■ 体が小さい不利をどう乗り越えるか?
私は体が小さい。体重は50kg行かないし、身長は152cmしかない。”昔”の日本人サイズ。
ボディサイズが小さいということは、出せる馬力、つまり、エンジンサイズも小さいってことだ。
その1)担げる歩荷サイズも小さい。(相方が歩けなくなっても背負い搬送できない)
その2)当然だが、手が届く範囲(クライミングでは、”リーチ”という)も狭い。
勢い、男性が背負うと普通に見える50リットルのザックを背負うと、小学1年生がランドセル背負ったみたいな状態になってしまう。大体、クライミングしていても、リーチの問題で、あそこにガバがある!とか言われても届かない…。ガバが、ガバにならない。
この写真、分かります?でかく見えるけど、実は50リットル。男性は100リットルを担いでこのサイズ感です…。
林業では?
チェーンソーが不必要にデカでかく見える。
お嬢ちゃん、子どもの遊びじゃねーんだよ~な雰囲気になってしまう…(まぁ、もうお嬢ちゃんって年齢でもないが)
ので、もうほんと、自信がないって言うか、
体格的に適性に問題あり、
と理性が言ってくる、伐倒…。しかし、自伐型林業を行うに際し、伐倒ができない、っていうのは、ありえないからなぁ…。
しかし、伐倒をマスターする、”易から難へのプロセス”、が、なかなか見えてこないんだよなぁ。
■ 祝・一本目
さて、このような状態で、自信がない中ですが、先日、初めてチェーンソーにて、1本目の伐倒を経験しました。
講習仲間が記念すべき、その様子を動画に収めてくれましたので、じゃーん、公開。
嬉しかった~!I村さん、ありがとう~(T_T)
ふたつ目の動画では、先生の背中から、私が講習生の中で、どのような立場であるのか?推し量っていただければ…と思います。先生の背中が物語る、そこはかとない、”しゃーねーなーな雰囲気”と”私の本気度”の不釣り合いさが、見て取れる動画です(笑)。
ホントは、そこまで気合入れるようなサイズ感でもないのよ~な感じなのかな~?
■ 細い木の方が伐倒は難しいですよ
この日は、午後雨の予報で、伐倒はチームで順番なのですが、私は3班あるうちの一班。一班では、一人はもう伐倒したので、二人目ですが、前述のI村さんが紳士的に、「僕はいつでも伐ろうと思えば、伐れますから」とバッター席を譲ってくれました。私は是非、今日中に伐倒経験を積みたいと思っていたので、全員の中で一人目…。プレッシャーあります。
前回の実習で選木した、ピンクリボンが付いた木のうち、もっとも細いものを選びました。
細い径から、大径木に行くのが、易から難、なのではないか?と思ったからです。
しかし、工藤講師によると、「細い木の方が難しいですよ」とのこと…。
うーむ。考えこんでしまいます。
しかし、間伐するとなると、不要の木を刈るわけです。太く立派な木を伐るということは、機会的に少ないような気がします。
私が伐りたい!と思う(であろう)邪魔な木、間伐したほうがよさそうな、弱った木、というのも、そう大きな太い木ではないだろうと思います。
というので、今回は、難しいという点は、指導者がいる間に、難しいケースを体験しておく、ということにしました。失敗するなら、フェイルセーフである、指導者がいる環境でやったほうがいいですよね。
■ 必要機材
さて、伐倒です。そうです。伐倒には手順があるのです。
(もう前の晩にシュラフの中で、何度もシミュレーションていますが…。)
まず、準備作業をします。
チャップスをつけ、ヘルメットをかぶり、笛、防振手袋、チョーク、楔、ハンマーを用意。
■ 林道などであらかじめ、チェーンソーの始動
朝一回目に使うときは、エンジンが掛かりにくいので、平坦なところで、あらかじめ掛けておきます。この時、エンジンオイル、チェーンソーオイルが十分に入っているか、もついでに確認。
講師に、「始動するときも、手袋してね~」と声を掛けられました。防振手袋です。
小さいチェーンソーの小軽を選択。
本来、小軽は、伐倒用途ではなく、支障木の伐採用なのですが、大きいチェーンソーは、私の体格には合っておらず、現時点では振り回されてしまい、リスクを感じます。また、私が購入する予定のものも、エコーの小型充電チェーンソー(前述の林家、佐藤さんが使っていたもの)なので、今回は、用途的に合っていないのは、目をつぶって、小軽。
本来は、ノーマルサイズ4.5~5kgサイズのものが良いようです。
写真は、プロも使っている小さめチェーンソー。充電式。
■ 支障木を伐る
・伐倒した際に邪魔になりそうな木、
・退避場所に退避するときに邪魔になる木
を伐ります。手首、足首サイズの灌木が多いです。これは手のこや、鉈でも伐れます。
みんなが手伝ってくれ、嬉しかった!
■ 伐倒方向の検討
今回は、真下、真横、右斜め45度下方、の3つの可能性がありました。
真下はできるだけ避けるべき、というのがセオリー。集材は楽そうですが、他の人の伐倒で、木が勢いよく、谷底まで流れて行ったのを見ましたしね。
真横というのは、木の重心の関係から、なかなか難しい方向なのだそうです。枝が山側ではなく、谷側に張り出しているので、大抵の木は、谷側に重心があるからですね。
そこで、相談の上、今回は、右斜め45度下方、に決定。
これは、仲間と講師で相談して決めました。一人で伐るとなると、まだ悩んでしまうところかもしれません。
■ 伐倒方法の選択
私が選んだのは、小径木だったので、おいづる伐りは要らないだろうと、想定。
林業用チョークで、受け口と追い口のマーキングをします。
この時、ぐるりと木の周りを観察。エンジンがかかると、音でも緊張して、観察できなくなりますから。
■ コール
ここまで出来たら、
「周囲の安全確認よし!上よし!伐倒方向よし!退避場所よし!」と指差し確認します。
そして、ピッピー(伐る用意していますー!)と笛をならします。
■ いよいよ伐倒です!
