2021/11/11

因と縁の解析

■ 因と縁が揃って因縁

仏教的には、因と縁が揃って因縁。


種があっても、太陽と水と土が揃わないと、芽は出ない。

この場合、種=因 である。

クライミングの因は、当然、”登りたい”という思い、だろう。

 では、縁は?

パートナー と ビレイスキル と、練習する環境

の3つ。

パートナーがいない場合は、なんとかゲットする必要がある。普通は、みんな、ここで、”超いい人”化する(笑)。一緒に登ってほしいという相手に対して限定だが(笑)。

ビレイスキルがない場合、何とか身につけざるを得ない。ので、それには、ビレイを教えますと、題売っている講習会に参加するしかない。

他の人のビレイをこっそり盗み見して覚えようとしても、たぶん、間違ったビレイを覚えてしまう。それくらいビレイはちゃんとしている人が少ない。自分の子どもを登らせるのにすら、バッツンビレイで壁に子供がたたきつけられてしまうようなビレイをしているんだが、親のほうはそれに気がつかないでいたりする。(教えても聞かない)。

ビレイヤーが自分より軽いと、この危険は少ないが、私より軽い男性クライマーなんてあったことがないので、大体は下手くそビレイを我慢して登っている。

ビレイの習得は、週2半年と言われている。週4ビレイすれば、3か月で行ける計算になる。週6ビレイすれば、2か月で行ける計算になる。一般の人は週1しかビレイする時間がないと、忘れてしまって全然上達しない。1年経っても、2年経っても下手で、そういう場合は3年くらいは見たほうがいいかもしれない。

練習する環境というのは、人工壁が一般的だ。外の岩に最初から言っても、外でリードで落ちる人をキャッチする経験は積めないので、ビレイのスキルは全然伸びない。

オールドクライマーが新人だった時代には、人工壁はない。いきなり外岩。アルパインと同じ論理で死んでも落ちるな、と教わるため、オールドクライマーは落ちないクライマーをビレイした経験しかなく、落ちるクライマーをキャッチした経験がないので、見ていると、だらりんビレイをしたり、座ってビレイをしたり、支点ビレイをしたりで、現代の教科書には、”けっしてやってはいけない”と但し書きで書いてあることを、当然の顔をしてやっている…。オールドクライマーが新人だったのは40年ほど前なので、その頃の教科書には、フリークライミングのことは書いていない。やっていることが、アルパインルートに行くためのゲレンデ練習から、”フリークライミング”という別のクライミングに変化したのに、そのことにオールドクライマーは気がつく機会がない…何しろ、自分はベテランだと自覚しているから、最近出た本など読む人は少ない。

ので、結局のところ、一番ビレイが下手くそなのが、オールドクライマーということになり、特にトップロープの時は馬鹿にしており、ロープがクライマーの懐でたるんでいても、そのままだったりする。ので、初心者時代に一番一緒に登らない方が良いクライマーが、オールドクライマーなのかもしれない…。

人工壁のクライミングは、”スポーツクライミング”というクライミングで、バンバン落ちるのが当然、というのがその意味するところだ。なので、ビレイを習得したい人はスポーツクライミングをちゃんと教えている人から教わらないといけない。

ビレイを習得し、逆クリップやら、なんやら、を習得してから、外の岩場に出る。大体が、こういうことになるが、外の岩場は外の岩場で別の習得項目があるから、外の岩場に出ることは、大きなステップアップだ。

まぁ、ボルダラーからやっている人は大丈夫だが、人工ホールドを握るわけでないので、ホールドを発見することからスタートだ。

一番ボルダラーがやってしまいがちな失敗は、オンサイトで登らない、すぐに”次のホールドどこ?”と下の人に聞くことだろう…。オンサイトというスタイルが、ボルダーにはない。全員いきなりビデオトポを見て、前に登った人とそっくりの登りをしようとするのがボルダーだ。

フリークライミングの世界でそれをやると、どうなるか? あーあ、と言われるのである。せっかくオンサイトだったのに…と言われる。自分より前に登った人の登りをチラ見しただけで、もうオンサイトではなく、フラッシュになってしまう。その辺を詳しく知りたい人は、漫画版の『孤高の人』を読んでください。

ので、外の岩場に行ったら、自分が登りたい課題を登っている先客がいたら、決してその登りを観察してはいけない。オンサイトを逃すことになるからだ。

スタイルの差だけでなく、価値観の差があるのが、クライミングの各種で、その価値観を無知なために犯すと、あちこちからブーイングを食らうことになる。

現代でもっともおススメできる、リードの岩場にデビューする人への教科書的な本は、北山真さんが書いた、『フリークライミング』という本である。この本を読んでから、外の岩場に行くべし。(こちらにリンクがある)

この本には、1行目に、”支点ビレイはしてはいけない”と書いてある。こんな超・常識的なことも、オールドクライマーは知らない。自分は支点ビレイをしているが何か?と思っている。こちらも、自信たっぷりでやっている人に何かを言うこともできない。

オールドクライマーの無知の被害を受けるのは、誰か? 山は最も弱いものを狙う、とよく言われる。

クライミングも、テンションなしで登れるなら、別にビレイヤーは誰でも良いわけで、フリーソロできるなら、ロープすらもイラナイ訳なのである。つまり、きちんとしたビレイを真摯に必要とする新人にこそ、きちんとした技術的裏付けのあるビレイが必要である。つまり、新人が喰われるのである。

ということから、オールドクライマーと最も組んではならないのが、新人だ。一方の新人の方はそんな事情とはつゆ知らず、落ちた人をキャッチした経験値がもっとも浅いオールドクライマーと組みたがり、命がけの墜落劇を演じてしまうのだが…。

私の後輩は、人工壁1ピン目で落ちていた…がたいの良い男性クライマーだったが。リードフォローの練習をしていた時は、セルフを取る前に自ら手を放して落ちていたが…。彼に関しては、人工壁に来る前に、一般的なボルジムでのクライミング経験が必要と思われた。一般的にジムで5級が登れるくらいでないと、人工壁でも取り付くのは危険だろう…

というので、いかに、因 に対して、縁を取りそろえるか?という話。

■ 師匠と登ったが師匠が教えてくれたことはない

今までパートナーには恵まれてきたが、師匠は二人とも岩場で会った人だ。一人目の師匠は、岩場のてっぺんで会った。いきなり、「流動分散を作ってみせなさい」と言われた。作れた。そうして、「ここに電話しなさい」と言われた。

次の人は、小川山レイバックで会った。その後その人が勤めているジムに遊びに行って仲良くなった。

その次の人は、こちらもその人が知らない岩場に案内してあげ、お礼にその人が知っていて私が知らない岩場に案内してもらった。

米澤先生は、いきなり油山川の岩場で会った。登りに行っていた。相方は一緒に登りたいとは思わなかったみたいだが、しばらくは二人や3人で登っていた。

という感じで、一緒に登った人は、岩場であった人で、岩場以外で会った人で、仲良く一緒に登るようになった人いたっけ?いないな。

岩場に自ら行くようような因があって、たまたまそこにその人がいたという縁がある、というわけだ。因と縁で言えば。

これがパートナーゲットの秘訣と言えば秘訣なのかもしれない。