2015/08/01

用語

一般的な登山用語集については、既に紹介されているサイトが多くあるので、ここでは、ネットではあまり見ない用語を取り上げました。

ルート: バリエーションルートの略。しばしばスタカットの技術を要する。

バリエーション: バリエーションルートの略。『日本登山大系』に一杯載っている。バレエでバリエーションと言えば、主役が踊る踊り。

本チャン: 本格的なバリエーションルートの俗語。穂高などの安全圏から遠く、急峻な山でロープを使う登山。

深い: 安全圏から遠い、という意味。 「最近トレーニング不足だから、そんな深いところは行けない」

ゲレンデ: 本チャンの反対。クライミング練習用の場所。 スキーのゲレンデのように管理されているとは限らない。

アイス: アイスクライミングのこと。アイスクリームではない。「今度アイス行かない?」

擬似テープ: 道を示すテープではなく、誰が何の目的でつけたのか分からないテープ 
         地形的に根拠がない。

核心: その山行を実行するのに、もっとも難しい点。

核心部: もっともクライミングが難しい箇所。

アプローチ核心: ルートではなく、アプローチが核心であること。

登山口敗退: 地図を忘れた!ギアが不備!山に登る前に登らないで帰ることが決まること。

赤本: 『チャレンジ!アルパイン:』のこと。廣川健太郎さんの本。

ヒロケン: 廣川健太郎さんのこと。

アルパイン: アルパインクライミング、もしくは、アルパインルートの略。

フリー: フリークライミングの略。エイドの反対。「ここはフリーのルートだからね」などと言うように使う。

ハードフリー: フリークライミングのこと。10年くらい昔はそういっていたそうです。

マルチ: マルチピッチの略。農業ではマルチといえばマルチングの略。

イボイノシシ: ワートホグという草付で使うプロテクション

プロテクション: 支点に使うギアのこと。スリング、カム、ボルト、ナッツ、ハーケンなど。

ナチュプロ: カムやナッツなどの山(岩)を痛めないプロテクション。 ⇔ 対: ハーケン

ルーファイ: ルートファインディングの略。地図読みより細かく、現地判断を要する。

パーティ: 登山の一行、グループ、団体のこと。パーティがバラバラに行動しないのが大事。

入山前遭難: 計画段階から、遭難するリスクが予想できる遭難

BKG登山: B=バカ、K=ケチ、G=頑固 行く山のことを知ろうとしないバカな登山計画を、せっかく来たのだからとケチ精神を発揮しつつ無理に敢行し、行けるはずと頑固にあきらめない登山のこと。

ABS遭難: 「あの・バカ野郎・遭難」の隠語。無謀な計画・装備で遭難すること。

地図萌え: 地図を見て萌えること

デイジー : 花のデイジーではなく、エイドクライミングで使うデイジーチェーンの略。

チータースティック: 日本ではチョンボ棒。プリクリップするための棒のこと。これが英語で、チータースティックという名前であることは、プリクリップが、チーティング(ズル)であることを決定的に意味している。

大名登山: お金にモノを言わせた登山。 小屋泊&連泊、ギアは高級輸入ウエア。

良い子の山時間: ゆとりを持った行動時間のこと。夏16時下山。冬15時下山。

山時間: 9時ー5時を基本とする里の時間とは違う、日の出と日の入りを基本にした山の時間割り。

地図読み

2万5千の地図は見出しが左端にある
 ■地図萌え

最近また地図萌えになってきている・・・

なんだかこれで3度目か4度目の地図萌えと思う・・

しばらくは、カシミールで印刷した地図を使っていたのだが、最近は、ヤマレコで印刷するのが一番早くて便利だな~と思っていた。

ところが、沢に持って行くと、自宅で印刷した地図は、インクがにじんでしまう・・・ので、沢にはあんまり向いていない。

一方、2万5千の地図は、A4サイズではなく、A3で非常に大きいので、折りたたんでも、ポケットに入らないし、携帯性がとても悪い

用紙がしっかりしているので、水には強いのだが、どっちもどっちで困ったな~と思っている。

その2万5千の地図だが、最初の頃は、山ヤ折りしていたが、最近は、折ってしまうと山行計画を立てるときに見つけづらいので、A4サイズに普通に折っている。

見出しが左端についているので、それが見えると探しやすい。ところが書いてないのもあるんだな~もう、統一してほしいなー。

■地図を買ってきたら

1)磁北線を引く
2)防水加工する

■ ルートに行くと決まったら

1)尾根線を入れる
2)水線を入れる

■ 沢の場合

1)今から行く沢の二股(=枝沢の流入)を確認する。枝沢が流れ込むところが現在地確認ポイント。

2)トポがある場合はトポを、地図に移す。

※ 屈曲があるところ=滝があるところ
  狭いところ =ゴルジュ
  崖マーク =ゴルジュ?

  屈曲が変わるところ 角度を出しておく 南東なのか、北なのかくらいはきちんと理解して行く
 
トポの記号はこちら・・・
トポの書き方
遡行図の書き方

■ 尾根の場合

下山は大抵尾根なので・・・

1)尾根の分岐をチェックする 大抵尾根は3つに分かれる

2)方角が代わる場所(尾根の頭)で、角度を出しておく

3)目の前に見えるものを予想しておく 例: 山麓の建造物、道路、遠くのピーク

■ 歩くとき

尾根の場合・・・

・つねに隣の沢を意識して歩く。尾根の下りはじめはあまり気にしないで良く、降りる尾根が明瞭になってきたら、補正して、その尾根に乗る。

・尾根は登りが易しく、下りが難しい。

・尾根の下端は急なことが多い。降りる場所が核心のことが多い。

谷の場合・・・

・つねに隣の尾根を意識して歩く 二股は尾根が差し込むところでもあるので、なだらかであれば、そこで尾根に乗ることもできる。

・谷は源頭が危険なことが多い

・沢には同じ標高のところは二つとないため、現在地を特定できる

全体・・・
・トラバースはできるだけ避ける
・利用できる道(作業道、けもの道、踏み跡)があれば、それを利用する
・テープは追わない。テープの方が自分を追いかけてくるようになる
・次に出てくるシナリオを予想する
・迷ったら分かっているところまで戻る
・一般道のほうが読図的整合性がなく、読図は難しい









コール

■ コールはシンプルに!

コールは、まずは余計なことを出来るだけ言わない、というのが重要かと思います。

例: リードクライマー: 「ビレイ解除」
   セカンドクライマー: 「了解」
   リードクライマー: 待つ
   セカンドクライマー:「ビレイ解除」

これでは長い。一つ余分。、

   リードクライマー: 「ビレイ解除」
   リードクライマー: 待つ
   セカンドクライマー:「ビレイ解除」

で十分です。

次は、

   セカンドクライマー: 「ロープ一杯」
   リードクライマー:「登っていいよ」
   セカンドクライマー:「登ります」

コールは、実は 二つだけ、で成り立ちます。 英語にしてみると単純なんですよね。

ビレイ解除は英語ではビレイオフです。登っていいよは、ビレイしたよって意味ですから、ビレイオンです。

例: リードクライマー: 「ビレイオフ!」 ビレイオフしてくださいの意
   セカンドクライマー:「ビレイオフ!」 ビレイオフしましたの意


   セカンドクライマー: 「ビレイオン!」 ビレイしてくださいの意
   リードクライマー:「ビレイオン!」   ビレイしましたの意

   セカンドクライマー:「クライミング!」

ということは ONとOFFの2種類しかコールはイラナイんです。

だから、笛だけでも意思疎通が可能です。

 ON = オッケーと言う感じで ピッピー!
 OFF= ノーと言う感じで ピー!

