■ クライミングから人生を学ぶ
人生において、大きな決断をした後、人はどんな反応をするでしょうか?
例えば、
・大学が決まった後、
・就職先を決まった後
・結婚が決まった後
ポジティブな気持ちと不安な気持ちが混ざり合っていると思います。
クライミングでは…
・初めての外岩クライミングの日
・初めての講習日
・初めて海外の登攀に行くとき
・初めて行く岩場
・初めてクライミングパートナーと会う日
・初めてのクライミングジム
・大きなけがの後、久しぶりに岩場に復帰する日
■ 未来の自分にワクワク? どきどき?
ポジティブ: 新たな旅立ちを始めた自分に対して、誇らしい気持ち
ポジティブ: スタートをするのが 待ちきれないという逸る心
といった想いをもちつつ
ネガティブ: どんな奴らが参加しているんだろう?
ネガティブ: 体力ないけど、大丈夫だろうか
ネガティブ: 高いところが実は苦手なんだけど・・・
このような不安も沸き起こります。
もちろん、
元々不安が少ない人もいますし ← この人一番クライミングに向いていない人!
不安を感じても
時間の経過とともに忘れていく人もいます。これは普通の人です。
■ 不安は宝物 = クライミングのリスク管理能力
一方、
★なかなか不安が減らない
★逆に不安が増えていってしまう
そんな場合にどうしたらいいのか!?
■ 事例
私は、元々、過緊張タイプです。幼少期から顆粒球タイプ。肩こりとか、ガチガチです。つまり、無意識で、不安を人の何倍も感じてしまうタイプです。
今でも敏感な性質は相変わらずで、ちょっと水泳でトラウマを再現しただけで、昨日は一日アレルギー発作になって、寝込んでいました(^^;)
具体的で細かいことに
あれこれ考えを巡らせては、不安を絡み取るように近づけてしまうのです。
ここ数年は、あまりに白亜スラブで私に起きたリスクについて考えすぎて、鬱になり、精神科医のお世話になったほどでした。
しかし、これこそが
クライミングに適性がある
と言う証拠なのです。
なんせ、実社会では、破産しても命まではとられません。一度や2度の失敗は、命取りにはなりませんが、ロッククライミングでの些細なミスは、死亡事故に直結します。
クライミングだけが生きがい、ではなく、クライミングで作ったライフスキルを人生に生かしてくださいね!
では、さっそく、私がやっている不安対処法をお伝えしますね。
■ 起こりうるミスをリストアップする
起こるかもしれない心配や不安の一つ一つを紙に書き出します。
つまり、クライミングで起こりうるミスをリストアップするということです。
書き出したら、他に取りこぼしがないか?細かい要素もさらに書き出します。
クライミングで起こりうるミスなんて、まぁ、大体は既出で、事故記録を見れば、洗い出せます。自分で想像してみるというのが大事なので、やってみてください。パートナーがいたら、ぜひ二人でやってみてください。
例:マルチピッチに行ったら?
・とりつきが見つからない
・間違ったルートに取り付く
・ペツルのボルトとRCCの両方が見え、どっちがホントのルートか分からない
・登れない
・登ったものの、支点がない
・ギアを落とした
・登ったものの、ロープアップされない
・終了点を見落としてしまう
・アンカーが超しょぼい 体重を預けられる強度があるか不明
・トップが落ちた
・セカンドが落ちた
・トップもしくはセカンドが大けがして登れない
・お腹が空いた
・ハチに襲われた
・雨が降ってきた
…
他にもいっぱいあると思いますが、おおよそこんなところですね?
■ 対策してから行く
そのすべてについて
対策してから行きます。
ぶっつけ本番は、クライミングの場合、ありません。なんせ、ぶっつけ本番で死にますからね! 十分準備しても、予想外のことが起こるのがクライミング。
懸垂下降の仕方を知らない新人に、マルチに連れて行って現場で教える
ってのは無しです。 それはOJTではありません。手抜きって奴です。
山岳会のみなさん、それ、やっちゃってますよね?
それもこれも、教える側が、ひと手間かけて自分の時間を投資するのがイヤだから。
しかし、優秀な新人に自分のセカンドを務めてもらいたかったら、青ちゃんは、公園で3日もレスキュー講習をして、自分の技術を相手に伝え、相手の理解を高める努力をしました。
それくらいの投資で、インスボンに3度も付き合ってもらえたのですから、小さい投資だったのではないでしょうか?
吉田講習の様子:https://stps2snwmt.blogspot.com/2015/12/blog-post_27.html
■ すべてのリスクに想定をする
・とりつきが見つからない ← 経験者と行く
・間違ったルートに取り付く ← すでに行った人に話を聞いておく
・ペツルのボルトとRCCの両方が見え、どっちがホントのルートか分からない ←安全なペツルのほうに取り付いてみて様子を見る
・登れない ← 敗退手段を確実にする
・登ったものの、支点がない ← 支点構築スキルを得ておく 予備のハーケンとハンマーを持参する
・ギアを落とした ← 事前練習で落とさないように訓練する、下降器を落とした場合に備え、カラビナ懸垂をマスターしておく
・登ったものの、ロープアップされない ← プルージック登攀、ロープクランプによる登攀、ユマールのうち、どれかを携えてから行く
・終了点を見落としてしまう ← ロープスケールをもともとのルートに合わせる 例:40m
・アンカーが超しょぼい 体重を預けられる強度があるか不明 ← 支点を自作する
・トップが落ちた ← トップの固定、ローワーダウン、介助懸垂を覚える
・セカンドが落ちた ← あまり問題ではない
・トップもしくはセカンドが大けがして登れない ← 介助懸垂や固定を覚え、119番、日赤救急救命法を覚える、山行管理されておく、ヘリレスキューを頼む、ロキソニンを携帯する
・お腹が空いた ← ピンチ食を携帯する 日ごろから空腹になれる
・ハチに襲われた ← エピペンを携帯する
・雨が降ってきた ← ゴアテックスのレインウエア、あるいはツエルトを持参しておく
…
やれることはすべてやります。
■これでも不安なら?
