2024/10/31

【技術情報】トップクライマーによる、前衛アルパインクライミング情報が聞けます!

■ アルパインクライミングの話を聞こう!

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海外の山で活躍するアルパインクライマーたちの活動を紹介する「第2回アルパインクライミング懇談会」が2024年11月26日(火)に東京・錦糸町およびウェブ配信で開催

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というお知らせが来ました☆ 現地にいなくても、ネット参加可能。

 https://www.climbing-net.com/news/jmsca_alpine_2024_20241030/

みなさん、出ましょう☆

■ 伊藤さんの思い出

伊藤さんとお会いしたのは、荒船のアイスにドはまりしていたころでした…。

基本的にクライミングの習得って、

1)テクニカル要素を習得してしまったら、

2)次は長くしていく

のですが、湯川のアイスはみな短いので、習得後、私は4級で長くしていく必要がありました。

それで出てきたのが、4級の荒船山相沢大滝。長くて大きな滝、大滝です。4級なので、基本的に、技術的には初心者でも登れますが、まぁ、安全にリードするとなると別ですね。

4級の技術課題は、ムーブではありません。

・もろそうなアイスをたたかない(含、登らない判断)

・叩き壊して進路を破壊しない

・スクリューを打ちこむべき氷を適切に判断できる

・気温の上昇、壁面、太陽光など気象条件を見極められる (含、登らない判断)

・適切なビレイができる

などです。細かく言えば、もっと他にたくさんあります。

別にムーブは、誰でもできるような簡単なものです。4級と言うグレードがそのように定義されています。なので、登れたこと自体が自慢になる、という世界ではありません。

■ 現代の主流はウィル様登り

ただ、アイスのムーブに関して言えば、古い登りは、正対×ひきつけ 登り。可能なら、この段階、つまり4級で、ウィル様登りを習得したほうがいいです。ダイアゴナル、つまり、体を斜めに使えたほうが5級になった時、楽ですし、6級になれば、それしかないです。

余談になりますが、フリークライミングから入ったアイスクライマーは、4級が登れず、6級が得意です。これは、岩でスラブが登れず、オーバーハングが得意なのと同じです。

私は4級は、スタートした元年にすら、リードしていましたし、登れていましたが、チャレンジな課題を登る予定が先々あるなら、バラエティがあるアイスに接したほうが良いです。一か所に詳しくなること(ホームグランドを持つこと)も大事だが、様々な条件の氷に接することも大事、ということですね。”氷の見極め”が大事だから、です。そこが、安全か、安全でないかを決める要素です。

成長方法を簡単にまとめると、

人工氷壁→三つ峠→醤油樽→小滝→大滝→湯川→荒船 みたいな順番かな?途中に初級のルートを挟みましょう。

私は初級ルートとしては、広河原沢左俣に連れて行ってもらった後、同レベルの仲間で硫黄岳を詰めるジョーゴ沢に行き(自分がリーダー)、その次は、自分のリードで後輩を連れて、峰の松目沢に行っています(オールリード)。

■ズルしないのが大事

その際ですが、GPSで入渓点を探るような”ズル”をするようでは、沢登りに差し戻しです。

ちゃんと、紙の地図を見て、〇〇から数えて2本目の沢…などと読図ができるような状態になり、地形を見る目も、寒さで時間的余裕が緊迫している冬ではなく、ちゃんとゆとりがある夏に、沢に行ってから行きました。

つまり、アイスのルートというのは、沢登りが済ませた人の、ご褒美、ということです。

その前に沢登りで、ひと夏をささげ、その夏は20本以上の沢山行を毎週のように、行っています。1本、2本、誰かに連れられて、沢に行っても、読図のあれやこれやは、身につかないと思います。(これは言葉の端に現れます。赤布を追っているような山をしてはいけません。)

当方のアイスクライミングの成長記録はこちらです。

https://iceclmb.blogspot.com/

さて、そのような何段階をものステップを経て、晴れて迎えた荒船時代…。

■ 華やかになった

その最後を彩ってくれたのが、伊藤仰二さんというトップクライマーでした。

伊藤さんは、師匠の飲み会に来てくれたので、私は大慌てで、知り合いの5.13男性クライマー全員に声をかけたのですが… みんな、ビビってきませんでした…(汗)。

私みたいな成人から山をスタートした人、しかも女性が、伊藤さんにあっても何を質問したらいいんだか…想像もつかない、と思っていました。(実際、その通りだった)

で、アイスクライミングにも来てくれたのですが…えー、荒船の大滝ですいません、というか…4級のアイスなんて、伊藤さんにとっては退屈なんではないか?と思い、もっと難しいラインを、と水を向けると?

「〇〇さん、私に何をさせようとしているんですか?」と…。

やっぱりちゃんとしている人は、変に粋がって難しいライン…=強点を行こうとかしない、確実堅実な登りでした。

その後、お隣のマルチに行ったのですが、伊藤さんペアはなかなか降りてこない…なんかトラブった?