ダメダメ~と言いたい時は、警戒音でピー!とし、そうそう!と言いたい時はピッピーです。

でも、これ、同じ笛でやっているパーティがいると、隣の笛と紛らわしいんですよね・・・



中間支点

■ クイックドローを購入

クライミング場利用の認定試験を受けますが、その時に必要なので、クイックドローのセットを買いました。 ペツルのジンアクセスです。先輩たちが使いやすいと、おすすめの製品。
    クイックドローのことをクライミングの俗語で、”ぬんちゃく”と言います。

 この道具は、中間支点用です。 

クライミングは一般に二人一組で登ります。片方が先に行き、残りは下でビレイする。先に行く人をリードクライマーといいますが、リードクライマーが落ちないように、とりあえずロープを仮止め的に支点に掛けるのに使うのがヌンチャクです。登りながら自分の身長分くらいづつ、ロープを掛けておくと、たくさんは落ちないですよね。そのためです。

なので、ぬんちゃくはリードクライミングをしなければ、基本的には必要ない道具なので、購入順序としては、後回しになります。

クライミングへ憧れが先行する人は、エイトノットも結べないのに、ずらっとヌンチャク持っていたりして・・・。これは恥ずかしいので辞めましょう。リードクライミングするようになったら、買いましょう。

 ■どのヌンチャクを買う?

ヌンチャクを買う必要は、すでにクライミングを始めて2か月後くらいから、感じていましたが、リード中にクリッピングのしやすさを考えられるほど、まだ余裕がなく、借りたぬんちゃくで、問題なかったのですが…

 私の基本方針は

 一回しか買わないのだから、手に入る、もっともよいものを買う

です。

登山用品は非常に高価です。が、そうそう買い換えるものではありません。なので、自分の命を守ってくれる道具ですから、ケチるところではない、というのが私の意見です。

ただ山の価値観の一つに、”プアな道具立てで登る”というものがあるのも知っています。登山はできるだけシンプルな道具で登るべきだという価値観があります。

大事なことは、つたなかろうが、おそかろうが、自分の力で登ることです。

また、昔の山やさんはカラビナ一枚で確保でき、そういう時代は落ちて死ぬ人はいなかったそうですが、確保器や下降器が登場した今は道具のセットミスで墜落して死ぬ人がいるそうです。

 ⇒ こちらのサイトを参照。

しかし、私が考えるのは、

究極のシンプルを追求したら、使い勝手の良い道具を少数精鋭で持つ、

に収れんするのではないか?ということです。質が高く、数が少なく、です。

というわけで、命を守るための登山用品はあまり価格は関係ない、ですが・・・とはいえ、安く買える店と高い店があれば安い店で買いたいですよね。

一般に ペツル製品は高額、ブラックダイヤモンド製品はエコノミーです。

クライミング用品である限り、必要になるスペックはどれも満たしていますから、どれを買ってもいいといえばいいので、分かれ目は、”使い勝手の好み”です。

■ 好み = 自分をよく知る

私は、握力が弱い。一般に男性の平均が50kg、女性の平均が30kgですが、私は左手18kg、右手28kgしかありません。 これは小さいころからで、体力測定で、クラスメートより顕著に低い値を示すのでした。 ジャンプ力とか踏み台昇降とか、平均よりいいのに・・・です。なので、自分の弱点として、長年付き合ってきています。 でもまぁ、一般社会で握力弱いからってあんまり問題になることはなかったのですが、クライミングでは大問題です・・・(><) 生死にかかわります。

ので、私にとって起りそうなアクシデントは、岩をつかめない、という事態です。

その恐ろしいシチュエーションでありそうなのは、ヌンチャクをつかむことです。 

フリークライミングは言うまでもなく、何からフリーか?というと、道具からフリーと言う意味ですので、道具に頼らず登るのが重要ですが、落ちると道具に頼るでは道具に頼るほうがまだましです。

で、フリーなのにヌンチャクをつかんだりと、ちょっとズルすることをA0と言います。エーゼロ・・・、私はクライマーのプライドより、命を取りたいので、頻繁に発生しそうです。

そして保持力がないので、もともと少ない力は大事に使いたいので(省エネ)、クリッピングなどで無駄な力を使いたくない、ので、クリッピングのしやすさを重視。

≪私のヌンチャク選択基準≫
1)スリングが太くて握りやすい (細いスリングは握りにくい)
2)クリッピングしやすい
3)軽さ
4)価格
5)ブランド

あとは軽さがネックでした。 ヌンチャクは1個ではなく、5~10くらい使うもの。1個100gを5個、腰にぶら下げたら、500g。 というわけで、一番軽い68gのペツルアンジェだと、半分まで行かなくてもかなり軽くなります。

軽いヌンチャクは大概、軽量化をワイヤーゲートにすることで計っています。 片方がワイヤーのと両方がワイヤーのがあります。

ワイヤーゲートは、ロープが外れやすいという欠点が。さらにクリッピングもしづらい。

参考サイト

ワイヤーゲートは雪山でいいのですが・・・。

軽量化を考えると、ペツルのアンジェがありますが、これを先輩に行ってみたところ、口をそろえて「使いづらい!」と。現在のところ、もっとも高額なアンジェ・・・使いづらいのならパス決定。

というわけで、ジンアクセスになりました。 

ヌンチャクは、カラビナの形状の他に、スリングがナイロンかダイニーマか、というのもあります。

長さですが、支点の遠さ次第なので、これは各種の長さを持つしかなく、最初のヌンチャクセットとしては市販されている標準的なもので妥協するしかありません。

参考サイト: http://www.yamanakama-sirius.org/oyakudachi/karabiner.pdf



■ ギアを買ったら取説をじとーっと見つめましょう☆

私は思うのですが、技術情報で一番信頼がおける情報というのは・・・ギアの取説ではないか?と。

ギアの取説、言葉はないのに、そのギアの使用で既に知られているリスクや、間違った使用はあらかじめイラストで描いてあります。 

そのイラストを見て、理解するのは難しくない。  見て知った内容を、応用するのが難しいのかな?

以下はぜんぶアルテリアの ペツル ジンアクセスの取説から切り抜きです。PDFで資料は配布されているので、PDFから画像を拝借しています。

http://www.alteria.co.jp/download/pdf/ifu/M_ANGE_SPIRIT_DJINN.pdf

私が机上講習が必要だと思うのは、このように画像が必要だからです。山で絵を見て説明できない。

■ カラビナはメジャーアクシスでしか使ってはいけない
メジャーアクシスで使いましょ!

