2015/08/01

セルフビレイ

■セルフビレイ

セルフビレイはメインロープで取るのが基本ですが、やっていると分かりますが、

1)片手ですぐセルフがとれる

2)長さ調節がしやすい

3)使っていないとき、邪魔にならない

のが、ポイントです。

■ セルフビレイは何で取るか?

最近、メトリウスPAS を買いました☆ 

最初にセルフビレイ基礎知識をまとめておきます☆

≪セルフビレイの基本≫

1)何はなくともセルフビレイ
2)セルフビレイはメインロープで取るのが基本
3)支点は2点以上から
4)ダイニーマスリングは、結び目を作ると強度が半分に低下
5)ナイロンスリングは、結び目がショックアブゾーバーになる
6)セルフビレイのスリングは、タイインループにつなぐ


というわけで、私はダイニーマを使わずナイロンスリング+環付ビナに結び目を作って、セルフビレイのスリングにすることにしていました。

■ PAS人気

しかし、業界のスタンダードは今PASなのは知っていました。
カラファテでもPASを薦められ、ただお金がなくて買えなかったのです・・・(^^;)

こちらのブログで、ギリギリボーイズの天野さんもPASを薦めています。

私も買いたいとは思っていましたが、

・今のところ、本チャンルートには行かない(行けない)し、
・マルチピッチは体験的ルートのみ
・フリーでしばらく岩に慣れるべき

ということで、買い物リストの後回しに入っていました。しかし、北岳バットレス四尾根が浮上したので考えを変えました(^^)。

■ 基礎知識 スリングの知識

以下はスリングの取説です。 このブログでも何回も出している画像です。

≪スリングの取説から分かること≫

1)スリングタイオフ 16kN
2)2重にすれば   2×22kN 
3)コブを作ると、  12kN
4)2本を連結すると 10kN  (やってはいけない)

5)ペツルのハンガーボルトに直接タイオフしてはいけない(切れるから)
6)支点間の角度が90度以上になるような角度で使ってはいけない。
7)スリングとロープがこすれるような、ローワーダウンをしてはいけない。カラビナを噛ませること。
8)スリングに落ちてはいけない。

初心者は必ず1回は、セルフビレイのスリングに落ちて、ガツンと行ってしまうようです(^^;) 衝撃荷重をりかいしていないとセルフビレイのスリングに落ちたり、ぬんちゃくセルフに落ちたりしてガツンと痛い思いをします。

■ デイジーチェーン

デイジーチェーンは、少し前によくセルフビレイのスリングとして使われていたようですが、これは本来の用途ではないそうです。

基本的に、アブミの距離の調節用のスリングがデイジーチェーンです。

そして、各ループは2kNしか強度がない、そうです。なので、あまりおススメではありません。

使い方をうっかりすると、セルフが全然とれていない!ということになることがよく本に書かれています。

良い映像を先ほどの天野さんのサイトで発見しましたので、ここでも紹介します。

ああ、怖ろしい・・・ というわけで、デイジーチェーンをセルフビレイのスリングに転用することは、没、決定です。


■ PASの利点

PASの利点をまとめておきます。 こちらに取説が出ています。

1)PASの各ループには18kNの強度がある (強度)

2)どのループからもセルフを取ることができる(長さ調節、冗長性)

3)ラッキング時にはコンパクトにまとめることができる 

≪使い方≫
1)タイインループにPASをつなぐ
2)適切な長さにしたPASを分散加重したマスターポイントにクリップし、残ったループを他のポインにクリップする。
















※しっかりしたラッペルアンカーに限り、直接アンカーにクリップする使い方もできる。

















要するにたくさんのスリングが連結なので、独立分散とおなじですね!

この使い方を見ると、環付ビナは2個使っているようです。 メインロープでのセルフを入れるとセルフビレイ3つ?! 

ビレイ点が同じであれば、保険は増えていないので、2個でいいかもしれません。スイングのセルフビレイは基本的にビナは1個で教わりました。

またこの写真の人は、タイインループではなく、ビレイループにPASをセットしていますが、私は講習会ではタイインループにつけるように習いました。 

名前からしても  タイイン(アンザイレンと同義) ループ
            ビレイ(相手のビレイ用) ループ

という意味ではないかと思われますし、この写真の人は、メトリウスの、各パーツが特別に強化されたハーネスを着用しているようです。

■ PASの欠点

カラビナとの相性が悪い

ということです。 スリングのセルフの時はカラビナは動かないように留めておくのが普通ですが、それができません。なんらかのパーツがいるようになりますが、そうすると、ラッキングの時、コンパクトにまとまるというメリットが少なくなるかもしれません。

■ カラビナはオートロック?

