2021/12/24

あ!もったいない!天野和明@高千穂 天岩戸 The original myth of ancient JAPAN

■ こんなYouTube動画が回ってきました…


こんな動画が回ってきて、いやはや、マジ、もったいないと思いました…。

天野和明さんが、なんと五ヶ瀬に来ていたらしいです。

日之影には、同時期に小山田大さんもいたと思うので、なんと日本を代表するボルダラーと日本を代表するアルパインクライマーが同時にいたのに、なんの恩恵も一般市民クライマーに与えることなく帰ってしまったのではないでしょうかね…

いやはや、なんとも、もったいない。

天野和明さんは、石井スポーツ登山学校の校長先生です。業界の人は、登山の世界に無知な人が多いので、こちらの経歴によると、バイト扱いのころに世界的な記録を打ち立てておられますが… (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E9%87%8E%E5%92%8C%E6%98%8E

ギリギリボーイズのメンバー

です。

2008年カランカ北壁初登攀によって「第3回ピオレドール・アジア」(金のピッケル賞アジア版)を日本人初受賞
2009年カランカ北壁初登攀によって「第17回ピオレドール賞」を日本人初受賞
2009年スパンティーク北西壁のアルパインスタイルによる登攀によって「第4回ピオレドール・アジア」にノミネート

天野和明, 一村文隆, 佐藤裕介

このうち、二名が山梨在住クライマーです。天野さんはご実家が、甲州アルプス(大菩薩嶺)のあたりで野山を駆け巡って大きくなったそうです。

そんな人がせっかく、僻地の宮崎まで来てくれているのに…。トークの夕べも開かれず…なのかなぁ…。(現地ではあったのかもしれませんが)

本来、技術講習をしてもらえばいいです。交通費はすでに出ているでしょうから、滞在費と講師料だけでもきっとやってくれるのではないでしょうか…この九州でのアルパインの惨状を見たら…。


(現代のシングルの標準は、9ミリ中ごろ。山岳会はまだ11ミリを前穂北尾根に持ってきていました(汗))

行政の人とか、町のジムの人、あるいは山道具屋の人が無知なんだろうなぁ…

大体、強いクライマーがどこかの町に来るときは、宴会に、地元の強いクライマー連中がお呼ばれ、というのが定番コースなのではないかと思いますが…。

五ヶ瀬なら、大分が近い。福岡も別に遠くないです、高速を使えば、3時間半。

いやはや、もったいない! 

こういう一流クライマーが来るときは、ホント、一般クライマーができない山をやっている人たちなので、どうやってステップアップして行ったらいいのか?を聞くと良いと思います。

読図は、マッターホルンでの下山で迷ったときに役に立ったそうですよ(笑)。

私は、敗退に何を使うのか?とか聞いたりしました…現代は、敗退用シュリンゲは、ナッツ。捨てナッツするそうです…。カムを捨てるには、おしいもんなぁ。

懸垂の末端は結ばないと聞いて驚きました…時間を節約するためだそうです。それで馬目さんは、すっぽ抜けで落ちている報告が花谷さんからありました… 

山梨では山道具屋のエルクで、花谷さんのトークショーとかあります…九州では、そういう機会が皆無です。

威張っている山の内容聞いてみたら、ガイド登山で行ったヘルンリ稜とかでガッカリ…そんなのを聞いても、何も触発されません。何の技術もイラナイ… パッケージツアーと同じことです…

九州に必要なのは、さしづめ、そういう風に一流の人の話を聞いて、

「一流というのは、こういうことかぁ…」

とそこはかとなく、現代のトップレベルがどこにあるのかという、知覚を得ることのような
気がします。

それがないので、なんかちぐはぐなことになってしまう。本来ブイブイ言わせるとは、全く無縁のようなグレードで、えばってしまうというのは、現実認識…知覚に混線状態があるという意味でしょう…

もちろん、ブイブイ言わせるような人が本州にだっていない訳ではありません…。

前に瑞牆で、不動の拳の前を通ったら、超・ブイブイ言わせている、嫌みな男子に遭いましたけど…、先輩曰く、「不動の拳だったら仕方ないよ、ちょっとは許してあげようよ」とのことでした。でも、不動の拳ですからね…。もちろん、真の実力者は、どこにいても、ブイブイ言わせる必要自体がないわけですが…。

現代の若いクライマーで九州にお招きしてお話を聞いたらいいような人…というのでは、

ワールドカップの選手の 門田ギハード




など、なんで地元クライマーが盛り上げてあげないのかなって感じです。大分のクライマーです。

結局のところ、せっかく、小山田大さんがいたり、呼ばれて天野和明さんが来たり、若手のローカルクライマーであるギンちゃんが世界の舞台で名を上げたりしても、スルー。

この

 スルー

の原因は何かというと、単なる 無知、なのではないでしょうかね?

それか、内弁慶、な人が通っており、本当の実力者、が評価されないでいるということなのでは?

それでは地元にいる間は、他の人も無知なので、間違った評価も無事でしょうが、出たとたんに、自らのレベルの低さを恥じることになってしまいます…

九州には、、がないのではなく、、が来ても、スルーしているだけなのです。

その結果、ノーマットなんて10年早いみたいな人が、ノーマットと言い出したり、10aでブイブイ言わせたりというような、

 レベル感がちぐはぐな現象

が起こってしまうのです。 分かっている人は、ばかばかしくて、付き合う気になれない、というので、分かっているクライマーは黙ってしまうし…

声が大きい人が言っていることは、大体が、レベル感マッチしていない、とか、技術内容が相当昔のモノ、とか、どちらかというとお金儲け主義、とか、そんなことになってしまっています。

2021/12/23

愛される理由違い

■不思議だなぁ

色々、考えていると不思議な気がしないでもないです…

というのは、

 安易に落ちないクライマーである、

という、まさに

 山梨時代に愛された理由

が、

 九州では愛されない理由

になっている…。

九州ではフリークライミングの岩場であっても、ボルトは信用できない。のにも関わらず、落ちろ落ちろ、と言われる。

エリクソニアンダブルバインドというのがあります。

例:

例えば、「わからないことがあれば何でも聞きなさい」「わからない場合はすぐに聞きなさい」など、普段から親切に接してくれる上司が、実際わからないことがあって、いざ質問をしてみると「少しは自分で考えろ」「何でもすぐに聞くな」など。

よくあるのが、お母さんが、「あなたの好きなのを選びなさい」と言ったのに、ホントに選ぶと、「こっちにしなさい」と言われる…とか。

かなり、あるある、ですよね。

クライミングでは、当然ですが、どんな形態のクライミングも、落ちないで登るために登っています。

要するに、落ちないのが上手なクライマーです。

しかも、支点が信用できない九州の岩場… 落ちない糊代は、支点強度のしっかりした岩場よりも、マージン厚めが良いわけです。当然。

しかも、私は一回、初心者のクライマーにビレイで落とされて頭を7針も縫っているのです。

ピンは取った後にキャッチしてもらえなかったというだけのことなので、私に落ち度はありません。

それでも、山梨では、

”フリークライミングであっても、そもそも、容易に落ちるようなクライミングをしてはいけない”、

などと、ビレイヤーではなく、クライマーの側が反省するのが通例です。

それで、落ちろ落ちろ…と言われるのは、どれだけ嫌だったか…。

大体、落ちなくても、ムーブ解決スイッチが入ったら、ムーブが出てきて登れたことが、何回もありました。私に必要なのは、むしろそっち、でした。切羽詰まると出る、ムーブ。

自分のことを分かっていると感じられる信頼できる相方…

「すぐ落ちるクライマーは俺は嫌いだ」といった師匠の言葉どおり、私もすぐ落ちるクライマーは、嫌いです。支点強度、考えていない。ついでにすぐに人に頼ろうとする、下手くそが多いと思います。

ハングドッグ2時間とか付き合いたくないです、そもそも。



健全な市民クライミングを日本に

■ テレビの害?現代病とは、俺が俺が病だそうです

これは昨日、友人から投稿されたメッセージである。

クライマーのみんなは、もしかして、クライミングを、

  人に自分を認めさせる道具

にしてしまっているんじゃないでしょうかね?

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昨日、久々にちゃんとテレビを見たのだけれど、他人に認められる事(成功だとか他人の為だとか)が最大の価値観のように扱われている世の中の"常識"というのが何とも恐ろしく見えた。

それは大多数の民衆の暴力への認可だと感じる。

自己を否定され、自己を否定し、他人への承認を求める方向へと進む。

他人への承認は満たされない欲望であり、終わりのない欲望はついには暴力へと発展する。

自己肯定というのは自分に何か付加価値がある事によって生じるのではなく、何者でもない"私"が自己により全肯定される事によって為されるものであり、本来の自己に内包されている根源的なものだと私は感じている。

"存在"というものは、そのまま肯定されているから"存在"しているのである。

ただそれが幼い頃から否定され、見えなくなってしまっているが故に、自己否定と承認欲求という形の問題としてあらわれる。

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■ ラッペルダウンで作っているんですよ?

総じて、日本のクライミングシーンは、ヨセミテのグランドアップ開拓の理念からその先の時代へ世界が進んだのに、日本だけが進み損ねているような印象を持っていますが…。

山梨時代に一緒に登っていた先輩など、トップロープ禁止にしていたので、そのせいで上手になれないでいる、と5.13を登るツヨツヨクライマーが指摘していました。

ハラハラドキドキがクライミングの魅力だとすると、どうせリードの方が楽しいのですから、リードしたくなるのがクライマーです。

なので、別にリードしたほうがえらいわけじゃない。それは昔の、アルパインのトップを一部のエリートクライマーだけしか努められなかった時代のノリです。

ラオスでは、自分がリードした課題をほかの人が登りたくないか?周りに聞いてから、ロープを抜いていました。

そこで登っているクライマーは全員が海外旅行中ですし、ラオスなんて医療の整っているとは思えない国ですから、屁のツッパリとかで意固地にリードに拘り、怪我をした方が全員にとってマイナスです。

なんせラッペルダウンのルートは、開拓者だってオンサイトしていないんですよ?

試登しないと、ボルト位置だって決められないんですから。

■ 一般市民クライミングとエリートクライミングは別物ですよ?

大体、5.12がやっとこさでも届く…というレベル感が、かつての山岳会のリーダークラスの人に最低限、必要だという登攀力だと思いますが…、そのくらいのムーブ能力は、最近では12,3歳の子どもにとって、ウォーミングアップなのだそうです。

クライミングは、バレエと同じで非日常の動きなので、動作をやったことがある量、が、まぁ、才能を別にして、そのまま、ムーブ能力、です。

要するに、3歳から始めるお稽古事、伝統芸能とかと同じレベル感です。幼くして始めれば始めるほど、単純に有利。

私はバレエは19歳でスタートしていますが、その当時、世の中には、大人のバレエ教室はないので、12、13歳の子供たちと一緒に混じって教わっていましたが、その後、アメリカでもバレエレッスンを取ったら、60代、70代の人ばかりで、私がダントツにうまかったです…。でも、子供たちに交じれば、ダントツに下手くそです。

同じことが起こるのが、昨今の山岳会。60代で初めて山登りを始めました、みたいな人に交じって、40代で初めて岩、登っています、みたいな人が岩トレしたら、ダントツで上手な方に、自動的に入ってしまいますが、だからと言って、一般のクライミングジムに行ったら?当然20代、30代の男性が主体なのですから、ダントツビリけつです。

当たり前のことが当たり前に起きているだけです。

私はいつも変わっていません。40代女性の平均的な能力を提示しているだけです。

バレエと同じで、クライミングも、エリート教育、早期教育でのレバレッジが偉大です。

大人になって始めた人とは、3グレードも違うのです。

昔の山岳会では、野北がリード出来たら尊敬されたそうです。私もリードで登っていますが、特に難しさを感じない岩場でした。つまり、5.8~5.9レベルです。

そんな世界で、5.12が登れる才能をたまたま有していたら、周囲の人から見たら、まるで神レベルです。誰もがひれ伏すでしょう。

昔は若くして岩登りをスタートするということ自体が稀で、特権的出来事でした。大体、超有名クライマーって、その時代としては、例外的に、若年齢でクライミングをスタートしています。

しかし、今は、多くの人が若くして始められるので、10代で5.12とか普通です。

それは登った年齢と量の問題で、誰でも量をこなせば届く程度なのだそうですから、現代で才能がある、というのは、5.13以上のことになります。

昔、5.8~5.9が登れたら尊敬されたというレベルがスライドアップして、5.12くらいになってしまっているのです。

短く言えば、時代はもう2022年にもなろうという時代なんですよ。昔の常識は昔の常識。

これも、クライミングウォール、落ちても死なない人工壁や、ボルダリングジムができたおかげです。

昔は練習したくても、そんなに身近に練習することができなかったわけです。

登れるグレードの因果関係を見ると、そんな程度のことですから、ある集団の中で自分が、どの程度上手かで、威張ったり、謙遜したり、と態度を変えるのは、滑稽というものです。

■ 結局のところ意志の問題

結局のところ、クライミングのムーブ能力をどこまで上げたいか?というのは、

 意志の問題

です。オリンピックの選手になりたいなら、そりゃ毎日やっていないとなれるわけがありません。

バレエでも、世界のトップクラスになり、ロイヤルで踊るようになった人は、毎日4,5時間踊り、ローザンヌに出て、留学権を得て、さらに毎日8時間踊って、競争をくぐりぬき、主役の座を得るわけですが、そんなこと、趣味のバレエの人がしたいです?したくないですよね。踊ること自体が楽しいので、レッスンは何か他のためにある時間ではなく、人生そのものです。

同じことで、毎日登って特訓している、現代のコンペクライマーがスゴイ登攀力を持っているのは、その通りですが、その代償は、グレードで計られ、比べられ、自尊心を常に傷つけられているってことです。

■ それと同じ価値観を一般の市民クライマーはしなくていいですよ 

日本人は全体主義なので、誰しもが全員、オリンピック選手になるために頑張っているかのように、一般市民クライマーに序列をつけてしまいます。

それは、昔の共通一次世代の遺跡なのでしょうか?

現代は、個性の時代ですし、大人になってまで共通一次しなくていいです。

つまり、トップレベルクライマーがやっていることを一般市民レベルクライマーがやらなくていいってことです。

エリートクライマーになりたい人は、子供から練習してなればいいし、市民クライミングで楽しみたい人は、グレードで他者から承認を求める世界に無理して生きなくて良い、ってことです。

昨日は下呂でボルダリングで、何かに対して努力するという価値観を見出して、人ともきちんと繋がれるようになった10代の男の子の話がNHKで取り上げられていましたが、尊いことだと思いました。

団体競技が合わない人にも個人で行うスポーツのクライミングは合うことがあります。

せっかく市民クライマーで、グレードに縛られないでよい、自由な世界にいるのに、なんで、次々と性急にグレードを上げて行かないといけないんです? 

