2022/02/04

読了『ご老人は謎だらけ』

■ 読了『ご老人は謎だらけ』

クライミングしていると、年配の人と登ることは多い。アルパインを教えることができる知識がある人は、大体団塊世代で、団塊二世は、高校山岳部自体が消滅の危機にあった世代のため、山ヤ人口は究極に氷河期。

そして、人はすぐ年を取る。出会ったとき、63歳でも、あっという間に69歳。

■ 主観年齢

63歳くらいの人は自分のことを、”老人”とは自己認識していない。たぶん、55歳くらいのイメージでいると思う。ところが、69歳ともなると、70歳目前。70歳は確実に、”老人”、だ。

かくいう私も、43歳で師匠と出会い、23歳のO君と登っていた時は、自己認識は、38歳くらいのイメージで、さして体力的な衰えは感じなかった。

一方、福岡に来たのは46歳で、この時は明らかに年齢を感じた。登攀が難しく感じるというより、そもそも男性で24歳の人と同じモノサシで測られることに疑問を感じた。大学山岳部の生徒と同じ体力を期待されるとか、なんだか疑問だった…。

その期待値は、山梨で23歳の後輩と登っていた時は明らかに取り除かれていた期待値であったので、福岡の人…が大人の初心者、現代のクライミング初心者に対する経験値が浅いのだろう…と結論した。

つまり、「私が23歳と登っている」というと、「そりゃ、大変だね、困ったことがあったら手伝うからね」という態度が、ほとんどだった山梨時代なのだが、福岡では、なぜか、同じモノサシで測られる羽目になり、”お前はもっと頑張れ”となること…、それが謎だった。

普通は46歳と大学生は、同列に計測されることはない。最初から勝敗は見えているからだ。

これは、例えば、34歳でアルパインクライミングのために、ロープをスタートした現代初心者クライマーだって同じだろう。

さて、この本では、なぜ老人は〇〇するのか?という問いに答える。例えば、

なぜ運転に執着するのか?
過去の栄光に拘るのか?
なぜ男性は自治会会長になりたがるのか?
なぜ一対一の関係を結びたがるのか?

■ 退行したい

疑問が氷解したことの一つが、青ちゃんとのクライミングに、若い男子を連れていくと、なぜかいつでも、喧嘩別れに終わるということ…。

私のイメージは部活だったんだけどなぁ。私、マネージャ。青ちゃん、顧問。

老人ホームでは、男性は女性に1対1の関係を望み、女性はグループでの行動を望むことが多いのだそうだ。理由は、退化行動をとりたいから。

年齢に限らず誰でも、自分が気ごころを許した相手には、子供っぽい行動をとりたがるのだそうだ。その退行を男性はしたいのに、集団だと長、つまりリーダーをやらないといけなくなってできない…というのが理由。

たしかに、バタちゃんと菅沼さんとのクライミングに交じっている姿を見かけたときは、ちょっと意外だと思ったんだよなぁ…というのは、いつも登攀では、俺の言うとおりにしろ系で威張っているからなのだが…まぁ実際、経験値の圧倒的な差があるので、大体は言うとおりにしていた… ただ、登攀能力的に、実はオールドクライマーには、小川山はなかなか厳しい岩場なんだよなぁとは思っていた。日向神の比ではない。なので、本音は若い奴にロープを上げてほしいのだろう…。

Y澤さんは、その辺はもう枯れており、若い奴にロープを上げさせていた…もうリード欲はないというか、かっこつけるのを辞めたのだった。それができるかできないか?が老年期の楽しいフリークライミングを分けると思う。

私の考えでは、そんな上下関係に拘らず、ラオス形式で、誰かが毎週〇〇曜日と決めてさえいれば、勝手に部活が成り立ち、参加できる人が気軽な形で来れば、クライミングの技術は勝手に広がっていく… ので、私とあと一人定期的にクライミングを主宰できる人がいれば、クライミングの神様的には万々歳だろうと思っていたんだがなぁ…。

そうしたクライミングの伝統を後世に伝えていこう、という意図より、個人の都合が優先されてしまったのが残念だったなぁ…。 

新人男性だと、登攀力的に、というより、危険予知能力的に、リーダーはできないもんなぁ…。どっちかというと、こっちがロープあげてやる側だもんなぁ…。

自己防衛で、若い人とは登らないようにしないといけない、という状況にあるんだが、それは致し方ないかもしれない…なんせ、分かっていないのを分かっていないのが新人だからなぁ…。

例えば、九州では、トップロープノーテンで登って、「オンサイトだ!」とか言っている人に会った(汗)。全然分かっていない。

23歳、26歳と、みんなでやったプライベートレスキュー訓練…楽しかったなぁ。レスキュー訓練は、一緒に行く仲間とやらないと意味がありません。また、レスキューを共有することで、誰が技術力があるのか?判断力があるのか?そういうことも明らかになります。

ネイリングの練習方法(ハーケン打ち)

 ■ 山岳総合センターではハーケン配布されます

登る前に、懸垂下降を覚えるのと同じで、ハーケンが打てないのに登りに行くのは、行き詰まり、ゲームオーバーの元凶です。

登ったら降りれないといけないのですから、次に何が起こるか?予測していれば、懸垂下降ができない状態で登りに行くことがいかにアホな行為か分かると思います。

ハーケンも同じで、自然界にボルトはないのですから、支点を自分で打てるようになってから、山に出かけましょう。例えば、根子岳。

原則で言えば、”敗退から固める”というのが原則です。

■ 経験値の偏った人のアドバイスらしいですよ


このような雑誌の記事について、このようなベテランの批評があります。

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ヨセミテでいきなり練習?

シングルピッチのフリークライミングを十分していない人が、例えば瑞牆のマルチピッチでフリーの練習をしますかね?

国内でピトン打ちをしないで、いきなりヨセミテのビックウォールでネイリングなんかしたら大迷惑です。

そもそも、初級ルートでネイリングなんかするところがあるんですかね?

クラックをトップロープで登っただけでは、カムをセットし、それが墜落に耐えられるかわからないのと同じです。

また、エイドルートを経験者と同行しても、たいしたことはわからないです。ピトンは自分で打って荷重して効きを感覚として覚えるものです。トップロープでクラックを登っても、カムのセットや墜落したら大丈夫かは分からないのと同じです。

この回答者は自分でろくにハーケンを打ったことないでしょう。

”GWの奥穂にスニーカーにアイゼンを付ければ登れます”くらい、いい加減です。

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■ ネイリングは沢で練習するものです

私も初めて行った沢で、ルートファインディングを誤り、ハーケンを自分で打って降りてきたことがあります。合って良かった、ネイリング技術。

しかし、その日以降、私の技術的弱点は、ルートファインディング力がないことだと思ったので、慎重にルーファイするようになり、大体、登るところに、支点が出てくるので、一度もハーケンの出番になったことはありません。

ちなみにルートファインディングで最も易しいのは、クラックを登ることです。

クラックの場合は、ネイリングではなく、カムでの登攀になります。

2022/02/01

憑依されなくなってめでたし

■ 後輩は面倒をかけるもの

”3級しか登れないのにノーマットで2段登るとか言うクライマー”の頭の中って、どうなっているんだ?!と呆れてモノが言えない…と、思っていた。

写真はイメージです

それでも、奥村講習に来てくれたのが嬉しかったし、自分を振り返ると、私も、師匠の清高さんには、口答えいっぱいして苦労を掛けた。

特に、”5.11がインドアジムで登れるから北岳バットレス四尾根に行くとか言うクライマー”の相棒が、私を振り回していた時は、清高さんは、せっかく雪洞泊を教えてくれようとしたのに、叶わなかった。

私は、何とかして相方を思いとどまらせようと、そっちを優先した。これには、清高さんは面食らったようで、なんで自分が後回しなのか分からなかったようだったし、だいぶ、清高さんのプライドも傷つけてしまったようだった。

つまり、自分も師匠の目から見たら、私も

わからずや

だったということになる。私の方からすると、雪洞には、人の命、は、かかっていないが、相棒が四尾根をあきらめないということは、自動的に、私が殺される羽目になる、ということだった。私はそれだけ心理的に追い詰められていたという訳である。

