2020/12/28

自分の価値観を譲らない強さを持つ必要性

■ 頼りない者同士であっても、協力して正解を紡いでいくのが一番

だな、と改まって振り返って反省しています。頼りなくても、自分は自分の正解をみつけることができると信頼する、ということですね。つまり、ベテランなどの外部に正解を求めたり、頼ることはできないということですね。

以前、23歳男子の後輩ができました。

当時私がいた山岳会では、たしなみ程度しかアイスクライミングをしないので、そんな練習量じゃ足りない!と鉱泉アイスキャンディーフェスにパートナーゲットに出かけたら、若い男子が私のテントを訪ねてきてくれたのです。まぁ、フェスレベルの人(今日初めて登る)と比べたら、私は断トツ登れたので…。頼りにしてきてくれたんですね。

彼はアイスは初心者でしたが、若い人は見たものをコピーする能力に優れているので、アイス40年の青ちゃんとのクライミングに混ぜてあげたら、あっという間にムーブを身につけました。

が、ロープワークを覚えないと。外アイスで時間がかかるロープワークを教えるのでは、寒すぎる。季節のいい時期に岩で、となるので、他の先輩に出動してもらったりして、岩講習を彼のためにセットアップしたり、色々と急がしかったです…。
 
たぶん、アイスをしたいのだけなのに、なんでロープワークを覚えないといけないのか?初心者の彼の立場からは分からない。

ロープワークなどは、本人がやる気にならないと、なかなか、身にもつかないわけです。本もいっぱい貸し出したりしましたが、読む時間がなかったんでしょうかねぇ…

結局、私が山梨を出るときに、彼を託した先輩曰く、「ああいう子はだめだよ」ということだったのです…。残念。

理由を考えると、その先輩も私も雑草系で、粗削りで、未習得のことはいっぱいあるだろうと想像して自覚がある中でも、独学で、やりくりして何とか自分自身を成長させてきた、ということを考えると…? まぁ、そう結論するだろうな、となります。自発性というエンジンに欠ける。

年配の人の言うことを真に受けすぎというか…素直な良い子はクライミングにはイラナイというか。

とはいえ、自発性があり、自立していこう、という独学派は抜けも多い、です。

私もそうかもしれぬという思いがあるので、いつも自信をもって教えているわけではありません。

私がやったことをそのまま他の人がやると(例:三つ峠2度目からリード)、途中で死ぬかもしれませんし、同じ失敗を繰り返す必要はないと思うし、指導ができるほどの視点には、まだ立っていないので、という部分もあります。

自己責任が身についている人でないと、教えづらいというか、教えたことがすべて正解と解釈する人だとダメなのです、クライミングは。クライミングというか、安全管理は、ですかね?登るほう、ムーブなどは、ほっといても誰でも上達するので。

というので、私も独学者の域を出ないので、自信がない。ので、来てくれた若い人は、大体、年配のベテランと言われる人たちに託してきました。経験の厚みが、抜けをカバーするものと思われたし、今まで生き残っている事実がとりあえず安全管理能力を示すからです。

■ メリットよりデメリットが多いかもしれません

しかし、抜けなく学べるというメリットは少なく、逆に間違ったことを覚えてしまうリスクのほうが高いかもしれないと、ここ最近は思います。

害悪も一緒にハンドダウンされてしまうのです。ベテランの悪いところを身につけたりとか、肝心の学ばないといけないところを教わらなかったり…とかするのです。

例えば‥‥

1)教わるべきことを教わらなない事例 登っていい氷と登ってはいけない氷の見極め
2)悪いところを身に着けてしまう事例 ビレイ

などです。

ベテランは、登っていい氷と悪い氷の見極めが的確なので、登って崩壊する氷には登らないですが、若い人は登ってしまい、案の定、氷が崩壊して骨折していました…。

岩に置き換えるとボルトや支点ですね…。

危険を排除して、登攀すべき対象を見出す、ということは、どういう課題ならベテランが登攀対象として採用するか?という観察からしか導き出せない。

【具体例】

今回は、私は日向神に一緒に本州からのベテランクライマーに行ってもらって、その支点作成や登りのスタイルの採用を見て、ずいぶんと行動指針を作るのに役立ちました。

今までは山梨で一緒に登っていた先輩と登っていましたが、彼もこんなヘンテコな支点は見たことがないので、どうしたらいいものか、お互いに分からなかったのです…。山梨は外クライミング先進国なので。九州クライマーは、これが普通だと思っているので参考になりませんし…。

