ちょっと思いついて、記事にしたくなった。
女性クライマーと男性クライマーの成長の違いについて。
■ 身長と力
当然だが、男性は、女性よりも身長が高く、力がある。 この差は、歴然としている。
私には、身長180cm、筋肉隆々で、メダルをいくつも取っていたような、超逆三角体型の水泳選手だった弟がいた。弟とは2歳しか違わなかったため、お互いにライバル?弟にとっては、年上の兄弟は常に追いかける存在だと思われたが・・・こと体力に関しては、中学で最初から勝負にならなくなった。
同じことが、クライミングに言える。男性と女性のパワーの差は歴然としていて話にならない。
若い男性は、クライミングジムに来た初日から、たぶん、5級くらい楽勝で登れる。リーチと保持力で登ってしまうからだ。
まぁ、まったくムーブがゼロでも、リーチがあり、保持力があれば、登ってしまえるってことである。
逆に言えば、リーチも保持力もなければ、それを補うためのムーブが必要ということだ。
■ ムーブ
ムーブは誰にでも必要だ。だから、ムーブ不要で登れる時代が短いほうが、クライマーとしてはラッキーなのかもしれない。
リーチと保持力がなければ、ムーブを強いられるのは早い。だから、子供は最初からムーブがないと登れないということになり、ムーブの上に、保持力やリーチを積み上げていくから、強くなっていくのだろう。
最初からパワーで解決していると、ムーブの必要性がなかなか発生もせず、必要が分からず、結構長い間、ムーブなしで登れてしまうだろう。それはそれで不幸せなことかもしれないが、力があるのだから、それを使わない手はない、というところだろう。
ということが何に現れるかと言うと、最初から登れるグレードが高い。パワーとリーチがあれば、5.10Aくらいは、ムーブがなくてものぼれるだろうから・・・。
実際、私がみた外国人の、むきむきクライマーたちは、ぜんぶ正対で、それくらいは登っていた。
友人の話によると、かれらにとって、ムーブが必要になるのは、10代の後半に入ってから、なのだそうだ。
しかし、女性の私にとっては、外岩の場合だと、5.8がムーブなしで登れる登攀で、それ以上行くにはムーブが必要だった。
だから、男性クライマーが、何の苦労があるの?と登ってしまうところまで登れるようになるのに、苦節3年だ。
何も知らされず、丸丸三年をトップロープで登っていた女性を知っているが、下地の無い女性には・・・そして、一般的に女性には全般にクライミングの下地があることは稀だと思うが・・・、それくらいの下地作りの期間は必要なのかもしれないと思う。
■ 腕を信用する
私自身、自分が片腕だけでぶら下がれると、自分の腕の力を信用するのに、だいぶかかった。
体は変わる。けれども、体が変わるには、時間がかかる。
今、私の腕は、クライミングを始める前とは、ぜんぜん違う。上腕二頭筋がしっかりしているし、前腕は力強い感じだ。(左腕はまだクライマー化していないので、左腕は強化が必要だな~と思う)
この腕を見るたびに、「やっぱり前の腕ではぶら下がれる気がしないよなー」と思う。
雲梯が得意だった女性もいるだろうから、すべての女性が私のように、ぶら下がる力に自信がないのか?というとそうでもないとは思うけれど、統計によると、女性で、懸垂ができる人は非常に少ないそうだ。
私自身も一回も上がらない。特に腕が伸びきってしまうと、初動が大変すぎて上がらない。腕を曲げた状態で、なら、一回、2回くらいは上がるけれど、とても、男性クライマーのようにキャンパシングで、次々とホールドを掴む、なんてできない。
なので、やっぱり、腕立て伏せや懸垂が得意な女性と言うのは例外で、私のような人が平均像に近いと思う。
となると、いくらクライミングがパワーではなく、ムーブだと言っても、ムーブは2点支持で、一本の腕で体を支えなくてはならないのだから、基本的なパワーがつくまでは、自信がないのが当たり前だと思う。
最初からパワーがあって落ちる気がしない男性とは全く違うのだ。落ちる気がする。それは単純にムーブを身に着ける以前に、パワーがないからで、落ちる気がする、というなら、やはり、落ちるだろう。
だから、女性には特に、無理にリードを薦めてはいけないと思う。
ちゃんと分かっているクライマーならば、万年セカンドで登りたいとは思っていないだろうから。
そもそも、クライマーだったら誰でもリードが楽しいと思うハズだから。
■ 成長のプロセス
というわけで、女性には女性のステップアップがあり、それは、男性のステップアップより、前段階(下積み)が長い。
1) 全般的な体力をつける
2) クライミングに必要な基本的な保持力を付ける
3) ムーブができる (正対と側体)
4) 指力
最初の頃は、ただたくさんクライミングをすればよいというアドバイスを受けたが、それはだいぶ違うと思う。
質の悪い体験をいくら積み重ねても・・・たくさんクライミングすればするだけ、疲れて雑になるようだったら、それはしない方がいいくらいのトレーニングだろうと思う。
私が成長したな~と感じたのは、ジムの、10級や9級が、ムーブ、側体で登れるようになったときだ。
これくらいのグレードだと正対でも登れ、実際初心者はみな正対で登っている。私自身もそうで、それで登って、何が楽しいのだろう?と思っていた。
が、側体で登れば、楽勝で、全然疲れない。そうやって洗練されて、やっとクライミングが楽しいな~と思えるようになった。
それ以前は、ただ疲れるばかりで楽しくはなかったのだった。特にジムでは、山のようにトップアウトする喜びがないのだから、余計だ。
今では、ムーブの成否がクライミングの楽しさの源泉なので、易しい課題でもムーブが楽しいのが楽しい。
そして、ムーブが楽しいと思えるようになったのは、やっぱり基本的な筋力が身についてから。
やっぱりある人が言っていたが、クライミングは、最初から向いた人が楽しいのである。
向いていない人にとっては、楽しくなるまでの、ながーい修業期間がある。長ーい修業期間を終えて、やっと5.9が快適登攀になってきたから、今は楽しい。
・・・が、これも長くは続かない楽しさだろうと言うことは分かる。
クライミングは、落としどころをあらかじめ考えておかないと延々と登れないところを登ることになる。