消費者はまず、その製品の存在を知り( Attention)、興味をもち(Interest )、欲しいと思うようになり(Desire)、記憶して(Memory)、最終 的に購買行動に至る(Action)という購買決定プロセスを経る、という理論ですが、町づくりのビ ジョンにおいても同じではないでしょうか?
市町村は、まず、地域の自然資源(山や岩場、具体的には、比叡、行縢、日之影)の存在を知り、 興味を持ち、そののちに、それらを自分たちの文化に取り入れてもいいと思うようになり、今まで 培われた地域文化との共通点を見出し、最終的に実現に至る、ということです。
一般に、地方の市町村は、岩場があること自体を知らない。
そこから、一足飛びに、最終的行動(宿泊施設を作ればクライマーがわんさか来てくれ、何もしなくても、お金がじゃらじゃらとスロットルマシーンのように落ちてくる)はあり得ません。これまで、地方行政は数々の失策を冒しており、その代表は、箱物、です(笑)。
すでに小鹿野で、いきなり箱物、という方法論での失敗事例があります(笑)。それは欲に目がくらんで、”おいしい話”に飛びつこうとしたからです。
さて、そうではない方法論をここでは提案します。
■ まずはクライミングが本当に町のためになるのかを知る
まずはクライミングの存在を知る、ということが、町の人たちの良き未来を創るためには必須のステップです。
クライミングっていうのはどういう人たちがどういう楽しみで、どういう価値観で来るのか?が分かっていなければ、それが自分たちの町のためになるのか?ならないのか?も、わかりません。
■ まずは一流クライマー招聘でセミナーを開催し、町の人がクライミングを知る
一口にクライミングと言っても、
- 登山と地続きのアルパインクライミングやエイドクライミング
- ロープに頼らない フリークライミング
- 支点を自分で作るトラッドクライミング
- 大会に出て勝つことを主眼にしており、リスクゼロのインドアスポーツクライミング
- すでにボルトが打たれた外の岩を登るスポートクライミング
- 外の岩場を登ることの総称 ロッククライミング
スポートとスポーツが違うクライミングだなんて、普通にロッククライミングをしている人でも知らないくらいです。
しかし、クライミングを主宰する側となれば、スポートのトとスポーツのツでは、天と地ほど違います。
A)スポートクライミング=ボルトを主催者が提供せず、初登者が提供するので、安全管理の主権は岩場の主催者にはない
B)スポーツクライミング=人工の壁なので、すべてが安全第一に作られている 事故は非常に少ない 大会はすべてこれ。
スポートとスポーツは誤解しやすく、誤解に便乗して、ちゃっかりクライミングするクライマーがいても不思議ではないかもしれません。
したがって、岩場の主催者となる地方行政が、正しいクライミングの知識をもっていることが、将来の町おこしに禍根を残さない大事な知識になります。
そこで提案は、一流クライマーの招聘で、町の人たちに、正しくクライミングを伝えてもらうことです。
講師は市とか県のレベルの人では視野が狭いので務まりません。事例へ。
■ 一流クライマーって誰ですか?
