■ クライミング初心者のリードの仕方
を解説します。
1)まずルートを選ぶところが肝心です
2)その岩場で最も優しい課題が、初心者向きの登りやすい課題とは限らず、また初心者は課題を見る目も、そもそもついていないので、経験者にお勧めを聞きます。
十分経験がある本物の経験者であれば、落ちても大事に至らない5.9で、頻繁に登られ、ルートがトリッキーでないものを薦めてくるはずです。
3)そのようなアドバイザーがいない場合、ルートはこのように選びます。
・ボルトがケミカル、もしくはグージョンである
・まっすぐである
・1ピン目~3ピンまでに核心がない
・ランナウトした箇所がない
・終了点が普通に使えるもの
・ビレイヤーの立ち位置がややこしくないもの
・下地がよいもの(石ではなく、土、また傾斜していない)
4)ロープ長さが十分足りる課題を選びます。50mシングルなら22,3mまで。25mだとすっぽ抜けのリスクが高いです。すっぽ抜け防止のノットを結び、自分のハーネスにエイトノットをしたら、パートナーチェックをします。
5)まず、よくオブザベします。ヌンチャクを数えて、中間支点+2個を持ちます。2個は終了点用です。そのほかの緊急グッズは、この際、置いて行きます。ラッペルする必要がある場合のATCは除く。プルージックコードなどはイラナイです。アルパイン出身の人は余計なギアが多いです。捨てビナ、スパナは必要です。
6)リード中の思考は、1例として、このようになります。
1ピン目が遠くて安全に掛けられないようであれば、プリクリップします。そのロープに決してテンションしないように、1本目の中間支点まで登ります。テンションして登れば、フリーではなくなり、エイドクライミングになってしまいます。
2本目のクリップまで登りますが、そこまで行くのに落ちるような箇所がある場合は、登攀を断念します。
”ランニング1本で、激おちできるか?どうか”は、下のビレイヤーが上手か?ボルトがカットアンカーなどの脆弱なものではなく、グージョンもしくはケミカルアンカーで確実なものである場合に限ります。
下のビレイヤーを見て、立ち位置が壁から遠い(50cm以上離れている)場合にランニング1つだけでリスクを取ることはできません。
さて、登攀に問題がなく、ボルトも確実で、ビレイヤーも良かった、という3つの条件が成立した場合、2ピン目をかけます。クリップの体制は、まだ2ピン目なので最大の注意を払ってください。ここで、たぐり落ちすると、グランドフォールの危険があるのは、別にランナウトしていなくても、です。
ビレイヤーも、3ピン目を取るまではものすごく細かくロープ操作してください。壁にはぴったりと張り付いてください。なんせ登っているクライマーが初心者なのですから。
余談ですが、ベテランと登りなれているビレイヤーは、壁から遠かったり、警戒心が十分でない場合が多いので、しょっちゅう落ちているような下手くそと登っている、十分経験を積んだ、ビレイヤーを採用しましょう。ビレイヤーの選択は重要です。
クリップでは逆クリップに気を付けます。またロープをまたいではいけないのは、人工壁と同じです。
さて、3ピン目までは、2ピン目と同じ警戒が必要です。3ピン目を取るまでは決して落ちてはいけないです。落ちるくらいなら、登らない。もしくは、クライムダウンします。テンションはOKです。というかロープにぶら下がらないと、地面に戻れないです。
ボルトですが、グージョンは緩んでいる場合があるので、17㎜スパナを常に携帯しておきます。ひもをつけてハーネスにぶら下げる。(ボルトがカットアンカーの場合は別途)
敗退とする場合は、捨てビナを使います。古いクライマーには、回収可能な懸垂下降のセットを使う人もいますが、ひっかかるという失敗があると、ビナどころか、ロープも回収不能になって再度登る羽目になります。
さて、3ピン目かけれたら、いよいよ自由がやってきました!