ビレイも課題で、ベテランというのは、昔はフリーを練習するインドアジムなんてなかったわけなので、もれなく全員がアルパインクライマーです。つまり、アルパインクライマーと言うのは、決して落ちない。落ちない登りしかしないのです。ということは、アルパインのクライマーに育てられたビレイヤーは、要するにキャッチの経験がないということです。

これは年配のクライマーのみならず、若くても、師弟制度で登り、人工壁に行かずに外岩クライミングしかしない人は、ベテランの操り人形のごとく登っていたりします。そういう人は、ビレイ経験が形骸化するほか、思考停止の害をも受けます。

私の育てていたO君は、師匠の青ちゃんとアイスでダラリンビレイを身に着けてしまいました…。アイスではだれも落ちないからです。本当に、私はがっくりと言うか、この1年は何だったのか…という思いになってしまいました…(涙)

あるいは命知らずクライミングの価値観がハンドダウンされてしまいます。例えば、湯川では、アイスは脆く、上部はミックスで短く、つまり、落ちたら危険な課題ということです。(テクニカルで楽しいとは言えますが)

とはいえ、歩いてトップロープ支点の立木にたどり着けるので、大概の人はトップロープで登ります。命の危険を冒してまでリードする価値があると思うか?ないと思うか?は、本人の価値観次第です。リードしないと気合が入らない人はやったらいいですし、したくない人は別に必要自体がないです。

ところが、リードしろと強いられて本当に嫌でした。その時は、大勢の人の前で大喧嘩して、そのようなクライミングは否定しました。

そういう、ある種の強さ…がないと、ハイハイ、と言ってリードでとりつき、ミックスで落ちて、ダラリンビレイで下の氷にたたきつけられても、自業自得、というのがクライミングの掟というか、そもそも、人生の掟、なのです。

とくに湯川は距離が短いのでビレイはシビアなのですから…。

師匠の青ちゃんとは数えきれない喧嘩をしました…。 その一つ一つは、私にとって周囲からの評価は価値がないにも関わらず、彼にとってはある、というのが問題のようでした。その敬意の内容が、命知らずさの度合いに基づいているということだと、今振り返るとアリアリと感じられるのです…。ただ、当時から私の価値観は、
 
 リスクは度胸で登って乗り越えるのではなく、
 リスクはスキルアップで克服する

という方なので、全く合わなかったのです。
  
 合わない価値観の時に譲らない強さを身に着けるのは、この世界で身を守る大事なこと

だと思われるので、

 素直なよゐこに欠ける資質はそこかなぁと…。


2020/12/24

命題: ボルトの状態が判断できないなら、登るべきか、登らざるべきか、自分で判断しなさい

命題: ボルトの状態が判断できないなら、登るべきか、登らざるべきか、自分で判断しなさい

A) ボルトの状態が判断できない × 登る
→ 落ちない登りしか許されない課題 もしくはバクチ登り

B)ボルトの状態が判断できない × 登らない
→ 当然          → 現代の若者がロープしない理由


C)ボルトの状態が判断できる × 悪い ×登る
→ 死んでも自己責任    → ほぼほぼ 古い岩場の状態 さらに条件分けしてスタイルで安全性を変えて登る

D)ボルトの状態が判断できる × 良い ×登る
→ 安全

E)ボルトの状態が判断できる × 悪い × 登らない
→ 当然  
        → 現代の若者がロープしない理由

F)ボルトの状態が判断できる × 良い × 登らない
→ なんで? ま、いいけど…

と言うことになるよなぁ。

反社会的でなければ何をしてもいい

先輩たちが示してくれた山 を考えています…。

1)川上村 女山
初めての山岳会の先輩が示してくれた山は、マイナーな里山の雪稜。ずーっとラッセル。山を見つけるところから勝負。いかに地図を熟読して、駐車可能な林道をみつけ、余り歩かずに取り付けるか?が勝負。危険はないけど、雪と孤独はいっぱいある。体力はいっぱい必要。体力維持と山カン維持の山。


