自分自身の力でラインを見出し、プロテクションを取ることの重要性と面白さ
なのではないですかね?
私の最初の師匠は、鈴木さんですが、私は全く一人で登っていく予定にしていたので、師匠がそもそも必要だと考えておらず、心配した鈴木さんがいろいろと、事情が分かるように、と配慮してくれた、というのが実情かなと思います。
普通に一般登山でやってきた通り、山を少しづつ身の丈で大きくして行き、少しずつ困難にしていく予定でした。
上記の方針を、分割すると
1)自分自身の力でラインを見出す
2)自分自身の力でプロテクションを取る
ことは、
A)重要であり
なおかつ
B)とても面白い、
ということだと思います。
■ ルートファインディングの垂直バージョンがラインどりですよ
上記のように、私は鈴木さんと一緒のころは、アルパインの初期で、甲斐駒黒戸尾根を厳冬期に単独で登り(一応、念のためロープとハーネスは持って行った)、バリエーションルートと一般ルートの間にあるような困難度の雪山や岩の山をしていました。厳冬期の金峰山や大同心稜などのほか、無雪期は、明神主稜です。ほかはゲレンデです。
当時、私の困難は、岩のルートファインディングでした。
これは初めての沢で、あそこ登れる~と思ってツッコんだら、ぬめぬめ、ぬるぬるで登れず、ハーケンで降りてきた、ということが反省にあったからです。懲りた。
登れる!と思ったら登れない…では、落ちるしかなくなります。アルパインのルートで落ちるは、死を意味します。
ので、私の課題は、ルートファインディングなんだなぁと思っていました。
読図の山は三年ほどかけて、一人で尾根を下っても、特に問題なく、思った通りの地点に降りれるようになっていました。このスキルは一人で身に着けました。最初に一人で山に入る、というところが恐怖でした。なんせ一般登山者は、一人で山に行ってはいけない、っていう呪いの言葉がかけられているからです。女性だから、犯罪者に襲われる、という話もありました。
しかし、犯罪者は読図できないから、大丈夫。遭う可能性があるのは犯罪者より熊です。
余談になりますが、このように個別具体的にリスクを考えるのが大事です。
これは、実生活に置き換えると、アメリカ社会では、日本人はアジア人なので、私が住んでいたヒスパニック系住民が多いミッション地区には、日本人の私はOKで、白人はNGです。白人のデイビッド、棒持って追いかけられていました(汗)。
それに私が住んでいたのは、ガンショップの2Fでしたが、そこはガンショップなので、毎日のように警察官が立ち寄るので、安心安全でした。
しかし、発砲からは守られていても、なぜかマリファナは合法で、その匂いを知らない私はにおいを消そうと必死で掃除する羽目になりました…カビ臭ではなく、シェアメイトが吸っているポットでした…(汗)。
話は戻りますが、ルートファインディングを岩の垂直面で行うと、ラインを見出す、です。
最も易しいラインは、
岩の弱点です。一般にアルパインクライミングというのは、岩の弱点をゆくもの、です。
しかし、フリークライミングは、
特にラッペルで作られたルートは、
岩の強点 なのです。なので、ラインを見出すということには苦戦しています。
アイスクライミングでのラインの見出し方は、師匠を見ていたので、分かるというか、あんだけ散々リードクライマーを後ろからビレイして、眺めていれば、誰だって予習してしまいます。
つまり、ベテランをビレイする、ということは、ベテランからラインどりを教わるということ、なのです。
一般にジムクライミングから外の岩場に入門した人は、易しいラインどりがあるのに、ただまっすぐに登って行ってしまって行き詰ることが多いそうです。
私が疑問なのは、フリークライミングのトレーニングで、特に
インドアで、外岩のラインを見出す訓練になるのかどうか?