自分の好きなペースで成長できるという贅沢を享受しましょう。

■ プロセスを味わって進んだほうが、お得

私は、クラックを目指していたのですが、小川山レイバックでスタートですが、一回目に連れて行ってもらったときから、最終的にRPするまで、3年くらいはかかっていますが、そういう風にじっくり成長するのは、楽しかったです。

グレードより、思い出。

自分にとっての、いわくつき課題がいっぱいある。そっちのほうが、私にとっては、味わいあります。

良き思い出がたくさん作れる、それが急がなくて良い市民クライミングのだいご味なのでは…。

グレードより、良き思い出。



2021/12/22

A kind of mountain I love

「日本の山は美しいなぁ…」

夫の仕事の都合で、行くことになった甲府。駅前にある舞鶴城跡からは、南アルプスの
雪を抱いた白い稜線が、いつもくっきり見えます。

夫婦共働きから、一転。バリバリ働く女性から、専業主婦となった私。流産後でもあり、心身共に深い傷を負い、次なる生き方を模索している…そんな私を癒し、導いてくれたのが、日本の山の大自然です。

初めて見るカラマツの植林は、秋になれば黄金色に輝き、厳冬期ともなれば凍り付いた白い雪や霜が、繊細なレースのように美しいのです。春は、みずみずしい黄緑色の小さな星型の新芽が一斉に出てきて、とても愛らしい…。

カラマツの森はとても明るい。カラマツは、落葉する唯一の針葉樹です。日本原産の唯一の針葉樹なのに、針葉樹と言えば、九州の放置されたスギやヒノキ林しか見たことがなかった私には、とても新鮮でした。



  ダケカンバの森…ずいぶんここでは遊びました 

「山が呼んでる…」

明るくさわやかな森は、明るい青年の笑顔のような森です。

暗く鬱蒼として人を寄せ付けないスギやヒノキの森とは違い、迷子になって帰れないかも…そんな気持ちはつゆにも起こさせない、いつでもおいで、と明るく笑っている森です。

広葉樹ならダケカンバ。落葉して枝だけになったダケカンバの木は、樹幹辺りがうっす
らと赤みを帯びて、何層にも重なったダケカンバの森は、それはそれは美しいのです。

初めて見る植生に心が惹かれ、”山を見るために”、始めたのが登山でした。

登山と言っても、白い雪の山がスタート。美しいからです。

ロープを使ってテクニカルなルートを登る、クライミング要素の強いアルパインクライミングというスタイルの登山へ進みました。美しい景色をテントの中から、のんびりと見たいと思ったから。

明るく晴れた雪の山が好き。

  厳冬期の北八ヶ岳 私の原点の山です


11月の北ア山頂ではテント泊を

私のやっていた山登りでは、四季ごとに違うアクティビティをします。

アルパインは、四季折々の季節に合わせ、自然界の営みから有利な点を人間が利用する、というスタイルなのです。

それまで四季のない都会暮らしをしていた私たち夫婦に、四季とともに生きる生活がやってきました。

ハイシーズンは、11月からです。山から観光客が去って静かになってからが本番です。

11月最終週の燕山荘前はテント泊練習場です

まずは、北アで初雪を踏む。そして、今期はどこを登ろうかしら…とワクワクしながら、アイスアックスを取り出してきては、刃を研ぎ、12月第二週にもなると、そそくさと凍った氷瀑を偵察に行きます。大体、第二週で登れるか、登れないか、今年の氷の発達具合が分かる。十分寒いかどうか?が、人生の重大事になります。地球温暖化はジブンゴトです(笑)。

年末はクリスマス寒波が来る前に、雪崩が起きるような傾斜のルートは済ませてしまいます。というのは、雪崩には時機というものがあるからです。

ルートも雪で埋もれてしまうと、クライミングではなくラッセルの山になってしまいます。

お正月は冬山合宿です。寒さを味わう。お正月前の富士山五合目は、雪に慣れておこうという人で一杯です。
  雪の稜線歩きは素晴らしい経験です

雪の稜線を歩く

そして、厳冬期は、私の大好きなアイスクライミングのハイシーズン。毎週アイスクライミングに出かけます。その途中、凍った谷底を見るわけですが、その美しいこと!冬には冬の愉しみがあります。

  こんなのを見るために行っているだけで、選手になるために登っている訳じゃないです

春の愉しみは4月のスプリングエフェメラル。森の妖精と言われる、先行して花咲く山野草です。

カタクリやニリンソウ、フクジュソウ、セツブンソウなど…トレジャーハントのように花を探して歩きます。これは九州でもできますね。


GWは、雪を利用し、長い縦走を。豪雪の山に出かけて、春の温かい日差しの中で、雪の山を楽しみます。どこにでも雪という水があるから、水を担がなくて良く遠くに行ける。これも自然の恵みです。

雪の山に登山道はありません。読図のスキルがないと、道はないので歩けません。

夏は沢登り。川を遡行します。急な増水に備えて、ロープで逃げ道を作ってから、タープの下で就寝。寝るのは土の上。増水時、閉じ込められないためです。水辺であれば、山火事のリスクはないので、焚火を燃やして暖を取り、焚火で料理することもあります。


 タープ泊が沢では通常です。焚火もできないと、夏でも寒いです。

一番暑い季節には、水と戯れる沢を…。
  沢は沢の技術をちゃんと分かっている人と行かないとゴルジュで流さないとかだと、おぼれ死にさせられてしまいます…

そして、また秋になり、山の樹木から葉が落ちると…山の中の見通しが良くなる。黄金色の秋の森は、お月様がキレイです。明るい月夜にナイトハイク。そして、また冬の白銀の季節が来て…。

あとはエンドレスリピートです。

「なんて愚かだったんだろう…」

何シーズンか、こうした四季のある生活を繰り返していると、山の声が聞こえてくる…。

例えば、太陽光発電のこと…。

都会のOLだったころは、当然のように推進派でした。代替エネルギーだったら、どんなものでも善だと思っていたのです。ところが、皆伐し、山を切り開いて太陽光パネルが設置されている様子を見かけるようになると、本末転倒していると分かるようになりました。

都会に暮らしているころは、まさか森を切り開いて太陽光パネルを置くというような、愚かなことが起こるとは思ってもみなかったのです。当然、そういうことは避けられて、空いた土地に設置されるものだ、政府に任せておけばそうなるんだ、と、なんとなく思っていたのですね。

それだけ、世間知らずだったということですね。空いた土地って、どこ?ここは日本なのだから、空いた土地は、99%山林です。頼まなくても、岩の上にさえ木が生えるのが日本の植生なのです。

例えば、燃料のこと...。

山小屋勤務も経験しました。昨今の山小屋は、薪を下界から買わないといけない。というのも、周辺の森が天然記念物指定されていて、薪用に不要な木を伐るどころか、拾うことすら、許されていないためです。そうなると石油を担ぎ上げるも、薪を担ぎ上げるも、同じことになってしまいます。

そのような状況なので、石油をヘリで上げるのではなく、薪を歩荷で上げる山小屋は、環境問題に体当たりで頑張っている山小屋です。昔の木こり小屋があって、炭焼きの跡があるような山でも、国立公園等に指定されてしまえば、山小屋が生活のために、薪を自由に伐って良いというところは、めったになくなりました。

私も良く、登山道の入り口に薪を積んであるのを見かけて、2、3本ザックに結わえて担いで上がったものでした。

同じ山小屋経営をしていても、やっていることの本質は全く違うということですね。

「山の文化の喪失が悲しい…」

山の師匠は、山の文化や民俗も大事にするという方針の人でした。

鹿島槍に登るなら、カクネ里のことを知りなさい。『黒部の山賊』を読んでから、黒部ダムをめぐる立山三山を登りなさい。そうすれば、感動もひとしおだよ…。

私のバイブルは『北八つ彷徨』でしたし、ヒーローは『八ヶ岳研究』を書いた独評登高会の山口輝久さんでした、長いこと。

ヒロケンは知っていますが、崇めたことはありません。私はブイブイ言わせる山をやったことはありません。当然です。

20代で水泳を始めた人が、今からオリンピック選手目指しますか?目指しませんね? 

そんな当然のことが、山やクライミングになると分からなくなる。大人になって山を始めた人は、すべからく、全員が、”一般市民クライマー”です。

プロと言えるクライマーは、5000~6000mの標高へマルチを持っていく時代です。それ以外だったら、高難度マルチです。高難度というのは5.12は含まれませんよ、いまや12は中級者です。若い人などアップが12だそうです。つまり、それ以外の人は、ぜんぶ一般市民クライマーですよ。

目くそが鼻くそを笑ってどうするんでしょう? そんなことにエネルギーを費やさず、とっとと身に着けるべきスキルは身に着けてしまい、日本の大自然を楽しみましょう。


「鹿の被害、深刻です」

あるとき、いつものようにルンルン気分で、尾根をひとつ降りていたら、銃を構えた猟師さんに、ばったり。猟師さん、がっかり。こちらは、びっくり。

作物の取れない冬の時期は狩猟期です。この辺の農家はみんな、猟銃免許を持っているの
が普通だそうです。鹿と猿が主な狩猟の対象。田畑を荒らす有害鳥獣の駆除ですが、直接の駆除というより、全体的な狩猟圧を高める活動です。もちろん、お肉にして食べることもあります。上手な猟師さんが処理した鹿の肉は絶品です。

鹿に食い荒らされた森…残っているのは、毒草のコバイケイソウばかり。美しい山野草は、
おいしいためにすっかり食べられてしまいます。

三つ峠という山では、ここと北海道の礼文島でしか見られない、アツモリソウの保護のた
め、鹿柵を設置するボランティア活動をしていましたが、設置したとたんに植生が回復。

三つ峠は、伝統的なロッククライミングの入門の山でもあります。岩の山は花の山なのです。

「天に唾しない生活をしたい」

地下鉄と会社の始業終業のリズムから一転、山のリズムで暮しはじめ、山で過ごす日々が増え…そうして、私は、消費を中心とした生活から、”自然に寄り添った暮らし”の世界に入って行ったのでした。

山小屋では雨が降ったらラッキー!です。雨水が溜まって、お風呂に入れる。ウキウキ、さっそく薪を割って、五右衛門風呂を沸かしましょう。

冬季の避難小屋に行けば、ダルマストーブが置いてあります。外はマイナス17度。火をつける技術があるか?どうかは、今夜の快適さの大きな分かれ目。ここは頑張りどき!です。

雨が降ったら、今夜は洞窟でテントを張りましょう。洞窟は雨風を避けてくれ、快適です。

そうやって、”山のスキル”を培うことは、そのまま、”生きのびる力”です。文字通りです。

ムーブはそのような中の、ほんの一部分にしかすぎません。

自分に必要なところへ行く

そして、上手に登れるようになった結果、自分に適した課題をもとめ、韓国のアイスクライミングへ。

6か月先まで予約が取れない、ラオスの石灰岩クライミングへ。

ラオスで出会ったカナダ人クライミングパートナーと台湾のシークリフへ。

アイスクライミングでは、当時、私は持久力の世界におり、長いルートを登ることが課題でした。

日本国内には、外岩で5.9がたくさんある岩場はなく、ラオスの岩場がそれに最適です。みなさんも、ぜひ。滞在費用も安くお勧めです。

しかも、日本のように怖くないので、行ったら、あっという間に上達しました。ビレイヤーは見繕えるので、単独で行っても大丈夫です。

帰ってきて登った城ケ崎で、みんなびっくり。それだけでなく、石灰岩を登ったのに、アイスの6級が上達してしまいました。

台湾は、湯川の代わりです。初級クラックの経験値を貯める、登り貯めをするためにいきました。ちょうど、相方のデイビッドと私は二人とも、初級クラックをしたかったので、意気投合。

初級のクラックを登りだめしたい、そのために最適な岩場はどこか?となると、九州からなら、台湾がおススメです。プロテクションはセットし放題です。湯川はプロテクションディフィクルトで、初心者向きでないです。

実は、BMCトラッドフェスは、お誘いいただきましたが、ピンとこなかったので行きませんでした。

今だと、インディアンクリークは行ってもいいかもしれない岩場ですが、ヨセミテは行く気になれないです。普通にハイキングでは、むかーしに夫と一緒に行ったので、場所の目新しさはないです。(私はカリフォルニアには、2年の生活経験があります)

海外も、けっこう疲れるものです。交通費分の元が取れるか?という、そこが大事です。先進国は、滞在費が高すぎるので、友達がいるところ以外は、あまり行きたい気持ちになれないです。

自分の課題を克服する旅路の中で、それぞれの土地で、それぞれのクライマー達が、その土地なりの”自然と共生した暮らし”を広げ、文明との折り合いをつけている姿を目にすることができました。

韓国ではクライミング基地だった山小屋は、環境省の方針で廃止となり、クライマーは下界から、1時間半ほど歩いてあがります。なんのことはない、本来の姿に戻っただけなのです。岩場まで5分で寝食を山小屋が丸ごとお抱え、っていうほうが、特例だったのです。

ラオスでは、牛とヤギが草を食む中、電波もWifiもない場所でのクライミングです。これで文句をいうクライマーは一人もいません。みなが幸せそうでした。お食事はそんなにおいしくないですが、そんなことはそう問題にならない感じです。当然ですが、シャワーはちょろちょろです。でも、そんなことで文句を言う、なよっちいやつはいないのが、クライミング界のいいところですしね。

台湾では、クライマー達は海岸のゴミをクライミング帰りに拾って帰っています。米国のクライミングガイドの資格を持った人が、岩場と支点の強度をエクセルで管理していました。飲んだビールとコーヒーはボルト基金になるそうでした。

都会の便利を捨てて、自然界本来の姿に戻る… つまり、自然界を人間の都合に合わせるのではなく、人間の側が自然界に応じる、のです。

 応じれる力の大小が山やの実力

というわけなんでした。自然界に応じれる力が大きい人ほど、優れた山や、優れたクライマーというわけです。

なるほどなぁ、そういう話だったんだ…。と目からウロコです。人類共通の過ちがここに見出されます。野生動物はホントにエライ!と思います。

「人間、水と火があれば、大体のことはオッケーなんだなぁ」

地下鉄も、インテリジェントオフィスビルも、タワーマンションも、ハイテクスポーツカーも、ハイテクトイレも、デザイナーズブランドのスーツも、実は人間の幸福には、そんなに必要なものじゃなかったんですね。

本当の自信というのは、そういうものに守られないでも、自分の幸福は大丈夫なんだ、と本人が分かっていく…そういうプロセスから、湧いてくるものらしいです。

本当に必要なものは、ほんの些細なことだった。

清浄な水、清浄な空気、温かい住居、雨をしのげる屋根、安全に使える火、そして、楽しい仲間。

今の目標は、人間の生活が自然を破壊するのではなく、自然界の営みの一部となる暮らし。

クライミングは、例えばゴルフ場開発と比べて、自然界の破壊度合いは、最小です。ボルトを打てば、半永久的に岩という自然の造形を傷つけてしまいますが、カムなら、そんなことはありません。

生涯取り組み続けることもでき、ちゃんとクライミングのノウハウを理解してしまえば、それ自体が国際言語。英会話力なくても、バディは組めます。

自分の出した生ごみを大地に帰すことができる生活ができて幸せ。

自分の作ったお米で一膳食べれる生活が幸せ。

自分の作った藁でしめ縄が作れる生活が幸せです。



2021/12/20

その考えで幸せになれますか?