まぁ、どんな形であれ、後輩というものは、先輩に、

面倒

をかけるものだ。私も清高さんはじめ、多くの人に助けられた。

■ クライマーの思いやりは、そこはかとないもの

というわけで、先輩はありがたいもので、私も恩送りをせねばならぬ。

先輩は後輩の面倒を見てくれるものだ。

私も先日、奥村講習では、それとなく面倒を見てもらった。

つまり、私がクリックアップで落とされた原因は、”カラビナが純正品ではなかったためなのではないか?”と、なんとなく、私に分かるように、ギアの紹介のところで伝えてもらった。

このようにクライマー間の思いやりのやり取りは、そこはかとなく、受け取りての感性次第なところがある。受け取れない人は受け取れない。感受性の感度が鈍くて、もらった恩にそもそも気がつくことができず、貰いっぱなしの人は多い。

一般的に言って、クライマーは、事故原因の究明が出来ていないと、次に安心の土台を何に築いていけばいいのか?分からない。

だから、いつまでたっても、ビレイに身を任せることはできない。

ビレイを信頼できなければ、伸び伸び登ることはできず、結果としては、上達しない。

■ 初心者は誰しもに愛されている

さて、このように、クライマー界は支え合いで成り立っているので、偶然とはいえ、自分が出会った初心者クライマーに対しては、大なり小なり、誰しもが、

気をかけてやる

ものだ。

後輩の面倒を見るうちの一環に、例のボルダラーを何とかクライマーとして、形が付く程度…山岳会一年目の新人さん程度…までにはしてやる義務はあるかなぁ…と思った…なんせ、出会っちゃったんだし…。これは神が下した私への試練かもしれん、と思ったのだった。

ので、別の男性初心者君とセットで、岩場に連れて行ってやろうかと思った。なぜなら、クライミングというものは、二個一がセット販売なのだからである。クリックアップとカラビナがセット販売のように、片方が無ければ、機能できないものなのだ。

…んだが…そっちの別の初心者君は、初心者とセットだと嫌だそうだった。残念。

その初心者も、根子岳行きたいとか言っていて、てんで分かってない…のは、同レベルだったんだけどなぁ…。

まぁ、アルパイン指向の人とボルダラーでは、そもそも相性が悪いのかもしれぬ。男性には男性同士の計り知れない相性があると思う…。私は女性だから、男性同士の相性の機微は、全く感知できないが、前に痛い目に遭っている。

■ マットがないのは誰のせいか?

さて、ボルダラーの人のほうは、”マットがないから登っていない”と言う。

うーん…なぞだ。

”マットがないと登ってはいけない(=公道でシートベルトなし運転はありえない)”ということを指摘したのは、私を通じた、小山田さんだが…。

普通に考えれば分かることだが、クライミングシューズがなくても、チョークがなくても、ボルダーは登れるが、マットがないと登れない。

私も九州に来てすぐのころ、1回目は、ジムでマットを借りてボルダーに行ったが、その後すぐ購入したけどなぁ…。普通、登りたい人は、人にマットは借りてでも、なんとかするものなんだがな…。

またまた、相手の行動原理が分からん!と思った。

まさか、マットがないから登れない!と嘆いていれば、誰かがマットを譲ってくれるとでも思った訳でもあるまい…。前に、俺には子供が6人いて大変!と嘆いていれば、気の毒に思った女性のファンが貢いでくれる、という期待をしていたガイドさんいたけど…どこが気の毒なんだか、意味が分からなかったんだよなぁ…。

まぁ、私には理解できない。

しかし、それにしても、この時期、つまり冬季は、ボルダーをやっている人にとってはハイシーズンで、登り時である。

ついでに言えば、子供と違い、年齢が高めのクライマーにとっては、1シーズンでも惜しいハズである。大人になると、与えられた時間が無限ではなくなる。今が全人生で最も若いのである。やりたいことはとっととやっておかないと時間切れで、できなくなる。金に糸目をつけている場合ではない。

ちなみに、私が2017年に1シーズン35回もアイスに行ったのは、この時を逃すと時間的資源も年齢的資源も、失われると分かっており、機会喪失を避けたためである。

ま、分からないものは、わからないものであるし、それ以上ではないのだろう。

そのあと、かわいそうだから、励まそうかと思って、サチさんが岩との対話が面白いという記事を書いていたので、サチさんのコピペを送ってやったら… 完全に意図を取り違えていた…(汗)。

■ 俺なんてという自動モード

どうも、有名クライマーの投稿を読むと、役立つところを読まず、自動思考で、”俺なんてモード”に入るようだった。

 サチさん → スゴイ人 → 俺なんて…(=すごくない)

そもそも、超人と自分を比べるなんて、そこが間違ってはいないか(笑)?

それに、サチさんの記事でハイライトした、強調したところはそこではなく、岩との対話には、グレードは関係ないことを説明したが、意味が分からないそうだった。

彼は、3級が登れても、ぜんぜん今まで岩と対話しないで登っているってことで、それだとどんなクライミングをしていたのだか、想像もできない…。

日本クライミングガイド協会のクライミングガイドの資格保持者でも、ジム課題は3級がせいぜい登れるだけなのに。つまり、3級というのは、なんら自己卑下する理由はない。

岩との対話にしても、ごく普通にしていても、これは登れそう!と思った岩に跳ね返されたりとかして、あーあ、と思ったりするのは、別にアンダー9程度しか登れないような人でも当然のごとく、起こることで、そういう風にやらないで、他に登る方法があるのか?私には全く想像がつかないな。

■ 憑依されるメカニズム

結局、私と彼は、水と油のようにそり合わない。

同じ言葉を使っても、火星人と金星人なのであるから、私は、彼に技術を教えてやるには

不適任

なのであろう。

個人的にこの人に必要なのは自己肯定感で、ボルダー2段のスキルで解決できる問題ではないように思う。段が登れても自分に自信がない、という点は改善されようがないだろう。原因は、おそらく、そこにはないからだ。

最近、大嶋信頼先生の著書を読んで、ミラーニューロンという仕組みで、脳が憑依されることが分かった。

理解できない相手に対して、なぜ彼はこういう行動をとるのだろう?と考えていると、脳が憑依される。

私の場合は、マットがないから登っていない、などと言われると、え?マットがなくても、登れるけど?と、問題を解決する思考が生まれてしまう。もともと、問題解決が得意だからだ。

つまり、本来は本人が解決しないといけない問題を肩代わりしないといけないような気分になって来てしまい、どんどんと、それが義務感に変わり、苦しくなる…のは、子供の時に、母が仕事に出ないといけないのに、弟と妹がギャン泣きして出かけられず、この事態を何とか収めるには、私が悪役を甘んじて受けて、弟と妹に嫌われてでも、捕まえておかないといけない、全体像を見て、何をしたらいいのか、分かっているのは、私だけだ…という自覚に基づく義務感…の再現による。6歳の自覚が再演されてしまうのである。当時は解決できるのは、私しかいなかったが、今見ている事態は違う。課題の分離、だ。

ボルダラー君は私の年齢以上の大の大人であり、世の中にはクライミング技術の本は山とあり、マットなんて5,6万も出せば買えるものである。

5,6万なんて弟が突然死したときに、大阪から実家まで当日に飛ぶのにかかった飛行機代程度の事で、この日本で5,6万がローンで払えない人は、実質存在しない。26歳で苦学生出身の私が払えた程度の額だし。まぁ、ロープで登れば、グリグリを入れても3万円でおつりがくるとは思うけど。

まぁ、そういうわけで、私が憑依されるメカニズムは分かった。分かったので、もう憑依されなくなった。

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2022/01/31

素直さと謙虚さ

■ この4年間の苦悩の理由 嫉妬のミラーニューロン

最近、大嶋信頼さんという心理学の先生の本を手にし、九州に来て私に起こったことはこれだ!という確信で、色々と謎が氷解中です。


私には、クライミングにおいて別に何も嫉妬されるようなものはない。

何も嫉妬されるものがないのに…という人が嫉妬されると、学習性無気力=鬱になる。これだな!クライミングで私に起こったことだなぁ…。

元の動画は、ここです。

クライミングにおいては、九州に来て以来、普通にしていても、やることなすこと、全部裏目に出る感じ。イメージ、”身ぐるみはがされる~!”でした…

別に山梨では、特別いい目に遭っていたわけでもないし、有名なクライマーに媚を売って、特別扱いしてもらったわけでもなく、むしろ逆で、普通に山岳会が機能している時代の人なら無料でゲットしているようなクライミング教育…を、わざわざ運転3時間の安曇野まで行って、”お金を払って”受講して、能力を身に着け、自分で勝手にのし上がったわけなので、九州に来て、私ほどの環境が厳しくない人が、本を読めば分かる程度の知識すらもない=努力をしていないのに、期待の大型新人扱い、厚遇されているのを見ると、どっちの環境が恵まれているか?と言えば、あなたでしょ!という環境なのに、なぜか、嫉妬される…という状況でした。(どこかで見た図だ。そうか、私大に行っている人に国立大に行ったために嫉妬されるやつか)

