2023/09/22

【小鹿野ボルト欠損訴訟】外資系企業のパブリックリレーションをクライミング界に

 ■ チバスペシャルティケミカルズでの経験

私は、スイスの会社での就業経験があるのですが…アジア・オセアニア地域統括部長補佐、という立場ですが、ヨーロッパの会社は合理化が進んでおり、人員はかなり絞られているので、部長と言っても、その統括エリアに社員は本人一人です。営業も全部、本人がやるんです。

それは小さいからではなく、外資は経営合理化が進んでいて、莫大な金額を一人でコントロールするのは普通です。日本みたいに共同責任で責任の所在が不明確、みたいな、不必要なことはしないからです。会議もないし、会議があるとしたら、国際電話でした。途中からスカイプになりましたけど。

ま、正直言って私のポジションも要らない…みたいな感じなんですけど、とはいっても事業継続性の面から、彼の仕事の内容を共有している人は必要だから、人を置くことになりますが、要するに影武者ってことなので、売り先との価格交渉から、広報、まで営業に関することは全部やっていました。

で、化学薬品を扱う業界だったので、風評被害、というのが非常に大きなビジネスの障害としてありました。

私は石鹸抗菌剤部だったので、日本の消費者団体から、悪と糾弾される薬品を扱うことになったんですね。

■ プレスリリース1枚書くのに1週間

さて、こんなセンシティブな業界なので、プレスリリースという会社が発表する記事を書くにも、

一週間がかり

です。要するに、かなり慎重、ということです。

この1枚に、10回まではいかなくても、数回の国際会議があり、メールの応答は20往復くらいです。

■ 日本では気楽に返答しすぎ

おそらく、日本での就業経験しかないと、公的な場での発言、ということに、とてもカジュアルな印象を持っているのではないでしょうかね?

特に日本のスポーツ業界は、トヨタなどのグローバル企業の広報のテクニックを学んだほうが良いかもしれません。

失態続きというか、自分たちのスポコンに由来したパワハラ体質、モラハラ体質のブラックカルチャーが、そのまま世間の平均値である、という前提が、無邪気すぎる面があります。

クライミングは特にグローバルな活動です。

■ ちょっと検索したら出てくるバッド事例

過熱報道が続くスポーツ界の不祥事 広報は「現場力」と「質」が必要https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201901/crisis-management-public-relations-2019/014885.php

ーーーーーーー【企業の事後対応・失敗例】

 例えば2022年4月に起きた知床遊覧船沈没事故の社長の対応は、まるで他人事のようで、報道陣からの要請はあったと思いますが、事故発生から5日目にはじめて記者会見を開きとってつけたような土下座で、かつ、謝罪の中で「最終的には船長判断」「客の要望もあった」と責任を転嫁するような発言が目立ち世間の憤りを買ったかたちとなりました。

「このような社長のいる会社だから起きるべくして起こってしまったのだな」と世間に思わせてしまう象徴的な対応でした。

【企業の事後対応・模範例】

同じ事故でも名古屋高速バス横転炎上事故の社長らの対応は評価できるでしょう。

なぜなら、彼等は説明責任をしっかり果たしていたからです。この会社は事故発生の翌日午前中に記者会見を行うなど、素早く対応し、また記者の質問にもしっかり答えていました。恐らく日頃からこのような「万が一」に備えていたのかもしれないと思わせる程だったのです。

ーーーーーーーーーーーーーhttps://www.astorypr.com/news-all/crisis-management-pr-training より引用

事例研究をするまでもなく、

 責任転嫁、言い逃れ = バッドケース

 日ごろから備えてあるかのような素早い応答=グッドケース

です。

日本の一地方都市では、グローバル企業並みの見識を得るのはかつては難しかったと思いますが、現代ではそうではありません。ネットで出てきます。

具体的な文面は企業の謝罪集を探すと出てくると思います。それらのパッチワーク作業が広報担当者の作業で、私はこうした文面草案の作成者でした。広報責任者は、それがどうパブリックに響くか?ということの検討です。それには、複数の目が必要です。

謝罪は、謝罪すべきでない部分を誤ってしまわないように気を付けなくてはなりません。

そのうえで、反論文を出すことは必須です。悪くないもの、痛くない腹を探られ、謝罪してしまえば、悪かったことになってしまいます。

今回の小鹿野の件も、ボルト欠損は誤報、です。正確には、岩そのものの欠損です。

反論文は、こちらに弁護士が指南した者があります。

http://ooura-law.com/blog/entry-000112.html

相手方は、係争を望んでいるということなので、弁護士同士の弁論に任せるのが、良いだろうと思いますが、最低でも、

 誤報は指摘

しておかなくてはなりません。でないと、本来味方してくれる人まで敵に回すことになります。

https://allnevery.blogspot.com/2023/09/blog-post_19.html