最近のポッと出のボルダリングジム(ちゃんとしたクライマーがやっていないジム)などに、「だれか?一流クライマー知りませんか?」などと聞いてはいけませんよ。
きちんとしたクライマーのネットワーク(人脈)につながっていない人に聞いたところで、その辺の5.13登れるだけの人を紹介されてしまうのが関の山です。
アルパインの一流クライマーは、比較的楽に選べます。ピオレドール賞をググればいいからです。
山野井泰史さんなど、ピオレドール賞を受賞している人に事情を話し、講演してもらえばいいでしょう。
ボルダーが多い町なら、小山田大さんですね。長年地域との交渉をされて、誠実な登り方で登ってきておられます。地権者の目をかいくぐってこっそり登っちゃおう、というのはない方です。
フリークライミングなら、フリークライミング協会に問い合わせればよいでしょう。
ロッククライミングであれば、菊池敏之さんに問い合わせれば、その地域にゆかりの人物を紹介してくださるでしょう。
以下は、ちなみに私が担当者だったら、日之影町には、こういう開催にするなぁというものです。
費用は一回当たり10万円でおつりがくるでしょう。
■ 全体
提案1)
ロッククライミングにおいて著名で、地域にゆかりのある方にクライミングの世界について 解説をしてもらう車座形式の懇親会を開く。
参加費は町民無料、町外参加者2000円、交流会あり、町外参加者は、希望すれば、町民の家に安価で宿泊可能。行政がマッチングを行う。クライマーと町民の草の根レベルの交流のため。 公民館宿泊(雑魚寝)は 通常通り可能。
案)第一回
山野井泰史さん。世界的トップクライマー。 行縢山の『明日なき暴走』を20代の若いころの放浪中に登っている。若き日の行縢の経験がどのように、その後の、”ピオレドール功労賞”受賞の偉業にすらつながる、世界的クライミングにつながっていったか?を語ってもらう。比叡の代表的なルートについて、トポというクライミングのルート図を見な がら、当時のクライマーとしての心情などを山野井さんに解説してもらう。
狙い: クライマーのライフスタイル・放浪スタイルについて理解を深める。地域資源が若き次世代のクライマーを育てることについて、すでに具現していることを知る。
ハイキングの一般登山者層と玄人の山やの違いが見分けられるようになる。ごみを捨てていくのは一般登山者が多いです。本当の山やの価値観を知る。
資料: 『日本の岩場(上)』のプリント および比叡のルートトポプリント
案)第二回
講師 小山田大さん。 長年の日之影ボルダー開拓における最大の功労者。 日之影町のボルダーの魅力について語ってもらう。最近のボルダラーの現状をボルダリングとい うクライミングの歴史的変遷から語ってもらう。チッピングという行為がNGであることや、マットを使わないボルダリングは公共のマナーに反しているようなことだというボルダーとしての規律の 逸脱行為と、そういうことを知らないで岩場にやってくる若い人の現状を語ってもらう。
小山田さん から見た、世界の素敵な岩場のある町の在り方…例としては、地域のコンビニで冊子となってい るトポが売っており、コンビニのバイトの人ですら、ここには有名な岩場があるんだなぁと分かっているよ うな在り方…の紹介もしてもらう。
ネットで穴場を探してきました、みたいな関係性だと、人と人とのつな がりが希薄になり、相互の理解(絆)も起きない。誰が来ているのか?知らないうちに人が来て、 こっそり登って去っていくという在り方ではなく、地域に密着している事例を教えてもらう、笠置など。
熊本のボルダリングジムを運営する清川氏にも、来てもらい、日之影ボルダーの発展にどう都会 のジムが貢献しているかの現状を語ってもらう。(都会のジムは、主たる情報発信基地になって いるため)
狙い:ボルダリングとアルパインクライミングの違いを町民が自ら理解できること。ボルダリングを 活用した町おこしについて、理想的な未来の姿を町民自ら、なんとなく脳裏に描けるようになるこ と。良き関係性についてのイメージが持てること。
資料:日之影のトポ。 資料:お粗末系クライマーの実態資料
案)第三回
佐藤祐介氏。現代のピオレドール受賞のトップアルパインクライマーで、宮崎・祖母傾エリアでのルート開拓の経験がある。花崗岩の初登攀の魅力を語ってもらう。ガイド業をされているので、町民を含めたクライミング一日 体験会(開拓一日体験)を開いてもらう。
アシスタントに町民の男性がつけるようならつく。無理なようであれば、地元延岡のクライミングジムの店長さんにお願いする。(役に立たないかもしれないですが、良き経験になるはず)