まぁ、たしかに雪も岩も、基本的に、気温がマイルドなので、リスク管理についておろそかになっても、身につまされない、ピンと来ない、というのは、理解できる。昨日もサチさんの投稿で、太字にしたが、山梨クライミングでは、今の時期、”基本マイナス”。

九州では、朝以外は日中10度くらいまで上がるから、寒い、寒いと言っても寒さの中身が違うんだよなぁ…。まぁ、体感はなぜか、ホントに寒いんだが。

■ その土地に合った山岳教育

さて、4年前の昨日は、ガイドステージⅡの試験を受けていたころのようだ…。しかし、もう4年か…私が山梨でクライミング三昧していたころは、はるかかなたということだ。

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登山ガイドステージⅡの検定試験を受けて思ったこと。

登山ガイドステージⅡの資格で案内できる職能域は、森林限界を超えない程度の樹林帯の森の中までです。八ヶ岳で言えば、しらびそ小屋まで、とか本沢温泉まで。

その職能で案内できることを考えると、岩稜は通りようがないです。

それなのに、ショートロープが検定に出てくる。

一般の山岳会にいても、20年いても、ショートロープが必要になることはないです。会で出てくるのはコンテ。あるいはスタカット。

なので、ガイドはガイドを育成する機関が必要だと思います。現行では山岳会上がりの人がガイドになるのが定番ですが、ガイドって今、訴訟では負け続けですが、山の経験値を積むのは、長い長い時間がかかります。私程度の経験値でも、8年、山の数で500弱、雪山の数で120弱、アイスの数で60弱です。それだけ頻度を上げても、ショートロープなんて必要ない訳で、たかだかステージⅡのスキルは、自然に任せていては身につかないわけですから。もう少し本腰入れた本格的なガイド育成機関がないと、

求められるスキルは高く、

顧客に提供できるサービスは低く、

したがって、取得コストは異様に高く、回収できる利益は非常に小さい、ということになり、ガイドのなり手はいなくなると思います。

私は登山者としては、理想的に…良いスピード感でという意味です…育った気がしますが、それはガイド資格とは全く別のトラックです。なので、山岳会でいくら長い経験があっても違うような気がします。自分がいた会の先輩たちを想像して、かれらがガイディングスキルがあるかというと、違うなと。もちろん、山やとして尊敬できる人たちでしたが…
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このような文章を書いているんだが、福岡に来て、例えば、山岳会などの現状や、アルパインクライミングにおいて、指導的立場にある人たちの様子を見て、ますます、これでは山やは育たない、と確信するに至った。

その土地にはその土地の個性に合った山、クライミング、山岳技術があれば良く、いわゆる”アルパインスタイル”が、雪の降らない九州には、構造的に存在しえない、というだけの事ではあるが…。

逆に言えば、例えば、ボルダーなどは、年中登れるんだから、そうでない地域よりは、先進的になっても良かろうと言えるものだが…、まぁ、現実はそうではない。

せっかく、他地域に競争優位性があるボルダーも、アルパイン分野での遅れと同様に足を引っ張られて、遅れている…。その基本的な理由は?というと

 人材

ということだろうが…。本式にやりたくなったら、そりゃ、山梨とか長野に行きたいよなぁ…普通…と誰でも思うので、これまた、人材流出を阻止することは不可能なわけだ。

となると、どうしたらいいのか?ということになるが…やっぱり、ここは、”九州男児の登りを見せやるぜ!”などと、片意地張らず、普通に、外部講師を呼んで、”よろしくお願いしまーす!”ってのがいいのではないだろうか?

つまり、九州に欠けているものは、素直さや謙虚さ、なのではないだろうか?

2022/01/30

岩との対話が本質ですよ

  ■ 1月27日のサチさんの投稿より



---引用---

ここ最近は野猿谷でひたすらこのボルダーを開拓している。ラインを自分で見出し、一から一人で開拓するのは人生で初めてのこと。ぱっと見3段くらいかな?と思ったが想像以上に傾斜が強くて難しい。3日通って、細切れではあるが、解決出来ていないパートは残すところあと1手となった。
終始コンプレッションなので、落ちる時は左右に大きく振られて落ちることが予想されるのだが、ランディングがとにかく悪い。コツコツ下地整備もしている。
ひとつひとつの作業が新鮮だ。ラインが完成していく過程がこんなにも楽しいとは思わなかった。自分の気持ちが岩と通い合っていく感覚。良い冬だ。

Recently, I've been exploring this boulder in Yaen Valley. It's the first time in my life that I've found a line by myself and developed it from scratch by myself. At first glance, I thought it would be around V12 but much harder. After three days of climbing, I have only one move left that I have not solved, though it is in small pieces.
It's all compression all the time. When I fall, I am expected to swing left and right a lot, but landing is just not good. I'm working on the groundwork. It is all so fan part of it. 
Each task is new to me. I never thought that the process of completing a line would be so much fun. I felt like my feelings were communicating with the rock. It's a good winter.
@adidas 
@adidasterrex 
@fiveten_official 
@petzl_official 
@newhale_japan 
#アルテリア 
#野猿谷ボルダー 
#開拓 
#気温基本マイナス
ーーーーーーーーーーー太字当方ーーーーーーーー

太字は、私が付けました。別にワールドカップで優勝しなくても、

 普段でも、
 誰でも、
 
 岩と対話しています。

その対話が分からないというのなら、その人、登れないときに、岩に跳ね返された、とか感じないんですかね? 普通に、今の実力じゃ無理だから、出直しておいでと、岩に言われる程度のことは、クライミングに行けば頻繁に起こっていると思いますが。

■ 岩との対話は、ルートファインディングで起こることが多い

分からないという人は、とっかかりとして、ルートファインディング(=ラインを見出す)を突き詰めてみることをお勧めします。

歩くだけでもルートファインディングはできます。宝探しゲームのように、ピンクテープや赤布などの目印を追いかけるのではなく、国土地理院の地図を用意して、尾根を拾って歩く訓練をします。それだけでも、山が語りかけてくることは、これ以上ないくらいにハッキリとすることでしょう。

歩きでもできることですが、岩でやりたかったら、ボルトを追いかけるとか、ビデオトポを見て登るとか、トポに載っているグレード順に登るとかを辞め、自分が登れそう!と思った岩を登ることにします。

それでも、いきなり取り付いては行けません。登れそう!と思ったものは、大体が登れないものですから、じーっとにらんで、オブザベします。ムーブもあらかじめ目見当を付けます。たぶん、違うムーブになると思いますが、とりあえず考えておきます。

自分と岩だけで、トポとかグレードとかの他者の思惑を介在させない、というのがミソです。

必要ならロープを出し、あるいはギアで登ったり、友達に応援に来てもらったり、自分が登るために必要だと思える手段を自分の努力で用意します。

■ 劣等コンプレックス



心理学者ではなくても、誰でも分かることだと思いますが、

グレードを自信の根拠にしたり、あるいはグレードが低い相手を馬鹿にしたり、あるいは、〇〇段が登れるようになったら××しよう!と考えたり、するのは、

 劣等コンプレックスのため

です。

アメリカの雑誌によると、全クライマー人口の4分の1が、5.10代を登っています。

2段を登れなければクライマーじゃねえ!みたいなのは、支配者タイプの人に入れられた暗示です。

実際、有段者や、5.13クライマーなんかは普通にゴロゴロしている山梨で、そんな暗示を入れてくる時代錯誤クライマーはいません。

■ 子どもと大人は違うモノサシの上にありますよ

科学的にも、クライミングは非日常の動作ですから、8歳から18歳のゴールデンエイジでクライミングをスタートしたかどうか?がほとんど核心です。子供だと、一日で5.12が登れたりします。

大人でスタートした人に向かって「子供”ですら”、5.13が登れるんですよ」とこちらを恥じ入らせるような人も、ままいますが、”ですら”は、科学的に正しくなく、”子供だからこそ”が、正しいです。

