2021/06/06

だれも、落ちたら死ぬかもイチかバチかをやりたいとは思っていない

■ 今日の仏教説話

私は毎朝仏教の説話を聞いているのですが… 今日も、学習性無気力に陥ってドツボから出れないのは、自分だという想定で、自分がどうしたらよいか?を知るために聞いていたのですが、

 あ~これ、九州クライミングで見た現実だ~と理解…。

なんで30年前に賞味期限切れになっているボルトをいまだに使いたいのか?理解できないと思っていました。

が、そのようなクライミング界のことを正しく理解する場と言うことになった。

井の中の蛙 + 学習性無気力の象さん の心境になっていたんですね…


■ 外の世界を知ろう! 

例えば、こんな感じ。

(クライミングシーンでは、カットアンカーは使われなくなって、もう30年経っていることに気が付かなかった) 

+ (どうせ何を言っても、誰も話を聞かないのだから、という学習性無気力)

= 30年前の手作りアンカーが継続…

たぶん、こういう事情で、進化を辞めてしまったということですかね?

■ 若い人の方が知見が広いです 

若い人は小川山も行くし、ヨセミテも行くし、世界は昔の人より広がっていると思いますが、その世界を地元に還元しづらくしているのは、ずばり、儒教の教えと思います。年配の人の言うことがすべて正しいとか、年配の人の言うことを聞かないといけない、ってやつ。

でも、ちゃんと言えば、年配の人も話を聞いてくれますよ?

開拓者の米澤さんに、ボルトを購入して提供しますよ~って言っていた時は、一緒に最新のボルトカタログをのぞいていました…Hilti社のです。

年配の人が耳を貸さない、というのは、特定の人たちだけの話なのかもしれませんよ?

■ ちゃんとした人はちゃんといる

私の経験では、米澤さんは若い世代に協力したいという方でした。そうじゃない年配の人の方が多数派であるのは、否めないかもしれませんが、ちゃんとした人は、います。9:1くらいかもですが。

自分自身が、ちゃんとした主張をしていることが、ちゃんとした人をつながりあえる接点になるのではないかと思います。

私は、UIAAに、日本語版の教科書出して~、とリクエストしたことがありますが、ちゃんとリクエストは答えてもらいました。

私の経験では、イケイケクライマーの人たちは、イケイケじゃない人を見ると、一緒に登りたがらなくなります。

■ 外の世界を見よう

数日前にアップした北海道のボルダープロブレムの閲覧数がえげつないですが…(笑)、みなさん、やっぱり外の世界を知らなかったから、北海道ボルダーを見たかったってことなんですかね?

九州から出かけていく、とすれば、大体、小川山と思いますけど、残念、小川山も花崗岩だし、全然、怖い岩場なので、全く参考にならなかったりするんだろうな~(笑)。

行くなら、城山とか、今だと埼玉の二子山とか行かないと、登りの質として、世界が進化して行っていることが分からないのではないですかね?

いつまでも、”ハードフリーの世界観”を引きづっていては…。

私は、ラオスや台湾に視察に行ったらいいと思いますが…。年配の人ではなく、10代の人にこそ、行ってほしいですね。日本の常識、世界の非常識って分かると思います。

年配の人だと、海外の岩場に行っても、同じ登り方で登って現地のカルチャーと接点がないので、たぶん、何も学ばないで、俺んとこの岩場イケテル~と勘違いして帰ってきてしまいます。

■ アルパインのクライマーでカム持っていないって変ですよ?

アルパインクライミングだと、最初ピトンの打ち方を教わります。

私は、本式で、雪上確保から入ったので、スノーバー持っていますし、ボラートがリムーバブル支点で習った初めの一つです。ですので、アルパインの価値体系では、ボルトルートと言うこと自体が堕落です。

本チャンへ行きたいという人がカムを持っていないというのは、九州では当然のようですが、一般に支点がないのが本チャンなので、普通はありえないギア不足なので、本チャンクライマーになりたい人で、カムを持っていないんだったら、最初から連れて行かないことだと思います。

無くても、行けるルートはどこか?というので、自ら探して来て、例えば、関東だと、本チャン向けゲレンデは、三つ峠、です。登れるのは、中央カンテとか、〇〇番クラックとかをつないだラインですが… 腐ったピトンとリングボルトの世界です。

ので、当然、誰もそんな支点を信頼して登っているわけではないです。ノーテンが当然。終了点だけは、きちんとした(と思う)のが整備されています。山世界では、エリートである信大の学生も三つ峠へ練習に来ます。(そしてJDTの懸垂支点を作って残置して降りていて、びっくりしました)

一度、師匠の青ちゃんを連れて行ったら、猫の頭ほどもあるでっかい懸垂支点を、「こんなん信用したらあかんで!」と言われました(笑)。これを信頼しないなら、何を信頼していいの?という巨大な支点でしたが…。三つ峠だってこんな程度です。しかし、三つ峠はアルパインの人以外は来ないです。フリーの岩場とは考えられていない。

師匠とは、すぐに三つ峠のようなアルパイン的な岩場には行かなくなりました…行っても登攀が簡単すぎで、楽しくないから…。 

私は三つ峠は、まだ人工壁通いをスタートして3か月目の時に初回に鈴木師匠に連れて行ってもらい、2度目からリードで後輩を連れて行っています。

後で支点が超ボロイことを知り…、「私、まだ登攀下手くそなのに、2度目からリードしていますが、いいのでしょうか?」と不安になって、先輩に問い合わせしたくらいです。

関東では、大体そのような入り方が一般的で、九州のようにずっとセカンドで連れまわされて、行ったことがある本チャンが高度化する一方で、肝心のシステムの理解や技術が全然追いついて行かない、と言うことはないような気がします。たまたま、私が良い人たちに恵まれたのかもしれませんが。