2)太刀岡左岩稜
易しい、半アルパイン半トラッド半フリーで、ボルトもあり、整備された5.6~5.9くらいの岩稜登攀。落ちたら大変ですが、このグレードならまず落ちない。2段を登り、ガイド資格がある若者のクライマーが、これが好きと言うのですから、意味することは重い。これが登れたら、登山ガイドはどこでも可能。


3)阿弥陀中央稜 体力測定の山
最初の師匠の鈴木さんの山。南稜を毎年登っていたそうですが、年を取り、グレードダウンして中央稜。なかなか良い尾根です。ゲレンデのアイスとか鈴木さんは、南沢小滝や大滝は決して行かない。混んでいる=危険、です。実際その通りでアイスの一番の危険は、上から人やアックスが降ってくることです。教え方は最初からリードでした。

4)インスボン
青ちゃんの山。とにかく30回も行っているんですから大好きなんでしょうねぇ…。私は一回行けば十分。私的には韓国はむしろアイスゲレンデが楽しいような気がする。教え方や考え方が合わず、全然リードさせてくれないのでストレスを溜めました。男子と行くとリードの取り合いになって、喧嘩別れするそうです(笑)。男子とじゃなくても同じかい!リーダー固定制度の山。


5)ラオス
新保さんの山。フリーで初めて楽しくなった。石灰岩という新境地が開けた。石灰岩よりも、世界のクライミング文化が好きになっただけなのかも?

行く以外、何もすることがないくらい手軽。行くだけで80%は、こっちのもの!みたいなところなので…。つまり登らなくても、何もしなくても、行くだけが価値があるので、みんなにも行ってほしい。日本でもこんな岩場が一つくらいあってもいいのに、と思う。

なんというか、西成区が岩場にあるみたいな(笑)? 昼間から飲んでるおじさんのクライマーバージョンが常駐中みたいな?(飲んでクライミングをする人がいるというわけではありません) 毎日遊んで許される場?

■考察

現代の社会状況下で定年した人は、基本、やりたいことをお預けにして、我慢して定年退職を迎えてきた世代です。その心理的ニーズは、”もうしたいようにしたいんだよ”、でしょう。

その、 ”もうしたいようにしたい”(不満) が 

1)不倫であるとき → 山岳会がセクハラの場になる

2)自分の山であるとき → 体力低下や力量低下に見合った後輩(多くは女性であることが多い)を探すようになる。一軍クラスの山は、その人が本当に望んだ山と言うよりも、世間に対する自己証明であることが多いのが男性の山屋としてのピーク期だからです。

3)リードだけ&特定の山だけ楽しみたい → 付き合ってくれる人(初心者であることが多い)をとっかえひっかえする

4)自由にしたい → バム?ラオスみたいな岩場?

5)人間的成長 → 岳連などの役職や後輩の育成

6)栄誉に浸る → 名誉職に安定

7)知りたい → 世界放浪?

となると思います。

”したいようにしたい”のが人間の本来なのですから、それでいいと思うのですが、問題になるのは、”したいようにしたい”の中身が反社会的な時です。

例えば、不倫など。セクハラや、例えばお妾さん、浮気などは、男の甲斐性というのは、いつの時代の話ですかと言うことなので、現在は犯罪です。

私が寛容に感じるのは、バム生活者の方で、経済的負担をどこにも掛けていないのですから、岩場に住んでいるみたいな状態でも、いいじゃないかと思います。若者も、いつでもビレイヤーがいるというなら、気楽に岩場に出かけて行けますし。物質的な豪奢をあきらめて、毎日クライミングという生活を選ぶ選択肢があっても、別に良いではないか?とすら思いますね。