って点です。
ユージさんなどは、これは5.11だから、どこかにいいホールドがあるはず、と思って探したりするそうですが、ちびの女性には、グレードは全く関係ない話なので、この逆算発想は使えません。
それで、追い詰められて、落ちたら? フリーのルートでも、今のルートは、昔のエイドルートのボルトをただ新しくしただけなので、落ちれば、死んでしまう配置になっていることがあります。
余談ですが、そんなことは分かっているのがベテランだと思っていたんだが、分かっていない人もベテランと称する人の中にいるということが分かった。
■ 自分自身でプロテクションを打つこと
岩で自分でプロテクションを打つ感性をはぐくむのは、ボルトルートでは難しいです。
なので、自分でプロテクションを打つことの重要性を覚えたい人や
ロッククライミングの本質的な面白さを味わいたい人で、初心者には
アイスクライミング
をお勧めしたいです。なんせ失敗しても、また凍ればいいだけですから。
トラッドも、カムで自分でプロテクションを打つわけですが…打てる場所が限られているので、アイスよりも見極めは難しいと思います。入れてみないと分からないというのがあるし。
さらに、ジャミングをまず先に覚えないといけない、というのが、初心者でも登れるWI4と比較して、難しいと思います。
ちなみに、初心者でも登れるというWI4ですが、私は初年度は1回しかアイスクライミングをしていません。一回目はさすがに登れなかったですよ。すべてのクライミングの基準は、
18歳男子大学生
を基準に作られているので、それに当てはまらない成人は、自ら、そこから引き算しないといけません。しかし、これは当然ですが、TRには当てはまらないので、翌年にはすでに自分で勝手に小滝に登りに行っていましたが…。この段階ではただムーブを身に着けるだけですので、特に技術的要素というよりは、回数です。
■ 大ハンデつきでも、頑張れば、私のところまでは誰でも来れます
私は独学でほぼ登ってきていますが、18歳男子大学生の体力がなくても、時間の長さや頻度、熱心さで、挽回して、時間をかければここまでは誰でも来れるということを証明するために登っているんじゃないかと思います。
私より、身体的ハンデがある人、男性にいます?いないよなぁ。体力で言えば、私が最底辺な感じではないでしょうか?
いくらメタボでも、私よりは力持ちでしょう…
それでも、まじめに学べば、そこそこのところまでは来れる訳なのですから…
誰かに下駄をはかせてもらいましたーとかではなく。
もちろん、私は鈴木さんや青木さんという師匠に恵まれてきました。でも、師匠に遭う前に、みんなが知らなくてはいけないようなことは、ちゃんと自腹でお金を払って、山岳総合センターに行き、最初の師匠にあった時には、流動分散作れました。懸垂下降もできました。
師匠に出会った場所も、インドアジムやSNSではなく、そもそも、岩場でした。
そして、自己確保で登ることも最初のパートナーと組む前にできましたし、ロープ自体も、初めから自前のもので、わざわざ東京のカラファテまで行って買ってきたものでした。
ロープも持っていません、懸垂下降も分かりません、ビレイもできません、でもクライミング教えてください、っておかしくないです?ハイキングなら、勝手に行ってきて、って誰でも思いますよね。まぁ、これを山岳会で、連れて歩かれているだけの女性クライマーに言ったので、嫌われましたが、同レベルと思われたくないって思っても、許されると思います。実際、取っているリスクが、同レベルじゃないですから…。
ロープの直径も何が良いのか?インドアジムの人に聞いたら、10ミリとか言うに決まっています。それじゃ重くて山に持っていけないでしょう。
自分が行くのはアルパインのルートだと言って、カラファテに相談すれば、ちゃんとしたロープと簡単に自己確保ができるロープクランプを勧めてくれるでしょう。アルパインクライマーなら、ダブルのロープを双方が一本ずつ持ち寄るのだ、とか教えてくれるでしょう。
一方、道具を自分で買わない人は、こうした時点でも、必要なロープの知識を仕入れ損ねます。
こういう風に、その段階に来た人に、人は知識や技術を与えます。そうでない人が与えられないのは、その資格を自分で稼いでいない、からです。
それを逆恨みされても…。
自分の力でラインを見出し、つまり、自分の力でなすべきことを悟り、
自分の力でプロテクションを取る、つまり、自分の力で保険として必要な道具を買う、
そこから、クライミング教育なんですよ。
でなければどうやって
自分の力で、自分の生きる道を見出し、
自分の力で、自分自身を保険とする、
ことができるでしょう? 人の力で自分の生きる道を見出し、人の力で自分の人生を保証してもらうというのは、通用しないのがVUCA時代なんですよ。
しかも、そうしないと、そもそも、楽しくない、ということなんですよ。
■ 参考:ボルトを打つべきでない場所
1)簡単にナチュラルプロテクションが取れる場所
2)頼りない露岩