2022/09/12

誰でもホイホイ開拓者にはなれないということ

■ 岩場紹介活動の弊害 露呈

自治体に、「オタクが持っている岩場は、全国レベルで有名ですよ~」という話を折々にしています。

これは、自治体が地域資源に無知であることが多いことと、東京の物まねではなく、自治体が持つ個性を生かしたあり方、生き方が良いと思うためです。

個性を生かすことが、人間においても幸福の道であるように、地域自治体においてもそうであろうと。

ただ、人間においてもそうですが、地域が、本来の個性を生かしたあり方を見出すのは、見出すまでが、いばらの道です。自分のことは自分では見えない。

そこを考えての、お知らせ活動。

しかし、そうは受け取らず、美味しい話、と受け取られてしまうと、違ったことになります。

個性を生かす道というのは、基本、いばらの道ですよ。他の道もどうせイバラなので、それでいいと思いますが。

■開拓するには何が必要か?

以下は、黒田論文からの引用です。開拓作業は…

スキルの因数分解

 事実→スキル

1)開拓作業は通常のクライミングより危険 → 通常のクライミングがこなせるようになった後の人が行う

2) ぶら下がって行う → ぶら下がる方法を知っている人しかできない

3)ボルトがダメになる前に行う → ダメなボルトがどれか見分けられる

4)クライミングの倫理観が求められる → 倫理観が高い=人格が優れている

5)現実的なバランス感覚が求められる → ある程度の社会人経験が必要

6)色々なエリア → 全国岩場の経験

7)色々なスタイル → ボルトのスポートルートだけではなく、クラック、やアイス

8)エイドクライミングの技術

9)トラッドのプロテクション技術

と、ざっと、9つものスキルが必要。これに5段階評定が付くと思ってください(笑)。

 ■ 私がスゴイのではなく、世間のレベルが暴落しているんですよ

ちなみに私は、やっとプロテクションの配置やリズムを覚え始めたころに、山梨を離れたため、ルートづくりは、完全初心者です。

ルートファインディングも岩場版はやっとスタートラインに立ったところでした。(ボルトルートだけをやっていては、一生スタートラインにすら立てないですから、山梨でクラックやアイスをリードしていた経験は貴重です)

岩場を見出す力は、今から、です。
 
繰り返しますけど、私はすごくはまったくありません。
 
ただこのような複数の軸を持っている人が大変少ないのです。
 
ボルダーだったらボルダーしかできないとか、フリークライミングだったら、フリーは言われたとおりに登るだけ、って意味で、ルートを作りながら登る経験が皆無です。
 
フリーって、お手本をなぞって覚えるお習字に、似ています。いくらやっても、自分らしい字を書くとか、新しい漢字を想起するとかできるようになるわけがないでしょう…。
 
世の中の人の、”普通これくらいできるでしょ”のレベルは、現在、暴落しています。
日本全国が、総ゆとり世代化。女性沢やなんて、かつては山ほどいたはずです。片田舎の屋久島でも沢の記録が楽しそうに残っていました。私がしたいのは、そんな気楽な冒険。普段着の山です。普通にデート沢って言われる沢と、ゴルジュ登攀の見分けがつかないのが、現在の日本の普通の人たちです。
 
山野井さんの奥さんみたいに、甲斐駒黒戸尾根から縦走で塩見を一日で、なんて無理ですから(笑)。でも、かといって、黒戸尾根17時間も往復にかかるなんて、誰それ?って感じです。山ガールたち…世間の普通の人の体力は、17時間で登れるどころか、そもそも、黒戸尾根を登れるようになるまでに、何年か修行が必要です。
 
岩場の開拓も同じです。
 
開拓ができる素地は、アイスをリードしていたクライマーやクラックをリードしていたクライマーなら、誰でも持っていると思いますが、そうでないでボルトルートオンリーの人は、たとえ5.13登れても、開拓については、はてな?って状態です。九州にはアイスもクラックも、ほぼないので、開拓にステップアップできる外岩クライマー母数は、かなり少ないということです。
 
まして、初めて今日クライミング始めました、って人だと、2,3年で5.9が登れるようになったら早い方です。 
 
1)岩の形状を見ながら、ボルトを打つとか、
2)そもそも、クライミングに適した岩場を見極める目を持つ
 
とか、うんと先の話ですよ。
 
あまりにも、必要なスキルの見積もりが、甘すぎて、箸にも棒にもかからないレベルなので、開拓クライマーとか紹介できません…。失礼になってしまいます。 

■ 侮られているみたいです… 

私が提案すると、”侮られる”、というリスクがあるんだよな…と、改めて自覚中です。

”侮られる”というと、誤解があるかもしれません。侮っている本人は、ただ無知なだけで、侮っているつもりはないような気がします。ただ、無意識の先入観で、私のように、小柄な女性が言えば、彼女ができること=男性の俺なら、あるいはもっと若くて屈強なアイツなら、当然、出来るっしょ、と思ってしまう…。

 
…以前、積雪期八ヶ岳のちょっとマイナーなところに登って、楽勝だったので、ヤマレコに、その報告をしたら、その翌週ヤマレコで私の記録を見た人が、「俺も…」と出かけたみたいで、その人、下山が遅れて、二日後くらいに、ヤマレコに報告の記録が出ないことに気が付いた人が通報し、遭難が発覚して、亡くなっていたんですよね…。以来、ヤマレコには記録をあげないようにしました。スキルを因数分解できない人が真似をすると死にいともたやすくつながるので。

私が狙っているルートは玄人チックというか、体力度だけで判断すると、そう高くないけれど、ルートファインディング力がないと登れないところ、だったり、と、一つの物差しでは測れず複数の物差しを掛け合わせて、にくい線を行く、というのが、私の山の楽しみ方なのです。

結果、けっこう高度なところに行っていました。これ、夫にも理解ができないみたいなので、知性も山には必要なんですよね… これは愚痴ですが。

私は、悪天候の時は絶対に登らない(天候の知識が必要)し、レスキューも勉強し(人気のない山で安全を確保するために必要)、雪崩講習にも出て(積雪期の基本知識)、読図もマスターし(ルートファインディング)、装備は、必要なものを自分で考えて、自腹でお金をかけてきちんと揃え、素性の分からない借り物とか、なし(防御力の基本)。そこまで用意しても、なおかつ自分の最大の能力の6割程度の山にしか登らないんです…(控えめな判断)。と価値観の軸としては、6個も掛け合わせしています。

現在の巷の人は、体力、という1軸の判断軸だけですよね?

もちろん、やむを得ず雨とか、必ずしもそうでないときもありますけど。リスク計算ゼロの、チャレンジの山っていうのは、ホントに数えるほどしかないです。

こんな感じです… 脚力(=体力)も、そろそろ溜まってきたから、甲斐駒黒戸尾根(もちろん厳冬期です)でも、登ってみようかな…(黄連谷の予習にもなるし…)、この天気ならリスクもないし、クライミングも大したことないから、阿弥陀北稜も単独で行けそうだな…(厳冬期です、行ってみたら、2往復くらいできそうでした)って感じです。ダメなら敗退すればいいので。

これは、英語とか、他の学生時代の受験勉強でも同じで、英語もだいぶ慣れてきたし、そろそろ、TOEIC受けてみようかな?

 → 初回から860点 2回目925点 (950点満点の時代)

みたいなタイプなんです。もちろん対策はしますよ。しないで受けたら、ただのバカですよね?

クライミングは、一般の人から見ると、登山以上に、何が能力、と判断されるのか、全然わからないのでしょう…

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