故・吉田和正さんを擁護するわけではありませんが。

指導者に求めるものとステージ

 先生を選ぶ基準

ーーーーーーーーー
ステージ1 偶然
ステージ2 スタジオ内 レッスン内容×先生
ステージ3 知名度
ステージ4 自分が求めていることを与えてくれるかどうか?
ーーーーーーーーー

2020/12/22

韓国の若いアイスクライマーの装備


チェストハーネス。これを見て、

  怖がり~

と思わないで、

  よりリスクテイキングなクライミングしているんだな~

と思いました。

2020/12/21

終了点とプロテクション

■ 終了点とプロテクション

一般化すると、4つのケースが考えられます。

1)プロテクションも悪く、終了点も悪い
=ギリギリボーイズの方限定。一般クライマーは登らない

2)プロテクションが悪く、終了点は良い
=トップロープ課題

     ---------以上、アルパインクライミングーーーーーーーーー

3)プロテクションは良いが、終了点は悪い   → TRADクライミング
=リードして懸垂で降りる

4)プロテクションは良く、終了点も良い    → フリークライミング
=普通のあるべき姿



クライマーの自己責任の取り方 ボルトに対する対応力:事例集 

■ボルトの信頼度によって登り方を変える

はじめに。最もあってはならないこと:煽り&煽られ。

「クライマーなら、自己責任で登れ」

”手で押したり、引っ張ったりして、大丈夫だと判断したボルトに通常のフリークライミングの慣例として、落下係数2のフォールをするような登りで挑むこと”

は、結局は、判断の根拠が、

 ”見た目で、大丈夫そうだった”、
 ”手で押してみたら、大丈夫そうだった”

などのおぼろげな根拠しかないまま、ボルトを信頼して登ること。見た目や手で押しても、ボルト強度は判断できません。かかる荷重はせいぜい数kg…。 

これでは、自己責任ではなく、無謀の後押しに、ほかなりません。

以下、具体的な行動の指針として、ご参考にされてください。

個々人で、採用できる安全マージンは差があります。誰かがバンバン落ちて、そのボルトを信頼していたとしても、あなたが信頼するかどうか?は別の話です。例えば、同じ高さから落ちても、肉体の壊れやすさは、個人差があります。

事例1)シャックル直付けのような、確信犯的に信用してはならない終了点の場合 

→ 係数2で落ちるクライミング(RP型)はしない。TRは必ず3点で取る。
 
このようなボルトで落下係数2の落ちるクライミングをするかしないか?は、当事者の判断によるべきです。パートナーであれば、それが意思疎通できるような人と登るべきです。

事例2)ボルト配置が悪く、落ちたら致命傷になる課題

 → 登りながら、プリクリップで対処


事例3)課題は適切(上で核心なので落ちても安全)だが、プロテクション・終了点が、両方とも信頼できない課題

  → プロテクションに頼らないで登る、もしくは、各駅停車でテンション登り 係数2のフォールはしない

 事例:このプロテクションは、ペイントで腐食もしくは錆が、ごまかされています。信頼する(落ちる)か、どうか?はクライマー次第 

事例4)人気ルートでボルトがケミカルだったり、リボルトされており、信頼できそうな課題

   → 積極的にフォールしてOK 落ちたほうが疲れない

事例5)落ちたらぶつかるルート
 
 凹角スタートで岩の突起にぶつかるなどの予想できる危険がある課題  
  → オンサイトにはこだわらず、リスクを感じたらエイド

事例6)難しくてもリスクが低い課題 

 例:自分のRPより難グレードでも、ボルトがよく、ボルト間隔が近い課題

 → Aゼロで掛けながらリードし、TRで登れば、安全にスキルアップできる

事例7)関西の”斜陽”のような、後ろに走らなければ確保できない事故多発課題
 
 → 登らない

■ その他 予防策

1)ヘルメット着用

すでにフォールで頭を打った経験がある場合、や、余裕がなくロープをまたぐことがある場合

→ ベテランクライマーがノーヘル、ニット帽だったりすることを気にせず、揶揄されても気にせず、ヘルメット着用する。

さらに念を入れるには、チェストハーネスをつける。上手に落ちても、後頭部を打つクライマーはいる。その場合に、責任を取る=長い入院生活を送ることや半身不随になることも含め、結果を被るのは自分。