こちらの国際山岳ガイドの方は、セルフビレイのカラビナは、スクリューゲートではなく、オートロックを薦めています。

スクリューゲートを締めるのを忘れなければ、どちらでもよいと思いますが、沢での岩登りでギリギリだったときはスクリューゲートが良かったです。ただ、雪稜ではゲートに雪が入ってつかいにくいとも聞きますので、現場の要求に合わせるのが大事ですね。

岩ではとりあえず足場があるところであればどちらでもよいかも?

セルフビレイはとにかくすぐ取れる、ということが大事だと思います。



 しかし、カラビナとスリングだと 2500円くらいで済みますが、PASとオートロックのビナだと、約8000円。 安全とはお高いものですね。

リードのビレイ

■ リードのビレイ

リードのビレイのアレヤコレヤをまとめました。

 1)正しい位置に立つ
 
 2)制動手は、順手。
 
 3)制動側は確保器より下で握る。(角度に注意!)

最大の関心は、立つ位置 と 繰り出し です。

■ ビレイヤーの立ち位置はどこが良いのか?

1~3本目の中間支点までは、一本目のランニングの真下。コツとして、しゃがんでから立ち上がると、ロープが素早く出せる。

・3本目のクリップ以降は、ゲレンデの場合、クライマーが見える位置に少し離れても良い。フォールすると壁に引き寄せられるので、フォールの可能性に備えて、壁を蹴るという心の用意をしておく。

大前提の基本は、一本目のクリップの真下です。分からなくなったら真下に行こう!

私は先輩が登り詰めて、見えなくなっても真下に立っていたら、「見えるところに少し離れてもいいよ」と言ってもらいました。見えないと、ロープが引かれてから繰り出すことになります。実際の岩場では、こういうことが多いはずですが、ゲレンデでは3本目以降は見えるところでもよい。

■ 座ってビレイ?

座ると、ロープの繰り出しが適切にできなくなるそうです。

ただし、狭いテラスなどでハンギングビレイしている時って、要するに座っていますよね(笑)、セルフビレイに。それはOKです。

■ ロープの繰り出しの仕方

・基本は、たくさん出しすぎず、かといって、クライマーがクイックドローにロープを掛ける動作を邪魔しない長さで。

1つめのヌンチャクから3つ目までは細かく微調整して出し入れする。

・ビレイヤーから出たロープがビレイデバイスより下になってはいけない。

・3本目まではクリップ後の弛みは軽く引き戻す。

・3本目以降は、少し後ろに下がっても良く、弛みも地面につかない程度で良い。
 
手で出すと同時に一歩前進する。

・中間支点より上にクライマーが登り始めたら、ロープを引っ張っていると登れないので、クライミングの邪魔をしないよう、ロープを出す用意をする。

・クリップの時、ロープの長さが足りなくならないように、十分に出してあげる。制動側でない腕の十分引き伸ばす。

・出しすぎはすぐに戻す。(といってもすぐに登りでまただすことになるので、3クリップ目まででよい)

・クリップ時は手繰り墜ちの危険に備える。

■ 手の位置

・手の位置は確保器の制動が効く場所です。


http://www.lostarrow.co.jp/support/pdf/support_0338.pdf


どうして、手の位置が間違っている人が多いのかな?技術書のイラストが分かりにくいのかもしれません。


■ フォールを止めるということについて

基本: ロープは出ている長さの10%くらい伸びる

その伸びでグランドフォールしないか常に考える。

基本: 体を浮かせて止める

飛び上がり&ぶら下がりで止めるくらいでよい。

・ビレイの初心者は短いルートには向かない
・核心部が下部にあるルートにも向かない
・テラス、でっぱったハング、突起物があればグランドと同じとみなす(ぶつかる危険がある)

■ なぜ確保器を使うべきなのか?