■縁と因

今日の仏教説話から。 因と縁でいえば、同じクライミングしたい!という気持ち(=因)を持った人がいたとしても、

山梨では良縁であると思う。一流のクライマーたち…室井登喜男さん、佐藤祐介さん、などがが普通にその辺に市民として存在しているので、そういう人たちが、グレードを鼻にかけていない様子を見れば、10aが登れただけでかっこつけてしまう…というような陳腐なことは起きない。

他にも、天野和明さん、伊藤仰二さん、沢なら後藤真一さん、成瀬陽一さん、ちょっと足を延ばせば、平山ユージさんにも会いに行ける。

クライミング講習会は、菊池敏之さんとか、もう亡くなってしまったが杉野保さんのが行列であり、故・吉田和正さんもしていた。中根穂高さんも講習会をしている。

ピラニアにも別にビレイ講習会とかはなかった。だから環境として優れているのは、トップクライマーがいるということだけで、教えてもらえるか?というとそんなことはない。

■ 教育機関はわざわざ出かけていくものですよ

車で3時間の場所の大町に長野県山岳総合センターがあり、一年間のリーダー講習を受けることができる。

私の班の講師は、村上周平さんで、八ヶ岳の遭対協の副隊長なので、リアルタイムで遭難情報が回ってくる。もう一人の講師だった高橋さんは、小川山の”春の戻り雪”の開拓者だった。小川山で登っていたら、どちらの方にも時々会うので、”どこそこで登っています”と一声かけておけば、保険付き、という感じだ。

山梨でも一つの会だけで、ちゃんとしたクライマーになるための初期教育が満足にできることはなく、基本的に、会ごとに分業で、オール山梨、でないと、山や教育を完了できないし、本人の勉強熱心さが、会から教わることを上回る

必要なのは、

 ・スポーツクライミングを教えてくれる会

 ・合宿を教えてくれる会

 ・本チャンを教えてくれる師匠

 ・沢を教えてくれる会

 ・危急時の講習会 (普段一緒に行く仲間と共有しないと意味がない)

 ・フリーを一緒に行ってくれる相方

 ・クラックを一緒に行ってくれる相方

で、

 ・アイスを一緒に行ってくれる相方

は、オプション。アイスクライミングは、特殊なクライミングです。が、アイスの進化系の

 ・ドライツーリングの仲間

は、海外クライミングの常連であり、海外クライミングが初心者に有効なクライミングであるという情報はドラツー仲間から得ました。ドラツーからの情報がなければ、永遠に、ヨセミテに行って上がり、ということになっていたかもしれません。

ここには、ハイキングに行く仲間は含まれていませんが、ハイキングは個人で普通に済ませてしまえるからです。冬の小屋泊まりハイキング的雪山くらいまでは、個人で済ませてから、でないと、足も出来ていないし、お天気を見るというような基本さえも身についていないので、山岳会に行っても、お荷物になるだけです。

ハイキングの山…つまり、ロープが出ない山をやる人の最高峰は北鎌尾根です。東京方面でも、北鎌尾根を登って上がり…という登山者は多いそうです。北鎌尾根で落ちるような人はアルパインに適性はないかもしれませんが…北鎌尾根は、登る人のクライミング力、つまりムーブをこなす力によってはロープを出さないと危険レベルの山です。ので、太っている人などは、とても不利です。登山では体が大きいこと、つまり体重が重いことは、歩荷ができるということで大きな不利ではないですが、クライミング要素が出る山では、体重が重い事は、かなりの不利です。体格であきらめてしまってここで辞める人もいます。

古い方法論では、尾根→沢→雪→岩→氷と進むので、次は沢になりますが、沢登りは、とても危険が多い登山形態なので、仲間が必要です。

しかし、これはメンバーの頭数が難しい。沢は、谷なので携帯電波が入らないことが多く、事故になった場合、外部との連絡を取るのが難しいことが多いです。

九州でも、山岳雑誌『のぼろ』の編集長が、洗谷で墜死しています。福岡の近郊の沢です。もともと、登山道だったくらいの沢なので、大したレベルがあるとは聞く限りでは思えないですが、死者がでるということですから、登山者のレベルが下がったのか、沢のレベルが九州では高いのか分かりませんが、単独は、辞めたほうが無難です。

大体、4-5人が一番いいです。2名だと負傷者についておく人、と連絡に走る人、と分けられません。斜バリなど、レスキューをしっかり学ぶのが沢です。尾根のリスクは風ですが、谷のリスクは、もっと深刻で複雑です。

沢登り時代に学ぶのは、登攀のオーダー(順番)とか、沢で一泊するときは、増水時に逃げるためにロープを張っておくとか、焚火とか、あるいは、ゴボウとか、後続の簡単な確保、あるいは弱い人をどう守るか?です。

一般のフリークライマーはこの辺は知らないので、お助け紐、とか出し方、知りません。ハーケンの打ち方も沢で学びます。

雪は九州は関係ないので割愛します。ピッケルとか滑落停止とか、雪訓の山です。

岩は、2段階構成です。アルパインの人は岩トレが必要で、普段クライミングをしない人でも、山岳会にいれば、一年に一回くらいは、岩トレしているハズです。岩トレで、登攀が上手になることは基本ないですが、知ってると知らないでは雲泥の差です。

特に大事なのは、懸垂下降で、フリークライマーのようにちゃんとした確保器などの道具を持っていないでも、カラビナ一枚とか、肩がらみ、などでも、なんとか降りれたり、3分の1システムを学んだり、あるいは、介助懸垂を学んだりします。

その段階が終わったら、エイドは大体のことが出来ているハズなので、普通にフリークライミングにステップアップしたい人はそこへ、そうではない人はハイキングの山を極めます。極め方は個人によって、いろいろで、私はシブ好みなので、南アルプス深南部へ行きました。鎌ナギとかです。

フリークライミングになると、複雑性が増します。ビレイの習得がまずは課題になるので、スポーツクライミングの会に属して、週2回半年は最低人工壁に通い、ビレイを習得します。この段階で間違った会に入ると、壁から離れたビレイなどをそれで良いのだと勘違いしてしまいます。体重差など、学ぶことが多く、事故が一番多いのがこの時代です。ハイリスクグループということです。

スポーツクライミングのクライミンググレードで、アルパインのルートが登れると勘違いしてしまうことも良く起きます。岩トレの段階で岩場のグレーディングについて理解を深める機会がないとか、自分で山行計画を立てる習慣がなく連れていかれて終わり、だとそうなります。

ビレイが習得出来たら、外の岩場でも支点がしっかりしていて、ほぼ落ちないようなのに通います。ロープ慣れがないと、何ピッチも登る場合は、ロープに使われてしまって時間がかかるので、主に登攀力よりも外岩ではロープの処理の練習会です。

登攀力を上げるのは、ボルジムで個人練習で、せっかく二人そろったのにリードフォローをしないのは、もったいないからです。機械喪失です。段々早くなり、最初は一日かけて5ピッチしか稼げなかったのに、段々と12ピッチくらいは時間内に終われるスムーズさを身に着けられるようになります。超ベテランは20ピッチくらいだそうです。マッターホルン北壁とか50ピッチもあるそうで、そんな山でロープワークに時間がかかっていたら凍死してしまいますね。ヘルンリ稜は下山路だそうです。

余談ですが、ガイド登山でヘルンリ稜に行くという話は誰もしてません。ガイド登山というのは、登山者ではなく、登山客がすることなので、最初から思考の中にないわけです。

さて、そういうロープでピッチ数を稼ぐ特訓を経ていないトップとマルチに行くと、ボルトルートでも痛い目に遭います。登攀力ではなく、ピッチを稼ぐことができない…という下手さが核心で、時間がかかって、下手したら夜になってしまいます。懸垂でロープが足りないとか、ブッシュに向かって懸垂してしまうとかも、不慣れなクライマーという意味です。

次はクラックの相方を見つけて、クラック修行です。なんせ現代の支点はハーケンは稀で、カム時代です。カム以外にナッツなどのパッシブのスキルも必要なので、そういうのを知っている人を見つけたら、大ラッキーです。

この段階でも、登攀力を上げるというのは、ボルジムで個人練習でいいです。一緒にいる時間があるときは、外でしか登れないクラックとか、マルチとか、インドアではできないことをします。とくにクラックはジムではぜんぜん練習できないです。

この段階の人がリードを強要されることはほとんどないハズです。いたら、その先輩はおかしい。外岩に行っている目的を共有していないかもしれません。もちろん、登っても落ちない登攀スキルがあれば、リードの方が楽しいので、リードを勧められます。私も、三つ峠は行って2回目からリードしています。この時は、2度目でリードって大丈夫なのかな?と思ったので、信頼できる先輩に「ほかの人を見ていると二度目でリードしている人はいないですが、私はやっていいのでしょうか?」と聞きました。よほど登攀が確実でないと新人さんの段階ではリードを勧めてくる人はいないと思います。

”アレヤコレヤ…”と表現される色々な知識が溜まるのに、しばらくかかります。

毎日クライミングに行けば違うと思いますが、普通の人は土日毎週行く程度が限界だとすると、3-5年程度はかかると思います。昔の大学山岳部は年間130日、やっていたそうで、そういう場合は、1年でいいようです。ロープはなぜダイナミックなのか?とか、墜落係数とか、ビレイヤーのセルフとか、登山の歴史とか、フリークライミングの歴史とか、色々机上でも学ぶことはあります。結び替えができないとか、この時点でないハズです。

その後になって、やっとフリークライミングです。この段階で、ロープクライミングか、ボルダリングか、指向が分かれると思いますが… 

フリークライミングで限界グレードを上げていくクライミングは、ロープに確保されるので、ビレイヤーとの信頼関係を築きながら登っていくクライミングです。

ボルダリングは、石ころを登るので、ビレイヤーは要りませんが、大体の人はグループで仲間と登っています。マットがたくさん必要です。

ロープのクライミングは、持久力。ボルダリングは突破力。ロープのクライミングで長いところを登っても、ロープの長さいっぱいが限界です。5.12でも、全部が5.12というわけでなく、スタートは10ぐらいで、まんなかあたりは11くらい、核心部が12で、トータルは12とか、ムーブで要求される能力自体は11くらいだけど、長いから12とか、そういうグレーディングなので、ある一部の核心ムーブができない!となれば、ボルダーでやりたくなるかもしれません。

ボルダーで突破力をつけてから、その課題に戻れば、その核心部は越えられるはずだろうからです。

私も、たいていは特定のムーブが苦手…私の場合は、アンダーとか、マントルとか苦手です。ので、そういうのを練習しに行く先がボルジムでしたが、外のボルダーはそのような人には便利というか、外でやれば、ホールドを見る目も養えます。

ムーブの洗練を求める人は、ボルダラーになってしまうと言われています。

またロープのクライミングでも、傾斜がない、つまり、スラブやフェイスと、オーバーハングの石灰岩だと必要な能力が違うので、集まっている人たちも違います。

上半身のパワーがより必要なオーバーハングなどでは、当然ながら、男性や若い人が多い傾向があります。

どちらにしても、体重が軽いほうがクライミングでは有利で、極端に太っている人を見ることはまずありませんが、それだけに、太っていて登れると尊敬されます。スラブは体重が重いほうが安定するそうです。

どちらかというとリードは知性が、ボルダーは身体能力が必要になりそうです。

書き損ねたのは合宿ですが、合宿の経験がないと、集団生活でのテント泊やパーティ行動での歩調の合わせ方とかわからないかもしれません。自分と同じを相手に期待してしまうということです。

女性と山に行ったことがない男性登山者は、朝一からハイペースすぎ、休憩が長すぎる、というのが、大体の女性登山者の悩みです。女性はぜんぜんペース早くないですが、休憩がほとんどいらないです。休憩が要らないペースで登っているというほうが正しいかも…?

一方、男性は瞬間的に力を出し切ることが喜びなようで、ボルダリングなどはその最たるものです…でも出し切ってしまうので、出し切った後は、しばらく使い物にならないです。

このように男性と女性では、指向性がまったく反対ベクトルという傾向がありますが、それはおおよそで、個人により、女性でも瞬発力タイプ、男性でも持久力タイプの人はいます。

ボルジムでの延々と長物をやって楽しそうな男性とか、女性でもダッシュで登ってダッシュで降りてしばらく伸びている人、とか…。

クラックでも、フィンガーが得意なのは女性ですし、ワイドは体幹です。ワイドはアルパイン人がいうワイドとオフィズスのワイドでは意味が違います。アルパインのワイドは、ステミング登るだけで、核心はプロテクションです。登攀は易しいですが危険です。オフィズスは、色々と細かいテクがいっぱいあって難しいです。こちらは大型カムは、販売されています。ビックブローというプロテクションもあります。

全体で見れば、その人の個性に合った快適なスタイルを見出せばよく、私は、外ボルダーにはそんなに喜びがなかったというか、これなら、歩いているだけだとしても山の方がいいな、と思いました。

一番好きなのは、やはりアイスです。アイスはダンスと同じでリズムがあるからです。

あとは、ドライツーリングがありますが、冬季のオーバーハングクライミング、だと思えばよく、アイスは難しくするのは限界がありますが、ドラツーであれば、人工壁もあるので、どれだけでも難しさを追求できます。

その意味で、真のフリークライミングレベルの困難度が求められるのは、ドラツーに行ってからで、外アイスは、あるレベルを超えると、危険度の争いになってしまうので、楽しみがない、と感じる人もいると思います。

私もそうで、5級はリードでき6級もトップロープなら登れると分かってしまうと、脆さという方向性に伸びようとするのは、生命保存の法則に反するので、テクニックを磨くには、ドラツーに進むのが得策、となりました。

アイスは九州では関係ないと思いますが、ドラツーは外アイス環境は不要なので、九州でもアックスを使った高難度フリークライミングとしてドラツーが広まれば、海外へ登攀へ行く扉も開くのではないかと思います。

なにしろ、海外のクライミング人口は当然ながら、日本より多く、ということは、初心者向けルートや教育体制も日本より整っているということだからです。

■ 良縁

良縁を活かしたことが、私のクライミングでの成功の秘訣です。

私の登攀力を見れば分かるように、楽しくクライミングするのに、登攀力は後付けでいいです。

クライマーならほっておいても勝手にグレードは上がっていくものです。

本来なら、10代が登れる人は誰でも、私のように韓国にマルチに行ったり、台湾にクラックに行ったり、ラオスに一人で行ってパートナーを見繕って登ったりできるのが普通なのです。

誰でもやれてしかるべきことがそうなっていないのは、縁、が揃っていないからです。因は、本人が勉強するかどうか?なので仕方がありませんが、縁は本人の事情には寄りません。

日本全国に良縁が張り巡らされ、趣味程度のクライミングで死んでしまう人が減るように願っています。

            カムが使えれば、台湾では色々と登れます
      ラオスで一番多いのは、5Cとかの課題です

  エゴが大きくなる=間違ったクライミングをしている、という意味です。


2021/12/19

九州クライミングの総括…部分点を考える

 今日の仏教説話は、自因自果、だった。


例えば、”自己責任”。 クライミング界で、しょっちゅう言われる言葉だが、ボルトルートで自己責任って? ボルトを打った人が自分に問うべき言葉なのかもしれません。

■ 因と縁を見ると…現地調査隊、みたいなことになった(汗)

私と先輩の荒木さんがたまたま九州で登ることになったのは、九州クライミングにとっては、良い出来事だったのかもです。

外から来た人が、「えっ?!」とか言わなければ、”終了点直がけが、ローカルルール”と信じている人の、”間違った信念”が、覆されることはなかったかもですから…。

私自身も最初のころは、以前師匠と登っていたように、誰か信頼できる山岳会の人たちと登りたい!と切に願っていたので、何軒も会の扉をたたいていました… 

安全面以外でも、最低でも一人は、パートナーと一緒に登る必要があるからです。

ところが、一年後からは、前の会の先輩と登れたため、いわゆる”一般クライマー”、”ビジター”という立場で登れました。さしづめ、現地調査隊、です。

その意味で言えば、調査終了感…といいますか、そんな感じです。

とりあえず、現代九州クライミングで、どんなことが起きているのか?は分かった。

ある程度登れるようになり、海外にも登りに行き、という状態でないと、取り込まれてしまって、”この終了点は変なのでは?”とか、分からなあったかもしれません。

パートナーが前の会の先輩で、大体どこの岩場でも登れる程度の登攀力がある相手でよかったです。私と同じ程度の人だと、二人とも危険になってしまいますし…。師匠とだと、最初から、これは…と登りに行かない判断になったかもです。

疑問を持たず、現状をそのまま受け入れてしまうのが新人の立場…。結局、一番損をしているのは、新人さん、ですね。

普通のクライマーは、ボルトとハーケンがあれば、難しくても、ボルトを選びますが、その選択肢が九州ではあんまり差がないです。つまり、40年前のカットアンカーとハーケンでは、支点の信頼度は、どっちもどっち…です。今まで、登りに来たクライマーも、変だな、とは思っても、旅行で来ていたら、今回は大丈夫だったから、まぁいいか…と思ってしまうと思います。

外から来たクライマーであること、× 比較的長期にボルトの品質が欲しい立場、でないと、情報発信することもなく、したがって、バレた!ヤバい!と設置者が思うこともなく、… その結果としては、ボルトの更新は進展しない…となります。

ボルト更新が絶対的に必要な善、とすれば、それを前進させることができたのは、私たちの立場だったからかもしれません。

結果としては、日向神、八面、龍頭泉のリボルトが進んで、めでたいです。

ほんとに良かったです。

ある意味、一番ひどい目に遭っているのは、登ってしまってから、あのボルトは全然信用ならないボルトなんだよ、と分かってしまった人なので、二人ともが危険な目に遭っているということですが…、深い納得感を持って、ボルダーに転向かな(笑)。

■ 日向神、八面、龍頭泉

良かったことは、日向神でも、八面でも、竜頭泉でも、リボルトが進んだことです。

もしかしたら、心ある人が言っても言っても、誰も対策を取ろうとせず、宙づり状態だったのかもしれません。

比叡ですが、初めて行ったときは、庵に泊りましたが、三澤さんから、”50mで3級1本、4級2本、5級3本が基準”と聞きました。(ボルト本数のことです)。ただ、「今はそういう時代ではないと思っている」そうでした。要するに取り巻きの人が、現代的に打ち換えることに反対しているのかもしれません。

とは言っても、インスボンですら、ボルトは適正配置が進行しています。一回インスボンに行けば、納得するのかもですね。

■ JFA頼みは疑問

JFAは、全国組織なので、その弱点があります。例えば、全国でクライマー数を見ると、東京周辺のクライマー数のほうが、どう考えても九州周辺のクライマー数より上です。

となると、集められたボルト基金は、優先的に関東から配分されるということになり、その順番を待っていると、九州でのリボルトは、最も後回しになってしまう。

その結果が、私たちがビックリ仰天した、手作り終了点、という現実に現れているのかもしれません。

もし、自己責任論を立場として取るならば、

 自分たちが登る岩場のボルト代は自分たちが出す

というのがまっとうな路線なので、岩場ごとに、ボルト用の募金集め団体、を持つのが適切なことだと思います。

そうすれば、JFAにお金を払っているのに、ぜんぜんリボルトが進まない、という問題は、回避できます。

■ 自前リボルト職人

このときに問題になるのは、リボルト知識の欠如です。

いくら資材が良くても、その資材の良さを台無しにしてしまうボルト配置しかできない知識しかなかったら…、せっかく集めたお金を無駄にしてしまうことになります。


いくらローカルがお金を出しても、こんなボルトを採用したり…

正しく製品を購入しても、こんな施工をしたり… 

してしまっては、お金の無駄遣いになってしまうという意味です。

JFAは、日本の開拓者に正確で、これだけは最低限知らないといけない開拓知識を普及する組織になったらいいのではないでしょうか?