2)初めて組むパートナー 
 
 →とりあえずビレイをテスト 一発目で軽く落ちるべし

3)ほかの人に紹介するルート
 
 → できれば係数2のフォールも可能なボルトの品質が良いルート


■ プロテクションの質により、登攀のスタイルを変える

登攀のスタイル…TR、プリクリップありリード、Aゼロリード、ぬん掛けリード、マスターでのリード、フラッシュ、オンサイト…等を選択するのに、

 ボルトの良しあし

ということが関係してきます。 

落ちれないボルト配置(ランナウト、トラバース)の課題では、2グレード上を登れるようになってから取り付く、などの知恵が言語化されていないので、いつまでも経験者についていないことには、その岩場で主体的に登ることができない、という事情が日本の岩場にはあります。主体的に登るというのは、自由と言う意味です。

経験者の方も、その経験には当然偏りがあるため、すべてをゆだねられる状況にはなく、とくに年配のクライマーのビレイ立ち位置には大変問題が大きいことが多いです。昔の経験から、ボルトの品質には、妥協があることが多く、人は誰でも年を取れば、最新情報には疎くなるのが当然ですので、現代の知識を期待することも、無理というものです。そこは、ビレイをしましょうと申し出たり、ボルトを負担したり、情報提供したりしましょう。

ボルトの良しあしは、見た目、手で押す、などでは判断できず、熟練の職人の目、もしくは、ボルトタイプ、材質、設置年、設置者という4つの情報が揃わないことには、安全性は判断できません。

情報不足で判断できないことに対して、「クライマーなら自己責任で登れ」と発言することは、要するに、”安全性に根拠なくとも、危険に挑め”、ということですので、そのような発言は、控えましょう。無責任です。あなたはその人が怪我をしたとき、罪悪感を感じずにいられますか?

怪我は武勇伝にはなりません。むしろ、リスク認知のおろそかさを示すものです。

■ RPするにも内容に細かな差が

RPにも内容の良しあしに色々な細かい違いがあります。

古いクライマーからは、落ちるクライミングをする若い人たちが危険だ、という指摘が根強いです。

しかし、フリークライミングはルール上、1本目を掛けたらどこでも落ちてよいというルールであるのですから、落ちる方が悪いというのは責任転嫁であって、正確には、落ちれないフリークライミングが、そもそも、フリークライミングの定義に反しているかもしれません。

そのような課題は、例外的ともいえるルールと違う現象ですので、トポ等に記載があるべきで、ちょっと説明が不足しているのではないか?というほうが事情の描写としては、適切かもしれません。

私が知っている若いクライマーたちは、13クライマーなどで、昔のクライマーと比較してはるかに高難度を登っています。危険をスキルで超越できる人たちですが、”9割落ちている”そうでした。登れない課題に挑むのがフリークライミングなのだから、当然です。

11程度を登る一般のスキルレベルのクライマーにも、自分の身を守る方法論が必要ですが、こうした事情説明は、昔の登攀しか経験がないベテランからは出てこないのが現状です。ベテランの中でもラッペルのスタイルに進んだ人は理解がある場合もあります。

今回は、粗削りながら、ひな形ができました。ベテランの方のご意見、ご指南をよろしくお願いいたします。

大事なこと。 落ちながら登るには、確実なプロテクション(ボルト)が必要です。

悪いボルトのルートでは、確実にオンサイト出来るつもりでないとバクチになるので、フリークライミングの見た目をしたアルパインクライミング、とでも表現したらいいような課題については、オンサイトにこだわる必要はない、というのが実情です。2000年代以前に開拓された岩場は、ほぼそのような岩場です。(小川山も結構そうです)