■逆クリップしてはいけない
逆クリップはいけない
 こちらにも詳細があります。

逆クリップしてはいけないへGO!

■固定側を上(ボルト側)にしてはいけない

固定側は下


















■ 凸では、岩角にゲートが当たり開いてしまうことがある
岩角にゲート



■逆クリップは良くない例2
スリングのねじれ

















■ メジャーアクシスで使いましょう、の例 

長いスリングのヌンチャクが必要な事例

長いスリングが必要な時
























というわけで、クイックドロー(ぬんちゃく)については、そんなに覚えることが多いわけではない。

取説は、素晴らしい☆

私のジンアクセスは、スリングの剛性が高いので、捩じれるリスクは低いです。

捩じれるカラビナを持っている人は、クイックドローの向きについて、より注意深く意識的でいる必要がありますね。


← 細いダイニーマのスリングのヌンチャクは

 よじれる

というリスクがある。

でも、アルパインヌンチャクなんて、カラビナとスリングを結束しただけでぐるぐるよじれるのですから、

 使う場所、状況に合わせて使う器具を選択する

のが良いのかもしれません。

立木 ⇒ スリングとビナ

ハンガーボルト ⇒ ヌンチャク

トップロープクライミング

■危険vs正しい

≪危険なビレイ≫

 壁から離れる

≪正しいビレイ≫

 壁から離れない

≪正しいトップロープ掛け替え≫

1)セルフを取る
2)トップロープバーに2重にしたロープを掛ける
3)そのロープにエイトノットオンアバイトを作り自分と連結する
4)テンションを掛けてメインロープでビレイできているか確認する
5)元のアンザイレンしているエイトノットをほどいて、降りれるようにする
6)テンションしてローワーダウン

■ 危険行為

危険その① ぬんちゃくセルフ

ヌンチャクは中間支点用の器具です。正式名称クイックドロー。

室内壁で、終了点(アンカー)が信頼できない、ということはありえないので、多くの人が

・セルフビレイは1か所
・セルフビレイに安全環付ビナを使わない

でやってしまいます。それで良いのは室内壁だけです。大抵、終了点は自然の岩場を模して2点作ってあります。が、自然の岩場では、終了点を自分で作らないといけません。

・アンカーを自分で作る時は2点以上から。
・セルフビレイもメインロープとスリングの2点以上からとり、その際は安全環付ビナで取る

のが常識です。一つが壊れても、一つが生きていれば、助かるからです。

概念、というくくりで言うと

 1)信頼性
 2)冗長性(バックアップがあること)
 3)マスターポイント (流動分散か固定分散か)

の3つです。

■ 上質なトップロープ支点とはなんでしょうか?

では、上質なトップロープ支点とはなんでしょうか?

1)信頼性がおけること

強固で壊れない支点と言うのが、もちろん最重要です。 が、自然の岩場では、絶対はありません。

人が作ったボルトはねじで岩に固定されていますが、せいぜい5cmくらいの深さでねじ締めされているにすぎません。風雨で浸食されたら、岩ごとはがれるそうですよ。

もちろん、これは人工壁ではことなり、トップロープバーに掛ければ、一点に強制的になります。人工壁でなくても、公園の遊具などしっかり動かない支点で支点を作る時は、掛けるだけで十分です。

自然の岩場では、立木が信頼がおける支点になります。

2)冗長性

1つだと壊れたときに困りますから、2点作ります。これを冗長性といいます。

ボルトは壊れないとは言い切れません。だから、2か所以上から取ります。2つが同時に壊れることは、確率論的に考えにくいからです。

スリングも2本がいいし、カラビナも2枚が良いです。

3)マスターポイント

これはもう、壊れてしまってからの話です。

流動分散 → バックアップになっている支点にどーんと衝撃が行く
固定分散 → バックアップになっている支点に衝撃が小さい

です。トップロープはロープの伸びる量が多いので、私は固定分散が適当だと思います。

下に
上質なトップロープの支点とそうでないもの、間違っているものを上げておきます。


■ トップロープクライミングでよくある危険行為

1)ヌンチャクセルフで安全環付でないビナでセルフを取ってしまうこと
2)普通のカラビナ1枚で視点をとってしまうこと。通常は環付ビナを1枚、用心深い人は2枚。
3)ロープ同士が交差してこすれること

■ ビレイでよくある危険行為

1)壁から離れてビレイすること
2)1~3本目までのビレイで、ロープを弛ませすぎること
3)ロープを引っ張りすぎること

■ 関連記事

ブロッケン山の会による、トップロープとビレイの説明

■ 上質なトップロープ支点 



 1)信頼できる支点

びくともしない太い立木で2本にまたがっている

2)冗長性
・スリングは2重使い
・カラビナは2枚
・それも安全環付































■ 危険なトップロープ支点

1)支点の木より、バックアップの木の方が太く丈夫

2)冗長化されていない

懸垂下降

■ 懸垂下降

懸垂下降は、言うまでもなく大事な登山技術です。で、知っておくべきことはいろいろありますが、最大のことは

懸垂下降は失敗が許されない

です。クライミングで落ちても登った分だけしか落ちませんが、懸垂で落ちると地面に着くまで落ちます。落下距離最大。

敗退に使う技術 = 守りの技術

であることも重要なポイントです。普通のクライミングは登ったら尾根を歩いて帰ります(笑)。懸垂が必要なのは、敗退の時です。逆に言うと、敗退できないのに登りに行ってはいけません。

■バックアップのこと

バックアップはトップで降りる人以外要りません。で、バックアップ以外にも、途中停止の方法はいろいろあります。

私が最初に教わった懸垂下降は、カラビナ+太ももがらみ でした(笑)。

大事なことは、懸垂下降している途中で止まりたくなったとき、両手を離せることです。

仮固定の結び目なども講習会では学びます。山岳総合センターでは、懸垂下降は、

 エクステンションつき+バックアップつき

で教えています。基本的に、フリークライミングではなく、前穂北尾根をリーダーで登れること、というアルパインクライミングのリーダーを養成することを目的にしているからです。

ですから、セカンドで登る普段は、シンプルにATCだけで降りていいです。が、それだけ知って、十分というわけではありません。それしか知る気がないと言うことは万年セカンドのつもりって意味です。

■ケブラーコード

これはアラミドという繊維みたいです。
これは懸垂下降で使っているプルージックコードです。エーデルリッドのもの。アラミドコードスリングです。 アラミドはケブラーのことです。ケプラーはデュポンの登録商標。

ケブラーコードは今まで切り売りしかなかったのですが、カラファテでソウン(というか圧着?)のものを見つけ、おススメされていたので買いました。1000円くらいでした☆ これは今見たらケブラーではなくアラミドと言う繊維ですが、用途は同じです。

他所でも見かけるようになったので、おススメ品だと思います。ケブラーは強度が強いので、ロープ径が細くできます。

すると何が良いのか?

