2024/11/11

【クライミング心理学】頑張り教では、アウトドアクライミングのリスクは排除できない

■ 定期Youtubeライブ(9)被害者思考からの抜け出し方

■ クライミング界=スポ根=頑張る教

南ゆうたさんの今回のライブが秀逸だったのですが、この動画は、クライマーみんなに役立つような気がしたので紹介します。

スポ根で彩られている日本クライミング界… なんかオリンピックも同じですが、すごい歪んだ精神世界が垣間見えて、私としては、そんなところに首ツッコみたくない…という気持ちがありました。

スポーツって、競技、競い合う、っていうのがありますが、競っても、基本、遊びとして、ですからね… 

日本では、遊びになっていない。

頑張らない奴はダメな奴だという恐怖で彩られている。

アスリートレベルになると、これが、遊びでなくなる…っても、ある意味仕方ないですが、そうでない、普通のアウトドアクライミングでも、この価値観が根強いです。

アウトドアクライミングでは、アスリートレベルにならなくても、ごく普通の一般人が、アスリートと同じくらいの真剣度で取り組まないと、自他を危険に陥れます。

気軽なスポーツ、誰でもできるスポーツと言われるのは、一般的に言えば、アルパインクライミング上がりの人から見た、外岩です。

アルパインや登山を経由していない、外的リスクのないインドアクライミングの人が外岩に来たら、リスク管理の穴だらけです。全く安全ではないし、気楽に取り組める活動でもありません。

昨今ではアルパイン経由の人もきちんとリスクを理解してアルパインクライミングをしていたわけではなく、単に形骸化した山岳会に所属して、そのために誰にもミスを指摘してもらえないまま登り、その上、大きな事故を経験せずに済んだだけ、という、ラッキーだっただけの場合もあるので、さらに要注意です。

さて、南さんのライブを聞いてほしい人のリスト。

・「いつまでもダメな私」という感情に半ば飲まれ、半ば自分から浸る感覚がある方
・「こんなに頑張っているのに」と不満を感じやすい方
・身の回りに「あなたはまだまだ頑張りが足りない」と言ってくる人を引き寄せがちな方
・見捨てられ不安が強く、「もっと頑張らなければ見捨てられる」と考えがちな方
・「がんばらないと愛されない・うまくいかない」という悪夢(見捨てられビリーフ)から醒めたい方
・「がんばることが正しいこと(善)」という想いが強く苦しい方
・子どもの頃からガマンばかりで、親に本音を言えなかった方

スポ根の人は、「がんばることが正しいこと(善)」という想いが強い方、に該当。

私が出会ったことがあるクライマーの中には、

・見捨てられ不安が強く、「もっと頑張らなければ見捨てられる」と考えがちな方


・「がんばらないと愛されない・うまくいかない」という悪夢(見捨てられビリーフ)

がある人もいました。

しかし、アウトドアのリスクって、

 頑張り

で、回避できます?

いや、できないのです。必要なのは、”頑張り”ではなく、

冷静なシミュレーション

のほうです。

例えば…?

岩場で、落石があるところにピクニックシートを広げる…という行為。

岩場では、運よく、「〇〇さん、そこは落石があるよ~」と誰かがいつも教えてくれるわけではありません。

ところが、落石って、そう頻繁に起きることではありませんから、1回や2回の外岩クライミングで、そこにピクニックシートを広げたことで、ひどい目に遭うことは少ないです。

しかし、一回でも、人の頭大の石が落ちてきて、それが当たったとしたら?

大けがであり、大事故であり、そして、死亡事故も起こりえます。

そして、それって、”運が悪かった”と言えますか? 

正直、言えません。

落石が予想できるところにピクニックシートを広げるべきではないからです。

昔から、山の人の間では、

 落石が起こるような岩の通り道にはピクニックシートを広げない、と

いうことが伝承され続けているのです。

しかし、そうした伝承が途絶えて、それを守っていなかった。

だから、いつか落石に当たることは時間の問題、だったのです。

これは、客観的に見てギャンブルで、続ければ続けるほど、ギャンブルで当たる確率が上がっていくので、ロシアンルーレットと言う意味です。

これは、一般の社会でも、同様の現象が起きています。

例えば、低い土地に、多くの人が集合する設備などを作らない、という知恵などが無視され、田んぼとして利用されていた場所に、駅ができたり、学校ができたり、家を建てたりした結果、何年間かに一度の津波で流される、などです。

■ アウトドアクライミングのリスクは、危険予知力。

でしかありません。危険予知の分野では、日本は全体に後進国です。

林業でもそうですし、建設現場などの危険予知でも、後進的です。

その原因を考えて行きたいと思いますが、その一つには、行き過ぎた勇気主義があると思います。

つまり、お前男だろ、これくらいで怖いとは何だ!という奴です。

しかし、怖いのは、リスクを感知した、という動物の本能、お知らせ機能ですので、危険を察知したら、危険でなくなるように行動しなくては意味がありません。

そこでグッと我慢するのが良くないのです。

そこで我慢するようになっているのは、自動反応です。男が廃る!みたいなやつです。

だからと言って、ヘタレを正当化しないようにしてくださいね。人工壁で誰でも登れるように設定されている5.9でトップロープ掛けてください、みたいなのは、本当に男が廃っている事例ですよ、誤解しないようにしてくださいね。いますから、そういう人。

