■ 問題を抱えた集団がとる行動について解説(リーダーとグループ)#心理
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これが、日本のクライミング界に起きていることなんじゃないかね?
■ 誰が日本のリーダーか?
最近、ナショナルジオグラフィーがジミー・チンからの招待でインタビューに答えていましたが…
結局のところ、現代日本クライミングで、海外から認知されるきちんとしたクライマーって
ユージさんとユースケさんで決まり
なんじゃないですかね…? 山野井さんは別格で。
お二人が、ロッククライミングの指導者向けマニュアル…どういう風に指導するのが良いか…という指南書を書いてくれたら、全国の指導者が助かりそうです。
■ 山岳総合センターの教え方
山岳総合センターの教え方は、伝統路線です。
1)まず、講習会に参加するのに、雪をやっていない人は入れません。
つまり、自分で雪の山をある程度(八ヶ岳なら、ピッケルがいらない山のうち、最高のもの…天狗、等)をすでに登っていないと、参加すらできません。山歴を最初に提出します。
雪の山のテント泊、計画の立て方、衣類など、大体のことは、すでに一人で出てきている人が対象です。
ここが、一般の山岳会とは、全く話が違います。山岳会は誰でも入れすぎるので、依存的な人が来てしまいます。
2)雪訓がスタート
開校式の日にギアの説明があり、生徒はそれを全部揃えるように指示があります。持ってこないと講習にならない。ATCや細引き、ヘルメット、ピッケルなどです。人によっては冬山用の大型ザックも必要です。ロープは共同装備ということで貸出です。
九州の人は、山が小さいので、大型ザック&パッキングの技が身につかないですよねぇ…。 私はこの時点で、5,6泊の無雪期テント泊縦走は、単独でやっていました。
さて 講習は、懸垂下降から です。私は全くクライミングを通過せず、いきなりリーダー講習だったので、初めての懸垂下降は雪上でした。雪上の後、人工壁から17m降りるというのをやりましたが、こっちのほうが怖かったです。
二度目はGWの雪訓で、これは、ビバーク訓練を兼ねています。生徒は、遭難時のビバークを講習会の中で経験します。ビバーク適地の指導もあります。例えば、雪の上より、枯葉の中のほうがあったかいとか。講師とテント泊しますので、そこでいろいろと理解が深まります。
つまり、雪を経由していないアウトドアクライマーというのは、山岳総合センターの教育システムの中ではありえない 、ということになります。
となると九州では誰も入れないですね…
3)沢での危急時講習
その後は、自覚も深まったことだし、各自、研鑽してねーということで野に放たれます(笑)。この時点で、班分けで上のほうの人は、北岳バットレス四尾根にソロイストを用いてソロで行っていましたが、私は大町の人工壁で、3mしか登れなかったのがトップアウトできるようになり、拍手喝さいを受けていました(笑)。つまり、それくらいばらつきがあるということです。このころはエッジというクライミングジムに通っていました。甲府から3時間かけて大町まで通っていました。
夏に危急時と称して、沢での講習があります。これは完全にレスキュー講習です。斜張りなどまでやります。ツエルト泊になるので、習った技はすぐ使えます。初めてのハーケンもここで打ちます。
これは安全上の理由ともはやハーケンを打つ、打ってもよいルートが日本アルプスに存在しないというか、沢くらいしか打てるところ、ないためです。当然ですが、ハーケンを打ったら回収です。このころは、私は打てるリスと打った時の音を効いたか効いていないか、見分けるということにひと夏ささげた感じです。
これをやっていたおかげで、自分のリードで初めての沢に行ったとき、登れると思った滝が登れず敗退したんですが、ちゃんとハーケンが打てたので降りれました。簡単そうだと思ったけど、近づいたらコケでぬめぬめだったんです。技術が身を助けた事例です。
ハーケンを打たせるか、カムでプロテクションを取らせるか?講師間で議論があったのではないかと思います。
余談ですが、沢では、ATCではなく8環です。双方向にすぐ流せるからで、一方向しか流れないATCで滝の中で確保されてしまうと、水流に釘づけにされることになり、溺死リスクが高まります。ゴルジュなどは流されたほうがむしろ安全です。(ライフジャケット着ておく)
4)合宿
冬になると合宿が企画されます。これは、班のレベルによって、内容はまちまち です。担当講師が、その班のレベルにあった内容を提案する感じです。