例えば、九州では、地権者に許可を取らないで、クラックを開拓してしまった人もいます。

そのような常識では考えられない開拓者の行為も、今の状態では防げないです。

また、ボルト連打問題もそうです。昔のボルトラダーを、新しいボルトに打ち換えるだけで1m置きにボルトが配置されているような状態は、何もしない方がマシなくらいかもしれません。

これも、分かっていないことから来るミスなので、そのような開拓が広がらない工夫がいると思われます。

■ ボルダー

外ボルダーは、ボルトがないクライミングなので、ボルト更新のための寄付金集め、という性格が色濃いJFAへの加入は、一般のボルダラーには、意義が見いだせない、と言われると、仕方ないかな…という気もします。

年間3000円払って読むほどの内容が、フリーファンにあるか?というと…ソックス特集だの、チョーク特集だの…では、お金返して、と言いたくなるかもしれません。

安全ブックはホントに良いものなのですが、無料配布だから、入会しなくてもいいですし。

というので、結局、雨後の筍のように増えている、

 1)クライマーがやっていないボルジム上がりの初心者ボルダラーをどう守っていくか?
 
 2)初心者ボルダラーの無知から、岩場をどう守っていくか?

については、岩場の側が考えないと、どうしようもない気がします。JFA頼みというのは、ここでも、なんだかなぁ…な選択肢です。

やはり、ローカルのクライマーが、町を守ること、初心者クライマーの事故を未然に防ぐこと、を目標として、組織的に通達を出していく、というのが良いかもしれません。

昨今、SNSの発達で、BtoC、つまり、団体から個人へ個別に情報発信する垣根は、かぎりなく下がっています。その網目から漏れる人はいるかもしれませんが、岩場(現場)で、参加を求めれば、少なくとも岩場に来た人は、全部補足できることになります。

そもそも、岩場に来るクライマーの事故が問題なのであって、来ない人はどうでもいいわけですので、もっともシンプルに問題解決できると思います。

たとえば、岩場のライングループ、FBグループの2次元バーコードを岩場に貼っておくとか、公民館、駐車場、道の駅のトイレなどクライマーが必ず通るところに貼っておく、ということです。

そうすれば、大雨で林道が閉鎖になって通れないとか、駐車場の位置が変更になったとか、そういう情報も、速やかに伝達することができます。

■ 事故情報をまとめる

事故を減らす、ということを考えると、事故情報の集積と解析が欠かせません。 

アメリカでは、アメリカアルパイン協会…アメリカの日山協みたいなもの…が、毎年、事故情報をまとめた冊子を出しています。

そこには、その年に起きた事故と、その分析が載っています。またアメリカのクライミング雑誌でも事故の特集では、統計情報、トップロープでの事故と、リードの事故ではどちらが多いのか、どういう内容なのか?どうすれば防げるのか?などの情報が豊富です。

ロクスノでは見かけたことがないです。事故という現実から日本国全体が目を背けているかもしれません。

これでは、ぜんぜん”傾向と対策”が積みあがらず、事故が減るわけがありません。

例えば、ボルダリングの事故は、愛好者人口の面から言っても、リードクライミングの事故よりも、総数が多いです。

ほとんどがランディングの失敗ではないかと思いますが、初心者をボルダリングに導入するのに、ランディングを強調していないです。ボルダリングのメッカである九州でこれでは、お粗末です。

ちなみに参考になる情報としては、中根穂高さんの外ボルダー講習では、いきなり登るとかなく、登った後の、降りる道…クライムダウンができる場所を最初に確認します。そもそも、登れても降りれないような岩って多いです。登るより、降りる方が難しいですし。

クライムダウンだけでなく、ランディングも、着地は練習が必要です。あとはマントルムーブは、初心者のほぼほぼ全員が苦手とするところです。

なにしろ、インドアジムでは、マントルムーブが出てくることは稀で、外ボルダーになって初めてやることになります。その場合、マントルムーブだけを練習する時間が要りますし、練習用に採用する岩も、失敗しても死なない程度の高さ…1mとか…を選んで、マントルが確実になっている必要があります。

故・吉田和正さんの講習では、最初にマントルだけをする岩がありました。そういうのは、岩場に一個あればいいだけなので、公開された岩場では、マントル練習用、とか、で定番にしておけばいいのではないでしょうか。

そういう風にしないと、初心者には、

ランディングがボルダリングのセーフクライミングについては、ポイントだ、

ということが、明確なメッセージとして伝わらないと思います。

スタイルも知識がないと、おざなりになります。大体においてボルダーは、登れさえすれば何でもいい…というスタイルで、オンサイトという言葉はありえない感じです…みんなビデオを見ています…それじゃ、良くてもフラッシュにしかならないです。

必要とあれば、スポット、あるいは、ロープを出しても良いのです。大事なことは、

 無謀と挑戦が、きちんと峻別できる能力を身に着けること

です。


スーパー赤蜘蛛をフリーソロ出来るような人ですら、このようなボルダーではロープを出しています。

リスクの総量は、事故が起こる頻度 × 事故になった場合の深刻度、で決まります。





2021/12/17

リスク中心思考 九州クライミングの思考の続き

■ 安全ブックを読んでも、クライミングのリスク管理能力は身につかない

私は、『安全ブック』とは、クライミングを初めてすぐに出会ったし、自分が行く身近な岩場での事故がたくさん掲載されているので、クライミングをスタートして初期に、目を皿のようにして読んだのですが…、

例え、『安全ブック』を読んだとしても、

公開されている岩場でノーマットで登るのは、非常識だとは、どこにも書いていない…

という指摘を受けて、確かにそうだよなぁ…と思っています。

基本的に九州の岩場での事故情報は全く載っていない。どこかよそ事のような内容になっている。

よそ事感があれば、ジブンゴトと感じるのは難しいでしょう…

では、一体どういう情報を与えたら、現代の初心者クライマーは、ちゃんとしたクライマーになるための知識が得られるのでしょうか?

■ ボルダリングにおけるリスク中心思考のスタート地点

ボルダリングは9割落ちているクライミング形態です。

つまり、リスク管理としては、

 安全な落ち方をマスターしている

が第一義的に大事です。

ムーブを上げるというのは、それができたあとのこと。

安全に落ちるスキルがないと、練習すら積めません。

そしてボルダリングにおける安全に決定的に必要な道具がマット。クラッシュパッドとも言います。

インドアジムでは、どこで落ちても大丈夫なように、マットが敷き詰められていますが…アウトドアでは、それは当然期待できない。

自分が所有できる数のクラッシュパッドで何とかせざるを得ません。

ということは、

自分が所有できるクラッシュパッドで、最大の安全を確保するというノウハウ=ボルダリングにおけるクライミング技術

ですね。

■ クライミング技術=登攀グレード、ではないですよ

奥村さんも言っていますが、一般の人はクライミング技術というのは、ムーブが上手なことだと勘違いしているのだそうです。

もし登れるだけがクライミング能力なら、それこそ、クモが一番偉い、みたいなことになってしまいます。

これは案外見過ごされている点で、指導者クラスの人でも、高グレードが登れる方がえらいと勘違いしている人もいます。

安全にクライミングに行って、帰って来れる、自己完結したクライミングを出来ること=クライミング技術

です。

■ 何をどこでやるか?でクライミング技術の中身は違う

なので、活動の内容により、クライミング技術の意味する内容は、バラエティがあります。

例えば、登山であれば、誰か助けて!と山小屋に駆け込んだりしたら、自立していない登山者、つまり、登山技術がない、ということになります。

テント泊で宿泊している登山者が、山小屋の談話室に入室するのがNGなのは、このためです。

他には、水や食料といった必需品を持ってこないで、”山小屋にください”、という登山者も自立してない登山者と言われます。山小屋では、買い物はゆとりの範囲で行う募金、です。必需品はもって上がります。

■ ヘリでレスキューされたことは勲章にならない

夏の本チャンに行って、他人が作った支点に足を掛けて落ちてヘリを呼んだら、それは”本チャンクライミングを分かっていない”という意味になります。

なぜなら、本チャンで、残置を信用してはいけないことなど、当然の常識、だからです。なので、ヘリレスキューになっても誰も同情してくれません。

私の先輩も、春山の前穂北尾根でアイゼンを付けたままグリセードして、足を骨折してヘリレスキューになっていましたが(笑)、誰も同情していませんでした…(笑)。

アイゼン付けたままグリセードしてはいけない、ということは、雪山で滑落停止技術を学ぶ初日に、一声目に言われることだからなのです。げんこつが飛んできます。

■ クライミングの自立

クライミングが自己完結できることが、クライミング技術。

一般的なショートのフリークライミングなら、自分のロープと自分のヌンチャクで登って、降りてこれないといけないです。

それができるのに必要な技術は、人工壁で学ぶリードとローワーダウンだけではなく、結び替えと懸垂下降、支点構築、途中敗退の捨てビナ、程度が必要です。それがあるのが、外岩クライマーとして技術がある、という意味の中身です。まちがっても、”カラビナ直がけが九州ルール”という人にクライミング技術がある、と言えることはありません。

誰かにトップロープを上げてもらっていたら、自立したクライミングではありません。

当然ですが、自分が登る課題を選べない、トポを持ってこないというのも、自立したクライマーではありません。

そもそも、岩場に自分の足で来れない、というのも、自立したクライマーではありません。ということは、車で行かないといけない岩場に誰かに載せて行ってもらうのは、半人前です。

マルチのセカンドだったら、登れなくなって、ライジングされないと終了点に行けない、などというのも自立したクライマーではありません。行く前に登り返し技術や多少のエイド技術は身に着けてからいくものです。

https://allnevery.blogspot.com/2017/08/blog-post_13.html

ところが、現実的には、一回目の初心者は仕方ないね、と、自立しようとすると色々と面倒が多いので、多少は、多めにみられています。

問題は、多めにみられているという状況を分からないで、当然のように、要求し始める人を是正できない指導者が多いことです。

なので、多めにみられていることを当然の権利のように要求する人がいる会は、はてな?という感じです。5.12が登れるのに、結び替えを知らない、とか、自分は運転できないで載せてもらっている側なのに、運転者にえらそうに指示するとか、まるでモンスターチャイルド?みたいな感じです。

基本的に、その場所で事故になったとしても、自力で帰って来れる、あるいは、一緒に行った人と帰って来れる、というのが伝統的に最低限のマナーとなっています。

そのために必要な知識を一通り持っている必要があります。つまり、

 岩場での事故を想定したセルフレスキュー

です。それがないと、思い切った行動は普通は取れません。し、取りません。

山梨で登っていた時は、私は体が小さいので、私と登りに行って無茶をする男性クライマーは、常識上、皆無、いませんでした。

レスキューになった場合、相手は私を担げますが、私は相手を担げないからです。私にとっては保険付きだが、相方の男性にとっては私は大した保険にはなりません。もちろん、走って出るくらいのことは当然できますが。また私は日赤救急救命を受けています。しかし、それでも事故になって良い、というのとは違うでしょう。

ですので、チャレンジクライミング、をしたいときはお互いがお互いの保険になるようなパートナーを選びます。

私の中では、ゲレンデは基本的に誰と組んでも行けますが、準本チャンの沢…例えば祝子川は、誘われてもお断りしました… 膝を怪我したのでそもそも行くのは無理でしたが、ゴルジュってエスケープがないです。囂々と流れる水の中で、たとえば転倒したとして、現代の確保術では、流さないといけないということを知らない人もいます…沢ではATCではなく、そのため8環を使いますが…そういう知識のすり合わせを初級の沢でするのが普通ですが、その人はその発想はなくいきなり本番…なのでお断りしました。彼とではなく、別の人とだったら行きました。あとは2名でなく、3名とか別にメンバーがいれば行けます。

まぁ、フリークライミングしている人が、沢に行くような、大きなリスクを取るというのは、自己矛盾なので、考えにくいです。一般にフリーのゲレンデは、基本的には携帯電話が入れば、安全圏と考えられています。

要点は、誰と登るかによって取れるリスクの量は違う、ってことです。

一般に、フリークライマーは、パートナーを組むのですが、一緒に登ろうぜとなった最初に、人工壁で、お互いが持っているセルフレスキューの知識のすり合わせをします。

具体的には

 ビレイ

 リードフォロー

 懸垂

 宙づり登り返し

 ビレイヤーの事故脱出

 ライジング

です。互いにすり合わせて、知らないところやずれたところは、補います。斜バリまで行く必要はないと思いますが…熱心な人はやっています。

これには、

 ザックやストックを使った背負い搬送

 ロープバスケット

 救急救命法

などが入っていませんが、どちらも、ハイキングに行くレベル、登山レベルで、すでに練習しているもの、という暗黙の前提です。

ただ昨今は、ハイキングからステップアップしてクライミングをするようになった経緯の人の方が少数派で、山登りは全くせず、いきなりクライミングジムでクライミングして、その流れでアウトドアクライミングに進む人が多いので、やったほうがいいかもしれません。

その際は、具体的な場所を想定したほうがより実状に添ったシナリオができると思います。

例えば、九州で言えば、

・日向神の愛のエリアで

・グランドフォールが起き、

・クライマーは自力歩行ができない

と想定すると、下の林道までは、背負い搬送をしないと、救急車は入れません。

ので、クライミングを自己完結するスキル、の中には、

 背負い搬送を知っていて出来る

が入っていないといけません。それがそこでクライミングする者の最低限のスキルということになります。

■ ボルトルートクライマーなら、ボルトの見極めスキルはクライミング技術の一つですよ

私がいた山梨では、ボロい支点であることが、そもそも前提の三つ峠、と、フリークライミングの岩場である小川山では、全く違う登攀スタイル、ということが、誰の常識でも明らかでした。登り方自体を変えます。

小川山では、テンション!と叫ぶのはアリですが、三つ峠ではありえません。

なにせ、腐ったハーケンとかが支点で、後は自分でカムをもって上がって支点を取ります。岩の突起とか、チョックストーンになった岩とかに、スリングを掛けて、ランニング支点にする、とか、そういうのが、三つ峠における、”クライミング技術”なのです。

終了点は、一般的には普通に登山道を歩いて帰ります。山にある本チャンで懸垂で帰るというのは、敗退時以外ないです。支点はカムで3点で作ります(2点で作ると厳しく注意を受けます)。

小川山のほうは、フリークライミングの岩場でも、歴史的経緯からアレヤコレヤと細かい注文が色々ある岩場ということなので、その辺に詳しいガイドさんが詳細な、ステップアップに使うべき課題をネットに上げています。

ので、本州の人は、クライミングのステップアップ…クライミング技術というのは、具体的にどういうことなのか?が、分かりやりやすい。ある段階で今何が自分にとっての課題なのか?が比較的把握しやすいと思います。

その辺が九州ではきちんと区別して教えられていないように思います。アルパインとフリーとスポーツクライミングが混同しています。スポーツクライミングのノリをフリークライミングで要求するのは変です。

何kNの耐荷重があるか怪しいボルトで、落ちれ落ちれと言われて謎でした。やっぱり落ちるのはNGのカットアンカーでした。

もし、ボルトが崩壊して、落ちるクライミングを周囲がはやし立てたために、死者が出たらどうするのでしょうか?責任を取れるのでしょうか?

