2019/08/19

大衆化=クライマーの安全意識の低下

今回の長野遠征で良かったことの一つが奥村 晃史さんのKoWallへ行ったことです。

そこで、平山ユージさんのベースキャンプというクライミングジムで起きた、既成トップロープのアンザイレンの器具で起きた墜落事故について聞いてみました。

これはクライマーの間では有名な事故でした。

https://b-camp.jp/pickup/649.html

■エイトノットを知らないで済ませるか?と言う問題

私も体験クライミングなどのイベント的なクライミングをすることはあるのですが、その際はトップロープ限定です。当然。

その場合、エイトノットでアンザイレンするのが教科書通りですが、エイトノットをできない人に簡易的にカラビナを介してアンザイレンしてあげることがあります。

私もアイスクライミングでは、どんどん次々に順番を交代して登りたいため、シープシャンクに安全環付きカラビナ2個で登りますが…

一般的には、バイトのエイトノットに環付きビナ1つ、というのがよくあるケースです。エイトノットではなくて、ラビットノットにしているガイドさんもいます。

ベースキャンプでは、以前行ったときは、バイトのエイトノットに環付きビナだったと思いますが、このべアールのロックアップスクールと言う製品を使うようになったのはなぜだろうか?というのが最初の疑問でした。

ツインゲートって、環付きビナより、リスクが高そうな気がなんとなくします…

https://www.lostarrow.co.jp/info/notice/NT20190809_LA_RockupschoolNotice.html

奥村さんの説明では、ツインゲートは互い違いであっても、解除動作がワンアクションというのが問題に感じるそうでした。

■ 過剰なパターナリズムの国

自己責任と過剰なパターナリズムというのは、相対する概念だと最近、理解しました。

クライミングを世の中に広めたい!という思いが、強すぎて、

「エイトノット結べない?ああ、いいよ、いいよ~」となってしまうということです。

これは、まずい…。

というのは、スタートがこれだと一時が万事になる可能性があるからです。

エイトノットできない → いいよ、いいよ~!でバイトのエイトノットでアンザイレン

ビレイ習得していない → いいよ、いいよ~!で、トップロープオンリー、もしくは、グリグリ使用

ということが、どんどん積みあがって、最終的には、クライマーのレベル低下になる、ということです。

相手の良かれ、と思ってやったことが、全然良かれではない!という結果に…(><)。

それが、マズいビレイでも受け入れる習慣ということに結果としてなります。誰でも落とされて死ぬ羽目になるのは嫌なので、登れるところしか登らないクライマーとなることになりますが、そうなると、今度は成長が止まります。登れるところしか登らないと全然成長しません(笑)。

というので、これは文化的な問題でもあるのではないか?と思い始めました。

まぁ、べアールの製品は外国製品ですけど…よろしくない習慣まで外国から輸入することもなかろうと思います。

■ 例えば運転

私は、運転を習うのに、大阪で一番厳しいと評判の都島の教習所に行きました。ので、運転はとても安全重視タイプですし、都島みたいな交通量の多いところで教習したので、怖さと言うかそういうのが違います。

一方夫は、免許が取りやすいところで受けたそうで、その上、10年以上、一度も運転しなかったためにゴールド免許。

最初にぬるま湯で、免許が取れてしまうのと、どっちが良いのでしょう???

私は、アルパインクライミングに進んだ時、これはリスクがあることをするのだから、としっかりと勉強しました…

やっぱり、しっかりとリスクに向き合うほうが、「いいよ!いいよ!」と甘えるよりも、本人にとっても良いのではないでしょうか?

そこは、甘くしては、本人のためにならないのかも?

■ エイトノット、クローブヒッチ、ムンターくらいは最低限必修

クライマーでリードクライミングに進む場合は、岩場に出る前に、エイトノット、クローブヒッチ、ムンター、くらいは覚えてから出ましょう。

危険なことをするのですから、それなりに自分で自己防衛しなくては、誰も代わりに命を守ってやることはできません。

何も知りませんでは、雪の山に、冬の靴なしで行くようなものです。

■ 結び変え(通し八の字)

この件で思い当たるのは、結び変え、です。別名通し八の字とも言います。通し八の字を知らないクライマーが外岩に行くというのも、本来控えられるべきかと思います。

■ 懸垂下降

さらに思い当たるのは、懸垂下降です。懸垂下降ができない人がクライミングに来るのも、支点に問題がある場合に懸垂で降りることができないため、クライミングの基本的な安全管理教育の欠如と見なすべきのような気がします。

他には、当然ですが、ビレイ、です。

リードクライミングは、人工壁でリード慣れしてからが良いと思います。岩場のリードは、岩場しかなかった昔と比べ、今は人工壁でカラフルなプラスチックホールドを追いかける習慣ができてしまい、ルートファインディング力が必要になっていますので、ある程度のゆとりがないと、恐怖だけが先立つ経験になってしまうかもしれません。

■ チェックされて嫌なビレイヤーはいない

奥村さんのジムでは、リード壁だけのジムでしたので、ビレイヤーのチェックがありました。

ベテラン指導者の場合、マズイビレイをしていても、若年者がそれを指摘することはしづらいという問題があり、ビレイの相互チェックの網の目をかいくぐっている可能性があります。

とくにアルパイン出身のクライマーの場合、年配の人は、スポーツクライミングを経験していないことが多く、ご本人も気が付かないで、だらりんビレイになっていることがあります。それはその方の年齢だと今さらスポーツクライミングでもないし、フリーと言っても、昔の人のフリークライミングだと、そうシビアなところは登っていなかったので、ビレイで落ちるクライマーをキャッチするという行為が想定できないのかもしれません。

そのような場合でも、第三者から、ビレイの不備を指摘されて、嫌な顔をするビレイヤーはいないと思います。

どんなクライマーも、ビレイヤーが肝心だということは、肝に銘じられているものだからです。

とはいえ、失礼に当たると良くないですから、ここは、クライミングインストラクターなどの、定評がある人に第三者的な目で、ビレイチャックをやってもらうのが良いのではないか?と思います。

初心者によくあるミスは、上の手を重視して、下の手があまりよくないことです。クライマーが登っていて、ロープ操作が待機中みたいな時は、手は、ATCの屈曲部を保持していると楽ですし、すぐにロープを出す対応もできます。