佐藤さん には、誰か一人連れてきてよいとアシスタント役を一応、連れてきてもらう。 狙い:現代の眼で見ても、自分たちの地域には、まだまだ手つかずの資源がいっぱいあることを 理解する。
案)第四回
天野和明氏。 全国チェーン登山用具店の石井スポーツ登山学校校長。高千穂神社にて奉納のクライミングを 行っている、地域にゆかりのある方です。 天野さんはアルパインクライマーでありながら、一般登山者の登山教育に取り組んでおられ、現代登山者の現状(東京方面)に詳しいので、現状を踏まえた登山の在り方(どのくらいにレベル設定したほうがいいのかなど)で、天野さんがこうしたらよいと思う姿を話してい ただくのが良いと思います。
クライミング以外の、登山道の安全管理、一般登山道としても、比叡のある祖母傾エリアは難路であり、九州では、最も難しい登山道です。
そこを安全に歩くための現代のガイドの在り方 を提言してもらう。 今の登山ガイドはほとんぞ全部自然ガイドになっており、植物に詳しいことがガイドの意味になってしまっていますが、難路以上の登山道では、それではガイドは務まりません。最低限の危険認知とセルフレスキュー技術は必携です。
以上が、すでに宮崎県のクライミングに深い、ゆかりがあるクライミング界の著名人物です。
以下、以降のイメージは
案)第5回
鈴木亘さん: 岐阜県下呂市のボルダリングによる地域おこしの地おこし協力隊員。町とクライミングの程よい関係について、クライミングを取り入れて町に起こったよい変化を話してもらう。若者の移住候 補になる魅力的な村づくりには何が鍵だったのか? 福岡県のご出身なので、九州と本州の温度差も心得ておられると思います。
案)第6回
気象予報士 猪熊さん 日本の登山での気象事故についてリーダー的地位にある気象予報士。九州の特徴的な気象リ スクについて語ってもらい、5割を占めるハイカーの気象事故を町が対策として防ぐ基準作りに 提言をいただく。雨量〇〇㎜で登山禁止など。 交流ハイキングを実践し、雲を見ながら簡単なルートを町民と歩く。
案)第7回
日本フリークライミング協会: 現代クライミングの事故発生状況の説明と正しいボルトの打ち方を講習会をしてもらう。
案)第8回
樋口先生 多久高校教諭。佐賀県スポーツクライミングのヘッドコーチ。若いころに開拓して学生が開拓した 竜頭泉は全国でも珍しい高校生が開拓した岩場として有名。クライミングを地域に根付かせるた めには、どのような活動をしていったか、過去のご経験を語ってもらう。
案)第9回
菊池敏之氏: フリークライミングの文化・歴史を語る第一人者。フリークライミングとは、ルートとボルダーがあり ますが、道具に頼らずに登るクライミングです。
日本のフリークライミングの歴史における比叡・行 縢・日之影の位置づけと今の現状を語ってもらう。
案)第10回
東秀樹氏: フリークライミングの開拓王。年間開拓数最多。現代のクライミングジム上がりの人でも楽しめる、クライミングルートの開拓のコツ、資材の紹介、道具などの紹介を受ける。
案)その他
・大分出身の若手トップクライマー 門田ギハード君、
・山での糞尿処理の仕方を講習してく れるNogusofiaの伊沢さん、
・九州のボルダリングの父と言われている、柏木敏治氏
など、が優先度高い方々です。 一般的な面では、
・北山真氏、
・草野俊平氏、
なども候補に挙がります。
・大阪あたりの登山学校を運営している団体 (ローカル登山学校運営)
・世界的な登山学校であるUIAA (グローバル登山学校運営)
なども、招聘してアドバイスを聞くのによいと思います。
予算は一回あたり10万円でおつりがくると思われ、効果の高い施策であると思います。
全部やっても150万円でおつりが来て、地域おこし協力隊に付与される必要経費の160万円の枠に収まります。
これらの知識をポケットマネーで足で稼いできた私ってすごいなぁと改めて思いました(自画自賛です☆でも、ほんとうです。これだけ分かっている人は、なかなかいないでしょう)
登山技術・クライミング技術・知識は過小評価されている知識技術エリアですので、知らない人たちの無知に付け込んだ、なんちゃってクライマーが量産されている現代です。
■ ”あなたやって”は、お門違いです
これだけ提案力がある人はなかなかいないので、じゃあ、あなたやって、と言われますが、
私はアイスクライマーです。
アイスクライミングができないようなところに移住するほど、お人よしではありませんので、悪しからず。
価格などが参考になります。学生と10代は無料。山やってビンボーなんですよ、基本。