理由: 確保に特化して開発された道具だから。

改めて言うまでもないことですが、とりあえず確保器がない確保もあるということを知らない人向けに。

(器具を使わない確保の例: 肩がらみ、腰がらみ、グリップビレイ、エイト環、スタンディングアックスビレイ)

器具を使った確保にエイト環を使用した方法もありますが、エイト環は確保というより、下降用に開発された道具です。(参考:ペツルサイト。http://www.lostarrow.co.jp/support/ti_56.html

確保に使うのは転用です。カラビナもそうです。確保用ではなくて、確保にも使えるという話。

セカンドベストというわけです。なので、もっともよい確保を考えるなら、確保のために開発されている確保器を使うべき。

確保器が使える状況下で、使わないビレイは、あまり根拠がありません。もっともよい確保が確保器によるものだからです。

逆にギアがない状態でも確保ができるという技術は欲しいものなので、カラビナをつかった確保も知っておくべきです。

■ なぜリードのビレイはボディビレイがいいのか?

理由: 衝撃を吸収するため。

 支点ビレイ: ビレイ器をアンカーに接続するビレイ方法。
 ボディビレイ: ビレイ器を身体に接続するビレイ方法。
 ダイナミックビレイ: 制動をダイナミックに(つまり流しながら)行うビレイ
 スタティックビレイ: 制動をスタティックに(流さないで)行うビレイ

私がリードをビレイすると、大抵が浮きますが、これはロープが流れているのと同じですね。ビレイヤーが浮く=ロープが流れる=ダイナミックビレイ状態。

なので、今日通常に行われているリードのビレイは、ボディビレイ&ダイナミックビレイですね。

支点ビレイだと墜落の衝撃が支点に集中します。どうも墜落時の衝撃は衝撃を逃がす、衝撃を分散させるのが大事らしいです。

ビレイヤーが浮く=衝撃を吸収した証。積極的に浮くのがいいのかもしれません。

ちなみにセカンドのビレイは支点ビレイです。でもセカンドなので、アンカーにはそう大きな衝撃はかかりません。

アンカーを大事に使わないと壊れたら? もう即ピンチです! 

確保理論

■ 国立登山研究所の確保理論 テキスト

国立登山研究所が編纂している確保理論のテキストは、非常に優れたテキストですので、これを読むことを強くお勧めします。

国立登山研修所 確保理論テキスト研究会編 確保理論テキスト

"最初に、言っておいてよ、もう!"というような知識が一杯です。

やっぱりクライミングの入門者は一回、確保理論の机上講習をした方が良いと思います。私の意見はクライミングする前に義務付けたらいいくらいだというものです!!!
■ 内容

構成は

 1)ロープの知識
 2)カラビナ
 3)確保理論
 4)セルフビレイ
 5)クライマーのビレイ
 6)アンカー

です。 こんなのすっ飛ばして、クライミングだけしているのが、超アブナイ!ロープワークができない人にクライミングを教えないほうがいいです。

クライミングなんて、本人さえ登る気になれば、ほっておいても上達しますが、ロープワークは
教わらないとできない。良い教本もないです。

ロープの知識やカラビナの知識は、すぐさまロープがどう確保しているのか?の安全知識につながります

■ロープ

UIAAスタンダードフォールテストは、シングルだと80kgを対象にしているが、ダブルだと55kg
対象にしている。 

1)インパクトフォースの小さいロープは、衝撃が小さいという意味です。

 ・墜落者
 ・アンカー
 ・ビレイヤー

への負担を軽減してくれる。 これ、ベテランでも大きいほうが良いと勘違いしている人もいるので要注意。

2)耐墜落回数の多いロープは、耐久性に優れる

3)伸び率が大きすぎないロープは、確実な確保を行いやすい

4)寿命は毎週の使用で1年。月2~3回の使用で3年。

■ カラビナ

1)常にメジャーアクシスで負荷がかかるように注意しながら使うこと

2)ロープワークの関連しないパーソナルな個所には、ツイストロックの環付ビナを使う
  例:ランヤード、 ビレイデバイスとの接続

3)ムンターヒッチやアンカー用にはスクリューロック 

■ 確保理論

 ・グランドフォールさせない

 ・壁やテラスに体が当たらないような配慮をする

 ・衝撃力を十分に考慮した確保で確実にクライマーを止める

1)確保のポイント

 1)クリアランス
 2)衝撃力 落下係数、ダイナミック係数をコントロールし、衝撃力を押さえる (流す、ということ)
 
