ある時、三人の若者が山の中で吹雪にあい、遭難しそうになった。 C君はぐったりしてうごけなくなった。途方に暮れたA君、B君のうち、A君は頭の良い人で『このままでは皆があぶない。僕が一人で先に様子を見てくる』と言って、二人を置いて、身軽に行ってしまった。
ところが待てど、暮らせど、戻ってこない。残されたB君は、『まぁ仕方がない。ともかく凍えるよりは』と、倒れたC君を背にして、とぼとぼと雪の中を歩き始めた。
さいわいB君も、C君も救助隊に助けられたが、途中で彼が遭遇したのは、なんと一人で先に進んだA君の死体だった。
その時、B君が電光のように悟ったことがある。『僕はC君を助けるつもりで歩いていた。だが実は、背にしたC君の体のぬくもりで温め合い、自分も凍えず助かったのだ』