2016/12/12

日本の特殊性

■ スポーツクライマー宣言?!

最近、理解したことがあります・・・

① 日本の岩場は世界一難しい

これは本当です。なぜなら、日本の岩場は、上手な人に合せてボルトが打ってあります。

5.13が登れる人にとって、5.11は易しいため、「これくらい要らないだろう」と、ボルト間隔が遠い。

5.11登れる人にとって、5.9は楽勝なため、「これくらい要らないだろう」と、ボルト間隔が遠い。

5.9が楽に登れる人にとって、5.7は楽勝なため、「これくらい要らないだろう」と、ボルト間隔が遠い。

つまり、”そのグレードがギリギリの人にとって”は、永遠にボルトが遠い状況が続くわけです。


したがって、私が取った作戦は正解でした。

作戦: 5.9が楽勝になってから、5.7に取り付く
     5.10Aが楽勝になってから、5.8に取り付く
     5.10bが登れるようになってから、5.9に取り付く

    ・・・・延々と続く・・・ 

まだ道半ばですが、日本のフリークライミングとボルト間隔事情は特殊なので、このようなことになっています。

このことはラオスに出かけて、分かりました。適切な感覚で打たれたボルトルートを体験したからです。

適切でないボルト間隔でボルトが打たれているルートで、クライミング力が十分でない場合にリードが怖いのは、当然で、メンタルが弱いわけではないのです。

例えば、十二ヶ岳の岩場のカンテルートは、5.7程度ですが、上部で7mほどもランナウトしています。5.7がギリギリの人・・・多くの山岳会の新人・・・にリードさせられないのは、道理です。一方で大抵の人が、一回で登れてしまうというのも、道理です。

TRでは楽勝で登れるのに、リードは怖いという現象は、危険認知力の結果でさえあるかもしれません。

怖いという感情は、危険を知らせるものなので、きちんと怖さを理解しておかないと、ただの無謀になってしまいます。

②フィロソフィーが成長を阻害している

クライミングを楽しむ、という意味では、いわゆるフィロソフィーが邪魔をしている、という側面があります。

オンサイトの重視は重要ですが・・・時と場合を使い分けなければ、自ら死を招く最悪の事態を招いたり、成長の鈍化を招きます。

こだわりは大事なことですが、何のためにクライミングをしているのか?それは楽しむためであり、怪我をしたり、死んでしまったりしては意味がないことを、改めて再認識しないことには、優先順位の混乱をもたらします。

死んでもよいレジャーなど、レジャーではありません。

登れるルートを登っているだけでは成長はできません。登れないルートに取り組むためには、トップロープはどのようなグレードに取り組むようになっても、必要なものです。

③ガラパゴス化が進んでいるかも?

日本では、スポーツ化つまり、安全性が高まり、大衆化して行っているフリークライミングは、世界と同じ歩調では進化していないようです。

つまり、クライミングの世界においても、他分野の例にもれず、ガラパゴス化が進んでいるかもしれません。

世代交代が遅れていることと、新しいものを嫌う風潮、新しい環境への適応力の不足、というのが原因のようです。

しかし、フィロソフィーも、現実の肉体の衰えには勝てませんので、時間の経過とともに、安全なボルト間隔でのスポーツルートにニーズが高まってきそうです。

④結果としてアルパインクライマーが最強

このように、一般的なクライミングビギナーには厳しい、日本の外岩環境。

結果として、日本では、ある程度上手になってからしか、外岩に行かないという風潮が蔓延していますが、外岩でのボルト間隔の遠さや課題の辛さ(おなじ5.9でも長さがないため、その分難しい・・・を考えると、致し方ありません。

短くても落ちたら危ないからです。いや、短いほうが落ちたら危ない。

厳しい環境を潜り抜けるためか、ランナウトには強くなると思います。というのは、この怖がりの私でさえ、今回ラオスのルートでは、クリップ一個飛ばしてしまったことがあるからです。

日本では、ウエストに来る前に、頭の上でクリップしているような私がですよ?クリップ忘れただけじゃなく、ま、イラナイかな・・・なんて、そのまま行ってしまいそうになったんです(笑)。

しかるに・・・このような厳しい環境で育ったならば、強くなるに決まっています。普通なら、選抜されて、とっくに死んでしまったり、怪我してしまったり、向いていないとあきらめたりする環境です。

残った人たちが、優秀であるのは否めない事実でしょう。事実、私がみたラオスでの外人さんクライマーは、よほどの上手な人を除き、ムーブ知らないのかなぁ~的な、全部正対でパワーで解決って感じの人たちでした。

山岳会だったら、ずっとトップロープしかさせてもらえないかもしれないムーブの稚拙さで、ガンガンリードしていました。

彼らがムーブのニーズに気が付くには、かなりの月日が必要でしょう・・・・フィジカルで解決するのが楽しいしスポーツ的だし・・・

一方、日本では、短くとも落ちれないので、クライミング力のゆとりはシビアです。5.9は、実質ムーブ不要で登れるグレードですが、それでもムーブがあると楽ですし、そのため、ムーブが板につかないと、クライマーとみなされないかも?

というので、日本は強いアルパインクライマーやフリークライマーを育てるのに、最適な環境かもしれません。鍛えたい人向け?

・・・が、趣味でフリーを楽しむ一般クライマーにまで、厳しい環境を押し付ける必要はないわけなので・・・


結論:

・背の低い人は、ちびっこ問題がない課題を登りましょう
・腕力に自信がない人は、前傾壁ではなく、スラブを登りましょう
・指力の自信がない人は、垂壁のカチ課題ではなく、前傾壁を頑張りましょう
・落ちても安全な前傾壁は、意外に怖がりな人向けです
・トラッドも、プロテクションは自前なので、意外に怖がりな人向けです