■ 強点vs弱点
アルパインクライミング= 山頂へ行くために、弱点を突くもの
フリークライミング= 強い点を楽しみのために味わうもの
ですが、ただ、漫然とクライミング、としていると、よく分からないかもしれないですね。
岩のルートファインディングについては、私自身が、まだ学習途上なのですが、今の時点で分かっていることは、以下のようなことです。
■ 読図の山が基本
一般登山で、読図をしますが、尾根と沢を登路に使うのが、山の交通、道路です。
山の住所の付け方は、何番目の尾根の何番目の沢というものです。
富士山みたいに円錐形の山だと、住所がつけづらく、ルートファインディングって、とても難しくなります。
■ 登りは簡単
まぁ、登りはどう登っても1点に集約されるので、簡単ですよね。だから、どこからどうとりつこうが、高いところを目指していれば、誰でも同じところに到着します。
■ 下りはほんの些細なずれが大きな結果を生む
ところが、下りは、ほんの1度方角がずれただけでも、裾野では、えらい大きな差になります。尾根を下るのですが、尾根にも痩せた尾根と太った尾根があり、痩せ尾根のほうがルートは明確です。
■ 痩せ尾根=岩尾根
痩せ尾根が、さらに傾斜をきつくなったもの=岩稜。”岩”の、”稜”(=尾根)。 標高が高いと、森林限界を超えているため、岩がちに。
これがリッジ登攀が、アルパインの基本とされる理由です。まぁ、とりあえず、尾根を行けばいいのですから、ルーファイは簡単です。特に痩せて細い岩尾根なら。登山で出てくる、
アリの○○とか、天狗の○○とか、トサカ〇〇
とか、そういうところをもっと細くしたみたいな感じです。
現代のフリークライミングを経験した人からすると、簡単、と感じるレベル=立てる、であることが多いかもしれません。
それでも段々傾斜が立って行けば、もちろん、壁になってきますが。
おおざっぱに言って、北鎌尾根とか終わった人が次に行くレベルのルートが、リッジ登攀。
小川山にもありますし、インスボンにもあり、日向神にもあります。
■ レッジToレッジ
ロープが出るタイミングというか、ルートのリズムというか、そういうものを表す言葉です。
日本語にしたら、段から段へ、という程度。
段=立てるところ。 平べったく言えば、段があるところじゃないと終了点作れないじゃーん!です。登っていたら両手ふさがっていますよね。
しかし、このレッジTOレッジが味わえるルートって、今どこなんでしょうね? よく知らない。
■ 尾根から壁へ
尾根から壁への転換は、けっこう大きな転換です。壁になったとたんに、ルートファインディングは非常に見出しづらくなるからです。
手足がかけられるところを探すということになりますが… 登れても降りる時、落ちないといけないなら、ちょっと調べに登っただけで命取りになりますから、そうそう気安くは取りつけないですよね。
■ 沢
沢では、ルーファイが比較的楽なので、沢もルーファイ練習の場。水流もルートを見極める手助けになりますし。
私も初心者のころ、行き詰ってハーケン打って降りたことがあり、ルーファイが課題だという段階でいまだ停止しています(笑)。
■ 人工壁
人工壁は、ホールドを追っかけるものなので、ルーファイ力はつかない。
■ 残置
昨今の人は、登攀力だけが伸びて、ルーファイ力がゼロなので、初心者向けルートには、その補いとするため、残置が置かれています。例:腐ったピトン
しかし、この残置は、山でいう赤布みたいなもの。間違っても支点として現役なのではありません。本来、読図の山でも、読図がちゃんとできていれば、赤布のほうが登山者を追いかけてくるようになります。自分が歩いているところに、ここで良いと正解を示すように、赤布が現れるという意味です。
同じことが、古いリッジルート等のピトン等に言えます。
たまに間違って敗退した人のピトンだったりもします。敗退用だと、懸垂で降りた後なので、セカンドが回収していないので、残置にならざるを得ないためです。
なので、ボルトルートになれた人が、ボルトを目安にルートを登る要領で、残置された敗退用ピトンを追いかけると、行きどまり、に続く道になります。
敗退用のピトンには大体はスリングもかかっています。
■ エイドルートのボルトルート化
ボルトルートの役目は本来は、ルーファイ力を補助的に補う目的もあったのでしょうが… 今では、全然、昔のエイドルートのただの置き換えなので、フリーのムーブ的に整合性があるか?というと、たぶんないです。
背の高い人が、直近で立てる一番立ちやすいフットホールドに立って、手が届く限界のところにエイド用のボルトが打たれ、それが、フリークライミング用のボルトにそのまま置き換えられた場所も少なくないです。
■ グランドアップフリー
一方最初からフリークライミングで試みられた、グランドアップで開かれた課題は、ボルトの位置を含め、芸術作品と言えると思います。壁のルーファイは、尾根のルーファイと違って、かなり難しいので。
グランドアップには、登山靴で開かれたルートと、クライミングシューズで開かれたルートがあります。