2)確保でコントロール可能な要素

  〇スタティックビレイ
   ・墜落者の体重  ⇒ 制御不能
   ・ロープ係数   ⇒ 制御不能
   ・落下係数    ⇒ 制御可能 つまり、落下係数が大きくならないように中間支点を取って登る

  〇ダイナミックビレイ
   ・墜落者の体重 ⇒ 制御不能
   ・ロープ係数  ⇒ 制御不能
   ・落下係数  ⇒ 制御可能
   ・ダイナミック係数 ⇒ 制御可能 つまり流すということ。

3)落下の衝撃

 例: 体重60kg 高さ3m 

   自由落下        9kN (ボルダリングなど)
   スタティックビレイ  3.7kN
   ダイナミックビレイ 2.28kN (ロープを50cm流した場合)

4)プーリー効果

最終支点には (墜落の衝撃そのもの) + (衝撃の0.7F倍)の力がかかる。 つまり、1+1.7の力がかかるので、およそ倍の強度が必要になる。

■セルフビレイ

1)メインロープでとる
2)ずっと落下係数ゼロを保つ (ずっとテンションしておく)

■クライマーのビレイ

1)ロープを弛ませない
2)ロープを張りすぎない
3)クライマーはランナウトしたところでは墜落は許されない

4)フォロワーのビレイには3つある
  ・アンカードビレイ  ⇒ 確保器、ムンター
  ・リダイレクトビレイ ⇒ 支点で折り返してビレイ 支点に強度が2倍近く必要
  ・ボディブレイスビレイ ⇒ 肩がらみ、腰がらみ

■ アンカー

1)アンカーをビレイステーションと言う

2)固定分散 ⇒ 強度が低い場合はパワーポイントを固定する

3)支点構築の鉄則

  1)強固であること  

  2)多重性

  3)均等荷重

  4)パワーポイントの固定

強固であること、とは、壊れないこと。支点が壊れず、カラビナが壊れず、スリングが切れず、ロープが切れないこと。

多重性とは、一つが壊れたとしても別のバックアップがあること。支点は必ず2個以上。

均等荷重とは、個々のアンカーに荷重が分散されること。それには角度が重要。60度以内。

パワーポイントの固定とは、固定分散の方法。

ーーーーーーーーーーーー以上ーーーーーーーーーーーーーーー


■ リードのビレイをマスターしましょう!!

先輩に連れて行ってもらうには、リードのビレイをマスターする必要があります。

以前、リードのビレイのコツをまとめたページを作ったので、そちらを参考にしてください。

リードのビレイも出来ないし、セカンドとしてクライミング力もなければ、ガイド登山しかありません(^^;)




3)基本のロープワークを覚える

■結束 (結び目、ノット)

アルパインクライミングで 最低限必要なノットは、次の3つです。

 ・エイトノット
 ・クローブヒッチ (固定、マスト結び)
 ・ムンター     (仮固定、半マスト、イタリアンヒッチ)

ノットは、時代によって呼び方が違い、()の中の呼び方をする人もいます。

■ きれいなノット 

ノットの基本は

 ・弛みや遊びがない
 ・ねじりがない
 ・末端処理

の3つです。ノットは摩擦力で締るものなので、きっちりきれいなノットにします。

■ フリクションノット

フリクションノットは懸垂下降のバックアップとして必ず必要です。

 ・オートブロック
 ・プルージック(ブリッジプルージック)
 ・クレイムハイスト

フリクションノットで大事なことは

 ・メインロープとの径の差が効きを左右する
 ・片方にしか動かないノットと両方動くものがある

を理解していることです。

■その他

タイオフ
ラインドターン
ツーバイト

ラビットノット
オーバーハンドノット

■ 用途

エイトノット → アンザイレン(メインロープと自分をつなぐ)
クローブヒッチ → セルフビレイ、何かと固定したい時、固定分散
ムンターヒッチ → カラビナによるビレイ、カラビナ懸垂、一時的にロープを落としたくない

