2025/10/09

たった3万円で命を売る気にはなれないな──登山ガイドが語る“現場の真実

最近、登山ガイドの仕事が来たんです。

私は、登山ガイド積雪期ステージ2という、日本で一般登山者が取れる資格としては最も難しい資格を持っています(危急時講習のぞく)。この資格は、一般登山でスタートした人が取れる資格としては最も難しいですが、山ヤとしてみると、アルパインクライミングの入門者程度でも取れてしまいます。雪山経験数が合否の分かれ目だからです。

日本では、積雪期登山自体が、オーバーレーティングされており、全登山者の99%が夏しか登らないで1割が冬も登ります。その1割のうちさらに10%くらいが冬季の登攀も行うのです。そのうちさらに10%がアイスクライミングも行います。というので、アイスクライマーの世界は非常に狭く大体が知り合い。

つまり、日本の登山人口を500万人とすると、冬山やる人は、5万人。のうち、1割の5千人が冬期登攀。のうち500人がアイスクライマー。いや実感は50人ってところですね。まぁ、100人はいるかもしれん?ってな具合なので、活動の特殊さがあり、優劣ってあんまり関係ないんですね。いや、コンペなどでは優劣競いますが。

で、ガイド話に話を戻しますと、登山のガイドには、たいてい添乗員が付きます。その添乗員が…一応添乗員なので、登山のド素人。そして、私に自己PRしてくれたのですが…「○○さんのクライミングスクール行っています(はあと)」とか、「初心者なので…」「経験者についていきたい」。なるほどなるほど。ガイドの仕事で知り合ったガイドさんに、クライミングでも引き上げてもらいですってPRですね。

そうかい、なら…ということで、「今度ガイドするところのリスクは?」と聞いたら「ありません!歩くだけです」との答えでした。

というので私が書いた記事がこれなんですが。

https://note.com/kinny2021/n/n2d0b505ba138

ただののっぱらだったとしても、リスクはあるんですよ。平和ボケ日本のさらに平和ボケの福岡だとわからないだけで。もう、携帯見ながら自転車乗ってますから、こっちの人。前をもそもそも見ていない人多数。

初心者だったらリスクが分からないのは普通なので、分かっていないなーと思いましたが、この人、ロープ組みたいアッピールが強かったのです。この仕事を受けたら、”パートナーいなくてかわいそうな私”&”○○さんで学んでいるんです”という誠実アピールで、私としては、後輩扱いしてクライミングを教えないといけないことになりますよね??

たぶん、ガイドの会社が配慮して、私にパートナーを作ってあげようという配慮があったのかもしれませんが、ビレイもまともにできない初心者なんかに来てもらっても私の命どんだけ安売りっチュー話になるだけなんで。これ、岩根の時もあったよなぁ。おかみさんが不思議そうに、なんでこの子若い男子を連れて歩かんのやろ、みたいな顔していましたが。2か月前にクライミングを始めたド素人なんか、誰だっていやだよなぁ。

そんな人を連れていると、危険なので、別のベテランが心配して、教えに来てくれますよ。

大学生のO君は、かなりしっかりした岳人でしたが、私と彼のコンビだと私のほうが危険かもしれず、いつしかベテラン交えて3人で登ることになり、私は肩の荷降りてほっとしていました。O君は、越権行為みたいなことはない子でしたが、それでも、教えた通り、のビレイではなく、周囲の人と同じようにやってしまい…結果、だらりんビレイでした。

まぁ、いろいろ考えても、自分が分かっていないことを分かろうともせず、メインガイドよりエラソーなサブガイドなんかいらんよなぁ。

ということで、これは、神が下した何の試練か?と思いました。

ガイドの仕事が来るっていうニンジン付きでも、やっぱり自分の命のほうが大事だし、たった3万円のガイド業の臨時収入くらいで、命が売りに出るのはヤダ。

しかも、こんな無能なサブガイドが付いたとして、”リスクないですから!”のセリフにごり押しされて、リスキーな行為に手を染めなくてはいけなくなったとしても、法的に責任が来るのはガイド。

お金もらってもいらない。こんなド素人パートナー。

だから、現状ではガイドって、決定的にババ引きのババみたいです。

というわけで、ここ数日、試練に勝った!と思っています。

試練に勝ったのは、4度目です(笑)。