巻きつけ系のノットは、巻きつけるコードと巻きつけられるロープとの径の差で巻きついている

ので細いほうが有利です。ケブラーのことは講習会の講師に教わりました☆

 ■ 懸垂セット例

 自宅には支点になるようなものがないので・・・
スイマセン・・・(^^;)

通常は

懸垂支点と
セルフビレイの支点は別

です。ここでは一緒になっています。

ランヤードは、私はPASにしています。

が、それ以前は、

120cmのナイロンスリングに、結び目

を作って使っていました。

PASがいいのはバックアップを付けた懸垂下降では、かならずエクステンションが必要ですが、距離の調節がしやすいことです。
 さらに、PASだと何が良いか?

というと、

荷重テストが楽

です。

←つまりこのように、体重を少しずらせば、荷重の方向が楽にずれます。

下のPASには、今荷重がかかっていないので、だらりん、としています。

荷重テスト

は、初心者は軽視しがち、です。

でも、いきなり体重を懸垂支点に掛けず、
信頼できる支点かどうか、確認してから、体重をかけるようにしないといけません。

これはノーマルな懸垂のセットで、

バックアップがついていません。

トップで降りる以外の人はバックアップ要りません。

ロープの流れはもうできているから、途中停止などしないですし、スピードが速すぎるなどの時は、先に降りた人がロープを引けば、停止するからです。


 バックアップを付けたところ。

この位置関係が重要

下降器の下です。

握るとロープが出て、
降りれます。
 位置関係を分かりやすくしたところ。
 師匠からは、以前より、このようなセットも教わっています。

あまり使っていません(笑)

のは、カラビナが1枚余分に必要だからですが、

このセットで何も問題はありません。

下のビナにハーネスが付きます。
 ■ ムンターヒッチ(イタリアンヒッチ、半マスト)

ムンターはどんな作り方でもいいです。

重要なのは

HMS式のカラビナを使うこと

ゲートの向きに注意すること

です。

私の作り方は指です。
 できた!
 こうなります。
 ゲートにロープがかからないのが重要です。

クローブヒッチ(マスト結び、固定)
は、セルフビレイ用なので、片手で作れないといけません。

しかし、、ムンターは安定しているところで、基本的に使うノットなので、両手でもOKです。
 確保器に適合するロープの径はだいぶ違います。

左は、スポーツクライミング用の確保器なので、セカンドの確保用の穴がありません。ノーマルATCです。
シングルロープを前提にしているので、穴が太いです。

右は、本チャン用の確保器なので、セカンドの確保機能があります。

ATCガイドです。 ダブルロープを前提にしているので、穴が狭いです。

これは、一般に普及しているプルージックコードです。

結び目はダブルフィッシャーマンが決まりです。

このプルージックコードは太いので、

巻回数
相手になるロープの直径

で、何回巻くとプルージックが効くか?

が違ってきます。それはやってみないと分からないことです。
足りないと思ったら、巻きつけ回数を増やします。

巻きつけ系の結びには何種類もあり、プルージックやブリッジプルージックは両方向に動きます。
私はバックアップは、下にしか動かないクレイムハイストでやっています。結びは自分が良く利く、と思ったモノを選びます。


■まとめ

  • 懸垂下降は失敗が許されない
  • 懸垂下降は自分の身を守るための技
  • ケブラー
  • ランヤードはPAS(スリングで代用可) 
  • PASは荷重テストが楽
  • PASは長さ調整が楽
  • バックアップをつけるときはエクステンションが必要
  • セルフの支点と懸垂の支点は別に取る
  • ムンターでも降りれるとなおよい(カラビナ懸垂)
  • スポーツクライミング=シングルロープ前提=穴の大きい確保器
  • アルパインクライミング=ダブルロープ前提=穴の小さい確保器
  • プルージックは効きをその都度確かめる
■おすすめの書籍

『教科書になかった・・・』には、指で作るムンターが載っています。

『ロープレスキュー』は、この方面の権威、堤信夫さんの本で結びが網羅されています。めざしとかも載っています!


   

初めてのゲレンデ

■ 先輩と初めてのゲレンデへ

今日は、マルチピッチの初心者講習的なことをしてくれるのだろう・・・と思っていました。

7時金川の森集合。

8時スタート。西湖の岩場(十二ヶ岳の岩場)

気持ち良く、トップロープで5.7のルートを一本。そんなに苦しまず登れたので、うれしくなり、5.8のルートへ。

5.8は下部で少し苦戦。

私は2本、相方は3本、トップロープでのぼりました。
マルチのほうの岩場へ移動。

終了点の作り方、クリッピングの注意点の説明。

はい、では、やりましょー!というところで・・・

はい?初心者同士?

・・・。

というわけで・・・、十二ヶ岳の岩場でのアイゼントレ一回、三つ峠マルチ一回、岩経験合計2回、のワタクシが、パートナーに教えるました~(><)。

いや・・・教える羽目になったというのは、正直な気持ちではありますが、

 1)教えてもらえるものだ、と考えていたことが甘い

 2)もう人に教えることができる、と考えてもらっていたことが、意外

のどちらなのでしょう(笑)?

私は、人に教えるほどの技術はない、と思っているのです。

人に教えるなんて100年早いと・・・。ついでに言うならリードするのも100年早いと・・・。

ワタクシなんてまだまだ・・・というのは、しかし、この際通用しません(^^;) 何しろ、パートナーは目の前で、目を白黒させている! 彼には私のビレイをしてもらうことになる(セカンドとは言え・・・)。

とりあえずは私がリード。

■ こういう項目を教えました

というわけで・・

 1)流動分散での支点作成
 2)セルフビレイ (セルフとメインロープのセルフビレイ)
 3)セカンドの確保

を至急教えました。 アタシでいいのかっ?と自問自答しつつ・・・ 今日分かったこと。

≪今日の復習≫
1)何はなくともセルフビレイ
2)支点作成
3)リードのビレイ
4)セカンドのビレイ
5)懸垂下降
6)クライミング

■ セルフビレイ

そこで解説します・・・

私はセルフビレイ用のスリングは、ナイロンのスリングにしています。というのも、ダイニーマは強いですが、結び目があると強度が半分に落ちるので。ナイロンだと結び目がショックアブゾーバーになる。

そして、長さ調節ができると良いのですが、PAS(パーソナルアンカーシステム)というのが売っていますが、長くて邪魔になるのはその通りなので、私は普通に120cmのナイロンスリングに結び目&HMS型の環付ビナにしています。 

ビレイループではなく、タイインループに。 ビレイループはリードのビレイ用にあけておきます。

タイインループのタイインというのは、ドイツ語のアンザイレンと同じ意味です。ロープを結びあうってこと。

普通にスリングでセルフビレイも取りますが、これは冗長用です。メインロープでセルフビレイを取ります。これ重要ポイント。メインロープを終了点のビナに掛け、クローブヒッチします。これでロープが流れなくなります。

ロープが固定されれば、ビレイはイラナイ。

ここで「ビレイ解除」とコールします。

セルフビレイを架け替えたいときは、何でも良いので必ず別にセルフを取ってから、架け替えます。
もちろん、メインロープでセルフを取っていたら、2個目なのでいいですが。つまりセルフは念のため2個ってことです。

