2019/08/21

日本のガイド資格の問題点

■身売り感

しばらく前に米澤さんと登っていた時に、登山やクライミングにおいて、ガイドになることについて、「私にとってはガイドすることは身売りなんですよね」「私もです」という会話を交わしました…。

私は何度も登山ガイドになることを勧められています。山梨になったときも山小屋の主から勧められ、「?」。私みたいな素人になんでだろう?と、超まともなツッコミを持っていました。

それは、中高年登山が現代の登山の主体だからだということが分かったのですが、そののち、九州に転勤になった時点で、登山ガイドの取得を勧められました。

現在、積雪期ガイドステージⅡの筆記と実技では、積雪期ガイド実技まで合格しており、あと1実技で取得ですが、身売り感拭えず、取得は取りやめにしました。これは、日山協で出している夏山リーダーという資格についても、同じ感触を感じています。

取得して何のメリットがあるのか?メリットが分かりません。

それより、九州に来て一発目に知った田上ガイドの訴訟の件が怖いです。

■ 好きなことを仕事に、が難しい

好きなことを仕事にするというのは、人生のゴールデンルールです。

が、身売り感というのは、自己犠牲感のことでしょう。

自己犠牲だったら、それは喜びがお金になる、という好きなことをお金にする、仕事にする、ということに反しているでしょう。

登山ガイドにしても、クライミングガイドにしても、いつも不思議なことは、サブガイドが必須ではないことです。

登山でも、クライミングでも、きちんとした山をしようとすれば、サブガイドが必要です。

とくにクライミングガイドでは、サブガイドがいなくては、ガイドさんはお客さんのあやふやなビレイでリードしてトップロープを張る羽目になるでしょう。

■ 厳しすぎる要件はサブガイドがいないため?

もちろん、日本のクライミングガイドの要件は厳しく、5.12がオンサイト5本です。登攀力と守りの力であるロープワークなどは違うので、登攀力のみ高度な能力をもとめるガイド資格には疑問をもっていましたが、それは、サブガイドがいないため、命を守るには、それくらいの安全マージンが必要だということのようです。

5.12オンサイト5本の人が5.9や5.10Aで落ちることは考えにくいです。そのため、そこまでの安全マージン(5.12で5.10Aをフリーソロ状態)なら、十分安全だろうとも言えるということで、このような厳しい要件になっている、とみるのが、合理的推測でしょう。

一方、人の能力は衰えます。

私が5.10Aで落ちて頭を縫ったのは兜岩という岩場ですが、同じ日に南裏さんという超有名ガイドが、講習生のためにロープを上げるために5.10bをアップで登攀中、テンションしていました…。

思うに岩のコンディションが悪かったのでしょう。そんな超ベテランが落ちるほどなら。

そんな日に5.10Aでギリギリの私が、まったく初めて組む人と登るなら、アップを5.10Aにしないで5.8にしておくべきでしたが、当時は経験値が低くて思いつかず。

南裏さんの登攀を見て、猿も木から落ちる程度の認識でした。そのため、私は5.10Aで落ちて、頭を7針縫うことになりました(><)。1ピン目を掛けていたので、本来ビレイヤーの責任ですが、ビレイヤーを選ぶということから、クライマーの自己責任であるため、自分のせいです。

話をもとに戻しますと、自己犠牲というのは、良くないということです。

私にとっては登山ガイドになることは、ほぼほぼ自分にとって、やってもつまらないことをやる、ということで自己犠牲です。

一般に山岳会のリーダーたちにとっても、ギブアンドテイクの伝統から、ほとんどの場合、新人教育をすることは自己犠牲です。

余談ですが、自己犠牲だけならまだしも、ある種、特攻隊員と同じような、俺がやらねば誰がやる的な、ヒロイズムを伴っている場合、それは、かなり時代遅れの感性である可能性があります。今のフリークライミングの水準では、命はかける必要がないです。

■ フリーとアルパイン

フリークライミングに進んで思うことは、フリーの人はアルパインの価値観を理解するのに難しそう(レスキューの軽視)で、アルパインの人はフリーの人を理解するのに難しそう(なんでそうストイックなの?)です。

フリークライミングの力は、アルパインの基礎ですが、それは、サブリーダーレベルで5.11、リーダーレベルで5.12までフリーでRPでもいいので、登る実力があるということです。

そのレベルに達することなく、フリークライミングのゲレンデで、たかだか5.9や5.10bで精いっぱいの人が、アルパインの本チャンルートに行くと、本チャンではアプローチも長く、天候や生活などほかに神経を張り巡らさなくてはならないことも多く、ゆとりが足りない、ということに陥る可能性が濃厚です。

現代の若い人には、フリーとアルパインの価値観の両方の、良いとこどりが必要です。

それは、フリークライミングを日常として、節制と肉体の鍛錬に励み、本番へ行くという厳しい道で、山で酒盛り、という世界とは別世界ということです。