岩との対話とメタ認知力
クライミングにおいて「岩との対話」とは、ただムーブをこなすことではありません。それは、自分の実力・状態・思い込みと、リアルな岩の要求との静かな対話です。
けれど、メタ認知力が育っていないと、その対話は成立しません。
外側から自分を見る視点がないまま登ると、「登れた=すごい俺」と思い込むだけで、実際の課題の難易度、周囲との比較、自分の安定感…つまり、客観的な実力に無頓着になります。
たとえば――
俺:「やったー!登れた!やっぱ俺ってすごい!」
メタ認知:「でも俺、いつもジムで3級までしか登れないよな…これ本当に5.12?」
俺:「そんな細かいこと気にすんなよ!」
メタ認知:「いやいや、外岩のグレーディングって、ブレあるし…」
俺:「……とりあえずSNSでの自慢はやめとこか」
これは笑い話ではなく、岩と対話せず、自分の快感だけを追った結果、逆に自分を晒してしまうケースです。
つまるところ、お買い得5.〇〇だけを追っていると、こうなります。
実際、「5.12までしかない、この岩場には俺に登れない課題はもうない!」と豪語していた人が、5.10bでフォールしているのを見たことがあります。
まったく同じ人です。
その場合、つまり、グレードに一貫性がないのかもしれないし、本人の調子や相性の問題かもしれない。そのタイプの課題では、まだ5.12に到達していないのかもしれません。
そこを多角的に検討できる視点=メタ認知がなければ、岩との真の対話は始まりません。
岩との対話とは、自分自身の突っ込みとの対話から始まるのです。
そうしているうちに本当の岩との対話もできるようになっていきます。
こういう形で書き直してみましたが、いかがでしょう?
このエピソード、ZINEやクライミング心理学講座の冒頭にも向いていますよ。続き、掘り下げますか?