グレード競争というのは、本来、競争がないと興味や関心が持続できない、アテンションスパンの短い子供をいかにして動機づけるか?ということのために考え出された方策です。

大人こそ、競争がなくても、大人は、”内的動機”で岩に登れますから、そのような競争動機は必要としてないハズです。それでもグレードに拘るなら、岩が好きなんではなくて、単に注目されたいだけでしょう。大人は勝手に

 自分と岩との対話

を深めていきましょう。それがクライミングの、そもそものだいご味なのですから…。

 自然は大いなる師

です。そのためには、自分でプロテクションを打ったり、自分の頭で自分のクライミングには何が必要なのか、考えたり、と、

 自分の課題にきちんと向き合う

という姿勢が必要です。

つまり、人生に対する態度と同じものが必要です。自分で自分のことを愛せないかもしれないですが、自分ですら愛せないような自分を、なぜ他人が愛せるというのでしょうか? 他者の愛を求める前に、自分で自分を十分に愛するべきです。

2022/01/29

UIAA アイスファイナル、竹割包丁、チェーンソー

 ■ 幸福度上がり中

最近は、ずいぶんと幸福度、回復中。

■ チェーンソーの買い方

これは、女性にも使いやすい=年齢高め開拓者にも使いやすい、新ダイワチェンソー。

チェーンソーを買うときは、

3軸合成値の小さいもの

を買いましょう。

3軸合成値を知っているだけで、ショップの人から、敬意を持った説明を受けることができます。

プロ用は、ハイテク電子基板搭載だそうで故障が多いようなのであまりハイスペックなのは逆に避けたほうがいいかも?

電動のものも良いものが最近は出ています。マキタのがいいです。

そうなると、ドリルもマキタが良いカモ?

岩場では、伐採は取り立てて、申請していないと思いますが、本来は、林業では、伐採届が必要です。

 葉山園材さん…濃い店だったなぁ。クライマーは、特殊伐採に進むと良いですよ!なんせ、日当 15万円だそうですよ? 月2回働けば、左うちわで過ごせますよ? ロープクライミングをやっているクライマーなら、特殊伐採は、基盤となっている知識が同じなので、楽勝系のハズ… もうガイド業なんてやってる場合じゃないと思うくらいの好待遇ですね、みなさん!

■ 竹細工

九州は、竹だらけなので、竹細工スタートすることにしました。

竹で家も作れそうな気がする…

竹ドームハウスとか…。

竹細工は、九州ボルダーの父とされる柏木さんも、展覧会等に出品されるほどの腕前のようです。

竹細工は、竹ひご作りが肝ですが、それに必要なのが竹割包丁で、特に九州産の包丁は、赤い〇をつけたところの金具がミソ。

これのおかげで竹ひごが作りやすいのです。

8190円でゲット。

■ UIAA アイスファイナル


ドライを始めようとしたところで、転勤になってしまい、残念なまま、何も進んでいないですが…ドライの練習壁、もしかしたら作れるかもしれないと思って、最近、希望が出て来ています。

私はドライの練習ができれば幸せです!

日本には、ドライの練習壁がないので、そもそも競技の参加人口が異様に少ないですが…

九州には、少なくとも一つもないわな~  

今実況中継中のファイナルですが… すごいブリティッシュアクセントな英語です… イギリスって、怖いもの知らずなクライミングで有名ですけど…競技では、クリップホント近いですね~

ドライツーリングのことを昔はミックスと言っていたそうですが…

 ドライツーリング=競技

 ミックス=外のルート

という使い分けではないのか?とか、思ったりします。だって、ギアが違いますよねぇ?

靴も、アックスも違う…ドラツー用アックスは、ロシアのクルコなどが有名。シューズも、一体型です。

その上、技術も違う。外アイスでくわえたら、唇の皮膚、持って行かれます(笑)。

人が登っているボルダー見ても、別にウルルンとならないけど、UIAAのファイナルを見るのは、へぇ~となり、なるほどモードに入ります… 参考になるなぁ…みたいな感じ。

2022/01/28

時間が止まっているかのような九州アルパインクライミング

■ 2017年の角木場の氷

これは、2017年の私の写真です。八ヶ岳で一番手軽なバーチカルアイス… アプローチ5分なので、楽勝系ですが、本格的なバーチカルアイスが楽しめるので、ゲレンデ練習にお勧め。

ゲレンデ練習というのは、

 本気ルートや本気トライのための、根拠となる実力を養成する場

です。

アイスも、凝って毎週行って、バーチカル2本連続でも、別にパンプもしなくなり、成長したなぁ、とか言っていたのに…。今となっては、すぐにパンプするようになったのではないかなぁ…(><) ああ、悲しい…。根拠となる実力、喪失中です。

つい昨日おとといで、ユースケさんが行ったらしく、発達も良いそうで、なんだかな~羨ましいな~という感じだ。


石原さんという、上級のアイスクライマーが、すごいバーチカルアイスの投稿(二口渓谷)を今日、同日の記録でFBに乗せており、そっちは、角木場のように歩いてトップロープが張れる氷ではない。そして、第二登の記録…。

同じようなバーチカルでも、まぁ、アイスクライマーなら意味…つまり、実力の差、が分かるわな~ 

いくら55mあっても、相沢大滝の寝ているアイスを登って自慢する人はいない…。アイスですら、時代はテクニカルアイス…アイスピラー(氷柱)で、6級(WI6)から上しか、意味をなさないです。それでも、石原さんのような謙虚な方は、5級(WI5)と言って記録にあげるのが習わしで、それをまともに受け取っているロクスノがアホなのかもしれない…と最近は思うようになりました。

どう考えても、寝ているアイスでは、いくら初登でも、現代では、懐古ロマン以外の意味ないと思いますけど…。だって今どき、〇〇岩5.9初登!ってニュースになります? ならないでしょう…??

まぁ、石原さんの記録の価値とか分からない、こういうのを見ていない九州の人が、九州の氷での初登を喜んでロクスノへ揚げてしまうのは、まぁ、仕方がないというか、現代アイスシーンがどうなっているのか?ワンシーズンでも参加していなければ、まるで想像もつかないだろうから、いつまでも、昔、黄連谷が初登されていたころのような感覚…ストレートシャフトとか、セミチューブの時代の感性…でも、まぁ仕方ないかもしれない。

アイスキャンディフェスとか出れば、私のようなおばちゃんクライマーとか、よぼよぼヨレヨレのおじいさんクライマーが、スイスイ、テクニカルアイスを登っていたりするようなのを目にしたりもするだろう・・・ そうなると、色々と話が見えても来るだろうと思うが…

が…100歩譲っても、ロクスノの側は、把握しているべきだろうと思う。まぁ…、寄稿者がいないという問題でもあるんだろうか… 最初の師匠、清高さんは、岳人に記事が足りないと泣きつかれ、いいように使われていると言っていたしな…

しかし、なんで、最近の雑誌は、カットアンカーはもう古いとか、ボルトなどの重要な技術情報など、そういう役立つことは書かないのだろうか…

なんだか、角木場の昔の写真が来て、しみじみ、時が停止している九州のアルパインのことを思ってしまった…。

九州で進化しているのは、スポーツクライミングとボルダーだけです。アルパインは、一世代どころか、なんか40年前の感覚のようで、それを現代の岩場状況(地震)と現代の技術レベル(…つまりハーケン打ったことない…ボルトありきが前提…の低レベル化)に持ち込むと、かなり危険です。

私は冬季のクライミングが好きなので、私のクライミング時計も九州に来て以来、止まっています…。

2022/01/26

2003年登山時報vs2021年登山時報

 ■ 2021年


■ 2003年 


















■ 大日岳の事故… 

大日岳の雪庇事故だけでなく、中川博之さんと伊藤仰二さんのアルパインとかも載っている2003年11月の登山時報… 中川さんって福岡の人なんですよね。誰も知らないみたいですが。

一方、瀬戸内海の山の特集になっている2021年11月の登山時報…

聞いたこともない地味な山の話。山は高きがゆえに尊からずですが。

まぁ、山の内容自体が、ものすご~く、”トーンダウン”している感じは否めいないですね。”おばあちゃんの山”って言うか、料理に例えるなら、”煮しめ”みたいな感じで、若い青年が若き血をたぎらせる山…”ステーキ”、では、まぁないわな… 

UIAAのアイスコンペが開催中ですが、その話とか、行縢の5.14bの話とかではダメなんですかね?