また、ラッペルで開拓されたルートに関しては、開拓者すらOSはしていません。リードしない開拓者もいるくらいです。

■ 世代間の知識の差について

年配のクライマーは、ボルダーをしないので、SDスタートのほうが難しいことがよくあるということを理解していません。シッドダウンがより難しいということは、リードでは背が低いクライマーが取り付くほうがより困難、ということと同じです。

これは、私は小川山のジョコンダで理解しました。一手目、届けばガバ、届かなかったら、サビて手で抜けるピトンに命を預けて(?)小さいスタンスを拾わないといけなくなります。とはいえ、下部核心の課題は、下地次第です。下がふかふかであれば、下部核心であっても、ボルダーと同じ程度のリスクです。しかし、下が海岸のように岩だとか、不安定な斜面という場合で、下部核心であれば、容易に捻挫します。捻挫は数か月最低かかる故障につながります。それを大きいと見るか、小さいと見るかは個人次第です。

オンサイト重視のクライマー=難しいルートは登れないクライマーという可能性もあります。

■ ルート途中のプリクリ 技術を身に着ける

エイドをやっていない現代クライマーは、クライミング中のチョンボ棒によるプリクリップクライミング、については、よく分かりません。1ピン目が遠い時にかけるプリクリップ以外のことは無自覚かもしれません。落ちれないボルト配置(ランナウト)のような課題の場合、ルートの途中でプリクリしないと、いくらビレイヤーが良くても、墜落すれば、怪我を免れません。それで登る勇気が出なくなった場合、敗退するにも、その前のボルトに落ちてぶら下がれない、という意味です。その場合は、なんとかプリクリするしか、安全に敗退する方法がないです。

■捨てビナ (捨てマイロン)

難しいグレードに取り組みたい人は、捨てビナか捨てマイロンを持つと自己責任で敗退できます。

■ グレードに上下なし

12でひいひい言っている人と、10でひいひい言っている人と、14でひいひい言っている人の心の中は同じ動きです。

どこで、悲鳴を上げていても、その人の限界に挑んでいるという点で同じです。そのギリギリ感が、”こわ楽しい”とか、”無になれる”とか、表現は色々であっても、同じことを楽しんでいるので、上下をつける必要はありません。

比べる心が不要なのがフリークライミングだと思います。

低グレードで、ひいひい言える人は、その分長くクライミングを楽しむことができます。正直なところ、14がすぐ登れてしまうと、そのあとが困ってしまいます…。そのような人を何人か知っています。

2020/12/20

一般向け外岩整備と現代初心者向け外岩講習の両輪

■ ボルトとガバ

前に一緒に登っていた開拓者のボルト感覚っていうのは、

ガバ=ボルトを飛ばしていい

という論理だったような気が登っているとして来たのです…。が、私はクライミングに才能があるタイプではないので、私が困難に感じるだけかなと思い、色々な人に相談したら、それは多くの人が感じることだそうです。

フリークライミングは、理論上は1ピン目を掛けれたら、後はどこで落ちてもいいハズです。甲府で一緒に登っていたクライマーには、そういう風に教わりました。
 
しかし、現実は、小川山でもやっぱり3ピン目までは、なんとか登れないと落ちてよいとは言いづらいですし、5.7のスラブなどは大ランナウトなので、2グレード上の5.9のスラブが登れるようになっていないとリードは、ちと、厳しいです…。ランナウトというのは、落ちると大怪我という意味です。

  そのグレードを限界とする人のために、ボルトを打つ

のは、現代日本では今から、の技術で、

 これが突破できないと、フリークライミングがみんなのもの、には、なかなかなりづらい

です。

■ 現状に対する対策
 
現状では、インドアクライマーが、アウトドアデビューするには

・通し八の字
・ビレイ位置
・ヌンチャク一個持っていくこと
・捨てビナなどの敗退
・落ちていいところと悪いところの講習
・落ちる時の体制の事前学習

などがデビュー前に必要かなとおもいます。

特に人工壁では、墜落は気楽ですが、同じ気楽さで落ちていいようには、今の外岩のボルト事情は、できていないです。

そこでやはり、上記のような現代的事情に即した初心者講習が必要かなと思います。

■ 岩場整備

一方で、シャックル直付けとか、ハンガーなしチェーン直付けなどの、

 古典的終了点

は、歴史上、”とりあえず”という位置づけで、”ベストプラクティス”というわけではないので、上級エリアに限り、一般クライマーが登るグレードや一般クライマー向けの岩場からは、一掃が望ましいのではないかと思います。

