■ ぺてらん vs ベテラン
九州では、ベテランならぬペテランが、落ちている動くものに道標つけて、「これでよし!」とか言っている、クライミング業界の零落ぶり…
そもそも、師匠となれる経験値の豊かな人自体が存在しない…という低レベルが、ノーマル化して40年経過し、定着してしまっている現代クライミングですが…
そのような現状の中で、中島兄弟を育てた実績のある、立派な師匠クラスと言える中島さんのFB投稿が回ってきました。ので、展開します。
若いクライマーはご参考に。
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先日佐久の友人と岩場探しに行ってきた。
以前、同じことを書いたが、私は岩場がクライマーを育てると思っている。岩場探しは時間が自由になる人間の大事な仕事だ。長野県にも若くて優秀なクライマーが沢山育ったと思うが、大多数はルートを開拓することはなく、既成ルートをなぞることで満足するらしい。それは、絵描きが模写をしているのと同じだと思う。
イムジン河も任侠道もフラットマウンテンも先人が残してくれたものだ。君たちは後進に何を残すのか?
3時間の藪山歩きの後、はたして岩はあった。苔むして、もろそうで、樹林より低くて、何より荒々しいが、今回の偵察でこの辺りには膨大な岩資源が存在することがわかった。帯状の岩壁は総延長10キロはあるだろう。使える部分は、果たしてどのくらいあるのかは不明だが。
出来たらミニマムボルトのルートを何本か開拓するとともに、岩場の全容を明らかにし、若い世代に託したい。
まずは1時間以内でたどり着けるアプローチを探すことからだな。
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■ 岩場がクライマーを育てる の解説
昨今のクライマーって、ゆとり教育の弊害なのか、このような言葉があったとしても、その意味するところが理解できないみたいなんですよね…
岩場がクライマーを育てる の反対は、
ある岩場で、
一番難しい5.12aを1本だけ登って登れたら、後はぜんぶグレードが下だから
といって、
「この岩場には俺が登る課題はもう無い」
って言うことですよ? そういう人は、なんとか自分にも登れる次の5.12B、を探すことになります。
これが、一般的にグレード主義に陥った若いクライマーがやっていることですよ?
なんとか自分にでも登れる◎◎グレードの課題のことを、”お買い得◎◎”とか言います。
グレード主義というのは、すべてお買い得品で、グレードを上げているってことです。
それでは、だんだんと虚構というか、本質的な実力ではなく、見せかけのものに近づいていくことに、原理的になってしまうことは、分かりますよね?
だから、若い人は事故っているんです。 だから、5.12登れる人が、10bで落ちるわけです。
■ 年配者は教えているつもり。若年者は教わっていないつもり。
しかし、この
私は岩場がクライマーを育てると思っている
という言葉で、指導する側は教えているつもり、ですが、指導を受け取っている側が、言葉の意味をきちんと受け取れる知性があるか?というと…?
残念ながら、そうではないみたいです。
岩場内で自分が登れる一番難しい課題を1本だけ登ってその岩場は卒業した気分になる
ことの抑止力には全くならないんですよね…
つまり、相手に期待している理解能力に、相互に行き違いがあるのです。
現代の若い人には、私が上記で解説しているくらい、意味を分解し、言語化しないと、わからないです。
年配者=ハイコンテクスト文化
若年者=ローコンテクスト文化
だからです。日本は伝統的にハイコンテキスト文化です。言わなくても、主語は推察できる。「今日は暑いね」といえば、黙って窓を開けるのが良い生徒、という文化です。
登山では、「落石注意」という看板にそれが現れています。夫は50代後半ですが、その夫ですら、「落石注意」を見て、速やかに通行すべき、とは理解できず、立ち止まってほんとに注意して見てしまうのです。下手したら、そこで休憩するレベル感です。
ところが、現代の若い人は、ローコンテキスト文化です。何もかもを言語化して教えないとわからないです。
つまり、「暑いね」と言っただけでは相手の窓を開けるという行動を引き出すことはできず、「今日は暑いので、窓を開けてください」と全部言わないといけないということです。
特に日本の男性は、日本の女性に甘やかされています。
これまで日本の男性は、一般に、立てるという言葉で日本の女性に文化的に甘やかされてきたので、何も言わなくても相手が分かってくれる、というのに慣れています。
しかし、クライミングでは、男しかいません。
岩場がクライマーを作る、
なんて、現代のクライマーに言っても、「俺、頭悪いから、わかんね!」で終わりです。
そうなると、結局、
言われたとおりではなく、みんながやるとおりにやる
ということになります。それが子供の一般的な行動原理だからです。
結果として、クライミング業界全体が
お子様っぽい
という結果に…。その原因は、年配者が、起こした言語が、現代の若い人には、ポエティック過ぎて、きちんと伝わらない、という点にあるというのが、この5年の九州での私の観察結果です。
大都市を除く地方都市では特に、大体、学業ができた子供、知的水準が高い子供は、みな進学で、県外にでていってしまっています。結果、大都会での一般群衆の知的水準より地方都市では知的水準が下です。
クライミングのトップクラスの知見…内藤さんレベル…が、東京に固まっているのは、岩場が東京にあるからではなく、知性が大都市近郊に偏っているからです。