我慢する、というのは、自動反応(無意識)なので、本人は気が付くことができません。

それを利用して、奮発させよう、という競争による行動喚起が、男性社会には良く見られるようです。

漫画とかでもよく出てきますよね。そして、バカにした、バカにされた、という関係で、どっちが上か、みたいなのです。それで、いつか見返してやる、というパワーにするのです。

友人のK君は、屋久島で、腐ったボルト1本にぶら下がるのが怖かったのに、なんだお前はそれでも男か、とバカにされたのだそうです。それで屋久島フリーウェイに対してリベンジクライミングを考えていたみたいです。

こういう関係性って男性社会独得で、女性の社会で、こんな働きかけ、虚勢を張らせるような声掛けはめったにありません。

これは、なんだ、お前それでも男か、とか言われなくても、「ふーん、怖いんだ」とかでも同じです。

私はメールで、「安全マージンが厚すぎる」と言われたのですが… これは遠回しにビビり過ぎだと言われたのと同じですが…。

(この時は、カムで登る岩場に行きたい私が、そのクライミングを断られ、山口県のエイドクライミングをお断りしたときに言われたので、は?ってなったんですが…。だって、エイドって…。流石に指摘が的を得ていないことは、明らかすぎますよね)

このことがあったので、長年かけて、安全マージンについて考察することになりましたが、ある時、大阪のクライマーと登り、私の安全マージンは厚すぎるどころか、薄すぎるということが分かりました。

安全マージンについて言えば、インドアの5.12が登れる実力になってから、5.9をリードするように教育されるのが、大阪のクライマーのようでした。(余談ですが、関東では、これは、インドア5.11だという合意がそこはかとなくあると思います)

こうしたグレードに転換する話は、グレードさえ上げておけば、アウトドアも安全に登れるという錯覚を起こしやすいので要注意です。

いくら高いグレードが登れても、落石があるようなところにピクニックシートを広げてしまうのが昨今のクライマーです。

それは、逆説的ですが、私のようにあまり登れない時期から、アウトドアクライミングそのものに触れて成長してくるほうが、危険予知には長けることができるのです。

その際、必要なのは、きちんと危険予知ができる人と一緒に行き、その人から危険予知をきちんと言語化して教わる、という行動です。

昨今、同行だけでは、見て盗めない人がほとんどなので、言語化が重要です。

これができるクライミング指導者がいないのが、ボトルネックになっている。

■ クライマー界のほとんどの人はスポコン礼賛

日本の登山文化を作為的に作っている?のかどうか分かりませんが、既存の山岳組織のトップの人たちが押しなべて、みな、高難度フリーの記録だけを価値評価してきたので、当然の結末として、日本はスポーツクライミングは強いのに、遭難者数や事故者数は毎年うなぎ上りという結果になっています。

なぜなら、高難度フリーの記録を登っている人の中には、ビレイができず、登るだけの人もいますし、自分で登る課題を選んで登ってきたのではなく、コーチに言われるがままに、これを登りなさい、あれをのぼりなさい、と指示されて、記録を作ってきて、結局、アウトドアでも、おぜん立てされた中で登ってきただけの人もいるからです。

特にジュニアはそうです。自らの力で、登ってきたアウトドアクライマーが少ないです。

高難度になればなるほど、落ちる確率が高いわけですから、ボルトも整備され、登るだけしか必要ない、ということに結果としてなっていくのです。ですので、原理的に高難度を登っている人ほど、危険予知に疎くなる可能性が強くなります。

すると、支点が整備されていない場所やもろい場所などのような、いわゆる”アルパインっぽい”場所については、無知、ということになります。

コンペクライマーで沢をやります、雪をやります、という人は非常に少ないです。

逆に沢や雪をやっていても、その人が危険予知に長けているか?というのは別の話になり、沢や雪をしていたことがあるから大丈夫とも言えません。

なんせ、ロシアンルーレットで逃れてきただけでも、沢や雪はできるからです。

記録を見るなり、その人の言葉を知るなり、発想を聞くなどして、その人が危険をどう捉えているか、どれくらいの感度があるか、個別に見ていくしかないのが現実です。

■ これまで見てきたおや?と思うべきポイント

1)事故時の緊急連絡先の交換がない
2)計画の相談がずさん 特にロープの相談と下山路、敗退の基準
3)心配で相談してくる人=可能性が良い人
4)不必要に高額で高機能なシュラフを持っている人=危険予知お留守の可能性あり
5)宿泊先など、クライマーならどうとでも対応できるような、些細な未知が許容できない
6)ビレイなどの講習を受ける気がない 
7)周りの人を見て自分の行動を決める
8)運転が荒い 林道でスピードを出し勝ち
9)ロープへのリスペクトが低い 人のロープで自分の本気ルートを登る
10)ボルトへの関心が低い 沢にあるボルト=終始水がかかっているのでは?など発想できない