽しい岩場がない

小川山も世界一怖い岩場指定されていたしなぁ…。

数年前に行った台湾で、シンガポールで普段登っているというクライマーに教えてもらいました。そのシンガポールには外岩がないのだそうで、インドアジムで鍛えたら、誰しもが、よし!次は外岩だ!=海外、となるのだそうで、シンガポール人は小川山を目指したらしく、それが間違った選択肢だったと早々に気がついたそうです。

だよなぁ…。

一般に、アウトドアクライミングのデビューはスラブからです。傾斜が寝ているので、初心者向きとされているのですが、残念ながら、ボルト間隔的にはぜんぜん初心者向きではないことが多く、多くがランナウトしており、落ちたら大怪我になってしまう。それが歴史的流れなのです。これはアメリカも同じで、ヨセミテも強烈なランナウトなのだそうです。

小川山はヨセミテを範とした岩場だから、当然ヨセミテ流。日本では花崗岩の岩場はぜんぶヨセミテ流なのではないかと思います。

■ グレードの表現

一方インドアジムの人は、5.9が一本でも登れたら、つまり限界グレードが5.9だとしても、自分のグレードを5.9と表現することが多い。

私も今登れたことがある最高グレードは11Aのオンサイト。でも、もし快適に楽しく登るとすれば、10Aとかです。私がインドアで練習するなら、11Aに取り付くべきです。落ちながら強くなるのがインドアの正義。その正義をアウトドアに持っていくと?まぁ、大怪我や事故になりますね。

この教えてくれたシンガポールの人は、日本の岩場は怖いと連発していました。比叡にも行ったそうです。

その比叡は、米澤さんによると、現代はまだましになって、以前は40mランナウトしていたところが、20mランナウトくらいに収められているそうです。

昔の人は、国の威信とか、会の威信とか背負って登っており、現代の一般社会人が楽しむ健全なスポーツとしてのクライミング、趣味となり、余暇として求めらるクライミングとは、まったく話が違ってしまっています。

■ ボルト=スポートルート

それでも、ルートに打たれているのが、ハーケンやリングボルトだったら、20mのランナウトでも、40mのランナウトでも、何の誤解も生まれないのですが…ボルトが打たれているとなると、ボルトというのは、スポートルートって意味なんですよね…。一般常識では。

自分のために打つのがハーケン。あとに続く人のために打つのがボルト。自分さえよければいいのがハーケン。公共の利益のためにあるのがボルト。

ロープが出ているのが20mで、20mランナウトしていたら、墜落したら、ロープの伸びの分で、グランドフォールします…つまり、ボルトがあっても、なんの保護の役目も果たしていない…。もしそのボルトがぽっきりと折れたり、抜けたりしても、おんなじですよね。40年前に打たれたボルトは今そんな状態です。

こんなランナウトになったのは、出来るだけボルトを打たないという正しい方針のためですが、ランナウトしていたら、ボルトの役目自体が果たせないので、いっそノーボルトのほうが正直って感じです。ボルトがあると人間は安心してしまいますが、実質はボルトがないのと同じ状態なので、結局、ボルトレスと同じです。ならロープもあってもなくても一緒ってことなので、フリーソロと同じです。

20mランナウトの岩場は、20mフリーソロの岩場として売り出すほうが、正直。

そうすると、命知らずな人しか来なくなって、誤解が減る、ってものです。

■ 趣味として楽しむクライマーに命がけは勧められない

海外クライマーに何人か友達がいますが、遊びに来たいと言われても…、困る。

バケーションで楽しくクライミングしようと思っている、ノーマルで11くらい登れ、頑張ればやっと12が届くかどうか?な人なら、もしオールラウンドに、スラブも、オーバーハングも、フェイスも、クラックも、ワイドも登れるみたいな成長をした人なら、たぶん20mフリーソロのスラブで落ちることはないと思うのですが…それは人に寄ります。

大体のクライマーは平素がインドアジム。それでやっている人に、

 20mランナウトした岩場が易しい岩場があるけど、どう?