 きちんとプロテクションとして成立するボルトと配置

で登るという意味です。

この場合、プロテクション という意味合いは、自分を墜落利いすくから守る機能、という意味です。最低でも、人間が壊れる12-13kN以上の強度がないと、落下できませんから、強度不足のボルトは、”プロテクション”の定義の外にある、ということになります。

リングボルトやハーケンなどは、どれくらいの強度か?ということと、掛けられるリスクの量は関係があります。

その時、その時に合わせて、正確にリスクを計量でき、その計量にあった自分なりの取り方でリスクを取れる、というのがクライマーの完成形かなと思います。

つまり、リングボルトでは落ちないで登り、シャックルでも落ちないで登り、グージョンの時は果敢に攻める、というようなリスクの掛け具合の差を実践行使できるということですね。

2020/12/18

二子山エアウェイ 5.11c →7c 当時日本最難

■二子山の岩場再生のこと

最近、二子山の岩場の再生のことを知り、私と同じ夢を見る人がいるんだ~と勇気づけられているのですが…。

再生された岩場で、看板ルートを再度登ってみたら、あれま!難しいじゃん!って話題です。

昔のルートって、これがありますよね。

昔のクライマーは、今よりうんと、競争相手も少なく、ジムもまだなかったので、最近登った〇〇が5.11bで、今回のはそれより、難しいような気がするから、5.11cというグレードの与え方です。とりあえず、周囲と見計らってグレードをつけていたそうですが…、そもそもクライミングできるルートも少ないですし、母数が少ない中で適正な判断ができなかったそうです。まったくあてずっぽうと変わらず、実はうーんと難しくて、現代の13、14登るクライマーが登っても、うなってしまう場合もあるそうです。控えめにグレーディングされているほうが謙虚さがうかがえますね。

なんとエアウェイは、7cなら12d、当時日本最難でしょう、とのこと。高難度と言っても、まだ12台なので、手ごろ感あり、とりついて頑張る男子いるかもしれません。7cかぁ。

話題性もあるし、これぞ再生の魅力でしょう。

■ フレンチグレード

ラオスでは、フレンチグレードだった。このことは、意味があることだと思います。

国際性もですし、再生後という意味、現代の岩場という意味が込められているのかも。

日本の岩場は、海外の岩場でもっとも人気があるグレードが少ないという事情があります。6Aとか6台ですが…そこがクライマーの最多価格帯というか、人口数が多いあたりです。このグレードで多種多様な岩に触れるというのが、むらの無い成長に大事。

その辺が日本では確立されていないので、常にリードしながら成長していくことはできないクライミング事情となっています。本来は、限界グレードはリードしながらあげれるはずですが、TRでの暗記が必要になっていますが…。

まぁ、課題設定者も、リードで取りついているわけじゃないし、オンサイトはしていないので…、いいっちゃいいんですけどね。最初からトップロープで試登して作るからです。

最初からトップロープでの試登を前提にしているのがフリー… ヨーロッパのスタイルなので、その意味でも、アメリカングレードシステムのデシマルから、ヨーロッパのグレードシステムへの移行は象徴的でいいかな、と思います。

今後はグランドアップで作られた課題をデシマル、ラッペルのルートをフレンチにしたら、分かりやすくていいんじゃないですかね?ラッペルのルートだったら別にオンサイト狙いじゃなくてもいいような気がしますが、グランドアップのだと、オンサイトできたらうれしいですよね?