小川山はフリークライミングの岩場としては、100%落ちれるわけではないので、一般的に初心者は、落ちても大丈夫な岩場としては、城山、などが、ケミカルにリボルトされた岩場、初心者のリード向きの岩場として知名です。 

小川山は日向神と同じで落ちてはいけない岩場ですが、違うのは、そう認識しているかどうか?かもしれません。うちはボルトがヤバいとか、ランナウトしていて初心者には登らせられないと、岩場として自覚がある、あるいは課題として自覚があるかないか?が大きな違いなのかもしれません。

小川山は初心者向けではないという認識は、大体のクライマーが持っていた認識のように思います。その証拠に初心者クライマーは、目を皿のようにして、歩いてトップロープがかけれる課題を探します。

なにせ、先輩に連れて行ってもらって当然、というのは、基本的に ”ない” のです。

連れて行ってくれる人がいたら、かなり奇特な人として感謝されるものです。そこがだいぶ違います。

大体の人が、フリークライミングにデビューする前に、インドアジムでボルダリングをして、その後に人工壁でスポーツクライミングを経験して、ビレイを確実にしてから、外岩に来ると思いますが… そのコースの場合、

 外ではインドアのように安易に落ちてはいけない

というのが、実際のところなぜなのか、初心者は分からなかったりします。私もそうで、初期のころは、私は背が低いので、大体、ホールドはデットで取っていました。普通の人にとって何にもしなくても手が届くところが、大体デッドしないと取れないからです。

そんな登りをアウトドアでできるか?当然ですが、ダメですね…。外岩リードは基本的にスタティック、が定石です。それがすぐに分かったので、ボルジムでの登りも変えました。

しかし、そこのところが分からない段階の人用に、城山みたいな場所が用意されています。

先輩後輩のシステムで登っている人には、自動的に小川山の前に、城山が上がってきて、その経験から、なんとなく分かるようになっています。

城山はケミカルボルトの岩場です。小川山では、基本的にはボルトルートですが、えらい1ピン目が遠いとか、ジョコンダなどハーケン混じりです。え?ここアルパインの岩場?みたいな感じですが、まま、気やすく落ちるなよ、という警告を含めて、そういうものが残されています。

先輩曰く、ハーケンはオブジェ。もちろん信頼はしないですが、意外にしっかりしている場合もあります。

小川山におけるリングボルトも同じで、起点に打たれた課題もあり、大体がビレイ位置が不安定で、ビレイヤーも転がり落ちそうな課題などです。

そうしたリングボルトは、ビレイヤーのセルフビレイ用ですが、インドアクライミングでは、ビレイヤーがセルフを取ることはないので、ビレイヤーとして自立したクライマーになるにも、小川山でリングボルトを見て、”なんでここにリングボルトがあるのかな?”と思考し、その結果、”そうか、ビレイヤーも落ちそうでヤバいのか”、と理解することによって、ビレイヤーのセルフを取るという安全技術を知ります。

アウトドアでは、ビレイヤーもセルフがいるか要らないか、自己判断ができるようになって一人前。

私は軽いので、ビレイヤーとしては、自分を守るために、セルフが必要な場合があります。

例えば、大柄なクライマーに1ピン目で落ちられると、パチンコ状態になってビレイヤーとクライマーがぶつかります。”ビレイヤーのセルフ”が必要です。

”ビレイヤーのセルフという技術”、そういう知識があり、対策を知っているというのが、クライミング技術、の具体的な中身です。

一言で、”ビレイができる”、と言っても、中身の濃度は色々です。

前にアルパインのクライマーに、ゲレンデでの練習会で”ビレイできますか?”と聞いたら、元気よく”できます!”というので、お任せしたら、リードクライマーが落ちた時、真っ青になっていたので、交代してあげたのですが、聞いたら、彼は落ちたクライマーを確保したことはなかったそうです。

”落ちるクライマーをキャッチしたことがある、グランドフォールさせないスキルがある、ということが最低限ビレイができるということですよ”、と後で教えたら、”そう言われたら、そのとおりなのに、全く思いつきませんでした”と言っていました…。

彼は、”先輩は落ちないから、ロープは持っているだけでいい”、と教わったのです。

■ リスク中心思考=落ちたらどうなるか?

落ちたらどうなるか?

ということと突き詰めて考える、ということは、登る楽しさゆえに見過ごされてしまうのが、クライミングの悲しい宿命なのかもしれません。

が、逆に考えると

落ちたらどうなるか?すでに保険を掛けてある、

という状態だと、後は何をしてもいい、と考えることができます。

ショートのフリークライミング、つまりいわゆるクラッギングなら、2名で行ったとしても、ちゃんと行って帰って来れるスキルが、どちらもないといけません・・例えば、片方が運転できない、とかダメです…。

完全にリスクフリーというのは、ありえないので、リスクが何か、分かっているというのが大事です。

例えば、私は50kgないくらいの体重ですので、一緒に登っていた相方が74kgで、彼がドカ落ちするとビレイヤーの私の方が危険が迫ります。

なので、落ちることが分かっている、ランジで取りました、みたいな登り方は、相方もしません。下のビレイヤーの方がリスクだということが共通理解だったからです。

インドアから普通にいつも落ちている登りをアウトドアでやってしまう人だと、たぶん、そのようなことも分からず、当然のように、下のビレイヤーが誰か?など考慮せず、普段通りのクライミングをしてしまう人が多数だと思います。

つまり、こういうことも、”クライミング技術”の一例なのです。クライミングは、”ビレイヤーの内容”が、どう登るか?にも影響して当然なのです。

それを分かっているのが、クライマーです。

誰彼構わず、じゃんじゃん落ちているということは、クライミング技術、がまだ育っていない、ということです。

奥村さんなら、クライマー以前というのではないでしょうか?

つまり、まだクライマーではなく、今からクライマーになるところの人、という段階ということです。

■ リスク中心思考への切り替え

これは私の考えですが、山と同じで、クライミングは、リスクから考えれば、すっきりします。

リスクを中心に考える思考回路を身に着けたら、それがクライマーとしての完成となるのではないでしょうか。

世の中には完全なリスクフリーはありません。

数あるクライミング形態のうち、もっともローリスクであるのが、トラッド。命がかかる支点を他人任せ(ボルトを打ったのが何年の事なのか分からないとか、誰なのか分からない)にしない。カムによる支点のクライミング形態だと思います。

私もまだカム設置の能力は完成しているとは思いませんが、それなら、落ちないようなところを登るというリスクコントロールが可能です。

なんせ、カムは100% 自己責任ですから、ボルトの信頼性が分からなくても、カムの信頼性は分かります。

支点間の距離も、自分の見極めで、怖ければたくさん取り、大丈夫だと思えば、落ちたとき保険にならないことはない程度に間隔を広くとることもできます。(まあ、岩に強いられて、クラックがあったとしても、浅かったりフレアしていたりして、取れないことはありますが。それこそが岩との対話で、クライミングの愉しみの一つです。ランナウトに耐える能力は、そのような時…ここぞというときに取っておくものです。)

ボルトだとそんな芸当はできません。見ず知らずの人…つまり施工が上手な人か?それとも下手くそな人か?も分からず、さらに言えば、そのボルトはいつ打ったのか?もトポにあることは日本では稀です(台湾の龍洞ではエクセルで管理されていました)。

ボルトだから大丈夫だと思っていると、グージョンではなくカットアンカーかもしれません。

そして、それは、見た目では全然判断できなかったりするのです。私の山梨時代にも、カットアンカーとグージョンの見分け方を教わった覚えはありません。

(山梨では、もはやレガシーレベルのカットアンカーを使うような人がいなかったためかもしれませんが…。私も開拓者に出会ったとき、当然のようにFixe社のボルトを物色しました)

■ ボルト配置の不利・有利 グレードは相対的なものですよ

ボルトルートのボルト配置は、トラッドのピンクポイントと同じで、クライマーにとってはなんの合理性もない配置というのもあります。

特に背が低い人にとっては、背が高い開拓者が選んだボルトの配置は、ムーブ的な整合性は全く取れない位置かもしれません。

つまり、そのピンに行くまでに、ワンムーブ多く必要で、そのムーブのスタンスが極小、ということはありうるということです。極小スタンスに乗らないといけないとすれば、それは全然クリッピングチャンスではありません。安定したところで一本入れるべきです。

背が高ければ、そのスタンスに乗る必要はないので、背の高い人にとっては同じグレードでも易しくなります。180cmある男性クライマーは、核心部が飛ばしてしまえるそうです。

つまり、同じ5.9でも、小さい人にとっての5.9は一般的な人にとってより難しく、大きい人にとっての5.9は易しいことが多いということです。

もちろん、これは傾向であり、逆に小さいほうが有利な課題もあります。例えば、リン・ヒルは手が小さくてクラックに手を入れられるために登れることが多く、大柄で手が大きいクライマーは頻繁に愚痴っていたそうです。

そういう知識があることも、”クライミング技術”の一つに入るかもしれません。

■ コンペはクライミングの本質ではないですよ

なにせ、クライミングをスタートしてすぐは、

  クライマーとしての優劣をクライミンググレードで付ける

のが当然だと思い込んでいます。つまり、ハイグレードを登れるほうがえらいと思い込んでいます。

 クライマーの優劣が、クライミンググレードでつくのは、コンペの世界だけ

です。もちろん、コンペで優勝することは喜ばしいことですし、努力の証と言えますが、だからと言って、人間として優れているというわけでは当然ですが、ありません。

お受験の勝者が人間として優れているわけではないのと同様に、あるモノサシで計った時に、たまたま、その人が一番だったというだけで、別のモノサシで測れば、別の人が一番になる。

          『ビヨンド・リスク』 より

さらに言えば、10aでひいひいやっている人と、15でひいひいやっている人は、別のグレードで同じことをやっているだけです。本質的になんら変わることはありません。

クライミングを何年もやっていて、なぜ、それが分からないのか?そのほうが私には不思議です。

グレードで人間が一直線に優劣で並んでいる、という見方は、高速道路で隣の車とスピード争いをしてしまうと同じくらいの短絡した見方です。

スタートも違えば、目的地も違うのですから、どっちが登れるか?で、上下を決めることほど、愚かなものの見方はありません。

10歳でスタートした人は20歳でスタートした人より有利ですし、30歳でスタートした人は40歳でスタートした人より有利です。50歳でスタートした人が、15歳でスタートした人と比べて、そう伸びしろがないのは、誰が見ても明らかです。15歳の人が50歳の人を馬鹿にすべきでしょうか?

年齢は一つの例にすぎません。性別、持っていまれた体格、握力、指力など、色々個人差があり、それぞれです。ハッキリ言って、背が高くて、ひょろ系体形、指力強い人が有利です。

グレードが高い事が一つの有利になるとすれば、

 取り付いてよい課題の選択肢の幅を広げる、

ことです。5.9しか登れない人は一つの岩場で大体1つか二つしか登れる課題がありませんが、5.13が登れる人は、同じ岩場でも、大体全部の課題が登れます。

偏差値50の人が行ける大学の数は限られますが、偏差値74の人が行ける大学の幅は選り取りみどりです。

これで回答になったでしょうか?


   こういうのが高いクライミング技術の証なんですよ。パッシブ1ピン目のとり方



2021/12/16

【クライミング事情】4年の総括…九州クライミングの状況

■ 6回悪いことが起こったら、それは悪いことではなく良いことかも?

人生には、6回続けてさいころの同じ目が出るように運が悪い時期がある。そのことを記した。1/7776の確率で出るそうです。そんなこと、人生に起こるか?と思いますが、起こりますねぇ…

昨日は、ひょんなことから、九州クライミングのお目付け役、田嶋一平さんとチャットする機会ができた。それで、この4年間の総括、みたいなものができた。

思えば、私の九州クライミング行脚は、近所のクライミングジムを訪ねることから始まったのだった…。

■ 一つ目の”事件”…クライミングを教えると怒るジム

偶然にも、近所に、田嶋さんのやっているJoyがあったので、当初、私は、福岡は、クライミングメッカの山梨と違って都会だし、自然界は離れていて、岩場も質の良いものが山梨のようにあるわけではないだろう…と想像していたので、ロッククライミングはあきらめ、ジムクライマーとして福岡ではやっていく気持ちだった。

外岩は最初っから捨てていたわけである。

クライミングメッカの山梨時代は、外岩が良いのでジムに行く理由がなかった。ジムに行くと言えば、外岩でできなかったムーブをピラニアの室井さんに、「すいません、こんなアンダーでもって、遠めの一手を取る課題ってありませんか?」などと質問していた。要するに完全に外岩の攻略用というジム利用法だった。そもそもアイスクライミングは、インドアでは、できないですし。

というので、やっと都会!ジムに通って、フリーで一皮むけるぞーと、思っていたわけだった。アルパインクライミングの岩とフリークライミングの岩は全く困難度が違う。

と・こ・ろ・が!

田嶋さんのジムで、「ブラボーのバイトに応募した」と漏らしたら、なんと2日目で出入り禁止にされたのである。まだ月会費払って2度しか行っていないのに。(当時、払った月謝返してほしいです…マジ。で、ブラボーは後で分かったが、クライマーがやっていないジムだが、荒稼ぎしている)

しかも、言いがかり。「教えないでください!」とかいう…。(教えないジムはジムとしての努力義務を果たしていないかもしれない) その時は、ジムで会った大学生男子の一団が、私が登った課題が登れず、「どうするんですか?」とか聞いてきたので、「あの一手が、とれたら終わりだよ」と答えただけである。これのどこが教えているんだか。

当時の記録

https://allnevery.blogspot.com/2017/08/blog-post_13.html

奥さんはどう見てもクライマーじゃない人だった。ついでに言うなら、ジムがあまり清潔ではなく、いや…これは…(汗)という感じだったので、経営面で、こりゃ問題ありなジムだな~という感じだった。

が、ちゃんと『Climbing』とかいう雑誌が置いていたので好感。とりあえず、私は九州クライミング事情が知りたかったのだが…そういう情報の入手先として、ある程度、色々…例えば、四阿屋は2グレード辛いと言われているとか…分かるまでは、しばらく通いたいと思っての入会だったが…。

ま、上記のような理由で通うことができなくなった。

(なので、どの岩場も前評判を知らず、白紙状態で行くことになった)

■ 2つ目の”事件” クライマーがやっていないクライミングジム = ブラボー

しかも、以後、ブラボーがまた…。ブラボーはクライマーがやっていないジムなので、採用面接する人に、クライミングの話をしても何も分からない。故・吉田和正と言って分かるか?当然だが、分からない。山梨で登っていたと言って分かるか?分からない。ラオスで登ったと言って分かるか?分からない。要するに採用する人もド素人さん、である。(この人が福岡県連会長になったそうである)

なんとか採用になったが、初日のバイトで、カウンター裏にあるブラックリストを見て、「これ、何ですか?」と聞いたら、ビレイが危険な人のリスト。ところが、それを言ってくれた人が「この人たち、ビレイ待機でこういう風に持たないんですよ」とデモしてくれたその手が…ATCなのにグリップビレイ…(汗)。

つまり、このジムではATCなのにグリップビレイを教えているってことか…と真っ青になって、その日で辞めた。クライミングの掟は、”君子、あやうきに近寄らず”、である。

なんせ、命より大事な仕事など、現代日本にはない。

これは指摘して後から謝罪が来たが…ビレイでこれであれば、一から十まで、”古色蒼然”である可能性が高く、ずっと修正を言い続けないといけないだろう…と想像ができ、しかも、年下の男性が店長で、その人が職場で目上となると…?いばらの道しか思いつかないので、私個人にそんな自己犠牲を強いてまで、そこで働く必要はないと思われた。

当時は、まだ福岡一年目で、福岡での生活にバラ色を夢見ていた。久しぶりの都会で深呼吸する気持ちというか…。ヨガもクライミングも、趣味としてみると、田舎の山梨より都会の福岡の方が、より都会で人口が多い分、先進的であるのではないか?と予想できたからだ。

外岩は年に一回の遠征でいいや、という気分だった。

正直、小川山に行くも台湾・韓国に行くも、コスト的に変わらない。なら、小川山なんかより、台湾の方が、あるいは韓国にアイスクライミングに毎年行く方が合理的に見えた。

■ 3つ目の事件 5級、6級をおざなりにしているジム

これが私の福岡一年目だったが、驚いたことに九州の東京、福岡で一番難航しているのは、ジム探しだった。

ジムは、福岡は質が低い。というと反論が出ると思うが、

 クライミングの全体像

が、分かっている人が、超少ないわけなのである。オールラウンドクライマーが、いない。

例えば、室井登喜男さんは、ボルダラーであるが、当然アルパインの事も分からない訳ではない。ので、私みたいなアイス大好き!みたいなクライマーがジムに行って、恐る恐る、「あのー、〇〇ってのを登ったんですが、こうこういうムーブが全然できなくて落ちました。似たムーブの課題ないですかね?」とかいう、ジムの人が作ってくれたルートセットガン無視な質問をしても、は?ここは俺のジムだ!俺の課題を登れ!とか言わない訳である。一緒に考えてくれる。

ジムのお兄さんで、「僕、クライミングしたことないんです」みたいな人はいない。「僕、外岩、行ったことないんです」みたいな人もいない。(驚くなかれ、福岡のジムでは普通にいる)。

それどころか、「外岩に行く人が嫌い」とお客さんである私に向かって面と向かって、攻撃してくるジム店長もいる。おそらく、嫉妬の裏返しで拗ねてそうなってしまうのだと思うが、お金を払って、わざわざ嫌な思いをしに行くバカはいない。(余談だが、福岡では殿様若者は大変多い。なんでお客が媚を売らないといけないのだ?)