まず受け口を作ります。チョークマークの通りにチェーンソーを入れますが、深さは、直径の4分の1程度。一般の人が思うより浅いです。
チェーンソーの背で伐るのは、安定が悪く、私にはまだ不安なので、腹のほうで伐れる体制に体を持って行きます。
この時、
・伐倒方向との兼ね合い、
・退避場所との兼ね合い、
・山の傾斜との兼ね合い、
で、危険なところや不安定なところに立たないようにします。傾斜がきつい場所のほうが、立ち位置の選定は難しそうです。
受け口を作る時、難しいのは斜め伐りです。斜めに切るときは、背は使わない。腹です。30~45度です。なんか雪崩の頻発傾斜と同じ角度ですね(笑)。
また、こねる、という言い方をしますが、チェーンソーを伐倒する木に入れたあと、方向を変えようとしない、ということが大事です。火花が散っているときは、こねているときです。
私のは小径木だったので、受け口は比較的容易に伐れました。大事なことは
会合点を合わせる
ことです。太い木のほうが難しいように思います。
■ ガンマークを見ます
伐倒方向は、受け口で決まりますので、ガンマークでチェックします。
■ 本合図
受け口ができたら、いよいよ、本合図をします。
ピー、ピッピー (いよいよ、伐るぞー)
です。
■ 追い口を入れます
さて、追い口入れ、は、木が倒れ始める可能性があるので、緊張のしどころ、です。奥のほうを伐り損ねる、ということが多いので、しっかり奥まで良く見ながら、目的のところまで、チェーンソーを入れます。
この時、指導で、のこ道が閉じてしまわないように、小さい楔を入れて、伐りました。
■ 楔を打ちます
一つ目の動画は、楔を打っているところです。
楔の打ち方は、奥深いものです。基本はハの字ですが、私の木は、小径なので、ハにならない…。小さいのをどんどん打ち進めたら、長さ分、全部使ってしまいました…。大きいのを入れて、小さいのを出し、さらに打ちます。
打ちながらも、退避準備。上を見て、木が倒れ始めたら、一目散に逃げるためです。
追い口から、楔までを素早くスムーズに行うことが大事だそうです。倒れる方向が楔である程度、確約できるからですね。
打つ時は、一回一回、上をみる。パーン上を見る、パーン上を見る、というように、楔だけに集中しないようにします。
■ 成否…かかり木
伐倒の成否は、かかり木になってしまったら、失敗、って感じがしてしまいます。
伐倒方向を選ぶときに、かかり木がない方向を選ぶべきなのですが、例えば、真横、など、伐倒自体に熟達が必要で、真横を選べない、となると、次善の伐倒方向では、かかりやすい方向となってしまい、かかってしまう…ということも起こりえます。
■ かかってしまったら
残念ながら、私もかかってしまいました…くすん。このような時は、フェリングレバーの登場です。
基本的に、丸太状態になった木を回して係りを取ります。私のは、なんとか地面まで倒れましたが、かかり方によっては、右に回しても、左に回しても、周囲の枝に乗ってしまう、という状態を作ってしまうことがあります。
かかり木処理になると、余計な時間がかかるので、ばーんと地面に倒れたら、ホントにスッキリ!しますが、かかってしまったら、あーあ、って感じ。
この日の研修では、6人伐倒して、かからなかった人は2名くらいで、ほとんどかかってしいまいました。そうなると、色々と他の道具も必要になってしまいます。
かかりが取れて、材が安定したら、
「材の安定よし!」とコールして、
ピー
で、終了の合図をして終わりです。
■ パチパチ~ 祝・伐倒
今回の伐倒は、このような感じでした。
私は以前に大阪のほうで、間伐ボランティアの経験がありますが、伊賀の森で伐った木は、手のこサイズで、「これ日ごろのストレス解消にバッチリね~」と思ったのとは裏腹に、伐倒が本格林業サイズ…20mはある飫肥スギで、緊張で汗びっしょり。あまりに濡れたので、後で着替えました。濡れたままだと低体温症です…。
これは、本気モード、っていう伐倒で、ボランティアレベルの経験値は、何の役にも立たないのだ、ということが、改めて理解できたのでした。
他の男性の研修生も約1名の慣れた人を除いては、似たり寄ったりで、伐倒は男性にとってもストレスレベルが高い作業のようです。初めての人はあたふたしています。体格的に不利がある女性の私だから、ここまで緊張して伐倒するっていうことでもないようです。
チェーンソーに慣れているK藤さん、かなりの大径木を選んでいましたが、彼は動じることなく、普段のまま。聞いてみたら、いつも薪風呂で、薪がいるので、チェーンソーに使い慣れているのだそうです。やっぱり、慣れですかね?
伐倒も一回しただけでは、「ワタシ、伐れます!」とは言い切れません。伐った後、かかり木になってしまったら、処理のために、また色々な知識や道具が必要になってしまいます。
シンプルな道具立てで伐れる=熟達者、
ということです。初心者ほど、色々なギアや知識が必要、ということは、アルパインクライミングやフリークライミングの世界とも共通でした。