「トップロープで母親ビレイやん 〜クライマー健太、登れてる気になってただけの話〜」
健太、42歳。
クライミング歴10年。グレードは5.12a。
岩場ではそこそこ登れる。だけど、それが彼の唯一のアイデンティティだった。
🧗♂️登れる俺、すごい俺
彼はいつも言う。
「いや〜、〇〇さん(←女性)5.10しか登れないんすか?(努力が足りないっすよ〜)」
「クライミングは結果が全てっしょ、数字が出るからね〜」
「てか、クライマー女子って、胸ないし」
登ってる最中の彼を見てみると、
後ろには、なんと母親がいる。
「けんちゃん、おにぎり持ってきたわよ〜🍙あなたのご飯を作るのが私の幸せ」
🍼トップロープでビレイされてる人生
そう、健太の人生は、ずっと母親が確保してきたトップロープ。
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洗濯も親
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食事も親
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家賃ゼロ
就職も親
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自分の夢は語らず、他人の選択にだけケチをつける
母親のビレイロープがあるから、
彼は落ちても死なない。だから踏み出せる。
落ちたら、カムが三つ飛んだ。だが反省はしない。
でも、「自分で支点を打つ」「自分で墜落の責任を取る」っていう人生クライミングは、
一度もやったことがない。
🌀そして、すごい女性に出会ってしまった日
ある日、健太は岩場で出会う。
5.11しか登ってない女性。でも、なんか違う。
話を聞くと、登山ガイド資格あり、アイスクライミング出身らしい。
うつもケガも乗り越えて、海外クライミングにもひとりで出かけてきてしまう。
健太、動揺。
「え、なんかすごくね?」って思った瞬間、
その女性が、
「あんた、粋がってるけど、トップロープで母親ビレイやん」
って、ふっと口にした。
健太、顔面クラッシュ。岩より痛かった。
🪢ラストピース
その日、健太は気づいた。
登れてると思ってたのは、支えられてただけ。
誰にも気づかれずに、母のビレイでぬくぬくしてただけ。
それは、コーチのビレイで登っていた俺と同じ。
コーチがルートを選び、コーチがビレイしてくれる。
自分の支点、自分で打つのって、
やったことないから、
めちゃくちゃ怖い。
でも、それが「人生のリードクライミング」ってやつだった。
岩場ではリードできるが、人生は。。。。
🎬エンディング
…まあ、そこから健太がどうなったかは、また別の話。
でも今、健太は母親のごはんを「いただきます」と言うようになり、
人のクライミングにケチをつけるのをやめたらしい。
カムが三つ飛んで俺生きてた、って自慢のネタも返上したらしい。
人生、自覚が大事やね。
さて、どこに一手を出すか――それが、今の課題だ。