ので、そのジムには全然行く気になれない。課題も、山梨時代のジムより質が劣るし、その上、都会のジムだから高い。

もちろん、それぞれに特化したジムはある。

スタンプは、コンペクライミングをするのなら良いジムらしく、徳永さんというセッターが良いのだそうだが、私はあいにくコンペクライミングには興味がない。そりゃ当然だ。今からオリンピック選手になる!なんてあるわけない。競技で選手が強くなるための課題より、6級5級でも考えさせる課題があるほうが役立つわけである。

普通のジムは、5級、6級なんてルートセッターはセットしていない。ルート入れ替えすらほとんどない。つまり、低グレードを登る人には、良質のルートセッターは、接点がない。

大体、外岩リードを登るのに、ジムグレードでは3級程度までしか要らない。ので、段の課題でいくら質が良くても、外岩クライマーには無用の長物だ。

ジップロックもボルダラーになるには良いジムだと思えたが、一日いただけで指が痛くなった。課題がボルダー寄り、なのである。ボルダーとは突破力のクライミング。指への負担が重い。外ボルダラーになりたい人に最適なジムだろう。指が痛い=通うには向かない、全身運動にはならない、である。課題は好みというかとても楽しかったので、たまにボルダーが好きな人には、勧めている。

フリークライミングと言えば、普通はロープクライミングである。その名の通りのジムがあり、リードというリードができるクライミングジムもあるが… は、リードエリアが狭すぎて小さすぎ、ビレイヤー同士がぶつかりそうで危険。結局リードするより、ボルダリング壁に落ち着くことになってしまいそうで、意味なし感がある。ここも課題は、普通に良かったと思う。

■ 4つ目の”事件” 技術的に間違っているビレイ連打

公共のかべでは、アクシオンはタダの怖い筋トレ。なにしろ、ビレイが、超・怖い人が揃っている。いきがった片手ビレイとか、壁から離れたビレイとかで、そんなものに身をさらしながらやる筋トレは、恐怖耐性筋トレである。

恐怖は、ムーブの習得にマイナスであることが科学的にも証明されている。課題は全然考えられておらず、良くないと思う。

        こんなやつばっかでした… その上間違いを教えても聞かない


■ 結論: 福岡は九州の東京ではない、ただのド田舎である

というので、まぁ、どれもやっても得るものがないわけではないが、高いコストに見合わない訳である。そんな無理してまで、やらないでも…となる。

なら、ジム代を交通費にかけて無料の外岩に行った方が楽しい。

話がそれたが、つまり、福岡は、スポーツクライミングという面でも、ぜんぜん九州の東京、ではないということだ。Pump2みたいな良質のジムはない。

ので、シリアスクライマーは、どんどん県外に流れていくということになっている。

行き着く先は、東京、山梨、長野、群馬であろう。北杜市が定番である。

私も、この状況ではそれがいいだろうと思う。

クライミングガイドも、充実は、全くしていない。きちんと教えている人が、まぁ、つまるところ、一人もいない。

https://allnevery.blogspot.com/2022/04/blog-post_67.html

樋口先生が唯一ちゃんとしているが、高校生と登る羽目になるのは、かなり大変だろう。

■ 山梨との比較

その点を山梨と比べてみると、山梨は、人口の割にクライマー人口が多く、シリアスクライマーが流れてくる先、流出側ではなく、流入側である。

こんな県は他にはあるまい。長野に流入するクライマーも多いが、基本、北杜市、がクライマーのベストロケーションというのが、一般的な認識のようだ。(ユージさんのいる入間も、岩場のある奥多摩に近いが、奥多摩、登攀禁止エリアが、あり過ぎで、ややこしすぎますよねぇ‥)

■ 5つめの”事件”  外岩のボルトが40年の基準のまま… カットアンカー現役

上記のような事情から、山梨時代の先輩が引っ越してきた時点で、ジムは諦め、ほぼほぼ、山梨アルパインクラブとしての2名での活動が始まった感じだった。

とりあえず、九州の主要な岩場巡り…2年で一巡、出来た。主要な岩場は、ほぼすべて回ったので、岩場を掌握している感は現在ある。

回った結果、分かったことは、九州のリードクライミングが流行っていない理由。

なにしろ、ボルトがボロかった…。しかも、カットアンカー。20年前どころか、40年前って感じだった。(https://allnevery.blogspot.com/2021/04/blog-post_29.html

■ 6つめの”事件” 現役開拓クライマーが無知

その上、現役の開拓者ですら、木工ボンドをケミカル代わりに使うとか、で、創造力ありすぎ!というか、間違った方向に発展している。

ボルト知識的に情報弱者なのである。

その人が、九州最大の岩場で、見たことがない、ヘンテコ終了点を量産している。そのオンパレード具合は、同時に”生と死の分岐点、展覧会状態”と前に誰かが言った、そのままだった。

これは、Yさんおひとりのことではない。Iさんも同じで、11の課題を100本とか量産しているが、量産している=ボルトが安物、である。周囲の人は彼に教えてやらない。結果、新しいルートでも、国際基準の25Knを大きく下回り、上手に打ったところでカム程度の強度…15kNしかないカットアンカーにみなさん、人工壁ばりに、じゃんじゃか落ちながら登っている。カットアンカーって、下手に打つと1,2kNしかないんですよ?

見たことがない終了点は、使い方が分からないので、いちいち長野の師匠に聞いていたら、いちいち、外野から、あーだこーだという指摘が入り、遠くはチェコから、格式の高さではUIAAの事務局長から、アドバイスがたんまり来て、これがうわさに聞いていたトンデモ支点なるものか…!と、これまで本で読んで話に聞いていたことを実体験することになった。

        人気ルートの手作り終了点 アルミプレート=異種金属

        一番ポピュラーな道端エリアのシャックル直付け終了点
      これもこちらで初めて見た支点 登りなよーって言われても…(汗)

■ 7つ目の事件… 周囲も無知

九州で岩登りをスタートした、若い人は当然、小川山や城山で登った経験もない。

山でクライミングをスタートした人ですら、三つ峠も知らず、ほぼ沢登りも知らない。雪の山も、八ヶ岳の3分の2のミニチュアサイズである、大山、止まり。本州では、八ヶ岳ですら、楽勝ルートという位置づけられているのにも関わらず、である。

したがって、指導者が間違ったことを教えても、教えられた側が、そうか!と気が付くこと自体ができない。

山岳会の会長レベルの人ですら、年に一回の日山協やJMSCAが主催する集まりには出ていないと思われるので、年に一度どころか、40年知識はアップデートされていない。(これを書いたら、新・高みへのステップが出た。35年ぶり刷新だった。サボりだった。文登研よ、おまえもか、状態だったということだ)

壁から2mも離れたビレイをしていて、それを若い人のお手本ビレイにしてしまう、とか、
クライミング初心者には向かない、下部核心のルートだとかを登るように勧める…とか
そういう指導者しかいないので、指導される側は、そういうもんか…と受け入れてしまうしかない。

教えられる側は、自分で理解しておき、自己保身をするしかないが、それが基本的には目上の人の意見を反故にできない儒教文化の地であるために、下の者は身を守ることすら、できない構造になっているので、まるで、戦中の軍隊みたいなことになって、しかも上の人はそのこと自体が無自覚である。

JFAの勢力の範囲外であるので(範囲内の長崎でも、まったく、グージョンは普及していないが)、結局、まともなボルトの岩場は九州には一つもない、ということになって、まともなものを見たことがないために、誰も変なことを変だと気が付くこと自体ができないでいるのである。

若いクライマーは、小川山より先に、城山に行きましょう。ボルトはそこで観察しましょう。小川山は人気のないルートは放置されています。

■ 8つめの”事件” 野岳よ、お前もか… 八面は更新

野岳の開拓者は、全国的にも有名な東さんで適正ボルトで知られる開拓者だが、東さんの岩場ですら、カットアンカーが打ってある。一向に変更される気配はない。新規開拓はどんどんされるのにも関わらず、だ。

最近、八面が全面的にリボルト終了したそうだが、これも指摘されて行われたもので、自発性があった活動ではない。その上、地元山岳会が、こそこそとボルトを抜く、などの行為すら、あった。何かやましいところがあったのだろうか?

■ 9つめの”事件”  入門レベルで大ランナウトが明示的に教えられていない

支点や終了点だけではなく、これが噂に聞いていた、トンデモ・クライミング技術か!という経験も、たんまりたまった。

まず最初のトンデモ経験、その1は、

2~3ピン目でランナウトしたインディアンフェイスという四阿屋の課題で、グランドフォールを見たこと。

地方の課題で、グレードが辛いのは、珍しいことではない。が、ランナウトって。

3級や4級と一続きである、スラブのランナウトと違い、フェイス…つまり5級、デシマルで、5.○○でスタートするルートは、ランナウトというのは、落ちたら死ぬって意味ですよ?

明示的に、RやXをフリークライミングではつける。それがアルパインの慣習に習っているのでついていない。スラブだって落ちたら、大根おろしだと思いますが、垂壁とリスクの差は比ではない…。ハングでランナウトしたら?もう、地面に激突ですよね…

この方、腰椎骨折で全治6か月ってことでしたが、一生クライミングできないかもしれないですよねぇ?

いったい、どう責任を取るつもりなんだろうか? 九州では報道されないだけで毎年、1人や2人死んでいます。

新人などには、事故情報は回ってきません。内輪で回すので、ビジターなどは知らされぬまま、岩場にご対面ってことになります。

内輪の情報網に入る条件は、内輪のクライマーと個人的つながりがあるかどうか?です。

■ 9つめの”事件” グレードが新人に不親切&不適切

”5.9なのに10bムーブ”…である。

地方での岩場で課題が辛いのは、別に珍しいことではない。

問題は、5.9なのに10bムーブが要求される、その状況を好ましいもの、と捉えていることだ。にやにやしながら嬉しそうにそう語る。それが疑問だ。

辛いですね~と言われたいのである。つまり激辛は誉め言葉。

グレードは適正でないと、現代クライマーは、インドアクライミングジム出身者が多く、グレードをそのまま受け入れる人が多いため、5.10bと書いて実は5.10dでも、5.10bに違いない、と思って、そのまま取りついてしまいます。

落ちる=頑張った証なのは、分かりますが、落ちるまで登るのを楽しむのが、外岩クライミングなのではなく、落ちないで登るようにするほうがいい事情ばかりが蓄積していっているのが、日本のボルト事情です。古いボルトで落ちるクライミングをしてはいけない、のは、外岩クライマーの常識ですが、そんなことは、インドアクライマーは知らないで岩場に来ます。

普通に考えたら、何も知らない5.9が限界グレードの人が取りついたら、10bが要求されるわけで、当然落ちる。つまり、落とすことを意図している。

それでも人工壁だったら落ちるのが当然なのだからいいのではないかと思うが。外岩でそれ? ま、もちろん、その課題で10bのムーブが要求されるところは、終了点間際の上部で、落ちても別に大きな問題にはならないようだったので、問題ではないかもしれないが…。

この騙して、落とす発想が、その岩場では主流だと思われ、不安になった。しかも、支点が奇天烈(上記)。

一事が万事というのが、大体、クライミング業界だからなぁ…。

つまり、発想が幼稚な岩場ってことである。

まぁ、その課題は、クライマー界でハンデだらけのおばちゃんクライマーの私がオンサイトできたくらいなので、5.9で妥当だろう。なんせ、そこで最も易しい課題だからだ。下手したら山梨では5.8が付いているかもしれない。

ちなみに、そこは、ヨセミテ仕込みとか言う、佐世保の海軍の兵隊の若いアメリカ人を連れて行ったが、登れなかった。だから、問題は彼ではなく、課題のほうだろう。

この課題の後に続く次の難度(10a)の課題を登ったが、それもオンサイトできた。

■10個目の”事件” イケイケ文化

イケイケ文化は、今となっては簡単になってしまった5.9を登れば尊敬され、山岳会のトップが5.12を登るのが最高難度であった40年前のクライミング文化っぽいですよ?

5.12中級者と言われる今の時代の難易度で、イケイケやっていたら、すぐ死にます。現代、岩場事情に即さないということです。

後日だが、私が特に喜びもなく、静かにオンサイトできた、10a程度のその課題を、”俺ってかっこいいだろ、どーだ!”オーラを発しながら登ってくれた、若い男性クライマーがいて、かなりシラケた。そんなの、自慢になるグレードじゃない…。

九州ではたぶん、基準が一昔前に古い。 5.12RPは上級者ではなく、中級者といわれるようになってから、すでにひと一人、成人するくらい、20年くらい経っているんですよ?

43歳からクライミングしている女性が、3年程度の修行してオンサイトできる程度の難易度のところで、若い男性がカッコつけて、かっこいいのだろうか? 

現代のクライミングのレベル感を鑑みると、どーだ!俺かっけー!!というオーラをしょってよいのは、5.13から上、みたいですよ?その辺も疑問に感じるのが九州で、ブイブイ言わせるグレードが低すぎる、というか…。

師匠の青ちゃんは、大ランナウトのインスボンをすいすいリードしてくれるが(しかも、ケガした足で)、日ごろ、”俺なんか、全然、登れない”と言っていて、それも慰めるのがめんどくさかった…。なんせ中高年クライマーにとって、グレード競争なんてどうでもいいって感じなので…が、現代のクライミングレベルを考えると、青ちゃんの方が正常だと思う。

普通の若い男性は、まじめにやれば、数年で、5.12くらいは登れるものだろう。なんていったって、握力たったの17kg、身長152cmの私で、43歳スタートで、3年やって、5.11が見えているわけだから、男性の11なんて自慢の種になるわけがないのである。むしろ、努力を欠いている証とすら言えるかもしれません。

なにしろ、日本のボルト配置は、男性に有利に出来ているのだし。実際、小川山で一緒に登っていた男性クライマーで、11で自慢していた人はいない。むしろ、引け目に感じているほうだと思う。

ブイブイオーラというのが、これが九州の基本にあるようで、これも、余り易しい課題でやると、滑稽ということだ。すくなくとも一般的に10代でブイブイは変だ。山梨では、そんな人には会わなかった。

たぶん、ブイブイ=やる気がある、と九州では誤解されているが、ただリスクの認知がなく、ブイブイだけがある人に、リードは取らせられない。デッドで取るだけしか手段がない人に、岩が外れることがある、外岩でリードさせられますか?させられませんよね?

しかも、ところかまわず落ちる。ランナウトしている課題で落ちるなんぞ、ご法度です。

このブイブイカルチャーなんだが…イメージは、露出狂…。おれの〇〇どうだーと開陳したら、え?めっちゃ小っちゃ!みたいな?だけど、露出狂の本人は、どーだ!と思っているので、指摘もできない…指摘すると、マジギレするか、心に傷を負いそうだ、みたいな?そんなイメージが湧くのが、九州でのクライマー目撃体験でした。

■ 11個目の”事件” 支点ビレイ

その後も、古色蒼然としたアルパインの伝統に触れることになったが…例えば、支点ビレイとか...。

その後、12個目の事件として、”九州でいうところのアルパインクライミング”、はマルチピッチの岩場をエイドで登ることを意味するのだと分かった。

そんなクライミングは唾棄されて、久しいと思いますよ?