って聞けます?しかも、ルートのピッチグレード5.7とか。

普通のクライマーなら、もっと難しいのでいいから、安全なルートのほうが好みだと思います。

一方、もし彼がスラブに経験がなく、5.7?やるやる!というような状態の人だと、逆にまだ分かっていない5.7がギリギリの人かもしれず、それで5.7でランナウトした課題に取りつかせると、ヘリが飛ぶ可能性が五分五分です。5.7のスラブをノーテンションで登るには、5.9のスラブがギリギリグレードである必要があるからです。ゆとりが必要。

ゆとりが必要、というのは、もっとも現代クライマーには理解しがたいようです。

それはクライミングを初心者がどのように学ぶか?というプロセスが変わったためで、現代は入り口がクライミングジム=落ちながら成長。

という理由で、大体、外岩リードクライミングの指導ができるレベルのオールドクライマーは、ジム上がりクライマーを嫌がります。自分の指導中に気楽に落ちて、怪我でもされたら後味悪いですよね。

■ じゃ適性ボルトの岩場はどこなの?

とか聞かれて、これも困るんです…。なぜなら、海外のように岩場ごとにボルト間隔の適否が分かれているんじゃなく、

開拓者別

なんです。日本では。しかも、トポに開拓者の名前が書いてあることが少なく、開拓者の個性も、トポには記載がないです。誰が作ったルートなら安全なのか?っていうのは、ローカルクライマーに対しての、聞き取り調査、しかなく、それでは、海外から来た人は登れない。

■ 楽しくない

クライミングは危険なので、スリルを楽しむスポーツであることは確かですが…

バンジージャンプが楽しいのは、スリルであって、本当に死ぬのではないから。

同じ理由でクライミングが楽しいのは、単に死ぬかも…というのは、見せかけであって、本当に死ぬことは想定されていないから。

どうだ!と命知らず自慢をしているクライマーだって、ホントに死ぬとは思っていないから、自慢になるわけで、ホントに死んでしまったら、ただのアホです。

ので、普通のクライミンググレード…海外のインタビューでは、基本的に5.10代を登るクライマーが25%の人口を占めており、11登る人も12登る人も、全員が成長プロセスで通る道のりが10代なので、10代でランナウトしていて落ちて死ぬかもしれない作りになっていたら、クライマー人口の半分に、”来ないで”と言っているのと同じことです。

■ 適正グレードと適正ボルトが急務

というわけで、日本のクライミングが海外で一般にクライマーが楽しんでいるような、趣味として、命を掛けずに楽しんで登れる状態になるには、

5.9なのに、実は10cとか、不適切かつ不誠実なグレードが与えられていることがない

5.9しか登れないクライマーが5.9に取り付いても死なない程度のボルト間隔になっている

の2点が必要です。5.9を例に出した要るのは、タダの便宜上です。5.11でも、5.12でも、おんなじです。

適性グレードなんて、インターネット全盛のこの時代、何人も登る人がいるので投票であっという間に決着がつきそうですが、そういう仕組みがないのでつかない。

余談ですが、一般登山でも、適性グレードの問題は根深く、簡単なロープウェイで登れる山の唐松岳の隣だからというだけの理由で、後立の山の中では難易度が高い五龍に来てしまうヨレヨレ登山者が後を絶ちませんでした…帰りは遠見尾根でこれも長くて難しい道です。

登山者もクライマーもどっこいどっこいで適性グレードではないという問題は根深いです。

海外のハイキングを求める人は、日本の山と言えば、富士山一択…。発想が貧困です。夏の富士山なんて行っても楽しくないですが、そう教えても誰も話を聞かない。行ったという事実が自慢話のネタとして帰国の折に必要だからです。故郷の人が名前を知らない山に登っても、話題にならない…。

というので、適性グレードがないのは、クライミングだけの問題ではないですが、そういう問題を一足先に飛び越えて、

グレードが適正であると、ボルトが適正であるとかはごく当然のことであるラオスの環境…

ホントに羨ましいです。日本の初級クライマーはすべからくラオスで一か月くらい登れば、アウトドアへのデビューはバッチリだと思います。