岩場再生というか、リボルトですが、人気があるルートのボルトがしょぼいという問題は、早期解決が必要そうですが、放置状態というか、頼りのJFAがあまり頼りにならない状態が長く続いています。

この二子山の再生をきっかけに多くの岩場が、再整備に動き出すといいですよね。



2020/12/16

UKのボルト基金

 https://ukboltfund.org/?fbclid=IwAR097xAi6MfGIedKlM9zjNQa9K181u2VMNtnmmjI87v8pEnoM1fmwi1DHR8

こちらを見ると、各地域ごとにボルト基金があるようですね。

やっぱり岩場ごとか、九州なら九州全体のボルト基金が必要で、全国バージョンというのは、東京一極集中を生むため、地方の人はモチベーションが上がらない仕組みかもしれませんね。

JFAによると、岩場指定の振り込みも可能だそうですが、フリーファンをみても、そんなこと、どこに書かれているのか、分からない程度にしか書かれていないし…。

■ 余談:昨今のクライミング雑誌の低落ぶり

硬派のフリーファンですら、クライミングソックスの特集に14Pだと。そんなことだから、誰も読まなくなるんですよ。

ロクスノのチョーク特集もいいかげんにしろ、なノリでしたが、中身のないものを買う人がいないのは当然ですよねぇ。

再燃中のアクセス問題に14Pをさき、全国的に知識を共有すれば、無い知恵もでてこようというものです。ソックスは2P程度でいいというのが正常な物事の比重感でしょう…

だから結果として、リボルトが進まないんですよ。

やり方が悪い、ということの結果=現実、は明らかですなぁ。

12月15日のネット調査 水平打ち + ASCA

 1)避けるべき危険なボルト(米国版)American Safe Climbing Association(ASCA)

https://www.safeclimbing.org/education/dangerbolts.htm?fbclid=IwAR0zUe1gdbC-JnaXr13vrlUso-BI176apHtxpmhDa9q_tsSnpWsZKX5_MOQ

2)BMCのボルトガイドがここから、ダウンロードできます。すごく良い資料ですがかなり重いので各自ダウンロードが最適。


3)水平打ち
キンクするので、辞めたほうがいいです。少し上下にオフセットする配置にすれば、下のリングはほとんど、すり減らないので、交換時にも見極めが楽です。


この形だとキンクします。

この形で、ロープを直接かけたトップロープはだめです。

支点構築時は、ADTやJDTにならないように、クワッドアンカーなど荷重分散系を使ってください。









4)ASCAも残置スリングからラッペルリングキャンペーンをしていたようです。


アメリカでも残置スリング文化だったみたいですね。

何事も徐々にしか変わらないのですから、とにかく、前進すれば良しとしましょう。













■考察

一つのボルトの強固さ(Solidかどうか)の査定が、時代で違うんだろうなと思いました。1点にぶらさがるというのは、良くないのは当然ですが、

A)1点目強固 2点目バックアップ
B)1点目脆弱 2点目脆弱 = 荷重分散

なのか、で 配置は変わってくるものと思います。アルパインの思想だと、1個目の支点は脆弱で崩壊するかもしれないことを前提にしています… ので、2点目は必ず必要ですが、それは、2-3kNしかかからない懸垂下降でも、決して失敗が許されないからです。

一方フリークライミングの価値観では、ボルトは強固であるというのが前提です。何しろ、中間支点では、激落ちするわけですから… 人間が壊れる12-13kN以上の荷重に当然耐えるのが中間支点であり、そうでないとギリギリにどうやってチャレンジできるでしょうか?

というわけで、アルパインクライミングの思想の名残りがフリークライミングの岩場に持ち込まれていることが、現状に現われているのではないかと思いました。

フリークライミングでも、当然懸垂下降やローワーダウンは、失敗がゼロ%でないといけないわけですので、ボルトは2個必要ですが、横に並ぶ必要は、一般に25kN以上もの強固さがあるボルトを使っている場合、不必要かもしれません。ハーケンやRCCで登っていた時代の名残なのでしょう…

ちなみに、カムの終了点の場合は必ず3点です。