基本的に、みんなあんまり、フリークライミングとアルパインクライミングの差を分かっていないんじゃないか?と思えた。

■ アルパインクライミングが、微妙に本州と違う… アルパインじゃなくてエイドクライミングだった…

なにしろ、アルパインクライミングの技術しか教わっていない人がフリークライミングの開拓をしているので、両者が混同されて、意味が分からないことになっているのだ。

それどころか、アルパインクライミングの技術も、きちんとは教わっていないんじゃないだろうか?

というのは、普通はアルパインのクライマーは、支点はリムーバブルが当然だ。

九州では、それが、ぜんぜん当然にはなっていない。ほとんどの人がカムを使うスキルもなければ、ハーケンも打てない。支点構築スキルを身につけなければいけない、とも、思っていないようだ。

その5。すでに支点がプリセットされたボルトルートスキルしかないのに、本州の本チャンに行って残置で登る気でいるらしい。それは、自殺行為に等しい。

そんなの、クライミングをスタートした初日に教わるようなことだぞ?

なにしろ、ちゃんとした本チャン、つまり残置に頼らないクライミングを練習する課題が九州にはない。残置で登る=危険行為ですよ、と明確にメッセージ化されていない。

■ 対策その1 : オールナチュプロでグレードを上げていけば、未満の人は来ない

例えば、本チャンアルパイン的ルートの代表、白亜スラブは、残置などなくても、カムで登れる課題だ。

普通のアルパインのクライミング論理では、残置なんぞ、頼らないクライミングをするのが普通だ。私の旗立岩を高度化したものである。

そんな支点構築スキルが求められて当然の本チャンルートでも、古い信用ならないボルト(40年経過したカットアンカー…汗)なんかがあると、ボルトがあれば、落ちて良いと考えてしまう。甘えが出るのだ。結果、非熟練クライマーが来てしまう。

なにしろ、アプローチが5分とかだと、ゲレンデ、と勘違いしてしまうのである。(実際、ゲレンデと考えるのが良く、ルートの成り立ちをきちんとトポで伝えるのが良いようである。つまり、ルートの性格的には、練習台、であり、本番、ではないってことだ。)

■ 対策その2: 老舗山岳会には、むしろ行くべきでない

私がセカンドを務めた白亜スラブで、先輩は、終了点を見落としたせいでロープが足りなくなり、中間支点1点のボルトに仲良く2名がぶら下がる羽目になった。

この記録は、クライマーとしては、恥ずかしい記録なのだが、あえて掲載するのは、彼も騙されて、これに行ったのではないか?と今では思っているからだ。

彼の実力を正確に測る能力がある指導者がいれば、ボルトが信頼できない、白亜スラブを薦めるとは思えない。痛い目に遭わせてやろうと意図された可能性が高い。

つまり、彼は、九州における山岳コミュニケーション上、騙されていた可能性が高い。その騙された彼に、私は付き合わされたわけである。あの登攀は私が並みのセカンド…自己確保で登る技術を持たないクライマーであれば、ヘリレスキューになったことであろう。

そして、今の時点でも彼はそのことには気が付いていないだろう…。だまされたことについてもだし、セカンドの技術に頼ったリードだったということにもだ。

二人で、ぶら下がった当時ペツルだと思っていた1本のボルト、あのボルトが抜けていたら、二人とも、さよーならー、である。

そして、その支点は、信用ならない、40年が経過したカットアンカー

何事もなかったからよかったものの、ここで反省しないで、どこでする?

現代のボルトで、”普通”は、グージョンの事である。私たちは無知で、カットアンカーを当然のようにグージョンであると思っていたわけである。

さて、この記録を老舗山岳会は、ダメな記録、とは認知できない。すごい!とか、えらい!とか言ってしまう。それは山岳コミュニケーションの誤解が、日本海溝より深いからである。

山ってカッコつけるためのものっしょ!と言うわけで、彼らも、”本気の山”…一歩間違えば死ぬ山…は、やってきていない、やったことがないことを意味する。なんせ、本気の山でふざけた行為をしていれば死者の列を作るだけなんである。

いったいどこで時がとまっているんだろう…?

■ 対策3:現代のアルパインは支点は自作ですよ?

その経験…クライマーとしてのボルトタイプに関する無知…も、悲惨だったが、九州の岩場に必要なのは、そもそも、終了点を見落としてしまうとか、ロープスタックさせてロープアップできなくなるような、未熟なクライマーを呼び寄せないようなルートの作りが必要なわけである。アプローチが短いと勘違いしやすい。

ボルトを抜けば、そんな奴は来ない。

いくら、お調子者でおだてに弱い人でも、残置無視、オールナチュプロとなれば慎重になる。(グリーンポイント)

オールナチュプロ=本当の実力が示せるってわけだ。オールナチュプロという言い方が混乱を招くのかもしれないが、同じルートでも、プリセットされたプロテクション(中間支点)で登るクライマーは下手くそ、オールナチュプロで登って、ちゃんと登ったことになるのが本チャンだ。

なにしろ、山に残置があるわけがないのだから、残置を頼らずに登るのが、普通にアルパインの完登と言え、それにふさわしい課題だろう。

北アの錫杖など、誰かが残置する度に、ボルトやハーケンを抜くクリーニングにトップクライマーが出かけているんである。九州のみなさんは、残置はありがとーって使っているらしいんだが、それは、甘ちゃんクライミング以外の何物でもない。その上、その残置で落ちて、抜けて大けがし、山はアブナイとか、的外れな感想を述べているのである。

山じゃなくて、あなたがアブナイ。

要するに、甘ちゃんを育ているのがボルトなんだが、現実のボルトは40年経過して、あまちゃんに有利なはずだったのが、現実的には、だましルート、って結果になっている。

思うに、ボルトレスにしなければ、クライマーは岩の歌が聴けるようにはならないのではないだろうか?

現代クライマーは、ボルト追っかけで、ボルトの歌を聞いてしまう。

もちろん、支点さえ自前であれば、エイドを出しても、テンションしても、アルパインだからOKだ。つまり、完全フリーで登ることは、求められないのがアルパインだ。

弁財天岩東稜 https://allnevery.blogspot.com/2019/01/hyugami-benzaiten-iwa-east-ridge.html

とはいっても、昨今のトップアルパインクライマーらは、ちゃんとチーム全体が、オールフリーで登っているが、そのこと自体が年配のアルパイン系の人の間では、理解されていないのではないだろうか?

だから、年配者は、現代のスーパーアルパインの記録を読んでも理解できない。

日本アルパイン史において、クライミングの基準を塗り替えたと言える偉業の甲斐駒のスーパー赤蜘蛛フリーソロが、全然、日本では話題にならなかった理由が、これなのではないか?と思う。

たぶん、白亜スラブと同じくらいにしか思えなかったんでしょうねぇ…なんせ九州の岩場でアプローチ6時間とかないんで。

日本では、”アルパインクライミングと言えば、エイドクライミングのことだ”と古いクライマーが、若者に教えるので、若い人は、”そうか”ということで、現代的な記録も、正確には読めないで、読み違えてしまう。

だから、すごい記録が出たとしても、すごさが正確に理解できず、一昔前の感覚で、

自分にもできる

と思ってしまう。猫も杓子も、”俺だって佐藤ユースケ”って思ってしまうようだ。

それは現代の若者が、どんなふうに自分のアルパインの記録をつけるか?で推測できる。

エイドで登ったことをそうと明記せず、楽しく登った記録にしてしまう…という時代錯誤なことが行われている。

読んでいるほうは、まさかたった5.10cの核心に、エイドで、2時間半もかけて登った、とは思っていない。そうは書いて無く、楽しく登れたと書いてある。

当然だが、記録を読んだ現代人の側は、現代で登攀と言えば、フリーで登ったことが前提になっているので、いい若者が出てきたな、今度、声をかけてやらねば、と思ってしまう。

そんな誤解によって、得しているのは、古い常識をインストールされて、自分が全く現代レベルに達していないことに無自覚なまま登っている新人のほうで、損をしているのは、ほんとにすごい偉業をしている人たち…佐藤さんとか…である。すごさが認知されていない。

それは、他のクライマーが、どうせあいつだってエイド出していると思っているから。

参考:登山と嘘は相性がいい 

■ 対策4 :まっとうなフリークライミングのルートを増やす

ランナウト核心の比叡のようなルートを、フリークライミングのルート(ゲレンデ、練習用)として性格づけたいのなら、ボルトはリボルトして、落ちれるように、ちゃんとメンテすることだ。

フリーは、エイドを出さず、完全にロープに頼らず、登るものだからだ。その代わり、リスクをとって、えいやっ!とやり、落ちても、XとかRとか書いていない限り、当然、死なない。全然、アルパインとは指向性が違う。

参考:最近、白亜スラブはフリークライミングのルートと結論しました。

大体、最近のクライマーは、どんなお粗末スタイルで登っても、終了点にたどり着きさえしたら、”登れたー!!”と言ってしまう。

実際、山梨アルパインクラブの先輩と行った白亜スラブも、登れていないが、登攀直後は反省がなかった。むしろ、自信につながってしまっているようだったので、これでは、事故が減らないはずだと思った。https://allnevery.blogspot.com/2019/03/blog-post.html

300のヒヤリハットが5件の重大事故の背景にあるからだ。しかし、ヒヤリハットをヒヤリハットであると認知できなければ、向上がない。

これが日本から事故が減らないカラクリだ。ハインリヒの法則は、無視されている。

クライミングスタイルの教育は、なおざりで、ショートでは、

 ハングドッグ&レッドポイントのグレード競争

になっているから、5.12がRPで登れても、時間が勝負のマルチやビッグウォールでは通用せず、ロープクライミングの基本をマスターできていない。カムの配置が悪くて、ロープをスタックさせても、俺、登れた、と言って、自己肯定感アップして、しまう。そりゃ、20mでしか通用しない。

長ヌンで伸ばさないと岩角に当たってロープが流れなくなる、なんて、普通に仲間と登っていれば、盗めるというか、教わらなくても、自然に分かるはずなんだけどな。

私はクライミング元年に行った、初級ルートの太刀岡で分かったけどなぁ。

大体男子は、みんな初級ルートを馬鹿にしているから、初級ルートで学ぶべき技術的課題を克服しないで、上級ルートに行きたがる。

終了点を見落とした、ロープスタックしてロープアップできなかった、なんて、”登れた”と、普通は胸を張って言うことはできない。復習山行の対象だ。

ま、この事件で、相当懲りたわけである、私は。

これに行ってしまった理由は、単にフォローがいなくて気の毒だなぁ…と、すでに、先輩・後輩の絆があったため、である。

今では、あんまりにも寛容だった自分を反省している。

九州のトンデモクライミング事例:どんなレベルの人が比叡に来るか

 https://allnevery.blogspot.com/2023/02/blog-post_19.html

この人、文登研リーダー講習上がりの若い人ですからね。リー研も地に堕ちたもんだ。

■ 対策 5: 5.10代が危険と警戒する

アルパインの論理で、フリークライミングのルートが作られている率は、5.9~5.10代の初級ルートに多い。(おそらく、もともとの古いアルパインのクライマーたちは、高難度フリーは、全然、登れない人が多いからだろう。)

また、単純な、エイドルートのうち替えルート、が多い。

その悲惨さNO1は、八方が岳のボルトラダーうち替えで、1m置きにリボルトされた10c。

現代の一般的なクライミンググレードが登れる人がリボルトしているのではない(こっちのリードクライマーの能力は一般的に低い)ため、古いボルトの置き換えで、思考停止しているわけなので、岩がもったいないことになっている。

その課題をさも、自慢げにお披露目されたときには、ああ…、ここまで何も分かっていない人たちだったのか…と目を疑った。いわゆる山岳会の人たちと行ったからだ。本人たちは、自信たっぷりなので、こちらは、なにも言えない。

■ 対策6 グランドアップとラッペルダウンは別物と自覚する

アルパインとフリークライミングのルートの最大の差は、

 ・グランドアップか、

 ・ラッペルダウンか?である。

もちろん。フリークライミングには、ラッペルとグランドアップの両方があるが、アルパインにあるのは、グランドアップだけ。

グランドアップにも、ドイツ式とフランス式があり、ドイツ式のは、ボルト位置が吟味されていない。いきおい、遠くて、危険な課題と言うことになりやすい。

アルパインクライマーがフリーの岩場の課題を開拓したことが、何に現れるか?というと、クリッピングチャンスの捉え方、である。

アルパインの人は、基本をリッジ登攀に置いている。つまり、基本的に落ちない傾斜のベースに、ところどころ落ちるところがあるわけで、その落ちるところ、というのは、難易度というよりも、おかれた場所の危険度、である。沢登りでも、この辺の機微は学習できる。

例えば、高さ30mに置かれた足場板は危険だが、高さ1mにあれば危険でない。なので、難易度というよりも、危険度が問題であり、アルパインだと易しいからと言って、支点を取らず、どんどん高度を上げてしまうというのが、初心者が陥りがちなミスだ。つまり、ランナウト。沢なら高巻きでロープを出さないとか。

私も過去にやらかしているが、マジの初心者時代だけである。それを延々と訂正しないで続けているのが九州クライミングである。

アルパインルートでは、危険個所、つまり、核心前以外は支点がないのが普通だ。それは現代クライマーにとっては、歩ける難易度だからである。言い換えれば、ガバがあるところは、快適に登攀中なので取らない。登っていても、一般的な山やであれば、ここで落ちるやつはいないと思える。ジャンで落ちる奴がフリークライミングに来ると思います?来ませんよね?

もちろん、地面が近い間は、取るのはフリーと同じだ。(クライミングは高さが低い方が危険。地面に落ちれるから。)

一方、フリークライミングというのは、そもそも絶対にロープがないと、登れない傾斜を登るものだ。5級とはそういう意味である。

だから、フリークライミングのグレードは、5.XXというように5から始まるわけだから。UIAA3級はロープがいらないグレード、4級はロープが人によって要らないグレードなのだから。

一方、デシマルで始まるフリークライミングでは、いつでも、どこででも、落ちること前提である。

フリークライミングでは、落ちれない品質のボルトなら、あるだけ無駄である。

こちらは世界のお墨付き。https://allnevery.blogspot.com/2023/07/climbing-policybetter-to-have-no-bolt.html

そこが、アルパインの人は切り替えできないのだろう…。こんな易しいところでは落ちないから、イラナイと考えてしまう。

50mの登攀で、3級では1本、4級で2本、5.XXで3本という換算表は、まったく岩の現状を何も反映していない思考法だ。

何級だろうが、落ちたら死ぬところでは、核心前に1本。カムなら、念のため、2本だ。

雪稜なら、落ちて死ぬところなら、2級つまり、水平だってタイトローピングするものだ。事例は、クレバスウォーキング。

(余談だが、師匠がおらず、講習会やガイド講習を受けていないクライマーは、タイトローピングを習得していない。技術要素としてすら、知らない人が9割だ。)

一方、どこでも落ちる、という前提の5級スタートのフリークライミングでは、ガバ=クリッピングチャンス、というのがフリークライミングの前提だが、元アルパインクライマーが、フリーのルートを作ったのではないか?という課題は、大体が、ガバ=ボルト飛ばし、になっている。

その結果、れっきとしたフリークライミングの課題なのに、なぜか落ちてはいけない課題、ということになってしまっている。

例えば、四阿屋のインディアンサマー。初日に3ピン目で墜落して腰椎骨折した人を見た。2-3ピン目がランナウトしているためである。

あるいは、例えば、八面 カプチーノ5.9。

オバチャンクライマーの私がオンサイトで、見ず知らずのビレイヤー(つまり、信用はまだできない人)を相手に登れたくらいなんだから、5.9でいいとは思うが…なんじゃこりゃ!と思った。

昨日、田嶋さんに聞いたら、そこは、新人にはトップロープでしか登らせない課題ということだった。んじゃ、トポに、トップロープ課題と書いておくべきである。

大体、一番真ん中の良いところにある5.9だったら、その岩場に初めて来た人は、普通に喜んで取り付いてしまうだろう。

余談だが、私が登っていた時に、誰でも知っている有名アウトドアウエアのメーカーで店子をやっている男性たちが集団で登っていたが、同じ5.9、若い男子でも全然登れず、TR以外ありえない感じでしたよ。

まぁ、そんなこんなで、支点の質が40年前であることや、課題の質がアルパインの論理で、作られていること、などから、色々と普通は、フリークライミングでのボルトルートを期待していたら想定しなくて良いとされる、想定していない、きわどい目、に遭った。

いや、ひどい目以外は合っていないというほうが正しいくらいのレベル感だ。

心が擦り切れて、鬱病になった…。

九州では、そんな私にさらなる行政改革?を期待したようであるが、そんなの、外者から指摘される前に、ローカルクライマーの自分たちで、自己改革してほしい外者、よそ者から、指摘を受けるまで、直さなかった、というのが実情なのであるから。指摘に対して、逆恨みをするのも、辞めてほしいものだ。

自分の仲間が間違ったボルト打ちをしていたら、仲間である、あなたが指摘してやるべきでしょう。私に役割を押し付けないでください。第三者である私が言ってますよ、悪口ですよ、と告げ口するのは、私に悪役をおしつけ、自分だけは保身しようと、責任転嫁しているのである。私に猫の首に鈴を付ける役目を期待するのは、やめてほしい。

カットアンカーは、私じゃなくても、誰が見ても時代遅れで強度不足です。ホームセンター調達の”アルミ”プレートとかも、安物買いの銭失い、時代遅れすぎます。そもそも異種金属だし。

人工壁のホールド一個に何千円も出すのに、なぜ一本1000円くらいのグージョン代が出せないのか?謎です。

■ 謎のカム不信 …カットアンカーは信頼できるのに、カムは信頼できない?!