SNSを見ている限り、若いクライマーでクラックやっている人とか、九州では14歳とかが8cを登ったりとか、OldButGoldなルートを再登したり、とか、それなりに、記録になりうることもしていると思うだけどなぁ…

日山協の人とか、労山の人とかが、若いクライマーと繋がっていないとか???

目次を見ただけでも、面白そう!と思うか思わないか… でいうと、2021年ので、わくわくする人って誰?って感じです。世間は中高年登山に席巻されているような印象…。

2022/01/22

チャンスは見える人にしか見えない

■チャンスは見える能力を高めた人にしか見えない

以前、2度目の小川山レイバックに行った時のこと。

私は当時、まだ初めてトップロープで登っただけの状態だったので、当然だが、リードできない。ただ、時間が余ったので、相方に感動の岩場をみせてあげよう!と思って、そこへ行ったのだった。

すると、そこには、ベテランクライマーがいて(ギアの一部に棒フレンズが混じっていてベテランと分かった)、親切にもTR張ってくれるという…しかも、それだけでなく、あからさまな初心者の我々二人に向けて、なんと、登り方指南までしてくれ、カムセットの注意点やら、なんやらも、いろいろと教えてくれた…ので、こちらもいろいろと聞いて、「どちらの会の方ですか…」と聞いたら、”蒼氷”。

会の名前で 

 ”うわー、名門だー!”

と分かり、

「もう、こんなチャンスはない!今のうちに聞けることは全部聞かないと!!」

と、思っていろいろ聞いていたら、相方のほうは

「ねぇねぇ、一人で来ているんじゃないんだから、早く帰ろうよ~」

と。”ええ~???” 

「なんで、こんなすごいチャンスが分かんないのー?!」

と思ったのだった…。

これらの違いが、今の私を生んだと思う。

余談だが、私に来たチャンスはほかの人を巻き込もうと、みなに声をかけていますが…誰も来ないんですよねぇ…。

■ 前職でも…

そういえば、前のソフトウェアの販売会社でも、同じようなことがあった。

10年に一本あるかないか、の大ヒットソフトウェア

の販売提携の話が、棚ぼたで来たのに、社長も営業も誰も価値を分かってくれなかった…まだ入社して半年の私ですら、分かったのに…。

わたしですら…、というのは、私は、制御系出身で、基幹系のソフトウェアは、よく知らない…が、それでも、その製品が圧倒的に優位で、業界を席巻してしまう可能性があるということは、OSの仕組みを知っていたら、分かった…ので、勉強不要で、ソフトウェアエンジニアだったら誰にでも分かるようなことだ。なのに、社内では、だれも、私の、大コーフン具合を分かってくれなかった…。

後に、その製品は、

  会社ごとIBMに買収

されてしまった。一本でいいから販売実績があれば、左団扇だったのに。少し販売実績をつけておけば、営業ごとIBMが買い取ってくれたのに。大手が会社ごと買いとるくらいの良き製品だったのだ。

それと同じことがいつも山で起きていると思う… クライミングやっていてUIAAって何ですか?とかありえないと思う。

■ 日ごろから勉強

それはIT企業にお勤めの時や、クライミングと同じで、

 日ごろ勉強していた

から、求める解が、偶然やってきたときに、それをつかめた。

いつも幸運に恵まれて幸せだなぁ、ありがたいなぁと思っています。

が、同じチャンスを見ても、

 掴む人と掴まない人

がいます。



2022/01/21

新人は年配者の意見を素直に聞く前にTrust But Checkをやりましょう

■ 政治が陳腐化しているのと同じで、昔のアルパインの教え方は陳腐化していますよ!

こちらに、”若者100人と衆院選挙の夜に考える「若者の投票率上げる方法」【選挙ステーション2021】【これで未来は大丈夫?】”

という討論会の動画があるのですが…。 


子どものころから、くびきにつながれた象は、自分が自由な状態になっても、檻から逃げ出すことは最初からあきらめてしまいます。

同じことで、日本の若者も、年配者に、Obey!(従え!)と命令されたことをやっていれば、良いと思考停止していませんか?

ヒドいビレイを見ても、正しいものが何かを知らなかったら、それが間違っているとは分からないかもしれませんが…、

正しいビレイは何か?

くらいのことは、普通にペツルのサイトを見れば出ていますし、海外の動画をたくさん見ればビレイヤーの立ち位置くらい学べます。

あるいは、自分が経験していく中で怖い目に遭って分かっていきます。ギリギリボーイズの伊藤さんは、男性ですが、後ろにビレイを取っていました。

一方、年配者は、岩場で壁から、2m以上離れたビレイとか、座ってビレイするとか、2名を一人がビレイするとか、そんなとても、現代クライミングには通用しないビレイをしています。こちらにきて、ちゃんとビレイできるアルパインの指導者には会ったことがありません。ほぼ全員、NGでしたよ?

が、いまだに、年配者のアドバイスを丸のみしようという姿勢、あるいはみんなと同じは安全である、という前提が見える…

アメリカでは、Trust But Checkと言われます。

 信頼せよ、しかし、チェックせよ

です。上司もそうですし、山岳会の先輩もです。もちろん、後輩も…。当然ですが、ここに私が書いていることも私の経験の範囲で分かったことに過ぎないので、丸投げとか全信頼とかされても困ります。

今回も、奥村さんの講習会に来ているような、しっかりとした技術を身に着けたいと考えている若い人が、なんで根子岳とか言い出すのが謎でした…。ただのミーハーでの選択としか思えなかったです。普通に考えたら、どんなにきちんとしたビレイをしても、脆いところは対応しようがないからです。浮石を掴んで落ちた先輩を2度、私は止めています。当事者の方、気分を害したら、ごめんなさい。

■ 年配者は助けるもの 若者が手を貸すもの

カットアンカーの件は、かなりご高齢のクライマー(70代、80代)だったので、情報弱者に陥っていたのでした。

現代の若い人は情報にはさといので、助けてあげる側ですよ。

是非、情報通になって、指導者に新しい情報を渡してあげてください。最近は、もうカットアンカーは使われないそうですよ、とかそういうことです。

きっと喜ばれることと思います。

これはトップは私ですが、下には一人しかビレイヤーはいないのになぜか2名映ってる…こんなのを見せられたら、おかしいと気がつかないといけない。

2022/01/20

クライマーは下のビレイヤーが信頼できないと登れなくなるものです

■ ビレイの稚拙さ、上手さについて

ベテランからのアドバイスが得られるラッキーな人は、もしかして、あまりいないかもしれないので、転載しておきます。

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クライミングが上手いなんてそれほど重要ではないです。重要なのは、クライマーが、どこでも、いつでも、突然にでも、墜落した場合に、そのポイントで怪我をさせないビレーができるかどうか?でしょう。

リードして登って行けば、ルートの状況は、刻々と変わります。ポイントポイントで、ビレーのやり方は変わります。

ビレーは、奥が深いですし、それを詳細に解説した文献は見当たりません。(注:奥村さん辺り、書いてくれないですかね…)

自分のビレー体験と試行錯誤の積み重ねと、常にもっと良いビレーはないか、考え続けるのが自動化してなければいけません。

私は自分が堕ちるのが大嫌いなので、危険な所で安易に墜落を繰り返す人のビレーは精神的に疲れます。

信頼性の高くないビレーヤーだと、リスクを取りたくないので、テンション癖がついちゃいます。確実に登れると思うときでないと突っ込めません。

Aさんだと登れなかったルートが、他の人(初めてビレーしてもらった)だったら、あっさり登れたとか、ビレーヤーとして恥ずかしいとは思わないのかな。

同じ所で墜ちて墜落距離が、かなり違うって、どうなんでしょう?

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■ ランナウトについて

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先週、城ケ崎で5.10Cの20メートル強のルートをカム3ヶで登った人がいました。プロのインストラクターで、毎年10回以上×20年の人でも、その2倍以上のプロテクションをとっています。こんな登り方をしていたら、いつか痛い目に遭いそうです。

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■ ヌン掛けリードについて

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甲府幕岩で、5.11後半を幾つかレッドポイントしている60代の女性は、いつもパートナーの男性がヌンチャクを掛けてくれます。

クライミングで成果はでますが、それ以外は初心者のままでしょう。男性と登りに来ている女性で、ヌンチャクを掛ける人を見ることは稀です。12が登れてもそうです。

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ヌン掛けリードって、日本人だけでしか見ない習慣のような気がします。ラオスで、誰かがヌン掛けしてくれるっていうのは、なかったです。

ラオスでは、傾斜が強いので、回収もトップロープ回収で、セカンドの担当なので、リードよりは、リスクはないとはいえ、回収の手間があるので、完全初心者向けのトップロープ(上の終了点からぶら下がっているだけ)とは違いました。

日本でも、リードした人がかけたヌンチャクは、セカンドで登る人が回収しながら登ったらいいのでは?