■ アンザイレン

ゲレンデの時は、ビレイヤーとクライマーはアンザイレンしていませんが、本来はアンザイレンするのが普通です。 習慣にした方がいいですね。

リードが登り終わってから、セカンドの確保の体制に入ると「登っていいよ」と言われます。が、その時点でエイトノットを結んでいたら遅い。

■ セカンドのビレイ



ATC-XPガイドを使う以外に、カラビナとムンターヒッチでやるやり方もあります。


■ スタカット

スタカットのなかで、リードクライマーとフォローが交互に入れ替わるのがつるべです。

つるべだと、最初リードした人が次はセカンドになり、セカンドだった人が次はリードします。

■ 終了点に来たら

何はなくともセルフビレイ。そして、メインロープでクローブヒッチしてセルフビレイ。

地上に帰るには? 懸垂下降で帰ります。 ローワーダウンはないです。

ので、各自セルフを取ったら、アンザイレンをほどき、懸垂の準備をします。

カンタンに・・・

≪懸垂下降≫
・ロープの末端を支点に通す
・ 末端をすっぽ抜け防止加工する
・ロープを手繰り、中心の寄せる。余りのロープは束ねて投げる。
・下降器セット
・下降器が効いていることを確かめて、セルフ解除
・下降。

セットは、最初に降りる人と残りの人では違います。懸垂のセットはトップで降りる人はバックアップつきで降ります。

今回はバックアップつきの懸垂下降は教えられなかったので、次回教えたいです。

ついでに宙吊りからの脱出や、プルージックを覚えるべきと思います。

ここまでで必要な道具をまとめておきます。

≪マルチピッチ初心者セット≫
・ATCガイド
・セルフビレイ用の120cmナイロンスリング 1
・セルフビレイ用の大きめの環付ビナ 1
・終了点作成用のストレートゲートの変D型カラビナ2枚
・終了点作成用のダイニーマスリング 120cm1本
・終了点作成用の環付ビナ 1
・メインロープでのセルフビレイ用の大きめのHMS型環付のカラビナ1 (クローブヒッチとムンターはHMS型が必要)

というわけで、

スリングは、ナイロンの120cm1、ダイニーマの120cm1、カラビナは環付3(内HMS型2)、変Dストレートゲート2が要りますね。

≪バックアップ月懸垂に必要なギア≫
・懸垂下降でバックアップに使うプルージックコード1本、またはスリング
・バックアップ用のカラビナ1枚 環付
・6mmとかの捨て縄 (オプション)

≪中間支点用≫
支点用のガチャ (支点による。立木ならスリング+カラビナ、ハンガーボルトならぬんちゃく)
支店の数分

≪セカンドの確保&解除に必要なギア≫
・環付ビナ3
・60cmのダイニーマスリング
・バックアップのムンター用のHMS型環付ビナ1

これは岩初心者セットはすでに持っている前提です。

≪岩初心者セット≫
・クライミングシューズ
・ヘルメット
・ハーネス 

■ リード

というわけで、初めて、自然の岩場でリードしたんですが・・・そっちのほうはついででした(汗)

フリーは、5.7でリードデビューです。

最後、フリーをそれぞれリードして終了。 ランニングがないと、登る勇気が出ないことが分かった(^^;)。


岩の上から、こんな眺めが見えた。





■ おまけ

 


今回のヤマレコ。超そっけない。スミマセン。いっぱいいっぱいな感じ(^^;)



セルフビレイ

■セルフビレイ

セルフビレイはメインロープで取るのが基本ですが、やっていると分かりますが、

1)片手ですぐセルフがとれる

2)長さ調節がしやすい

3)使っていないとき、邪魔にならない

のが、ポイントです。

■ セルフビレイは何で取るか?

最近、メトリウスPAS を買いました☆ 

最初にセルフビレイ基礎知識をまとめておきます☆

≪セルフビレイの基本≫

1)何はなくともセルフビレイ
2)セルフビレイはメインロープで取るのが基本
3)支点は2点以上から
4)ダイニーマスリングは、結び目を作ると強度が半分に低下
5)ナイロンスリングは、結び目がショックアブゾーバーになる
6)セルフビレイのスリングは、タイインループにつなぐ


というわけで、私はダイニーマを使わずナイロンスリング+環付ビナに結び目を作って、セルフビレイのスリングにすることにしていました。

■ PAS人気

しかし、業界のスタンダードは今PASなのは知っていました。
カラファテでもPASを薦められ、ただお金がなくて買えなかったのです・・・(^^;)

こちらのブログで、ギリギリボーイズの天野さんもPASを薦めています。

私も買いたいとは思っていましたが、

・今のところ、本チャンルートには行かない(行けない)し、
・マルチピッチは体験的ルートのみ
・フリーでしばらく岩に慣れるべき

ということで、買い物リストの後回しに入っていました。しかし、北岳バットレス四尾根が浮上したので考えを変えました(^^)。

■ 基礎知識 スリングの知識

以下はスリングの取説です。 このブログでも何回も出している画像です。

≪スリングの取説から分かること≫

1)スリングタイオフ 16kN
2)2重にすれば   2×22kN 
3)コブを作ると、  12kN
4)2本を連結すると 10kN  (やってはいけない)

5)ペツルのハンガーボルトに直接タイオフしてはいけない(切れるから)
6)支点間の角度が90度以上になるような角度で使ってはいけない。
7)スリングとロープがこすれるような、ローワーダウンをしてはいけない。カラビナを噛ませること。
8)スリングに落ちてはいけない。

初心者は必ず1回は、セルフビレイのスリングに落ちて、ガツンと行ってしまうようです(^^;) 衝撃荷重をりかいしていないとセルフビレイのスリングに落ちたり、ぬんちゃくセルフに落ちたりしてガツンと痛い思いをします。

■ デイジーチェーン

デイジーチェーンは、少し前によくセルフビレイのスリングとして使われていたようですが、これは本来の用途ではないそうです。

基本的に、アブミの距離の調節用のスリングがデイジーチェーンです。

そして、各ループは2kNしか強度がない、そうです。なので、あまりおススメではありません。

使い方をうっかりすると、セルフが全然とれていない!ということになることがよく本に書かれています。

良い映像を先ほどの天野さんのサイトで発見しましたので、ここでも紹介します。

ああ、怖ろしい・・・ というわけで、デイジーチェーンをセルフビレイのスリングに転用することは、没、決定です。


■ PASの利点

PASの利点をまとめておきます。 こちらに取説が出ています。

1)PASの各ループには18kNの強度がある (強度)

2)どのループからもセルフを取ることができる(長さ調節、冗長性)

3)ラッキング時にはコンパクトにまとめることができる 

≪使い方≫
1)タイインループにPASをつなぐ
2)適切な長さにしたPASを分散加重したマスターポイントにクリップし、残ったループを他のポインにクリップする。
















※しっかりしたラッペルアンカーに限り、直接アンカーにクリップする使い方もできる。

















要するにたくさんのスリングが連結なので、独立分散とおなじですね!

この使い方を見ると、環付ビナは2個使っているようです。 メインロープでのセルフを入れるとセルフビレイ3つ?! 