以前、山梨で同じ会に同期入会した九州から来たクライマーが、行ったことがあるというルート名はすごいので一同期待したのですが、なんにもリードできない人で、フリーの岩場で、全部Aゼロ。で、会の先輩と一緒にビックリ仰天したことがありますが…。それじゃ遊んだことにならない…。その人は九州ではセカンドしかしていなかったそうです。そんな風な育て方は、本州では、誰からも誘われなくなりますね。会の”超”がつく仏の○○と言われている先輩ですら、めんどくさがっていました。

本チャンクライマー養成は、本人がフリーで自己研鑽しつつ、ルート本番は、3年はセカンドで経験値を上げるというのが王道のような?

…と言っても、リードできそうな易しいピッチは、保険付きでリードさせてもらい、構築した支点などに、ダメ出しを貰うのが良いと思います。なにしろ、新人が作るアルパインアンカーは信頼できないので、フォローだって落ちない人が必要です。

そういうのは、易しい雪稜で、SABをしていれば分かります。こんなところで落ちないから要らないよな~と思っても、スタカットが前提です。先輩がこいつは歩けて落ちないと思えば、コンテに変えてくれるかもしれないですが…歩きの技術的確立が前提なので、歩き下手だとロープだされてしまいます。

昨今は、大学山岳部でも、歩きも登攀も下手くそなままで、ロープが必要なバリエーションへステップアップしている場合が多いので…ロープを出すか出さないか?の判断は、迷うようなら出す、にしておかないと事故が増えます。

昔はある程度、足が揃った人しか来なかったところにそうでない人が来る時代が現代… 前穂北尾根とか、阿弥陀北稜とかで、死亡事故が起こる時代なんですから。どっちも入門のところです。師匠は阿弥陀北稜なんて、一日2往復余裕でできるのが当然なんだよ、と言っていました。私もそう思います。大体、赤岳ノーマルルートだって、一日3周くらいできそうな短さですもん。

九州の市民山岳会では、バリエーション未満の北鎌尾根で、死者を出したと聞いています。

以上はアルパインのクライマーの育て方、ですが…、アルパインというのは、支点作りも自分持ちというクライミングのことです。

■ 支点の強度が相手持ちのクライミング = ボルトクライミング

九州では、マルチピッチが、半アルパイン・半フリーみたいなことになっているようですが…本格的な山岳地帯でのアルパインの代わりに、練習場、ゲレンデとして、ボルトを打ってあるマルチがあるのですが、そのマルチがいつしか練習ではなく、本番に変化していったもの…が、九州のマルチの位置づけのような気がします。

ランナウトして、ロープの意味がないマルチピッチの岩場ってことですね…比叡みたいな。

まぁ、落ちないグレードだったら、ボルトが遠くないと、何もスリルがなくて、楽しくない。ということもあったのだと思いますが…インスボンもそのようですし…。

落ちないはずのグレードで、落ちてしまうクライマーが来てしまう昨今…ということなのかもしれません。昔の人はすごく登れる人しか来なかったから、問題にならなかったのに…ですね。時代が変わったってことです。

あるいは、5.9と書いてあったら、ホントに5.9しか登れない人が来てしまうとか…。昔の人は、12登れて、5.9です、という謙遜の美徳だったのが、今の人はジムで5.9登れたら、外でも5.9で登れると思っている人が普通です。そのような新人が外国では当然です。そのためにグレードってあるんでしょ、と一般に思われています。

まとめると

 登れもしない奴が来る

 グレードギリギリで取りつく

の2点です。でも、フリークライミングの世界のルールでは、

 1ピン目掛けれたら、どこで落ちてもいい、

 ギリギリのグレードに取り付いてよい

それが当然ですからねぇ…。その行為を責めるのもおかしい話になってしまいます。

時代がフリークライミングの価値体系に進化しているってことですよね。それに現場が合っていないのです。

■ レッドポイントグレード、オンサイトグレード

本州では、RP〇〇、OS○○と、オンサイトグレードとレッドポイントグレードが違うのが理解されていると思いますが、九州の古いクライマーさんはそういう理解もしておらず、登れる、という言葉の内容が、オンサイトでスイスイ登るのが登れるという意味だと思っているかもしれません。

それだと、5.12を登れると発言して良い人は、佐藤祐介さんだけみたいなことになります。5.12で確実に落ちないと証明して見せたクライミングが、スーパー赤蜘蛛フリーソロだからですが…。

一般にジムで登っていて、5.12登れますという男子は世間にゴロゴロしており、もはや中級者としか呼ばれません。が、それでも、やっとこさ10回のトライで1回、5.12が登れても、5.12クライマー。下手したら100回に1回の人もそう言ってよいことになっているのがフリーです…。

そのような世間の変化を知らない、というのも、齟齬の原因にあるのかもしれません。


■ 原因はなんであれ、大事なのは、世界を知ること

とまぁ、原因の分析に文字数を使ってしまいましたが… 大事なのは、世界が変化していることを正確に把握することです。

閲覧数ごぼう抜きの赤岩青巖峡のボルダーは、5.12、どっかぶり、ハイボル、ボルトあり、です。こんなのをひいひいと苦しみながら、パワームーブで登り、落ちたとしてもボルトがあるから安全、というのが、現代クライマーの好み、ということです。

だれも、落ちたら死ぬかもイチかバチかをやりたいとは思っていないってことですよね。