私はその隣では、垂直の5級を初リードして、満足でした。短い5級です。氷が硬かったので、プロテクション面では、安心なんだけど、フィジカル面ではパワーが必要で、それが私は欠点であるので、ビレイしていた師匠の青ちゃんは寿命が短くなったみたいでした。すいません。

女性はやっぱり上半身が弱いです。最近、筋トレでラットプルダウンしているんですが、広背筋使う前に首が疲れてしまい、全然ダメ。ダンベルを持ち上げるやつも、たったの3㎏でふらついているという、よわよわ具合です。なので、私に6級のリードはないな…と自覚中ですが…まぁ5級までは体を戻さねば!とがんばっています。

さて、話がそれましたが…

伊藤さんはこのような、とても気さくなアルパイントップクライマーです。

アニキにいろいろ質問して、若いクライマーは、世界の山を目指しましょう☆

■ アックスで登るクラック

伊藤さんがプレゼントしてくれたもの、としては、私にとっては

1)伊藤さんはセルフを取る=軽いクライマーにはビレイ時にセルフは必至

2)アックスで登るクラック 

3)荒船昇天

の3つがありました。

私はそれまで、自分が軽くて小さいことに負い目を感じており、ビレイは、積極的に出来ませんでした。なんせ自分がぶっ飛んで、アイスに激突した、っていうのが、自立したアイスクライミング1本目の経験で、相手は80kgくらいありそうな男性でした。

その男性も初心者だったと思うので、その様子は、石田さんというガイドさんが、”それとなく” 危険予知してくれ、守ってくれたような恰好でした…。

その後、私はアイスクライミングのビレイが自分の核心だと心得、しばらくビレイのことばかりを考えて過ごしました。それで保科ガイドのクライミングに行き、リードのビレイを初体験させてもらったほどです。(しかし、何も教えてはくれなかった)

というのは、アイスクライミングでは、フリークライミングの外岩の時のように、

 直下には立てない

からです。そこには打ち砕かれた氷のかけらが落ちてきます。したがって、離れなくてはなりませんが、離れすぎてもリスク…。ロープが出ないとクライマーは登れませんし。

というので、立ち位置の研究。

そして、ビレイとビレイ器、ロープの相性、ロープのメンテナンスなどのワンセットで安全は成り立つものです。

■リスク管理は危険予知

リスク管理に無関心な人は、ビレイがいい加減なだけでなく、ビレイ器とロープの相性など考えたこともなく、ロープもアイス専用ではなかったりします。

専用にしないと毛羽立ちで凍り付いて、すべり、握っても、滑ってロープが出てしまいますよ?そして、登った後はコーティング剤を再度塗布して、ロープをメンテします。

こうしたことは師匠を見て、盗んで学びました。すぐにコーティング剤を買いにホームセンターに行きました。

こうしたことは言葉に出して、「こうしなさい」と言われたことはないです。たぶん、近年男子ができないのはここです。見て盗むということです。

というような様々な要素がすべてクリアされて、安全というものは積み上げられています。

■ なぜアックスでクラックなのか?

荒船のアイスでは、アックスで登るクラックを経験し、アイスと岩のミックスへ片足を突っ込みました。

私は6級にTRしに行くのは、すでにほかの人の手を借りずに、自分で行ける場所があり、6級も直上の氷柱は上手に登っており、誰かが動画を取ってくれたほどでした。

しかし、これを長くしていくというのが私のアイスクライミングにあるか?というとないでしょうし…長い6級(=パワー)より、岩とアイスのミックスと言うような悪さに対応できる力をつけるほうが、ルート志向の私のようなクライマーにとっては有益です。

自分の山で、穴が開いた氷瀑で下で水がジャンジャン流れているようなのに、もうすでに遭遇していましたし、そういうのを楽しい、と思うタイプなのです…

というわけで、易しいけれど危険な要素があるルート に行くためには、難しい&危険な要素があるというルートをゲレンデでは経験してギリギリに迫って、自分の限界はどこかを知る必要があり、それがアックスで登るクラックでした。これ、めっちゃ落ちましたけど、楽しいクライミングでした。

その結実で出かけたのが、荒船昇天。4Pのマルチです。セカンド。青ちゃんの復習山行のお手伝いガールです。2P目とかはただのアイスだったので、私でもリードできるかもしれませんでした。未知のルートはリードしていいかどうか?自己判断が付かない感じでした。2度目なら、まぁいいでしょう。

ここは、4P目の落ち口が悪かったそうです。私が行ったときは悪くなかったので、そこまで大変に感じず。アイスにせよ、アルパインのロックにせよ、その日のコンディションで難易度というのは大きく揺らぎます。ので、私が行ったから簡単だ、と思うのは早計です。

男性クライマーってどうしても、その発想から逃れられないみたいなんですよねぇ…。

でも、ロープ屈曲して、流れなくなり、自分で自分が登れないようにしているような段階の人って、フィジカル的に難しいのや、テクニカル的に難しいのに挑戦するのではなく、易しいルートで、ロープの流れをしっかり作れるようになる、っていうのが、その人に妥当な技術課題だと思います。

技術課題を克服せず、フィジカルの強度だけをあげて行って、

 身体エネルギーを発散したい人に向いているのは、ボルダリング

です。技術不要なので。今のクライミング界は、フィジカルの難易度を上げることだけがクライミングのすべてだ、という短視眼に陥っています。

高難度アルパインは、フィジカルの強さは、ただの基礎力。体力は、

 ・40㎏担げて歩きが遅くならず、

 ・5.12が、レッドポイントではなく、すいすいと5.9みたいに登れる力

が、

前提

です。そのフィジカルのさらに前提に

 ・確実なロープワーク

があります。誰ですか?ロープの計算もできない人は? 

そして、この2点が揃った後で、その上に、

 ・悪いところに対応する力(テクニカル)

 ・度胸

が来ます。度胸だけで、賞賛されると思ったら、大間違いです。それは九州だけの出来事ですよ。