以前、山岳会の先輩が、「登れるところを登ります」と恥ずかしそうに言っていましたが、それは、講習会でも同じです。ケガや命がかかるようなチャレンジは、すでに登れるところは登りつくした人がやるものです。
たぶん、この辺の考え方も、山の世界では伝え損ねられており、登れるところを登りつくして、さらに実力をアップさせるためにやるのではなく、実力があるように見せかけるために一発逆転のお買い得ルートを登る 、というあさましいやり方が、今のクライマーのやり方になっているので…。
これは競技人口が少ない今が参入チャンスという考え方にも表れています。例えばスピードとか。
アルパインやマルチでは、下手したら敗退したルートですら、行った、登れた、ということになっているようです。
そうなると、同じAというルート名を聞いても、意味する実力がだいぶ違うということになっています。なので詳しくどのように登ったかを聞き取りしないと真の力は分かりません。
こうしたことがなぜ起きるのか?というと…
ルートをどうやって選んでいるか?というリーダーの姿を見たことがない クライマーは、自らにも正しく実力に合ったルートを選ぶ能力がないかもしれません。勢い、ジムでいつも会うあいつがAを登れるのなら、俺だって!となります。
というので、私が川俣尾根に行ったら、別の会で川俣尾根に行って「さすが〇〇さん」と言われていた方がいた…ということがありました。その方に川俣尾根を教えたのは私でした。
川俣尾根ほどマイナーなルートでなくても、誰かがヤマレコに明神主稜を上げたら、みんなが明神主稜に行く、など、そういうことが起こっています。それで準備不測の人がルートへ出てしまいます。
あれは、日本登山体系を読んだり、山の地域研究 と言われるもの…一つの山のすべての谷と尾根を歩きつくす…が不足しているために起こる現象のようです。
また、合宿をすることで、山ヤの実力と言うのは、大体明らかになります。ごっついシュラフを持ってきている人=実力低め。過保護タイプ。です。大体いらないもの、みんないっぱい持ってきます。
ちなみにフリークライミングは、車でギアを運ぶので、いらないものを持って行っても余裕です(笑)。椅子とかテーブルまで出してくるクライマーは、結構、普通にいます。
5)目標ルート
一応山岳総合センターでは、目標到達度、と言うのを定めています。
縦走コースでは、積雪期八ヶ岳の全山縦走です。登攀コースでは赤岳主稜のリード。
現実問題として、誰も八ヶ岳の全山縦走に申し込む人はいませんでした(笑)。私とあと一人くらいしかいなかったので、教える都合で、登攀コースになりましたが、登攀の仕方を教わることは、あんまりなく、センターでも見て盗む系です。
担当の村上講師が、私を連れてリードしてくれたので、私はその時リードを覚えました。
その後、冬に突入して、私は保科さんのところで会ったクライマーと小滝とか登って遊んでいました。ので、けっこう危ない目にも合っています。が、周囲のクライマーたちが用心してみていてくれた 気がします。アルパイン出身のクライマーは大体が、体重が重く、登攀は得意でない人が多いですし、私が小柄で軽いので、ビレイで私のほうが危険になります。
■ 後日談 会も教え方が分からない
と言うような状況だったので、山岳会の門をたたいた時には、すでに私はいろいろ知っている側でした。
なので、先輩たちは、どちらかというと、私と相方がルートに出るためのサポートをしてくれるという感じでした。例えば、前穂北尾根です。
先輩たちは、どうやって新人さんに、
山には地図をもっていかないといけないんだよー
ということを教えるか?悩んでいるようでした。そもそも、地図が読むつもりがない人ばっかりが会に来るので、会の指導者層のほうは、丸抱えでしんどい 、みたいなことになっています。
これは、日本の山岳業界が、
読図知識を教える代わりに、道標を整備したため 、
ではないかと思います。安きに流れた、ということですね。
最初のところで躓いているので、ステップアップしても、永遠に課題になる感じですね。
■ フリークライミングの教え方
縦走→読図→雪→沢→アイス→岩→フリーというのが、たぶん、昔の習得の流れなのですが…
これをやる人って今時いるの?くらいの希少人種です。
現代のクライマーは、
インドアクライミングジム → ボルダリング→ リード → 外岩 → マルチ → ヨセミテ(ビッグウォール=エイド)
という謎のステップアップになっています。技術的根拠があんまりないんですよね、昔のステップアップ法と違って。
というのは、縦走をしていれば、読図はするので、雪の準備になり、体力もつきます。前のステップが、あとのステップの準備になっているというのが昔の山の学び方なんですが…
今の在り方はどこでも、ぜんぜん準備にならないんですよね。