ここからは何が起ころうが、チャレンジ可能です。思う存分、好きにクライミングを楽しみましょう。とはいえ、うっかり立木にヒットなどしないように。
ビレイヤーは、張りつめていた緊張を緩めます。とはいえ、緩めすぎで、ダラリンビレイにならないように。あんまりタイトなビレイをすると登りにくいです。とはいえ、相手は初心者。出し過ぎないほうが賢明です。
ベテランはタイトだと文句言ってきます。コンペの選手も、制限時間があるクライミングなのでタイトなビレイは文句を言ってきます。逆に初心者にとっては、ロープの張でビレイヤーがクライマーを注視してくれていることが分かるのは、安心の根拠です。
やっと5ピン目に来ました!無事核心も終わり、終了点です。
しかし、終了点で頭が真っ白になるのが初心者。ロープを直がけなどしてはなりません。通常、次に登る人がいる場合は、ヌンチャクふたつ使って終了点を作ります。が、下のビレイヤーがこの課題を登りたいか?どうかが問題です。
「どうする~?登る?」と聞きます。うん、登ると言われた場合;
まずは終了点にセルフビレイを取ります。クイックドロー(ヌンチャク)を取り出し、終了点にトップロープ支点を作ります。この時、落とす人が多いです。落ちるとビレイヤーに激突する凶器です。
セルフを外す前に、テンショーン、と声をかけます。確実にロープが体を掴んでいたら、折り返されているロープの方、壁に近いほうを握って、セルフを外します。両手をはなさないように。
ビレイヤーに回収したほうがいいのか、ヌンがけリードなのか、聞きます。(回収して!→より難しい、ヌンがけ→背の低い人用)
ビレイヤーにローワーダウンの命令をし、確実にローワーダウンが始まったら、ロープから手を放しても大丈夫です。下のビレイヤーが確実であるかどうか?は、クライマーとの共同作業です。
ビレイヤーは確実にクライマーの命令に従います。ビレイヤーは、この場合、クライミングギアです。
ローワーダウンの主たるリスクは、すっぽ抜けです。これは、登る前に、課題の距離×2のロープ長があることが普通は確認済みなのですが、それでもすっぽ抜けそうだと思ったら、末端を結びます。登る前に末端を結ぶ習慣がアルパインクライマーはあります。フリークライミングでは、短いルートが多かったり、最初から60mロープを使うことでリスク回避している人もいますが、昨今開拓されたルートだと、長いルートも多いです。
回収は、被っていると少し技術が必要です。解説が込み入ってしまうのでかぶっているルートの回収テクは別途。一般に人工壁の人は慣れています。
地面につくときは事故が多いです。ビレイヤーはそうっとおろします。そしてクライマーは、いったんしゃがんで、ロープをたるませて、8ノットをほどきます。
■ 思考と吠える習慣
さて、ここまでで、こんな複雑な思考回路を経ているので、知性が低い人は登れません。
そして、ひとこと言わせてもらうなら、あんまり低いグレードで吠えるとかっこ悪いです。
日向神の5.10Aで吠えていた若い男性見ました…その課題、私がフツーに登った課題でした。
吠える=かっこつけ、と思っていると思いますが…それは誤解で、吠えるのは、怖いからなんですよ?
なので、あんまり低いグレードで吠えると、逆にかっこ悪いです。うぉー!!と吠えるのは、一般に大体5.12より上に行ってからです。背中に鬼を担いでいて、自分のギリギリに迫っていて吠えるのは分かるけど…
ナインとか、イレブンで、吠えていたら…チワワが大きな犬を見て吠えるのと似ているかもしれません。
九州の若い男性で、おばちゃんのか弱い私が登れるようなのを登って吠えていたら…かっこいいのか?悪いのか?は、自分で考えましょう。
別に俺はかっこつけていない、ホントに吠えたかったんだ、というのは、ビビった、という話なんで…私がビビっていない課題をビビっていたっつー結論になります。
私は別にいいけど、本質を見る人からすると、それって、むしろ恥ずかしいことで自慢になるようなことではないでしょう。
5.14レベルの高難度を登るクライマーが、みんなクライミングビデオで吠えているので、真似したいって気持ちのためでしょうかね? ますます何も考えていない証って話になるな。