2019/06/24

課題を見極める目

■ トップロープからリードへ

昨日は色々と考えさせられたクライミングだった。

昨日はトップロープで遊んで、ムーブが楽しく落ちて、良かったが、まぁこれだけだと、強くはならないだろうし、なぜか知らないが、

 切羽詰まるとムーブが出てくる

ので、リラックスとムーブの発揮力は別物だと思った。

ちなみに、パワーは、切羽詰まっても出てこない(笑)。回数を重ねれば重ねるだけ、私は瞬発的なパワーを失うので、パワーと言うのは私の持ち味ではないことは確実だ。

このことは、アップで被りをやりたい青ちゃんとのクライミングでも明らかで、私はアップで一本でもかぶりをやると、その後は1時間以上回復しないのだった(笑)。

■ ピンの配置について知見を深め中

一方、リードで取りつこうとした道端エリアの太郎5.10cは、グレード改定されて、5.10dだった。

リードで取りついて、登ってみようかなと思ったんだが、心優しい先輩が、未然に危険を察知して、身代わりクライミングしてくれた。毒見クライミングだ。かたじけないなぁ。

普段12登って、この日に別の11を落としてきた彼のルートを見る目のほうがやはり私の目より正確なようだ。

ちょっと私には難しいのでは?と思ってくれたため、毒見で登ってくれ、2ピン目と3ピン目で、降りてきた…「これ、怖いよ」。

結局、私がリードするのは、ちょっと危険(核心前で大きく落ちる可能性が大きい)が大きそうだった。落ちても確実にグランドしない、壁のどこにも当たらないと分かっている課題なら、11でも落ちて平気なのだが…。

クライミングでの怪我は、確実に後退につながる。

足の肉離れで2か月クライミングできなかっただけで、だいぶ筋力が落ちたなと思う。グランドして頭を塗ったことがあるが翌日から登れた。

足や手首、指の怪我は、だいぶ後退要因になる…ので、ただ落ちても死なないだろうというだけでなく、落ちたときどこをぶつけるのか?ということもある。ボルダーは足首をやる人が多く、足首の捻挫を悪化させて半年登れなかった人も知っている…

落ちることを怖がっていない彼でも、この課題は最初はリスクを感じて降りてきたので、怪我の回復クライミングしている人には向かないと思われた…

やはり、課題を見極める目ということが私にとってボトルネックと言うことだ。

■ レイバック

が、シンシアでできなかった核心をトップロープで再登してムーブを探ったが、私が確実感を感じるムーブとしては、レイバックしか出てこない。

ので、これではリードにはつながって行かない。レイバックだと、プロテクションを掛けれないのだ。ここはほとんどの人は立てカチか、アンダーでもって解決している個所だが、現在、保持力が下がっていて、レイバックで傾斜を殺さないと持てない…

というので、残念に感じて降りてきた。

■ 固執せず

前の先輩は、トップロープはしないと固執するあまり、登れるグレードが11マックスになっていた。しかし、トップロープしかしない、させないだと、クライマーはリスクの取り方を覚えられない。

適切な成長には、クライミングの質、内容というものがとても大事なのだ。

それを競い合うのが、クライマーのコーチング、なのかもしれない。

私は伝統的なアルパインの育てられ方をしたので、自分の後輩にもそうしているが、過去の自分と同時期の人に過去の自分がさせられたことをさせても、反応はイマイチだ。登れません。

2度目から三つ峠リードさせれる人はいない。初めてのゲレンデでリードさせれる人もいない。ので、新たな新人さん育成の方法がないと、リード人口は減るだろうが、だからと言って、万年トップロープだとクライミングの喜びを得損ねると思う。

というので、何ができたたら何をさせていいいのかという目安が大事になる。

私はリードへ進むには、

・落ちることが察知できる、
・落ちる!と声を出す、

と教わったが、今回の太郎5.10dを見ている限り、

 ・ルートを見て、リスクを判断できる、

も入れたほうがいいかなと思った。

■ リスクの幅

シンシアと太郎では、リスクの幅がだいぶ違うと思った。大事なのは、グレードではなくリスクの幅を重視して、少しづつリスクを拡げて行く登り方だ。

例えば、その隣の5.10Aの一郎は、たかだか5.10Aにすぎないが、私の背で持てるところ、弱点を突いてリードするとヌンチャクが遠くなって落ちると振られるため、あまりリードして楽しい課題という訳ではなさそうだった。ビレイヤーのスキルが重要になる課題だ。