つまり、歩きの要素は最初からゼロです。登攀のグレーディングだけ、つまり、突破力だけが突出して優れている、ということです。
現に、2段が登れても、30分も歩けないクライマーとか存在します。
アウトドアの要素が、ハイキングレベルの山の段階からすでに欠如しているので、外岩に進んだ時点でのカルチャーショックと言うか、常識の差が、ものすごく大きい、ということになります。
昔流のやり方で教わっている人は、落は落とさないように歩く、とか、落石物が通りやすい真ん中を通らないとか、すでに習得している段階で岩デビューです。
私も、クライミングシューズはもっていないのに、アイゼントレの岩登りはしたことがあり、岩場を初めてリードしたときは、アイゼンで登れたんだからクライミングシューズなら当然楽勝のはず、と唱えつつ登りました。
というので、
アウトドアへ出るための準備が不足しているにもかかわらず、登攀力自体はある 、
ということになると思われます。ひろゆきに、クライマーは山には登らない人たちなんですよ、と言われるわけですね。
そのような現代クライマーに向けて、どうクライミング、特に外のルートに起こりうるリスクを教えていいのか?どのような導入が、現代の人に受け取りやすいのか?というのは、
全世界レベルでまだ解明されていない
ことのような気がします。というのは、アメリカの事故報告書でも、5.13が登れるというクライマーがヨセミテのトラッドルートで落ちて死んでる、なんて載っているからです。
■ ボルトルートの後は、スラブではなく、トラッドを教える
たぶん、現代の一般的なフリークライミングの入門コースは、スラブと決まっていると思いますが…
問題は日本のスラブは大ランナウトで、落ちれないということです。40mノーピンとか、初心者に登らさせられますか?できませんよね?
しかも、ジム上がりのクライマーだと、どうしても、色のついたホールドを追いかける癖がついています。
つまり、ルートファインディング力ゼロ です。
ルーファイは、経験がいります。岩登りで最もルーファイが楽なのが、クラックで、基本的にはクラックをたどればよろしいです。
それより先にボルトを追いかけるクライミングを覚えてしまうと…山でリードできないです。よくあるフリーしかやっていないクライマーの問題点は、支点がないところ、取れないところに、直上して行ってしまうってものです。なまじ登れるから、ルートファインディングしないで、まっすぐ登っちゃうのです。
これは、クライミングの喜びにも通じる重要な観点で、クライミングの面白さの半分くらいは、登れそうと思ったところが本当かどうか?みたいな点になります。
トラッドから登れば、まぁ今社会問題になっている、古いボルトは課題にならないので、とりあえず問題を先送りすることもできます。
とはいえ、トラッドは、岩場があるかないか、が問題で、各地にクラックがあるとは限らないという問題がありますが…。
たぶん、ジム上がりクライマーをどう外岩で安全に登れるクライマーに仕立てるか?というのはノウハウがまだたまっていない分野なのではないしょうか?
私が蓄積したノウハウは…以下です。
・敗退を学ばないで岩場に来る
・懸垂下降を知らない
・自己確保での登りを知らない
・エイドを知らない
・ロープの種類や使い方区別がついていない 例:濡らしてはいけない
・長ぬん使用法を教わっていない
・ビレイがおろそか
・ルートファインディングがおろそか
・ロープドラッグですぐ登れなくなる人が多い
・落があるところにピクニックシートを広げてしまう
・ボルトを無批判に受け入れる
・ボルトの間隔を無批判に受け入れる 人工壁と同じ感覚で取りつく
・グレードと課題の困難度が一致すると思っている
・ヘルメットの軽視
・ビレイが分かっていない 人工壁の落とすビレイと同じだと思っている
・体重差を理解していない
・体力差を理解していない 新人=18歳男性 の前提が消えていない
・すぐにデッドで取る
・車がない
・運転免許がない
・コーチにビレイしてもらって当然だと思っている
・自分はビレイがきちんとできない
・登る以外の登攀の価値を理解できない 登れさえしたら何もできなくてよいと教わる
・自分自身のミスに気が付くことができない
・エイドクライミングとフリークライミングの違いが学習されていないのでチョークに頼る
・スタイルの教育がないので、分からなかったらすぐ動画を見る
・すぐ落ちて腕力をセーブしようとする
・マルチピッチのトポを見て、ロープの計画立てることができない
・トポを見て、必要なギアを計算することができない
・スムーズにいかなかった場合を想定して、計画を立てることができない 例:ロープアップされない