これ以外に、日本だけの不思議な習慣っていうのは、壁の途中のセルフです。そんなのしているの、日本人だけでした。

           ラオスでデイビッドのビレイで登っている私 
           普通にビレイ良いですよねぇ…なんでこれが日本で
           そんなに得難いのでしょう????


2022/01/18

弟よ…という思いを込めて。根子岳へ行くな

■ 根子岳へ行くなへのある誠実なクライマーからの回答

根子岳の登攀について、福岡の若い人の会から、回答が来ました… 

同じような人がたくさんいるのではないか?と思うので、公開回答します。

このような件について、ベテランからの知恵が得られる場、SNSがあれば良いのではないか?と思いますが、現在、それは望みえないことなので…。

■ 万人が登れるわけではない & 高齢化 & 成長戦略の不明化

いわゆる山ガールでも高齢者でも登りに来る”一般登山”の山岳会…つまり、誰でも登れる山しか登らないって意味です…

そこから、ある程度、山に選ばれた人しか登れない”アルパインクライミング”へのステップアップで、山に選ばれた人ってどういう人なのか?という事例、指導者や良き模範となる人が、昨今は、高齢化で、身近にいない、そのため、成長戦略を立てられない、という問題が克服できないでいる…ということもあるかと思いますので、公開返答という形で、考察してみたいと思います。

≪法則≫
 一般登山の山=基本的に誰でも登れる
 アルパインの山=その山に選ばれた人しか登れない

■ 根子岳が脆くて危険か?

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・震災後の根子岳に登ったことがない奴が語るべきでない 
 → 登るべきでないところを登れというのは、挑発であり、無理強い
 → しかも、万人が登れる山でもない(吉川さんの書籍参照のこと)

・岩質は阿蘇の鷲ヶ峰と異なり、しっかりした岩が多い 
 → 地震で変化する

・震災の影響で崩れたり、脆くなっている
 → そりゃそうだ…地震なんだから…

・現地で見ると、脆いところとしっかりしたところはっきりわかる 
 → 地質の中身までは分からない ボルトの内部劣化と同じ 
 → 経験の量が増えてから、その判断力が付くが、基本的に初級ルートに行くようなアルパイン初心者にその判断力はない。

・現在、登られているルートは、地震や風化の影響がない比較的安定した箇所 
 → それは、どう、誰が判断したのか?判断した人を個人的に知っているなど、根拠が重要。例えば、八ヶ岳の中山尾根は、無雪期にも登れるが、一般の人は、漠然と脆いと嫌って登らないが…個人的に、それが確証で言える人を知っており、具体的な指導を得ることができれば、話は別になる。ブログで見た、というのは、これに含まれない。

・根子岳の山域全体を危険として否定するのは、もったいない。九州には他に入門向けルートがない 
 → 損得で判断するより賢愚で判断すべし。この思考法だと、”せっかく北アに来たから無理をする”と同じになる

・直近の根子岳の事故は、懸垂下降の失敗によるものと想像 
 → 懸垂は失敗が許されない
 → 他山の石とし、懸垂程度は確実になってから出かけるべし
 → バックアップのとり方は知っているか? 懸垂下降のオーダー(降りる順)は分かっているか?すっぽ抜け対策は出来ているか?途中停止はできるか?
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吉川満 『九州の山歩き』


■ 考察

脆い岩場をどう処しているか?

この会の人は、上級クライマーの対処法を観察する機会がないのではないだろうか?

上級クライマーというのは、マッターホルンのヘルンリ稜(一番簡単なルート)をガイド登山で登る人の事ではなく、マッターホルン北壁(40~50ピッチあるそうです…)を登った人の事である。

どんなに有名な山を登ったとしても、ガイド登山で登っているかぎり、その人の”山力”は、一般登山者と同じであり、リスクに対処する能力は、ぜんぜん育っていないので、ガイド登山で、海外の山に登ったという人を尊敬するようなことは、まぁ、分かっていない者同士の関係でしか起こらない。

≪法則≫
 登山客=ガイド登山で登る
 登山者=自分でガイドと同じ見識をつけて登る

■ 上級クライマーの作法 その1 労山事務局長川嶋さんの事例

それで、私自身が目撃した、上級クライマーの作法を上げてみたいと思う。

労山の事務局長川嶋さんは、K2に登っていることで、”上がり”になったクライマーである。K2も、昨今は地に堕ちてしまい、今ではエベレスト並みに、登山者が行列を作る山になってしまったそうだが、おそらく川嶋さんの時代は、まだそうではなく、きちんとした山やしか登れない山だったろうと思う。

さて、川嶋さん、東沢釜の沢での沢講習で、サブをしてくれた。その時に印象的だったのが、

チェストハーネス

だ。東沢釜の沢と言えば、日本三大デート沢に数えられるくらいで、簡単な沢、渓相が良く、入門の沢として知名だ。その沢で、K2に登った人がチェストハーネスをしてくるというのは、どういうことか?

それを見て考える力が、山やの成長に必要な力だ。

≪法則≫
 一流クライマーは安全対策にぬかりがない

■ アイスクライミング歴40年の青ちゃんの選択

私の長野の師匠、青木啓一さんは、会ったとき、すでにアイスクライミング歴40年だった。

私は、彼からじかにパートナーとして、アイスを教わっているので、小屋番をしている沖田君の次に教わった人、ということになる。

青ちゃんは大阪労山登山学校の校長先生だったそうで、私が大阪での栄光を知らないので、もっと評価してほしかったみたいで(笑)、一杯、昔登った山の話をしてくれた。いわゆる、自慢話というやつだが…一般に若い人は嫌うが、その話の中にも、聞くべき体験、知恵みたいなものは隠されていると思うし、そもそも、アイス歴40年の人と組めて、光栄だと思ったので、アイスのサイトは別に立ち上げている。ビレイの仕方などが、アイスでは、特殊である。

私は1シーズン35回アイスに登った。関東では8年分を1シーズンに登ったことになる。ラッキーでも年に1回しか登るチャンスがない九州岳人の経験値と換算すると、35年分の蓄積で、そう簡単には追いつけないと思うが…、九州の人に「アイスなら、〇〇さんに教わるといいよ」とか言われて、絶句した…。たぶん、教わる立場ではなく、教える側になると思う。いや、もっと悪い。自分が一番登れるのに、誰も言うことを聞かないという立場に陥り、望んでもいない危険な目に遭わされそうな気がする。要するに、それならお前がリードしろよという話になり、全くなっていないビレイでリードさせられる羽目とか…。そういえば、比叡で事実、そうなったよなぁ…。

赤岩の頭というバーチカルアイスがある。初級のアイスだ。これに頑として、青ちゃんは、行かなかった。同じ青木君という名前で、長身で気持ち良い、まだ20代の若いクライマー君がいた…一緒に、相沢大滝に行った子だ。

彼は、赤岩行ったんだが、骨折して帰ってきたんだよなぁ…。推して図るべし。

■ 飛竜

飛竜を計画した時も、青ちゃんは、私が懸念したように、お前が一番登れるんだからリードしろ、という流れになり、したくないリードをさせられる羽目になることを予期して、来なかった…

飛竜は、めったに凍ることのない幻の滝、と言われている甲斐駒アイスである。

ギリギリボーイズの人でも、飛竜?行くんなら俺も行く、と返事するようなところである。

≪法則≫
 分かっていない人に分かっている人の方が追い詰められるような場合、行かないことが唯一の安全対策。

■ 鎌ナギ

南アルプス深南部は、関東の登山者からすると、憧れの地である… 山が深い。九州で言えば、脊梁みたいなところだ。ただし、もっと深いけど。

そこに鎌崩(カマナギと読む)という場所がある。

これは、『俺は沢やだ!』を書いた成瀬さんのパートナーをしていた、トシゾーさんとの通信記録だ。彼は、5.13代が登れ、40kgが担げ、海外の沢経験も豊富だ。

これは、会話のコピペ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
※鎌崩へ行ったことのある人の弁…ここから…