ビレイ点が同じであれば、保険は増えていないので、2個でいいかもしれません。スイングのセルフビレイは基本的にビナは1個で教わりました。

またこの写真の人は、タイインループではなく、ビレイループにPASをセットしていますが、私は講習会ではタイインループにつけるように習いました。 

名前からしても  タイイン(アンザイレンと同義) ループ
            ビレイ(相手のビレイ用) ループ

という意味ではないかと思われますし、この写真の人は、メトリウスの、各パーツが特別に強化されたハーネスを着用しているようです。

■ PASの欠点

カラビナとの相性が悪い

ということです。 スリングのセルフの時はカラビナは動かないように留めておくのが普通ですが、それができません。なんらかのパーツがいるようになりますが、そうすると、ラッキングの時、コンパクトにまとまるというメリットが少なくなるかもしれません。

■ カラビナはオートロック?

こちらの国際山岳ガイドの方は、セルフビレイのカラビナは、スクリューゲートではなく、オートロックを薦めています。

スクリューゲートを締めるのを忘れなければ、どちらでもよいと思いますが、沢での岩登りでギリギリだったときはスクリューゲートが良かったです。ただ、雪稜ではゲートに雪が入ってつかいにくいとも聞きますので、現場の要求に合わせるのが大事ですね。

岩ではとりあえず足場があるところであればどちらでもよいかも?

セルフビレイはとにかくすぐ取れる、ということが大事だと思います。



 しかし、カラビナとスリングだと 2500円くらいで済みますが、PASとオートロックのビナだと、約8000円。 安全とはお高いものですね。

リードのビレイ

■ リードのビレイ

リードのビレイのアレヤコレヤをまとめました。

 1)正しい位置に立つ
 
 2)制動手は、順手。
 
 3)制動側は確保器より下で握る。(角度に注意!)

最大の関心は、立つ位置 と 繰り出し です。

■ ビレイヤーの立ち位置はどこが良いのか?

1~3本目の中間支点までは、一本目のランニングの真下。コツとして、しゃがんでから立ち上がると、ロープが素早く出せる。

・3本目のクリップ以降は、ゲレンデの場合、クライマーが見える位置に少し離れても良い。フォールすると壁に引き寄せられるので、フォールの可能性に備えて、壁を蹴るという心の用意をしておく。

大前提の基本は、一本目のクリップの真下です。分からなくなったら真下に行こう!

私は先輩が登り詰めて、見えなくなっても真下に立っていたら、「見えるところに少し離れてもいいよ」と言ってもらいました。見えないと、ロープが引かれてから繰り出すことになります。実際の岩場では、こういうことが多いはずですが、ゲレンデでは3本目以降は見えるところでもよい。

■ 座ってビレイ?

座ると、ロープの繰り出しが適切にできなくなるそうです。

ただし、狭いテラスなどでハンギングビレイしている時って、要するに座っていますよね(笑)、セルフビレイに。それはOKです。

■ ロープの繰り出しの仕方

・基本は、たくさん出しすぎず、かといって、クライマーがクイックドローにロープを掛ける動作を邪魔しない長さで。

1つめのヌンチャクから3つ目までは細かく微調整して出し入れする。

・ビレイヤーから出たロープがビレイデバイスより下になってはいけない。

・3本目まではクリップ後の弛みは軽く引き戻す。

・3本目以降は、少し後ろに下がっても良く、弛みも地面につかない程度で良い。
 
手で出すと同時に一歩前進する。

・中間支点より上にクライマーが登り始めたら、ロープを引っ張っていると登れないので、クライミングの邪魔をしないよう、ロープを出す用意をする。

・クリップの時、ロープの長さが足りなくならないように、十分に出してあげる。制動側でない腕の十分引き伸ばす。

・出しすぎはすぐに戻す。(といってもすぐに登りでまただすことになるので、3クリップ目まででよい)

・クリップ時は手繰り墜ちの危険に備える。

■ 手の位置

・手の位置は確保器の制動が効く場所です。


http://www.lostarrow.co.jp/support/pdf/support_0338.pdf


どうして、手の位置が間違っている人が多いのかな?技術書のイラストが分かりにくいのかもしれません。


■ フォールを止めるということについて

基本: ロープは出ている長さの10%くらい伸びる

その伸びでグランドフォールしないか常に考える。

基本: 体を浮かせて止める

飛び上がり&ぶら下がりで止めるくらいでよい。

・ビレイの初心者は短いルートには向かない
・核心部が下部にあるルートにも向かない
・テラス、でっぱったハング、突起物があればグランドと同じとみなす(ぶつかる危険がある)

■ なぜ確保器を使うべきなのか?

理由: 確保に特化して開発された道具だから。

改めて言うまでもないことですが、とりあえず確保器がない確保もあるということを知らない人向けに。

(器具を使わない確保の例: 肩がらみ、腰がらみ、グリップビレイ、エイト環、スタンディングアックスビレイ)

器具を使った確保にエイト環を使用した方法もありますが、エイト環は確保というより、下降用に開発された道具です。(参考:ペツルサイト。http://www.lostarrow.co.jp/support/ti_56.html

確保に使うのは転用です。カラビナもそうです。確保用ではなくて、確保にも使えるという話。

セカンドベストというわけです。なので、もっともよい確保を考えるなら、確保のために開発されている確保器を使うべき。

確保器が使える状況下で、使わないビレイは、あまり根拠がありません。もっともよい確保が確保器によるものだからです。

逆にギアがない状態でも確保ができるという技術は欲しいものなので、カラビナをつかった確保も知っておくべきです。

■ なぜリードのビレイはボディビレイがいいのか?

理由: 衝撃を吸収するため。

 支点ビレイ: ビレイ器をアンカーに接続するビレイ方法。
 ボディビレイ: ビレイ器を身体に接続するビレイ方法。
 ダイナミックビレイ: 制動をダイナミックに(つまり流しながら)行うビレイ
 スタティックビレイ: 制動をスタティックに(流さないで)行うビレイ

私がリードをビレイすると、大抵が浮きますが、これはロープが流れているのと同じですね。ビレイヤーが浮く=ロープが流れる=ダイナミックビレイ状態。

なので、今日通常に行われているリードのビレイは、ボディビレイ&ダイナミックビレイですね。

支点ビレイだと墜落の衝撃が支点に集中します。どうも墜落時の衝撃は衝撃を逃がす、衝撃を分散させるのが大事らしいです。

ビレイヤーが浮く=衝撃を吸収した証。積極的に浮くのがいいのかもしれません。

ちなみにセカンドのビレイは支点ビレイです。でもセカンドなので、アンカーにはそう大きな衝撃はかかりません。

アンカーを大事に使わないと壊れたら? もう即ピンチです! 

