アイスはプロテクションを自ら打ちます。一方、岩ではプリセットされています。プリセットされた岩に慣れてしまった人に、そうでないクライミングを教える場、としての体験アイスを考えてみたいと思います。
■ リードするのに必要な最低レベル
アイスもフリーが登れる人と登れない人では、だいぶ進歩具合が違います…一番お勧めなのは、
・フリーで5.11がインドアジムで登れる
・赤岳レベルの雪山が個人で貫徹できる
という前提を作ってからアイスへ進むことです。体験レベルであれば、これらの条件は解除するしかありませんが…。
■4級はどんなレベルか?
4級のアイスクライミングというのは、今日この日、全く初めてアイスクライミングをした人でも、トップロープならノーテンションで登れるという難易度です。
ですので、もしアイスでクライマーになりたい人がいた場合は、安全管理の面からも、4級がトップロープで登れない人は、ジムへ戻り、赤岳レベルの雪山と併用でトレーニングをしばらく続けた方が良いと思います。アイスで一番事故が多いのは2級、つまり歩くところだからです。ムーブ的にもかなり違います。
誰でも登れるはずというのが4級ですので、4級で落ちるようであれば、まだアイスへ進む準備自体が十分できているとは言えない。つまり、外岩の5.9みたいなものです。(一般にフリーへ進む前提条件は、5.9トップロープでノーテンション完登です)
■ 余力がいる=リードで覚えることは多い
トップロープならノーテン登れるという状態は、クライミングムーブだけを見た時、そのクライマーにとってリードへ進む、余力は十分、ということです。
つまり、リードするのは、他に覚えることがいっぱいある、ので余力が必要、その余力は、ノーテンかどうかで、見極める、ギリギリ具合で見極めるという意味です。
覚えることの中身は…書くと長くなりますので端折りますが、一言にまとめると
アイスのリード負担は、ほとんどプロテクション
です。ので、
プロテクションの数が多いほうが負担は重く、
プロテクションが少なく登るほうが負担は軽く、
つまり、
プロテクションが少なく登るほうが負担は軽く、
つまり、
少ないプロテクション=少々手を抜いている
ということです。
■ 駆け引きの中身
自分がどの程度手を抜いて許されるクライマーか?
というのは、
自分が決めます。
この点が、かなり、自己責任具合が発露されるもの…
氷との駆け引きでもあり、自分の弱さとの闘い
でもあります。弱いと手抜き工事をして、うっかり落ちたときに、最後のピンが、遠~かったりしたら…いや~考えたくないですね。
ただアイススクリューは、見た目よりは頑丈です!脆弱なのは、氷のほうです…。
つまり、氷の質の見極めが、安全にはとても大きな要素になります。気温も関係します。一日の中で、いつリードしているか?というのも重要な要素になりますし…
さらに、どこをリードするか?というライン取りから、リードはスタートです。
■トップロープの時に、このリスク計算に思い至らないのが問題
トップロープで遊んでいるときに、このようなことを考えておけるかどうか?というのが問題です。
たいていの人は、考えておかない…。
ので、いざリードとなった時に、せっかくの経験が積みあがっていないということになります… ので、一度でいいので、初心者時代にリードのまねごとをした方がいいです。その後のトップロープ時代が無駄にならないようにするためです。
■ 岩との駆け引きを理解するためのアイスリードだとしたら
岩場の開拓者のために、適性ボルト間隔を理解するため、打ちながら登るというのは、どういうことか?を理解するためのリードであれば、高難度をリードする必要はないのですから、例えばすでに岩で高難度を登っているクライマーであれば、しばらくTRをすれば、登攀自体はあっという間に身につきます。
で、アイススクリューを打ちながら登ってもらう…その場合は疑似リードでもいいのかもしれません。そうすれば、駆け引きの内容が非常によく頭に入るのではないでしょうか?
早めに打たないとロングフォールになるな…と思いつつも、適切な打てるアイスがなく、やむなくランナウト…下で待っているビレイヤーが青くなっている…ごめんね‥ビレイヤー…という心理的駆け引きも、見えてくるのではないでしょうか?