https://note.com/kinny2021/n/n0464af03a617?app_launch=false
クライミングにおける「サンドバッグ(sandbag)」という現象は、まさに「(登った本人や地域の基準では)5.10cの実力が必要なのに、あえて(あるいは歴史的に)5.9とラベルを貼られている」という状態を指します。
この状況を細かく分解すると、以下のようになります。
1. 「俺にとっては5.9(基準)」という心理
「実際は5.10c相当なのに5.9と呼ぶ」背景には、主に2つのパターンがあります。
「歴史的・地域的な基準(ローカルスタンダード)」:
昔の開拓者が、そのルートを「5.9だ」と言って初登したため、そのエリアの基準が全体的に低く固定されているケースです。そのエリアのクライマーにとっては「これが標準(5.9)」であるため、客観的に見れば5.10c相当の負荷があっても、彼らは「5.9」と呼び続けます。
「個人の能力による主観(エゴ)」:
質問者さんがおっしゃる「俺にとっては」という感覚に近いです。登った本人が非常に強かったり、特定のムーブが得意だったりすると、客観的には難しいルートでも「簡単だったから5.9だ」と判断してしまい、それがグレードとして定着してしまうケースです。
2. なぜそれが問題(議論の種)になるのか
提示されたテキストにもあった通り、この「サンドバッグ」は以下のような不和を生みます。
後続クライマーの混乱: 5.9だと思って挑戦した初心者が、実際の5.10c相当の難しさに直面し、安全上のリスクを負ったり、自信を喪失したりします。
「土嚢(重り)」という表現の意味: 本来の難易度より低いグレードを付けることは、後から来るクライマーにとって「偽りのラベル」を背負わされるようなものです。そのため、皮肉を込めて「サンドバッグ(重りを背負わされた)」と表現されます。
3. この状況をどう捉えるか
今回のテキストの著者は、この「5.10cなのに5.9と呼ぶ」という主観的で曖昧な状況を解消するために、「動きの難しさ(Vグレード)」と「持続性(S評価)」を分離しようと提案しています。
著者の主張を当てはめると、現在の「5.9」というラベルを盲信するのではなく、
「核心はV0(5.10c相当)の動きがある」
「全体的にS8(持続的にパンプする)である」
といった客観的な構成要素を提示したほうが、エゴや歴史的背景に左右されずに、クライマー同士が正しい情報を共有できるのではないか、ということです。
したがって、「『俺にとっては5.9』という個人の物差しがグレードとしてまかり通ってしまう現状」こそが、まさにこのシステム提案が変えようとしている対象そのものと言えます。