当然ですが、登山靴で開かれたルート=アルパイン、クライミングシューズで開かれたルート=フリー です。
全然、難度が違います。インスボンでも、アルパインの5.9とフリーの5.9は違いました。
余談ですが、私は西湖のマルチで、アイゼン履いての岩が、会での初外岩。アイゼン履いて登れたところなら、クライミングシューズなら登れるだろうと、2度目からトップを登っています。
そんな人に向かって、九州で人工壁とボルト整備され、課題も会の会長さんにここを登りなさいと選んでもらって登って、強くなっただけの高校生が、人を小ばかにし、でかい口をたたくので、大変腹立たしい思いをしました。
そもそも、人工壁は、アルパインの価値体系の中では、アイゼンで岩を登るための練習なんだとか分かっていないんじゃないかな? 人工壁でいくらグレードの高いのが登れても、アルパインでは評価されません。米澤さんなんて、ドーンウォールのトニーすら、RPでの登りだから、評価しなかったくらいです。
私を馬鹿にしたこの会の人は、私が登れる高校生を喜んで、ホイホイ、ドレイヤーに立候補するとでも思っていたのでしょうかね。
私はスポーツクライマーはスポーツクライミングのカテゴリーでスゴイだけなので、全く別物と思います。まぁどっちかというと興味ないです。山が好きなんであって、競争が好きなわけではないので。スポーツクライミングは、競争の世界です。リスクもなく、お気楽のんきな世界です。
■ クラック
岩のルーファイで比較的容易なのが、クラック。プロテクションもクラックがあれば、条件にもよりますが、取れるだろうと想像できます。
■ 氷
氷も道としてかなり有効です。アイスが十分固く、体重を保持する信頼に足るかを見極める目が必要です。
■ ブランクセクション
手がかりも、足がかりもなく、どうしても突破できないセクションのことです。
トップクライマーには、ブランクではない、というのがミソ。 下手くそクライマーにとってはブランクでも、登れる人には、ブランクではない。
■ ラッペルダウンのルート
壁では、ラッペルして課題が作られているわけですが…特にハングした壁ではラッペル以外どう作るんでしょうかね? 私も開拓は詳しくありませんが。
ラッペルで作られた課題に関して、芸術だ、著作権だ、というのは、ちょっと合点がいかないのですが、それは、フリークライミングのルートに対する私の知見が限られているからなんでしょうかね?
しかし、グランドアップとラッペルダウンのルートを同一レベルに議論するのがおかしいという点は譲れないかもしれません。
米澤さん曰く、「開拓クライマーは一度もオンサイトしないんだよ」でした。私も故・吉田さんのルートでは、試登していますが、トップロープでした。TRで登って、登攀のリズムをつかみ、どこにボルトを打てば合理的か?を考えるわけです。
クライミングそのもの、を楽しむためにボルトが配慮されるわけで、ムーブを妨げない、ということだとすると、ガバ=ボルト飛ばしのアルパインのボルト位置とは全く違うセオリーになります。
■ ACPCが判断力あるのでは?
というわけで、私の勝手な個人的意見によると、
残置をどうするか?抜くか、残すか?などは、大変幅広い経験値が必要
なわけなので、菊地さんたちのACPCが、
ここは初級ルートだから、この程度の残置を残してあげないとクライマーはルーファイできないだろう…とか
ここは上級者向けなんだから、こんなところにこんな残置は汚物以外の何物でもないだろう…とか、
ここは歴史的ルートだから、このままで…とか、
白亜スラブみたいな、クラックではなくスラブには、ボルトいるよね~みたいなのとか
適切に判断できるのではないでしょうか?
私が聞き及ぶところによると屋久島フリーウェイは40年前のまま、別にうち替えしていないそうです。そんなのに、現代の墜落が前提のクライマーが、俺、5.12RPできるから、みたいなノリで行きたいのが現代。ACPCは、現代の初心者像をよく知っていそうな人が集まっているので、どこをどう改善したら、そのようなルートが比較的事故を起こさないようにできるか、配慮できる人たちのように思います。
■ 初登のグレードにこだわらない開拓者もいる
開拓者の米澤さんは、他のクライマーの課題を登ったことが著しく少ない方でした…つまり、いつでも会で一番登れる人なので、より難度が高い課題がよく分からないのだそうでした…ので、グレーディングも、自分より経験のある人が言えば変える、と明記されていたほど。
大体、10代の課題って、昔のクライマーには、十パひとからげで、ぜんぶ5.9!みたいな感じですし…、その感覚は、現代の厳密にグレードをジムで覚えて登ってくるクライマーの感覚とは大いにかけ離れていそうです。
そんなグレード感性の違いも、事故の原因化していそうです。
米澤さんの5.10代は、ぜんぜん現代の10代じゃないですよ(笑)。
こんなにきれいに並んでいるのは人工壁だけ |
歴史あるルート ボルトで汚してはならない