2023/08/29

【心理学】 クライミングにおけるダブルバインド

■ ダブルバインド

危険なカットアンカー&長距離ランナウトで登らなかったら

 → チキン呼ばわり

登って落ちて死んだら

 → 自己責任

と言う風に巧妙に支配の構造が見えます…。 前に「蛮勇」とか、「もうちょっとボルトを信頼して」とか言われましたが、そのボルト、海岸にあるカットアンカー… それを信頼する奴がいたら、バカである、って奴でした…。

ので、基本、「大丈夫?」と言ってあげたほうがいいのは、危険なボルトと知っていて、そこにバンバン落ちて、ロシアンルーレット状態を楽しんでいる人のほうです。

アドレナリンジャンキーになってしまっており、”中毒状態”ですね…。

https://www.youtube.com/watch?v=_5kWMeJUzCk

■ 私はチキンです!

私の知っている限り、きちんとしたクライマーは、自分が、臆病者呼ばわりされることを受け入れています。

怖いというのは、当然の感情です。ので、怖い場合は、それを受け入れることがクライマーとして大事です。

大体、俺は怖くないぞーとやらないといけない、というのは、思い込みです。

40mノーピンがいかに簡単でも、危険なものは危険だと分かる感性のほうが大事です。

■ ACの心理学と重なることが多い クライミング界

アダルトチルドレン系の心理学は、もともとはアルコール中毒患者の研究からスタートした、共依存関係の心理学です。

なんで、共依存の心理学が、クライミング界で有効なのだろうか?というと…

奥深いものがありますね…。

日本人は特に、クライミングするということに自尊感情の根拠を求めてしまい、怖いもの知らずの俺=かっこいい俺=自己肯定しやすいということになってしまっているような気がします。

怖いもの知らずの本場、ヨセミテでは、そっち系の人が究極のお手本(=死)を何例も示しているので、その行為の異常さがあまりにも明白なので、それに続く若い人が出ない。

一方、日本では、中途半端です。自分の小さい山で(周囲の人の間で)、10mランナウトより、20mランナウトがすごい、20mより40mがすごい、みたいなミニミニ競争になっています…。

しかし、エルキャップフリーソロの時代に40mランナウトを自慢しても、かなりちんけですよねぇ?

国内を見ても、甲斐駒スーパー赤蜘蛛フリーソロの時代なんですよ? 

5.8とかの40mランナウトで自慢になるんでしょうか?なりませんよね?

まぁ、自慢じゃないんだったら、ただ、怠惰なだけってことになりますが…。

私も小川山では、大ランナウトが核心の”春の戻り雪 3P”で、マルチの練習していましたけど、大ランナウトということを聞いて落ちれないルートだということが分からない初心者時代は、すでに抜けていました。

いまだに古いメンタリティで、小山に登って俺が一番だ!とやる自慢大会に陥っているとしか思えない九州のクライミングルート… 小学生レベルです…(汗)。

そんなのに、うっかり付き合わされないよう、若い人は気を付けましょう☆

こちらでは、古い山岳会に所属していた人は、すべからく、古い感性を身に着けているようで、山岳遭難の温床となる考え方に気が付けていません。

正しい感覚と言うのは、このようなものです。

■ 事例

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先日、シシ渕で滑落事故がありました。
事故当日の天気は登山口まで道路通行規制がかかるほどの土砂降りの雨。夜には多少弱まったものの、未明遅くまで降り続いていました。
滑落者はシシ渕で降雨のためできた水たまりを避けようとし、登山道に設置してる鎖から手を放し、崖側によった際、濡れた岩で足を滑らせ、約8m滑落して全身を強く打って亡くなられました。
登山道のほとんどが岩場の大杉谷は、私たち職員でも雨なら入山を躊躇・中止します。今回、遭難したパーティー(全員の登山経験が浅い)は、周りの忠告を聞き入れず、悪天候・悪路の中へ入山(ー> 周りの忠告を聞き入れず、カットアンカーや大ランナウトのルートへ、敗退準備なしで入山)してしまいました。
今回の事故は、リスク管理ができていなかった事が最大の原因だと考えています。
「大杉谷登山道は中級者以上向けの登山道です。」いただくお問い合わせに対して、いつもこう御案内しています。
・状況・危険を把握・想像する事ができる
・万が一の場合の対処を考えている
・撤退する事も登山計画として考えている
考え方は人それぞれだと思いますが、弊社では上記の様なリスク管理ができている者を中級者と考えます。
何時間もかけてせっかく来たのに、楽しみにしていた登山を中止したくない。気持ちはわかります。ですが、あきらめる事も重要な登山技術の一つと考えます。
(ー>ギリギリボーイズの方は常に敗退想定しています)
しっかりとリスク管理を行い、無謀な登山は絶対にやめてください。
説教臭くなってしまいました。最後になりますが、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
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九州には、リスク管理が必要なレベル感の困難な山が一個もないので、想像ができないのだと善意に解釈していますが、そう思えば、謙虚になれるはずです。

とはいえ、知っていても、きちんとリスク管理できていない自分を客観視することができない人も知ってはいますが…。そういう人とは、登らない、が唯一の選択肢です。