フリクションノット → 懸垂下降のバックアップ、宙吊り登り返し、プルージック登攀

■ 支点

流動分散

タイオフ

■ 一連の流れ

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まずアンザイレンし (エイトノット)

ビレイし

リードクライマーが中間支点を作りながら登り (場合によってはタイオフ)

終了点に着いたら、セルフビレイを取って、アンカーを作り (クローブヒッチ、ラウンドターンなど、流動分散)

ビレイ解除のコールをし 

ロープアップし

セカンドの確保を作って 

セカンドクライマーは中間支点を回収しながら登り

セカンドもメインロープでセルフビレイを取る (クローブヒッチ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という具合に出てきます。

懸垂下降では

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まずアンザイレンをほどき、

ロープの片方は落とさないため、必ずムンターでどこかに仮固定し   (ムンター)

ロープの両末端を脱落防止し (エイトノット、またはオーバーハンドノット)

ロープを束ね (振り分け)

ロープダウンしたあと

懸垂下降のセットをし (フリクションノット)

懸垂下降して降りる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という流れになります。

DAY 1

■ 初めての人工壁

今日は入会希望者と初めての人工壁。人工壁とはいえ、クライミングが初めての人には、おっかなびっくりの経験だ。

今日の主役は、クライミングシューズもハーネスも買ったばかりのKさん。まったくクライミング歴ナシ。ガイド登山で、ロープを出してもらった経験があるけど、人工壁は全く初めてです。

■ まずはギアの紹介

まずは先輩からクライミングギアの紹介を受けます。

「ヘルメットは人工壁にはいらないね」 「クライミングシューズはルートクライミングほど長く履かないので、きつめのものが登りやすい」

人工壁では、落石はないので、ヘルメットはいらない。それが人工壁と外岩の違い。外岩は落石があるので、ヘルメットが必ず必要になる。

ロープ、カラビナ、スリング、ハーネスの履き方、チョークとチョークバッグ、クライミングシューズ、一通り説明を受けます。

大事なことは、余分なギアを持たないこと。クライミングに集中するためには、腰に不必要なギアをぶら下げて行かないことが大事です。

クイックドローは通称、ぬんちゃく、と呼ばれます。

「クイックドローは色々なタイプがありますね、どれを買ったらいいのかしら・・・」とKさん。

ギアはどれも高額なので、どれを買ったらいいか自分で分かるまで買わないで良い。

■ アルパインとフリー

「あのう・・・ アルパインクライミングとフリークライミングってどう違うんですか?靴は同じでいいですか?」

ごもっともな質問。

フリークライミングは、クライミングシューズのフリクションとチョークだけで岩を攀じる行為。ロープは万が一の落ちた場合の命綱でしかなく、前進用に使わないのがルールだ。

まだアルパインとフリーの差が分かりづらいらしく、遠藤由加さんの本に、Q&Aが掲載されている。端的に言うと
 ・小川山は、フリークライミングを楽しみに行くところ。

 ・三つ峠は、アルパインクライミングの練習場。
 
 ・ゲレンデというのは、ちょっとした岩場でクライミングの練習やロープワークの確認などに地元のクライマーが通うところ。

 ・アルパインクライミングは、山岳地帯(例:穂高など)で行う岩稜や雪稜、ミックスのクライミング

■ 何はなくともセルフビレイ

Kさんは、まだセルフ用のギア(PASなど)を持っていない。

岩場において、セルフビレイは最重の技術だ。

自分と確実なアンカーをランヤードでつなぐことを言う。通常はハーネスに結んだスリングやPASと呼ばれるギアを使う。

現代は小さく収納できるPASが主流になりつつある。

■ ウォーミングアップ

クライミングは、ウォーミングアップから。 壁のトラバース。まずは足は床につけて、腕を伸ばす練習から。トラバース2周。

クライミングでは、腕を伸ばす、という点を気を付ける。引きつけているとすぐ腕がだめになって、登れなくなる。
その後傾斜のある壁の傾斜の殺し方。簡単なボルダリングで、ムーブの練習。体をフリを使って登る練習。これはKさんには、新鮮だったみたいだ。

