2015/08/01

懸垂下降

■ 懸垂下降

懸垂下降は、言うまでもなく大事な登山技術です。で、知っておくべきことはいろいろありますが、最大のことは

懸垂下降は失敗が許されない

です。クライミングで落ちても登った分だけしか落ちませんが、懸垂で落ちると地面に着くまで落ちます。落下距離最大。

敗退に使う技術 = 守りの技術

であることも重要なポイントです。普通のクライミングは登ったら尾根を歩いて帰ります(笑)。懸垂が必要なのは、敗退の時です。逆に言うと、敗退できないのに登りに行ってはいけません。

■バックアップのこと

バックアップはトップで降りる人以外要りません。で、バックアップ以外にも、途中停止の方法はいろいろあります。

私が最初に教わった懸垂下降は、カラビナ+太ももがらみ でした(笑)。

大事なことは、懸垂下降している途中で止まりたくなったとき、両手を離せることです。

仮固定の結び目なども講習会では学びます。山岳総合センターでは、懸垂下降は、

 エクステンションつき+バックアップつき

で教えています。基本的に、フリークライミングではなく、前穂北尾根をリーダーで登れること、というアルパインクライミングのリーダーを養成することを目的にしているからです。

ですから、セカンドで登る普段は、シンプルにATCだけで降りていいです。が、それだけ知って、十分というわけではありません。それしか知る気がないと言うことは万年セカンドのつもりって意味です。

■ケブラーコード

これはアラミドという繊維みたいです。
これは懸垂下降で使っているプルージックコードです。エーデルリッドのもの。アラミドコードスリングです。 アラミドはケブラーのことです。ケプラーはデュポンの登録商標。

ケブラーコードは今まで切り売りしかなかったのですが、カラファテでソウン(というか圧着?)のものを見つけ、おススメされていたので買いました。1000円くらいでした☆ これは今見たらケブラーではなくアラミドと言う繊維ですが、用途は同じです。

他所でも見かけるようになったので、おススメ品だと思います。ケブラーは強度が強いので、ロープ径が細くできます。

すると何が良いのか?

巻きつけ系のノットは、巻きつけるコードと巻きつけられるロープとの径の差で巻きついている

ので細いほうが有利です。ケブラーのことは講習会の講師に教わりました☆

 ■ 懸垂セット例

 自宅には支点になるようなものがないので・・・
スイマセン・・・(^^;)

通常は

懸垂支点と
セルフビレイの支点は別

です。ここでは一緒になっています。

ランヤードは、私はPASにしています。

が、それ以前は、

120cmのナイロンスリングに、結び目

を作って使っていました。

PASがいいのはバックアップを付けた懸垂下降では、かならずエクステンションが必要ですが、距離の調節がしやすいことです。
 さらに、PASだと何が良いか?

というと、

荷重テストが楽

です。

←つまりこのように、体重を少しずらせば、荷重の方向が楽にずれます。

下のPASには、今荷重がかかっていないので、だらりん、としています。

荷重テスト

は、初心者は軽視しがち、です。

でも、いきなり体重を懸垂支点に掛けず、
信頼できる支点かどうか、確認してから、体重をかけるようにしないといけません。

これはノーマルな懸垂のセットで、

バックアップがついていません。

トップで降りる以外の人はバックアップ要りません。

ロープの流れはもうできているから、途中停止などしないですし、スピードが速すぎるなどの時は、先に降りた人がロープを引けば、停止するからです。


 バックアップを付けたところ。

この位置関係が重要

下降器の下です。

握るとロープが出て、
降りれます。
 位置関係を分かりやすくしたところ。
 師匠からは、以前より、このようなセットも教わっています。

あまり使っていません(笑)

のは、カラビナが1枚余分に必要だからですが、

このセットで何も問題はありません。

下のビナにハーネスが付きます。
 ■ ムンターヒッチ(イタリアンヒッチ、半マスト)

ムンターはどんな作り方でもいいです。

重要なのは

HMS式のカラビナを使うこと

ゲートの向きに注意すること

です。

私の作り方は指です。
 できた!
 こうなります。
 ゲートにロープがかからないのが重要です。

クローブヒッチ(マスト結び、固定)
は、セルフビレイ用なので、片手で作れないといけません。

しかし、、ムンターは安定しているところで、基本的に使うノットなので、両手でもOKです。
 確保器に適合するロープの径はだいぶ違います。

左は、スポーツクライミング用の確保器なので、セカンドの確保用の穴がありません。ノーマルATCです。
シングルロープを前提にしているので、穴が太いです。

右は、本チャン用の確保器なので、セカンドの確保機能があります。

ATCガイドです。 ダブルロープを前提にしているので、穴が狭いです。

これは、一般に普及しているプルージックコードです。

結び目はダブルフィッシャーマンが決まりです。

このプルージックコードは太いので、

巻回数
相手になるロープの直径

で、何回巻くとプルージックが効くか?

が違ってきます。それはやってみないと分からないことです。
足りないと思ったら、巻きつけ回数を増やします。

巻きつけ系の結びには何種類もあり、プルージックやブリッジプルージックは両方向に動きます。
私はバックアップは、下にしか動かないクレイムハイストでやっています。結びは自分が良く利く、と思ったモノを選びます。


■まとめ

  • 懸垂下降は失敗が許されない
  • 懸垂下降は自分の身を守るための技
  • ケブラー
  • ランヤードはPAS(スリングで代用可) 
  • PASは荷重テストが楽
  • PASは長さ調整が楽
  • バックアップをつけるときはエクステンションが必要
  • セルフの支点と懸垂の支点は別に取る
  • ムンターでも降りれるとなおよい(カラビナ懸垂)
  • スポーツクライミング=シングルロープ前提=穴の大きい確保器
  • アルパインクライミング=ダブルロープ前提=穴の小さい確保器
  • プルージックは効きをその都度確かめる
■おすすめの書籍

『教科書になかった・・・』には、指で作るムンターが載っています。

『ロープレスキュー』は、この方面の権威、堤信夫さんの本で結びが網羅されています。めざしとかも載っています!