確保理論

■ 国立登山研究所の確保理論 テキスト

国立登山研究所が編纂している確保理論のテキストは、非常に優れたテキストですので、これを読むことを強くお勧めします。

国立登山研修所 確保理論テキスト研究会編 確保理論テキスト

"最初に、言っておいてよ、もう!"というような知識が一杯です。

やっぱりクライミングの入門者は一回、確保理論の机上講習をした方が良いと思います。私の意見はクライミングする前に義務付けたらいいくらいだというものです!!!
■ 内容

構成は

 1)ロープの知識
 2)カラビナ
 3)確保理論
 4)セルフビレイ
 5)クライマーのビレイ
 6)アンカー

です。 こんなのすっ飛ばして、クライミングだけしているのが、超アブナイ!ロープワークができない人にクライミングを教えないほうがいいです。

クライミングなんて、本人さえ登る気になれば、ほっておいても上達しますが、ロープワークは
教わらないとできない。良い教本もないです。

ロープの知識やカラビナの知識は、すぐさまロープがどう確保しているのか?の安全知識につながります

■ロープ

UIAAスタンダードフォールテストは、シングルだと80kgを対象にしているが、ダブルだと55kg
対象にしている。 

1)インパクトフォースの小さいロープは、衝撃が小さいという意味です。

 ・墜落者
 ・アンカー
 ・ビレイヤー

への負担を軽減してくれる。 これ、ベテランでも大きいほうが良いと勘違いしている人もいるので要注意。

2)耐墜落回数の多いロープは、耐久性に優れる

3)伸び率が大きすぎないロープは、確実な確保を行いやすい

4)寿命は毎週の使用で1年。月2~3回の使用で3年。

■ カラビナ

1)常にメジャーアクシスで負荷がかかるように注意しながら使うこと

2)ロープワークの関連しないパーソナルな個所には、ツイストロックの環付ビナを使う
  例:ランヤード、 ビレイデバイスとの接続

3)ムンターヒッチやアンカー用にはスクリューロック 

■ 確保理論

 ・グランドフォールさせない

 ・壁やテラスに体が当たらないような配慮をする

 ・衝撃力を十分に考慮した確保で確実にクライマーを止める

1)確保のポイント

 1)クリアランス
 2)衝撃力 落下係数、ダイナミック係数をコントロールし、衝撃力を押さえる (流す、ということ)
 
2)確保でコントロール可能な要素

  〇スタティックビレイ
   ・墜落者の体重  ⇒ 制御不能
   ・ロープ係数   ⇒ 制御不能
   ・落下係数    ⇒ 制御可能 つまり、落下係数が大きくならないように中間支点を取って登る

  〇ダイナミックビレイ
   ・墜落者の体重 ⇒ 制御不能
   ・ロープ係数  ⇒ 制御不能
   ・落下係数  ⇒ 制御可能
   ・ダイナミック係数 ⇒ 制御可能 つまり流すということ。

3)落下の衝撃

 例: 体重60kg 高さ3m 

   自由落下        9kN (ボルダリングなど)
   スタティックビレイ  3.7kN
   ダイナミックビレイ 2.28kN (ロープを50cm流した場合)

4)プーリー効果

最終支点には (墜落の衝撃そのもの) + (衝撃の0.7F倍)の力がかかる。 つまり、1+1.7の力がかかるので、およそ倍の強度が必要になる。

■セルフビレイ

1)メインロープでとる
2)ずっと落下係数ゼロを保つ (ずっとテンションしておく)

■クライマーのビレイ

1)ロープを弛ませない
2)ロープを張りすぎない
3)クライマーはランナウトしたところでは墜落は許されない

4)フォロワーのビレイには3つある
  ・アンカードビレイ  ⇒ 確保器、ムンター
  ・リダイレクトビレイ ⇒ 支点で折り返してビレイ 支点に強度が2倍近く必要
  ・ボディブレイスビレイ ⇒ 肩がらみ、腰がらみ

■ アンカー

1)アンカーをビレイステーションと言う

2)固定分散 ⇒ 強度が低い場合はパワーポイントを固定する

3)支点構築の鉄則

  1)強固であること  

  2)多重性

  3)均等荷重

  4)パワーポイントの固定

強固であること、とは、壊れないこと。支点が壊れず、カラビナが壊れず、スリングが切れず、ロープが切れないこと。

多重性とは、一つが壊れたとしても別のバックアップがあること。支点は必ず2個以上。

均等荷重とは、個々のアンカーに荷重が分散されること。それには角度が重要。60度以内。

パワーポイントの固定とは、固定分散の方法。

ーーーーーーーーーーーー以上ーーーーーーーーーーーーーーー


■ リードのビレイをマスターしましょう!!

先輩に連れて行ってもらうには、リードのビレイをマスターする必要があります。

以前、リードのビレイのコツをまとめたページを作ったので、そちらを参考にしてください。

リードのビレイも出来ないし、セカンドとしてクライミング力もなければ、ガイド登山しかありません(^^;)




3)基本のロープワークを覚える

■結束 (結び目、ノット)

アルパインクライミングで 最低限必要なノットは、次の3つです。

 ・エイトノット
 ・クローブヒッチ (固定、マスト結び)
 ・ムンター     (仮固定、半マスト、イタリアンヒッチ)

ノットは、時代によって呼び方が違い、()の中の呼び方をする人もいます。

■ きれいなノット 

ノットの基本は

 ・弛みや遊びがない
 ・ねじりがない
 ・末端処理

の3つです。ノットは摩擦力で締るものなので、きっちりきれいなノットにします。

■ フリクションノット

フリクションノットは懸垂下降のバックアップとして必ず必要です。

 ・オートブロック
 ・プルージック(ブリッジプルージック)
 ・クレイムハイスト

フリクションノットで大事なことは

 ・メインロープとの径の差が効きを左右する
 ・片方にしか動かないノットと両方動くものがある

を理解していることです。

■その他

タイオフ
ラインドターン
ツーバイト

ラビットノット
オーバーハンドノット

■ 用途

エイトノット → アンザイレン(メインロープと自分をつなぐ)
クローブヒッチ → セルフビレイ、何かと固定したい時、固定分散
ムンターヒッチ → カラビナによるビレイ、カラビナ懸垂、一時的にロープを落としたくない

フリクションノット → 懸垂下降のバックアップ、宙吊り登り返し、プルージック登攀

■ 支点

流動分散

タイオフ

■ 一連の流れ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まずアンザイレンし (エイトノット)

ビレイし

リードクライマーが中間支点を作りながら登り (場合によってはタイオフ)

終了点に着いたら、セルフビレイを取って、アンカーを作り (クローブヒッチ、ラウンドターンなど、流動分散)

ビレイ解除のコールをし 

ロープアップし

セカンドの確保を作って 

セカンドクライマーは中間支点を回収しながら登り

セカンドもメインロープでセルフビレイを取る (クローブヒッチ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という具合に出てきます。

懸垂下降では

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まずアンザイレンをほどき、

ロープの片方は落とさないため、必ずムンターでどこかに仮固定し   (ムンター)

ロープの両末端を脱落防止し (エイトノット、またはオーバーハンドノット)

ロープを束ね (振り分け)

ロープダウンしたあと

懸垂下降のセットをし (フリクションノット)

懸垂下降して降りる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という流れになります。

DAY 1

■ 初めての人工壁

今日は入会希望者と初めての人工壁。人工壁とはいえ、クライミングが初めての人には、おっかなびっくりの経験だ。

今日の主役は、クライミングシューズもハーネスも買ったばかりのKさん。まったくクライミング歴ナシ。ガイド登山で、ロープを出してもらった経験があるけど、人工壁は全く初めてです。