不思議な倒錯もある。カム不信だ。これも古い価値観が更新されていないためではないのだろうか?

40年前の腐ったカットアンカーには、落ちろ落ちろ、と言われる(例:大蛇山。登った後すぐリボルトになった)のに、カムで登るトラッドを私が登ると言えば、「命知らずですね~」みたいな対応をされる。

誰が打ったともしれない40年前の腐ったボルトに、ポロポロと気軽に落ちて、それが抜けてグランドフォールするのと、自分がセットしたカムが抜けてグランドフォールするのでは、どっちがいいですかね?

この辺は好みの問題なのかもしれないが、私なら、自分がセットしたカムに落ちる方がまだ納得がいくけどな。

ちなみに自分のカムに落ちたことはありますが、それが抜けたことはまだないです。

■ その他

その他、色々と疑問な出来事が起こった…。

最近起きた 公開されている岩場なのにノーマットで、ボルダリンググレードの3級しか登れないクライマーが2段登りたい! ちやほやされたい!

…なんて、可愛いもので、

クラックなのにボルト、とか

外岩なのに人工ホールド、とか

2名のリードを一人がビレイ、とか

支点ビレイをされているのに、されている本人が気がついていない、とか

動くものに道標つけて、これで良し!とか

背の低い私に向かって、エイドで鍛えてやる…とか。

最期のやつなんて、死の宣告に近い。

昔のエイドルートって、ボルトが打たれたのは、40年以上前だろう…フリー化以前だからだ。つまり、ボロい。そして、背の低い人が、いくらアブミの最上段に載ったところで、手が届かないものは届かない。オリンピックで、森秋彩選手が明らかにした。

このことは九州大学で教えるくらいの知性があっても分からないみたいなんですよね…

エイドクライミングのグレーディングというのは、困難度は常に距離である。墜落距離と比例してリスクが増すからで、つまりランナウト核心と同じことだ。A1、A2、A3と困難度が上がるグレードの中身、内容を調べれば、誰だってすぐ分かる。

それをちびの新人に向かってやってあげるよっていうのだ。こんなの、殺してあげるよ、喜んでね、と言っているのと同じことだと分からないのだろうか?フリークライミングにおけるAゼロだって、手が届けば出来るが、届かなければできないものだ。

それ以外にも、私のリード中に、他のクライマーをリードさせて、一人で2名をビレイしたトンデモ・クライマーから、連れて行ってやっても良い、と言われた。そんなトンデモ・ビレイで登らないといけないなら、登らない方がいい。

そもそも、2名が一名をビレイするなら分かるが、一名が2名をビレイするなんて、リードではありえない。マルチのセカンドを上げる時だってセカンドで、たるんでいるロープで落ちても、そもそもトップロープだし、大した怪我にならないと考えられているから、だ(ちなみにこれは危険行為で、悪習慣である)。

以上を勘案すると、”連れて行ってやる”のは、どう考えても、私の側である。

…というわけで、九州では、理解が反転…倒錯…している人が多数で、その理解の反転は、普通にまじめに論理的に考えたら、変、と気がつく程度のものが多い。

要するに、みんな考えていないで、周囲の空気に流されているだけ。

あの人は往年クライマーだから、あの人について行けば、ただで教えてもらえる、と期待してやってるのだろう…。

つまり、新人はすっかり雰囲気に騙されている気配が濃厚だ。

技術なんて持たず、教えることができないから、教えられない人…言語化できない人…を仰いで、クライミングについて行き、俺はお前を連れて行ってやっているんだぞ、と不当に恩を売られるのに、気が付いていないわけだ。連れて行っている本人は、技術がなく、文字通り命がけだから、なまじ、その気持ちは、嘘ではない。

逆に新人の側は、ありがたくもなんともないものを、高額で買わされているようなものである。

このような状況なので、山岳会には入らない方が良い。入ったら、殺されてしまうかもしれない、そして、今時の新人は、根性がない、と言われる、ということになっている。実態は虐待を断っただけのことだ。

かといってクライミングを正しく教える機関はないし、杉野さんみたいな、クライミングガイドのしっかりした人も聞かない。

一人で2名をビレイするとか、ATCなのにグリップビレイとか、リードクライマーを支点ビレイする、とか、間違った技術を広めているのは、むしろ会のほうなのだ。

…が、これから技術を習得したい人は行くところがない。

■ グレードは適正に…とはいえ

一方、グレーディングが辛い、というのは、開拓者が置かれた事情を鑑みて、ある程度は理解できる。

あるグループで、自分が一番登れる人になってしまったとしよう。あるルートを開拓したが、自分以外は誰も再登できない。

となれば、今まで自分が登ってきた最高難易度のものと比較して、それより難しければ、1グレード上げ、易しければ1グレード下げるだろう…それしか、参考になるものがないからだ。

もし、私のように10代がギリギリで、5.9は、まぁ落ちないレベルの人が登れば、私が落ちるようなところなら、5.10cかな?とかいう付け方ができる。あるいは、何トライでレッドポイントできたか?カウントすることでグレードを与えることができる。私のレベルなら、10cは、2回か3回でレッドポイントが今のスキルなので、レッドポイントにかかった便数で、グレードが図れる。

しかし、開拓において豊富なテストクライマーが得られることは、ほぼないので、一つの岩場の中で、グレードが易しい順から、難しい順にきちんと整列していたら良し、というべきだろう…。

■ それより問題なのはランナウト

そもそも、ボルトルート(スポート)のフリークライミングは、どこで落ちても死なない前提のクライミングなので、問題になるのは、グレードが辛いことより、ランナウト、である。つまり、落ちてはいけない作り、である。特に、その岩場で一番易しい課題。

何しろ、初めて行った人は、一番易しい課題に取り付くのである。その課題が5.9と書いてあって、10cであっても、どこでも落ちれる作りなら、「あー、難しかったー」で、終わりだ。

ところが、落ちれない作りの課題だと、追い込まれて、やむなしで落ちて、大怪我してしまわざるを得ない。四阿屋のインディアンフェースである。行った初日にグランドフォールで腰椎骨折した方に遭遇した。

お気の毒だが、フリーファンには事故報告は乗らなかった模様だ。

事故の情報が、どこにも載らなければ、事故がその岩場で起きていることも知られないままになる。むろん、開拓者本人すら知らない。

もちろん、これがアルパインのクライマーなら、ここで落ちたらヤバい!と思った時点で、エイドの道具、例えばスカイフックなどを出して、安全に降りるなどの対処が可能だが、普通のフリークライマーがスカイフックを持って、岩場…しかも、ゲレンデ…に行くかというと?当然だが行かない。スカイフックなんて名前を聞いたことがある現代クライマー自体がいないだろう…。エイドの道具だからだ。

当然、本番でもないゲレンデにスカイフック持っていく人も普通はいない。

というわけで、普通のフリーのクライミングしかしない人向けに、ボルトルートであっても、ランナウトした課題、落ちれない課題には、Rを正直につけておくべきだ。トポに書いておけよ!ってことだ。

大体、フリークライマーというのは、スポートルート、つまりボルトルートでは、ボルトへの信頼をベースにして、俺は安全なクライミングを選んで登っている、と思っている人たちなのだから、ボルトルートに取り付いて、まさか、自分がRつきを登っているとは思っていないのだから。

そもそも、RXの記号自体が、トラッドを前提にしているそうだし…

ここでも、ルートに欺かれることになっている。

そもそも、フリークライミングの教育に、エイド技術で急場をしのぐなんて出てこないのだし。

もちろん、落ちたら、ビレイヤーが後ろに走る、とか教わらない。

そんなことを知っているのは、昨今アルパインのクライマーでもいない。アルパインロックのルートで、後ろに走るビレイをできる岩場なんてない。大体のルートでは、1ピッチ目以外は、ハンギングビレイになる。

後ろに走ることを知っているとすれば、アイスクライミングのクライマーくらいだ。私は幸いアイスクライミング出身だが。

アイスクライミングでは、支点となるスクリューが高い。1本1万円だ。勢い、支点の数が限られるので、できるだけ本数節約で取るので、下のビレイヤーは、「ねぇ、もう、早く取ってよう… これだと私、だいぶ後ろに走らないといけないじゃない…」となる。

もちろん、ビレイヤーの方が軽かったら、後ろに走ろうが、落ちられれば、前に引かれるので、意味なしである。それどころか、前に引かれて、ビレイヤーの側が氷に激突して下手したら、ビレイヤーの方が死んで、落ちたクライマーの方が雪のクッションで助かるレベル感である。

九州では、ランナウトという言葉の語義、自体を古いクライマーは理解していないかもしれない。

https://allnevery.blogspot.com/2022/10/blog-post_28.html

■ 総括

というわけで、総括すると、

アルパインロックの本チャン的ルート = ボルトを抜いて本来の支点を自作するルート設計へ

フリークライミングのルート=ランナウトの問題解決し、本来のボルトが信頼できるフリークライミングのルート設計へ

という二つのことが課題なのが九州だ。

あとはトポの充実。ちゃんとトップロープ課題とか、RとかXとかつけておくべきだ。ボルトの設置年月日と施工者名も同様。そのルートがエイドで初登されたのか?グランドアップ開拓なのか?もかなり重要なコンテキストだ。

現代のクライミングの様子を鑑みるに、高齢化で、要するに、クライミングが怠惰化したのだろう…。

なにせアルパインのクライマーにとっては、支点を自作しなくて良ければ、そもそも、登っているグレードが11以下なので、一般男性にとってはタダの快適クライミングである。

怠惰でなければ、好意的に考えて、現代においてもカットアンカーをカットアンカーにリボルトしようとするなんぞ、カットアンカーが現代では適切なボルトでないことを知らない=無知だった…のであろうが、どちらにしても、その期間は40年間、で、尊敬に値する行為か?というと?答えは明白であろう。いくら九州が僻地でも、10年遅れとかくらいまでだろう、その言い訳が許されるのは。

フリーのクライミングルートがフリークライミングの論理で貫かれていないことも、基本的には、意味あってつけたグランドアップ課題というよりは、単にエイドの置き換えであるだけ、とか、ボルト位置に失敗した、というだけのことであろう。

断っておくが、私は5.11が登れるようになってから取り付く5.9があっても良いと思う。憧れのルートということだからだ。しかし、それには歴史的経緯が必要だ。しかも、そういう性格のルートだということを広く認知され、トポに書いてある必要がある。なにしろ、トポはコンテキスト、つまり、どういういきさつで開拓されたか、を伝えるため、にあるのだから。

九州では前の世代のツケ…2000年代でも、本州ではとっくにリタイヤしているカットアンカーボルトの本チャン、ボルトが信用できないフリークライミングのルート…に、延々と後世の世代が付き合ってきたわけだ。

その際に、危険になるのは、昨今、10歳以前からエリート教育を受けている最精鋭のコンペクライマーではない。彼らは登るために新規ボルトを(グージョンで)打ってもらえる。そのための予算は、税から出ている。

一方、普通に趣味としてクライミングに接し、クライマーのやっていないクライミングジムでクライミングに接した、一般市民クライマー達には、コーチはいない。師匠も当然いない。クライミングジム店長も頼りにならず、ガイドもおらず、九州では、クライミング講習会も開催されない。

たとえ、講習会が開催されたとしても、地元の反発を憚って、このような知識は伝えられない。

そういえば、御坂山岳会の先輩が九州に転勤になり、その先輩はとっととクライミング辞めてしまっていたなぁ…。それはこういう訳だったのだ。

というので、これで4年間のクライミングの総括、お終い。

■ 当方の山の実績

7年前の昨日は、阿弥陀北稜を初見ソロ…つまりオンサイト…で登っていたようだ。

九州2度目の転勤後の生活だが、最近気に入っている作家さんである、谷本真由美さん風に言うなら

『九州クライミング要注意マニュアル』

だわな~ いやマジこれですよ、この5年間は。

誰も気に掛けたり、救ってやらんかった、落ちこぼれクライマーたちの技術実態が、いかにひどいことになっているか、分かった。いまだに、グリップビレイしている。

これを危機だ、危険だ、間違っている、と気が付くことすらできない、若い人たち… 年配者は悲惨だが、その悲惨さにすがっている新人クライマーのほうがもっと問題だろう…

北海道では奈良さんが1月の海でSUPで氷壁を偵察に行き、トドと戦っていた…(笑)。クライマーらしいバカやってますね(笑)。

九州では、1月でもゆとりで無雪期シュラフで寝れて、そんな温暖地で、UIAA4級や5.9程度をランナウトして、俺ってすげー!と雄たけびを上げているのである。

この雄たけびのしょぼさが分からないかな? めんぽこの大滝にしても同じです…。あれ普通に現代アイスクライミングをやっていたら、発表するほどのものか?と自覚して、発表しないと思うぞ?発表するにしても、2行だな。初登しました、以上終わり。

”九州男児”の言葉の意味は、今では、甘ちゃんってほうが正しい。それをロクスノすら検知できないクライマー業界… 地に堕ちています。

九州でまともな路線で、頑張っているのは、小山田大さんくらいなんじゃないでしょうか?真冬でも上裸で日之影で登っていらっしゃいますが、何を示すか、見ればわかりますよね?

暖かいってことですよ。

若い九州のクライマーは、日和りきったアルパイン族の真似していたら、人間が腐ってしまいますよ…。

登攀力がフリークライミングのレベルに至ったら、クライマーは、とっとと、ヨセミテなり、ラオスなり、さっさと出て、日本人以外のクライマーに新しい技術はもらいましょう。

海外に出ても、日本人同士と、つるんでいるんじゃ、全く意味なしですからね!


こんなの要らないカットアンカーボルト ペツルではありません。
40年前の常識=今は非常識。新規リボルトをカットアンカーでやるのはやめましょう

            残念な終了点 近すぎ 縦にオフセットしましょう

         自己責任を求めながら、設置者責任放棄しているけどね…

ボルダリングの岩場にも公共の岩場では、マット使ってくださいと書いて貼っておけばいいのかも?

                                      シャックル直付けは辞めよう。

PS 総じて楽しんでいるというコメントを貰いました(笑)。スリルとサスペンスでした。
 

白亜スラブについての信頼できるガイドさんの情報
 
男性vs女性 女性にだけ異様に要求が高い
 
■ 追記 竜頭泉は終了点が更新中だそうです
ビホー (ぎょぎょ!)
アフター 
 
終了点は縦にオフセットしているのが普通です。
 
真横に2点並んでいる=昭和=勉強不足 

九州で、終了点が変だということに気が付いたのは、普段、私がアイススクリューでのアンカーを上下にオフセットして打ち、十分に距離を離すように教わっていたからです。



 
奥村講習