2019/06/15
落ちた人を思いやることが世界の常識です
これは5.9ですが、落ちています。
周りの人が「Are you Ok?」(大丈夫?) と声をかけていますが、これが世界の常識です。
日本だとどういうことになるか?というと、
「5.9くらいで何やってるんだよ」
「は?5.9で落ちんな」
「5.9で落ちるなら、お前なんざ、クライマーじゃねえ!」
と言われ、蔑まれます。
そういう発言の人が悪いのではなく、そうやって育てられたので、そうやって下の人を育て返すわけです。
結果、その屈辱を耐える、負けず嫌い気質の人しか、残らないか、もしくは最初から才能があって、日本のクライマー界が要求するレベルへの到達が努力不要の人しか、いなくなります。
実際、「あの人5.9で落ちていたんだよ、だから尊敬しない」と発言した人を知っています。その人は5.13登りますが、最初から上手だったそうです。努力はどっちの人が多いんだろう(笑)?
落ちた人に掛ける言葉が「5.9くらいで落ちんな」では、弱り目に祟り目でしょう。
これが思いやりに満ちた態度か? 明らかですよね?
■ 易しいところで落ちて死ぬ
しかも、ベテランでも、落ちて亡くなっていますが、たいていは、5.12のところではなく、5.9とか下手したら5.7のところで、です。
理由は、難しいところはプロテクションが良いからです。
易しいところでは、落ちるはずがないから、プロテクションを取らない、という文化だからです。
プロテクションの要不要は、易しいか易しくないかではなく、落ちたらどうなるか?ということだと表面では指導しますが、実際は、きちんとプロテクションを入れると蔑まれ、プロテクションを飛ばすと尊敬されます(笑)。
■ 初心者は5.7も登れない人が普通です
このような文化が残っている限り、初心者は5.7でもアップアップですから、クライマー人口が増えるはずがありません。
しかし、外岩の5.9は、インドアとは違いますので、大変ですよ。私は5.9が初オンサイトできるまで、2年半かかりました。スタートは5.8のオンサイトでした。
私は、すでに5人以上、まったくの初心者を指導していますが、私が初心者当時にノーテンションで登れた5.8が登れるスキルレベルの人は、若い男性を含めて一人もいませんでした。
クライミングを50代で始めたオジサン登山者など、基本5.6の個所でも、登れなくなって、すぐに「登れません」と言います。
■ トンデモクライマーの温床
そういう人をまだビレイもできないのに、セカンドでマルチに連れて行って回っています。
それはトップを登る人は、落ちないからですが、これでは、セカンドの人は、ガイドさんに連れられているのと同じで、経験から学ぶことができず、何のスキルも追加していかなくなります。
それほど、セカンドをしてくれる人が品薄ということです。
しかし、セカンドが何も分かっていない状態でマルチに連れて行っても、なんていう山の何というルートを登ったか?すら知らない登山者を作るのみです。
そういうセカンドは、ロープワークを盗む、とかもしません…というか、できませんので、結局、「登攀歴5年です」と言うので、リードさせてみたら、ランニング支点を引っ張りながらリードし、終了点も作れない、懸垂もセットできない、5.7も登攀力的にまともにリードできない、ロープのまとめ方も知らない、です。
経験年数と実力がマッチしていないと思い、「どこをどう登ったのですか?」と聞くと、それも知らないです。
ということで、日本のクライマー教育は、全くおかしなことになっています。
お客さん待遇で連れて行き、登れないやつを蔑む、と歪んだ現象が起きています。
それがおかしい事、と気が付かないのは、正常な関係性、を見たことがないからではないか?と思います。
それしか知らなければ、それを受け入れる以外ないので。
■正常なクライミング
正常なクライミングは、
・安全第一
・プロテクションは、そのグレードを限界とする人のために適性に打ってある
・ガバは、ピン替わりではない。ガバが安心できるホールドかどうか?は握力次第で、人によっては、ガバでもガバでなくなる
・ロープワークをきちんと教えてから、クライミングする
・ビレイを教えてから、クライミングする
・5.7でアップアップの人と5.12でアップアップの人では、両方とも頑張った量は同じ
・怪我をした仲間や落ちた仲間には、思いやりを持つ
・互いに自分が登りたい課題を大体同じくらいの時間ずつ、ビレイしあう
です。上下関係で登るクライミングは、まったく楽しくないです。