■ まずはギアの紹介

まずは先輩からクライミングギアの紹介を受けます。

「ヘルメットは人工壁にはいらないね」 「クライミングシューズはルートクライミングほど長く履かないので、きつめのものが登りやすい」

人工壁では、落石はないので、ヘルメットはいらない。それが人工壁と外岩の違い。外岩は落石があるので、ヘルメットが必ず必要になる。

ロープ、カラビナ、スリング、ハーネスの履き方、チョークとチョークバッグ、クライミングシューズ、一通り説明を受けます。

大事なことは、余分なギアを持たないこと。クライミングに集中するためには、腰に不必要なギアをぶら下げて行かないことが大事です。

クイックドローは通称、ぬんちゃく、と呼ばれます。

「クイックドローは色々なタイプがありますね、どれを買ったらいいのかしら・・・」とKさん。

ギアはどれも高額なので、どれを買ったらいいか自分で分かるまで買わないで良い。

■ アルパインとフリー

「あのう・・・ アルパインクライミングとフリークライミングってどう違うんですか?靴は同じでいいですか?」

ごもっともな質問。

フリークライミングは、クライミングシューズのフリクションとチョークだけで岩を攀じる行為。ロープは万が一の落ちた場合の命綱でしかなく、前進用に使わないのがルールだ。

まだアルパインとフリーの差が分かりづらいらしく、遠藤由加さんの本に、Q&Aが掲載されている。端的に言うと
 ・小川山は、フリークライミングを楽しみに行くところ。

 ・三つ峠は、アルパインクライミングの練習場。
 
 ・ゲレンデというのは、ちょっとした岩場でクライミングの練習やロープワークの確認などに地元のクライマーが通うところ。

 ・アルパインクライミングは、山岳地帯(例:穂高など)で行う岩稜や雪稜、ミックスのクライミング

■ 何はなくともセルフビレイ

Kさんは、まだセルフ用のギア(PASなど)を持っていない。

岩場において、セルフビレイは最重の技術だ。

自分と確実なアンカーをランヤードでつなぐことを言う。通常はハーネスに結んだスリングやPASと呼ばれるギアを使う。

現代は小さく収納できるPASが主流になりつつある。

■ ウォーミングアップ

クライミングは、ウォーミングアップから。 壁のトラバース。まずは足は床につけて、腕を伸ばす練習から。トラバース2周。

クライミングでは、腕を伸ばす、という点を気を付ける。引きつけているとすぐ腕がだめになって、登れなくなる。
その後傾斜のある壁の傾斜の殺し方。簡単なボルダリングで、ムーブの練習。体をフリを使って登る練習。これはKさんには、新鮮だったみたいだ。

■ トップロープ

次はさっそくクライミングです。まずは、トップロープです。トップロープは張りやすいようにクライミングウォールの端に、紐が垂らしてあります。

まずはアンザイレンから。エイトノットです。結びは、きれいに、交差しないのが大事。末端処理は結びそのものに近づけて作ります。

次はビレイ器のセットの仕方。クライミングギアの使用法については、取扱説明書をよく見るのが大事です。

 ・ビレイの引き戻しの方法
 ・繰り出しの方法 
 ・制動手を絶対に離してはいけないこと
 ・クライマー側、ビレイヤー側を間違えないように・・・

など初歩的なことです。

ビレイが確実になったところで、クラミング。もっとも易しい5.6の課題です。

その後、ビレイを担当してもらって、私が一本。ビレイグローブは、Kさんは持っていなかったので、貸しました。トップロープのビレイでは、テンションの時、後ろに下がればよいよと、アドバイス。

腕力も回復したところで、次のクライミング。初めてのKさんは、ここまででもう、汗びっしょり。

■ 懸垂下降

次は懸垂下降のセットです。 懸垂下降は敗退の技ですから、非常に重要です。

「懸垂したことはありますか?」

「ガイドさんに降ろしてもらいました」

うーん?それはもしかしたら、懸垂下降ではなくて、ローワーダウンのことかもしれない・・・。

最初は立てる場所で懸垂下降のセットをしてみます。

一番シンプルな下降器だけのセットでしたが、セットはOK。

「下の手を離したら、墜ちてしまいますよね」、

Kさん: 「怖いです~」

ということで、下の手を離したとしても落ちないセットを伝授します。バックアップ付きの懸垂のセットです。

一般的な下降のセットに加え、まずはプルージックコードで、バックアップを付け、そのままだと、バックアップと下降器が干渉するということを実感してもらって、下降器の位置を離す(エクステンションする)ために、スリングをセルフビレイと兼ねてタイインしてもらいました。 

 ・セルフビレイ
 ・下降器のセット
 ・バックアップのセット
 ・エクステンション

一度、私がセットして見せて、デモンストレーション。2mでも確実に体重を預けて、両手離しても、落ちないで、降りれることを確信してもらいました。

 ・ちゃんとメインロープに荷重がきてから、セルフビレイを解除すること

を念のため確認。

再度、自分の道具で、最適なセットを見つけてもらう。 プルージックコードに何を使っているか、ちょうど良いセットを見つけるのに、けっこう試行錯誤が必要だ。プルージックの巻き数なども、試行錯誤で見つけよう。

やっと懸垂下降のセットを確立して、すでに、ここで3時間経過!

■ 初のリードフォロー

ちょっと休憩をはさみ、先輩のリードで、終了点で、ビレイし、Kさんにはセカンドで上がってきてもらう。

まずはセルフビレイを取ってもらう。 基本のコールを教える。

パートナーチェック後・・・
 リードクライマー: 「登ります」
 ビレイヤー: 「どうぞ」
 リードクライマー: 「ビレイ解除」
 ビレイヤー: 「解除しました」
 リードクライマー: 「ビレイしました。登っていいよ」
 セカンドクライマー:「登ります」

大事なことは、ビレイしたかどうか、です。

懸垂支点に通すために、メインロープを外す前に少々怖いというので(まっとうな感覚だ!)もう一つ、ヌンチャクを連結して、セルフビレイを取ってもらう。2点で取れば安心という訳。

その後、懸垂のセット。まず先輩のセットを見てもらい、先に下降・・・。

次は、Kさんの番です。・・・が、ここでトラブルが!やっぱり高さで、頭が真っ白になる!さっき練習した懸垂下降のセットがセットできない!!

でも、良くあることです。こ鵜した状態になりうると分かっているのが大事だと思います。

■ ロープのまとめ方

最後はロープのまとめ方を学んで終わりです。

古いロープを一本差し上げました。練習用のロープがないと結び目やまとめ方は練習できません。


■ 関連資料

『チャレンジ!アルパイン』
『日本100岩場(トポ)』
ペツルのカタログ(クライミングの基礎が絵で描かれている、優れもの)

を渡して終了。こうしたガイドブックは、一般登山者には縁がなく、見慣れないものです。

今日は盛り沢山な一日でしたが、充実感たっぷり。どこまで消化してくれるでしょうか。アップアップになるのは普通のことなので、繰り返し学び、アタフタしなくなるのが大事なことです。