「小っちゃ!」
これだけやっても、不安ならば、自分の器の小ささに対して、1人ツッコミをします(笑)
さらに
■ 自分ではどうすることもできないこと=相手の責任
書き出した不安項目を
・自分ではどうすることもできないこと
・自分で対応できそうなこと
この2つに分けます。
なぜなら、クライミングは二人一組の活動ですので、組んだ相手が悪かったら、道連れです。
組んだ相手が、勝手にロープドラッグし、ロープアップされない、というのは、セカンドの責任ではありません。
その他、セカンドの責任と、リードの責任を分けます。終了点をリードクライマーが見落としたとき、それはセカンドの責任ではない。
ちなみに、この不安の対処法は人生や、職場でも、問題解決のスキルとして使えます。
例えば、私は、20歳の時、アメリカに単独渡米していますが、その時は、一言も英語が話せない状態でした(笑)。今でこそ、(笑)と書いていますが、当時は必死です。渡米までたった1か月と時間もなかったので、サンフランシスコに向かう飛行機の中で、次に発話しなくてはいけない事柄を、『起きてから寝るまで』でシミュレーションしていました。
・飛行機を降りたら、次は?インフォーメーションを探す。”Where is the information desk?”
・住所を見せて、ここに行く方法を教わる ”How can I get to this address?”
...etc.
今とは違い、ネット情報もないころですから。それを考えると、今は不安を和らげる手段が多いと思います。
現実に即した不安=自分にとってスキルアップや自信アップのチャンス。
漠然とした不安の場合は、不安に思っていることを
書き出すだけ
でもかなり楽になる人もいます。
■ 正体をつかむ
私はしつこい性格です。
正体がわからないナゾな不安が、不安を大きくしてしまうんですよね。
事例としては、相方のリスク管理ゼロ、怖いという感情がない性格、が、私の不安の原因だということを突き止めるのに、なんと3年!も、かかったけど、それでも追及を辞めませんでした(笑)。
2度同じ失敗をするということは、クライミングでは許されないこと、だからです。
コスタリカ人は、ATC持ってきていないとかで組みませんでした。
5件の重大事故の裏に、300のヒヤリハットがありますが、ヒヤリハットから学ばなくては、時間の問題で、重大事故と言う結末につながります。
■ 相手の問題=自分で解決できない問題=ほっておく
自分ではどうすることもできない不安…つまり、相手の責任範囲…は
放っておく
という経験を積むことが大事です。
■ ポジティブバイアスに注意する
岩場に通って、マルチピッチの経験が、20~30回もあると分かりますが、恐れていたことが実際に起こるかチェックすると
ほとんど現実には起こらない
ことがわかってきます。これは、マイナスのポジティブバイアスです。
起こらない…起こる確率が小さいから、と言って備えないで良いわけではありません。
自分で対応できそうな不安は
行動することを決めて、
順番に実行していくこと
が大切です。
さぁ、あなたは今日、明日の楽しいクライミングのために、どんな準備をしましたか?
日赤救急救命講習に申し込みした?
ロープの傷み具合をチェックした?
ギアのメンテナンスをした?
ルート研究して、何メートルのロープがふさわしいか考えた?
あなたのクライミングに対する情熱が試される時ですね☆
ネット検索でルート情報を調べるだけでもザックリと、ですが、様子が分かり、不要な不安が減ってきます。
さらにわからないことがでてきて、より不安が細分化してくることもあります。
その場合は、さらに不安を書き出すことになります。
そして、さらに
次のことに分けます。
・今、やらなくてはいけないこと
・時が来てからやればいいこと
しっかり、不安をタイプ分けして
・行動して不安が減るものなのか、しなくていいものなのか
・行動のタイミングはいつなのか?
ザックリと見極めができると、
不安をいたずらに拡大させずに済みますし、無駄な投資をしなくて済むようになります。
例えば、
まだ5ピッチのマルチもちゃんと登れないのに、ヨセミテのビッグウォール(20ピッチ)とか行っても…(笑)
しかも、ヨセミテ行きたい人が、ゲレンデで、5.12RPを何回繰り返しても無駄ですよね?
合理的で、適切な努力をしていきましょう。
■ 悪循環
不安の悪循環の流れを善循環に変えると
不安をポジティブな成果
に変えることができます! 私の人生はまさにこれです。自分では、人生万事塞翁が馬だなぁ、私ってわらしべ長者だなぁと思っていました☆
親が塾に行かせてくれない
→ お受験が不安
→ 早くから独学する
→ おかげで国立大学&ただで米国留学
ありとあらゆる悪循環を善循環に変える方法は、
あなたの不安の中に
あります。
Enjoy, your inner power!