妻が鎌崩を300mほど巻き下がって登り返したことがあり ますが、かなり大変だったそうです。 過去、死亡事故も起きているため、鎌崩は要注意です。 

脆い鎌崩に行くにはそれなりの力量のあったパーティーで行 くべきでしょう。

でなければ滑落事故や遭難になることが予想されます。

装備ですが、もちろん登攀道具一式です。 プロテクションは出だしは灌木、途中は大岩にシュリンゲを巻き付けた記憶がありま す。ランニングは取れなかった記憶があります。まあ人数は私とパートナーの二人でしたので、ロープは1本で十分でした。

以上、引用終わり…

というのがトシゾーさんの回答で、これになんと、標高差300mを1時間で歩くという基本的体力もない人を連れ、ロープワークの経験がある人は、リーダーと私だけという状態で行ってしまったのが、鎌崩という山でした。リーダーはベテランでした。

九州では、根子岳に相当すると思っています。

■ 一般登山の上級とアルパインの初級は、要注意

この鎌崩、ガイドブックには、”念のため、ザイル使用”、とかあり、一般的な縦走で出てくる危険個所通過程度しか想定されていない。これは、ガイドブックを書く側も、一般縦走レベルしか、個人的に体験がない人が書いているために起こる現象のようで、これは、特に、一般登山から、アルパインへステップアップする途中の山で顕著に起こる現象だ。

例えば、厳冬期の赤岳は、アルパインでは入門にすらならない、歩けて当然の山だが、一般登山では、上級の5に分類されている。『のぼろ』の読者ならガイドをつけて登るのが厳冬期赤岳だ。

しかし、私でもそうだが楽勝すぎて日帰り。もはや一般ルートなど歩く気になれない。ある山友達など、楽勝すぎて、一日に赤岳三周したくらいだ。だから、アルパインの本には楽勝と書いてある。

このような性質の山は、アルパインの入門書を参考にすると、簡単だと思って、舐めて取り付いてしまうリスクがある。実際、アルパインの人には簡単だが、一般登山者には上級で、男性の友人に簡単だから…と連れられた、ごく普通の一般登山者の女性が、泣きながら降りてきた、という事例を知っている。

自分がまだ一般登山者のレベルなのか、アルパインの脚力があるのか?は、山岳会1年目の人には、自分のレベルを知る機会は限られ、講習会に出て分かるくらいだろう…山岳総合センターのリーダー講習では班分けがあり、班分けで、ある程度、自分のレベルは想定できる。そうでもない限り、標高差と距離で脚力を客観データ化し、登攀力をひたすら高め、日々ロープに触るしか、能力を高める方法はない。

まぁ、基本的には、性別、年齢順、で、ある。例外は、オフィス労働者。彼らは特段弱い。

困難度は登る人による、というのが、この段階で、まだロープワークデビューです、みたいな段階の人は、山を見る、経験値が溜まっていないと思う。

≪法則≫
 アルパイン入門者は自分の力量を客観的に評価できない。またそのことを知らない。

赤布は探して歩くものではなく、読図していたら赤布が追いかけてくる、ようになるものですぞ? 同じことで、ルートファインディングは、ボルトや残置を探すものではなく、自分でルーファイしていたら、同じところに残置やボルトが追いかけてくるようになるものです。

また、一般登山の慣行として、リーダーに任せきり、というリスクがある。

どこに根子岳が安全だという根拠があるのだろうか?

群発性地震の後、穂高屏風岩に取り付いた上級クライマーというのは、あまり聞かないどころか、取り付いた人で生死にかかわる重症者を知っているんだが…。

■ 妙義・星穴

登山学校の先生だった青ちゃんはガイドの依頼が時々来る。

それで断っていたのが、妙義、星穴。脆いことで有名な山だ。ガイド料は一日5万が相場(つまり、ガイド規定の3万円より高い)。

青ちゃんは、つららのようなアイスで、私がこれはちょっとどうか?と思うようなものでも、登ってしまうし、私が、そういうものを登れると嬉しそうにしていたので、脆いことで有名な妙義星穴は、ラッキーと飛びつくかと思ったら、飛びつかなかった。脆い=ロープがあっても意味なし、という意味であるそうだ。

ちなみに青ちゃんは初級の講師ではなく、中級の講師しかしたことがなかったそうで、それで私にいきなり相沢大滝55mのリードを勧めたのだそうである(笑)。まだ、醤油樽も終わっていないのに…。醤油樽のリードは、結局のところ、しなかった。理由は終了点が悪いから、ダメ、という師匠のお達しだった。支点は重要ということだ。

≪法則≫
終了点は重要。

妙義星穴も、毎年死んでる人がいるが、根子岳に相当しそうな気がする山である。

■ ナメネコフォール

最近、荒船のナメネコが、海外マガジンに出ていたが、ここはギリギリボーイズの伊藤さんと出かけた思い出のアイスだ。相沢大滝でもそうだったが、伊藤さんは、青ちゃんと同じラインしか登らない。わざと脆い場所…例えば、シャンデリアとかだが…は行かない。

別の人で、”〇〇で一番死に近い男”と言われて悦に入っていた先輩がいたが、彼のリードラインを見たら、最初は強点、もっとも難しいところを行こうとしたが、結局一番易しいラインになって、結果、ロープが屈曲してしまっていた…

これは、とても参考になった。というのは、女性がいると、男性は見栄を張って、わざと危険を冒しがちだと言われているからだ…。もしかすると私の存在がそのようなラインを選ばせたのかもしれず、あるいは、命知らずであることは、モテポイントである、という誤解が根強いのかもしれなかった。

どちらにせよ、ギリギリボーイズの方の、実は、堅実な登攀とのコントラストが鮮やかな経験だった。

≪法則≫
 一般クライマー=かっこつける
 プロクライマー=かっこつけない

以上が、私の、一流クライマーとの遭遇経験である。

総じて、一流はリスクを巧妙に避け、愚かな死に方はしないものである。

■ モチベーションの高いクライマー

さて、この回答の主は、不確定要素に対してリスクを取らない傾向がある、そうである。それで、チキン扱いをされて悔しい思いをしているのかもしれない。

しかし、自分の命は自分の命であるし、挑発や見下しのような、幼稚な感情で、なにぉ~と奮起し、怪我をしても、その代償…数週間、数か月あるいは、数年に及ぶかもしれない療養期間…を耐えるのは、まぎれもない自分である。

そんな幼稚な精神構造の人たちの指摘は無視して、自分の道を行くのが、正しい姿勢と思う。

これは、言うより行うが難し、であり、青ちゃんもインスボンで、韓国のクライマーに、からかわれて、普段の登り方を変えたせいで、墜落し、骨折していた。なんでそうなっちゃったのか?プライドを挑発されたのだろう…でも、インスボン30回行っているんだから、そんな挑発はスルーしたらよかったのに…。ちなみに私はいない時なので、女性の前で引けなくなった、とかのせいではない。

支点は、怪しいと思ったら、打ち足したり、バックアップを取ったりするもので、えいや!と覚悟を決めて使うものではない。 

懸垂下降のオーダーを知らない人が昨今は多い。重い人はバックアップをつけている状態で降り、軽い人がそのバックアップを回収して降りる。そうすれば、安全が確保されている。
かならず、バックアップを取るつもりでギアは持って行かないといけない。

■ モチベーションの高いクライマーにシラケた顔をされたら?

仮に、いわゆるイケイケクライマー、別名”モチベーションの高いクライマー”に、面白くない顔をされたとしよう…それでなんぼのものであろうか? その場では、多少、チキン扱いされて嫌かもしれないが、そのほうが命を守る。

そもそも、モチベーションの高いクライマーとは、どのようなクライマーの事なのだろうか?