トポにある、グレードだけでは、リスクの幅が読み取れない、ということが課題を選択する際の大きな問題になっているのが日本の岩場だ。

ラオスではそこは問題になっていない。ので、クライマーは自由に自分に適したグレードと言うだけで登っていくこともできる。

しかし、トポにそれだけの情報記載を求めるのは酷だし、リスクの幅は個々人の体格や力量にもよるので、様々だ。

タイでは、開拓者には、

 そのグレードを限界グレードとする者のためにボルトを打つ

というルールが課せられているが、日本では課せられていない。

■ 開拓の様子

しかし、無償労働で、自腹でボルトを打ってくれている開拓者に、義務まで持たせられるかと言うと難しいと思う。

何しろ、開拓者本人は、ラッペルでの開拓となると、自分が作ったアンカーも、中間支点も当人は使わない。少なくとも米澤さんはそうだ。

当人はオンサイトなどありえず、自動化するまで登りこんでしまうのが通常だからだ。

このように本人には利益がない状況でもボルトを打ってくれているのは、栄誉と言う面があるからだと思われるが、逆に適正ボルトでない場合、栄誉だけを得て、責任を果たしていない、と言うことも言えるわけだ。

まぁ、自分がボルトを打った課題で、死者が出たら、楽しいとは言えない経験であろうと思う。

■ ガバ=支点

一般に開拓時にボルト数を減らしたいという力学が働くため、ガバホールドは、支点を飛ばすことになっていることが多い。

しかし、ガバにも質が色々あり、100人のクライマーがいて90人がガバと感じるガバもあれば、50人くらいしかガバに相当しないようなガバもある。

人工壁を考えれば一目瞭然だが、ガバ=クリッピングポイント、つまり、安定体制でクリップに最適なのがガバとなっており、ガバに対する哲学、姿勢が、人工壁と外岩では全く逆ということになっている。

ので、ガバが多い課題=落ちないからランナウト、となり、やはりここでも、易しい課題ほど危険課題となる傾向が強くなってしまうということになる。

易しい課題をこなさなければ、当然だが難しい課題はこなせるようにならない。

■ 人工壁と海外

というわけで、ビギナーにとってはいばらの道であるわけだが、

 日本ではインドアクライミング

が、安全で易しいクライミングを担っていると思われ、最も危険が大きいのは、インドアでホールドが明らかなクライミングから、ホールドを探らないとならない、アウトドアへの移行時だと思われる。

これを安全に過ごす策として、トップロープでの慣れが図られているわけだが、これに

 海外登攀

を加えることで、外岩での経験値を高めることができると思う。私は年齢が高い段階で始めたので、海外での登攀は数回以上のレベルで必要そうだ。

海外では易しいレベルでも適切なボルトを打ってあるため、安心して成長ができる。

平山ユージさんや鈴木英貴さんも世界の岩場育ち…世界には5.2なんて日本で見たこともないグレードからあるそうですが…

実際に龍洞での看板ルートの一つは、5.4です。これで登れない人いないレベル。

三倉の5.9で(実際は5.10bくらいある)で、50cmおきにカムを入れる私でもランナウトレベルのクラックです。

というので、日本の外岩事情を見る限り、

 ・上手にならないと楽しくない
 ・もはやインドアジムでのトレーニングは不可欠レベル

というのは言えることではないか?と思います。

■ 新原課題

しかし、あとで、怖かった太郎を見たら、新原さんの課題でした。やはり、今の時点での私には向かない。

私のメンタル課題は、怖さに立ち向かっても改善はしないからです。ただ精神的によれるだけで、メンタルパワーがただ枯渇します。

一方、楽しく登って帰ってきたラオスの後は皆が目を見張るアイスを披露したらしいので、まぁ私にとって最適なのは、楽しめるということでしょう。

出てくる脳内物質をエンドルフィンにしてアドレナリンではないことが大事かも。