私の脳裏に浮かぶ人が一人いる。女性だ。結局、宝剣で300mの滑落をしてしまったんだが… パートナーが欲しいということだったのだが、師匠の清高さんに制止された。

というのが、彼女の不満が、石尊稜を天候敗退したことにあったからだ…。先輩の判断に不服ということだが…。

誰でも知っていることだが、八ヶ岳は天候核心で、主たる脅威と言えば、寒さであり、寒さは、日本国内の一級品である。-25度は日常だ。

不満の中身も、会から山行許可が下りず、これでは、いつまでたっても山に登れるようにならない、というのがあった…実際、共感するというか、会のほうが説明能力がないことが多いので、会に入っていると山に行けなくなるのは、その通りなのだが…。

その反省の中身が問題で、会から許可が出ない原因は、先輩の判断が保守的過ぎるのではなく、リスクを凌駕できる体力や登攀力が本人にまだないことにあるはずなのだ。

というのは、私自身の会(御坂山岳会)は、私が毎週ビレイの習得のために人工壁に通い、クライミングジムに通ったり、フリーで基礎力を磨いていたり、朝から歩荷訓練を毎朝していれば、なんとかしてでも、少し背伸びのルートにでも連れて行ってくれたからだ。会が連れて行ってくれないのは、どこかに実力の不足を疑ったほうがいい。(実際は、会の先輩は、後輩を連れていくには、力不足を実感したようだ。昔、簡単に登れたところも年を取れば登れなくなる)

山のリスクは個々人で違う。〇〇さんに行けたから、君も行ける、は、あてにならない。

私は体格が小さいので、大きい男性に取れるリスクは取れない。例えば、エイドなど、その最たるもので、エイドが得意なのは、背が高いクライマーである。

その中で、フリークライミングが上手であれば、さらに先へ進み、そうでなければ、エイドルート止まりのクライマーになる、という風に過去は、選抜が起こっていた模様だが…幸いなことに昨今は、エイドクライミングでルートを落としていなくても、普通にフリーに進むことができる。まぁ、当時の余韻で、ピン間隔が遠いので、背の低いクライマーは、高いクライマーにはない、不条理なリスクにさらされるわけだが…。それが国内ではだれにも理解されないので、不条理なことがないラオスに行った。

モチベーションは、もちろん誰にでも必要で、私も、夫と二人で、八ヶ岳権現に厳冬期に通っていたころは、イケイケ過ぎて分かっていないクライマー扱いされていた… 分かっていないのは、あちらの方だったわけなのだが…。その人たちは一般登山のレベルで言えば、上級の山に私たちが行っているのが気に食わなかったのだが、”気に食わない”は、根拠として論理的でないので無視した。

大事なことは、敗退が確保されていて、誤りに気がついたら、すぐに敗退できる体制にあることだ。

権現は、そのような山だったが、根子岳は、脆さに気がついた=落ちたとき、みたいなことにならないのだろうか?

■ Kさんの言葉

さて、本格登山を志向する方には、このKさんの言葉を送ろう…。

私の友人が穂高屏風岩で、生死が関わる遭難を起こした時のメールのやり取りである。(太字、当方)

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GW直前の集会で、4人で即席パーティが組まれたようです。お互いに相手のこと良くを知らないのは、トラブルが起きやすいです。

Y〇〇のK辺さんは、同志会のW田ともう一人で、プロガイドグループ・ドムを作っていました。w田さんともう一人の人は1985年にアコンカグア南壁で行方不明になりました。w田さんの奥さんのk代子さんは、1990年に追悼集を出版した後に、グランドジョラス南面に慰霊碑を作りにいき、岩雪崩で亡くなっています。ドムのお客さんに難波康子さんがいます。
新人と初めてパーティを組み、K辺さんは1987年3月に不帰Ⅰ峰尾根で亡くなっています。

新人がルートを外し、怪しげな灌木でビレー。これでは降りられない。K辺さんが登り、墜落。灌木が折れ、二人共尾根の右側唐松沢に転落。K辺さんは意識はあったが動けない。脚を骨折した新人が、何とか下山して救助要請。経験の少ない新人に、確保条件に不安があるルートを、リードさせたのが間違いでした。(確保条件に不安がある=根子岳)

私が新人と組んで唐沢岳幕岩のS字に行ったときの話です。新人がルートを外し、ハーケンを打ちながら人工で登り、ハーケンを1本打ち、腰からみでビレー。私がハーケンに乗ったら抜けて、木の枝に落ちて止まりました。新人は引き込まれそうになったそうで。引き込まれたら、セルフビレーのハーケンは抜けなかっただろうか(*_*; (ハーケンは2本打つべきですね…)

火事場のバカ力というのは、見込みが甘かったということでしょう。それが多いのは、反省、分析ができていないということ、です。

事前に訓練したことが役に立つ= そうならないことが大事、です。

・宙吊り=最悪
・スニーカーで高難度ルートに取り付く神経がおかしい
・ボルトキットとハンマーも置いてきた=おかしい
・ボルトを打ち足し、ビレーポイント補強をすべき
・小窓尾根で取り付きを見過ごし、落石でガス缶に穴が開き敗退=アホ過ぎ

事故者は復帰するまで相当の日数がかり、結局引退しました。大きな後遺症もなく(足の指を少々切断)生活できたので良かったです。

事故者は、当会では、それほど経験がない者が多いです。

ーーーーーーーーーーーー以上引用終わりーーーーーーーーーーーーーーーーー

いかがでしょうか?

私の中では、

”モチベーションの高いクライマー”

=”予想できる危険について備えがないクライマー”
 &ルート外しをするクライマー
 &”自分の能力について過信もしくは自分の実力を客観的に位置づけられないクライマー”
 &”経験値がないクライマー”
 &”ヒヤリハットから推測による危険回避ができないクライマー”
 &”未来予知力が乏しいクライマー”
 &”女性の前ではかっこつけてしまうクライマー”
 &”ロープワークが雑で時間がかかってしまうクライマー”
 &”まだ分かっていないことを分かっていないクライマー”
 &”有名になりたいクライマー”
 &”インドアグレードをそのまま外岩に持ち込むクライマー”
 &”師匠がいないクライマー”

です。山の世界は温かく、登りたい気持ちは共通なので、互いにお互いの安全を見守り合う関係にあります。

それで誰からも、声がかからない…というのは、自分の実力がそこまでに達していないのではないか?ということに思い至る能力…というのが現時点では核心、ということなのではないか?と思います。

■ 成長戦略の立案には、古い雑誌『岳人』を片っ端から読む

そうは言っても、アルパインで成長していくのは、なかなか困難が伴います。

お勧めは、古い岳人のバックナンバーを取り寄せて読み込むことです。現代のロクスノには、役立つ情報は載っていません。

私が参考にした号のバックナンバー情報は、少ないですが、こちらです。


図書館へ行けば、揃っているので、どんな号でもいいので、適当に古いのを取り寄せてみましょう。

■ フリーが上達すると、そんなしょぼいところは、登る気が無くなる

ぶっちゃけトークですが、少しでも、脆いリスクがあるところは、フリーが上手になれば、お得感が全然ないので、登る気がしなくなります…。

つまり、根子岳のようなのは、思春期の恋、中二病のようなもの、です。

なにしろ、例えば、前穂北尾根に行くまでに6時間の歩荷…アルバイト…がありますからね。その上、登るルートが、登攀は易しく(つまり、しびれない…)、その上、脆い(命の危険がある…)となれば、なんでわざわざ6時間歩いて、そんな簡単(つまり、しょぼい)ルートを登るの?って気になったりします。

ジャンダルムとか、一般登山者の憧れ、は、行っても仕方ないところ、だだの自己顕示欲の発露、という風に感じられるようになります。

それまでに、2,3年しか私の場合ですら、かからなかった感じです。40代の女性が、2,3年で退屈する、という話なので、若い男性だったら、もっと早いと思います。

普通に支点のしっかりしたマルチに行く方が、充実する、と感じるようになります。それから、登っても男子の場合は全く遅くないと思います。

人工壁で5.11、ボルジムで最低5級がスイスイ登れるレベルで、マルチのロープワークが言われなくても分かっており、登れなくなっても、ライジングされることなく、自分で解決でき、ギアは借り物が一切なく、救急救命のイロハは分かっている程度…が、次なる目標です。

雪をやる人は、労山の雪崩講習は受けておくべきです。

そうすれば、命の危険があるような脆いルート、低グレードの場所で命がけにならずとも、順当にステップアップできると思います。

一般にアルパインの憧れは、フリークライミングのレベル感のクライミングをするようになると雲散霧消します…

フリーのマルチで記録を立てる方が価値があるからですね・・・ 男子はそこまで女性の私と違って、一息なので、低グレードで命を落として、もっと楽しいご褒美を味わい損ねることがないほうが、トータルでお得度が高いのでは? 

お得なだけでなく、賢い選択なのではないかと思います。