■ トップロープ

次はさっそくクライミングです。まずは、トップロープです。トップロープは張りやすいようにクライミングウォールの端に、紐が垂らしてあります。

まずはアンザイレンから。エイトノットです。結びは、きれいに、交差しないのが大事。末端処理は結びそのものに近づけて作ります。

次はビレイ器のセットの仕方。クライミングギアの使用法については、取扱説明書をよく見るのが大事です。

 ・ビレイの引き戻しの方法
 ・繰り出しの方法 
 ・制動手を絶対に離してはいけないこと
 ・クライマー側、ビレイヤー側を間違えないように・・・

など初歩的なことです。

ビレイが確実になったところで、クラミング。もっとも易しい5.6の課題です。

その後、ビレイを担当してもらって、私が一本。ビレイグローブは、Kさんは持っていなかったので、貸しました。トップロープのビレイでは、テンションの時、後ろに下がればよいよと、アドバイス。

腕力も回復したところで、次のクライミング。初めてのKさんは、ここまででもう、汗びっしょり。

■ 懸垂下降

次は懸垂下降のセットです。 懸垂下降は敗退の技ですから、非常に重要です。

「懸垂したことはありますか?」

「ガイドさんに降ろしてもらいました」

うーん?それはもしかしたら、懸垂下降ではなくて、ローワーダウンのことかもしれない・・・。

最初は立てる場所で懸垂下降のセットをしてみます。

一番シンプルな下降器だけのセットでしたが、セットはOK。

「下の手を離したら、墜ちてしまいますよね」、

Kさん: 「怖いです~」

ということで、下の手を離したとしても落ちないセットを伝授します。バックアップ付きの懸垂のセットです。

一般的な下降のセットに加え、まずはプルージックコードで、バックアップを付け、そのままだと、バックアップと下降器が干渉するということを実感してもらって、下降器の位置を離す(エクステンションする)ために、スリングをセルフビレイと兼ねてタイインしてもらいました。 

 ・セルフビレイ
 ・下降器のセット
 ・バックアップのセット
 ・エクステンション

一度、私がセットして見せて、デモンストレーション。2mでも確実に体重を預けて、両手離しても、落ちないで、降りれることを確信してもらいました。

 ・ちゃんとメインロープに荷重がきてから、セルフビレイを解除すること

を念のため確認。

再度、自分の道具で、最適なセットを見つけてもらう。 プルージックコードに何を使っているか、ちょうど良いセットを見つけるのに、けっこう試行錯誤が必要だ。プルージックの巻き数なども、試行錯誤で見つけよう。

やっと懸垂下降のセットを確立して、すでに、ここで3時間経過!

■ 初のリードフォロー

ちょっと休憩をはさみ、先輩のリードで、終了点で、ビレイし、Kさんにはセカンドで上がってきてもらう。

まずはセルフビレイを取ってもらう。 基本のコールを教える。

パートナーチェック後・・・
 リードクライマー: 「登ります」
 ビレイヤー: 「どうぞ」
 リードクライマー: 「ビレイ解除」
 ビレイヤー: 「解除しました」
 リードクライマー: 「ビレイしました。登っていいよ」
 セカンドクライマー:「登ります」

大事なことは、ビレイしたかどうか、です。

懸垂支点に通すために、メインロープを外す前に少々怖いというので(まっとうな感覚だ!)もう一つ、ヌンチャクを連結して、セルフビレイを取ってもらう。2点で取れば安心という訳。

その後、懸垂のセット。まず先輩のセットを見てもらい、先に下降・・・。

次は、Kさんの番です。・・・が、ここでトラブルが!やっぱり高さで、頭が真っ白になる!さっき練習した懸垂下降のセットがセットできない!!

でも、良くあることです。こ鵜した状態になりうると分かっているのが大事だと思います。

■ ロープのまとめ方

最後はロープのまとめ方を学んで終わりです。

古いロープを一本差し上げました。練習用のロープがないと結び目やまとめ方は練習できません。


■ 関連資料

『チャレンジ!アルパイン』
『日本100岩場(トポ)』
ペツルのカタログ(クライミングの基礎が絵で描かれている、優れもの)

を渡して終了。こうしたガイドブックは、一般登山者には縁がなく、見慣れないものです。

今日は盛り沢山な一日でしたが、充実感たっぷり。どこまで消化してくれるでしょうか。アップアップになるのは普通のことなので、繰り返し学び、アタフタしなくなるのが大事なことです。



2015/07/31

ロープのまとめ方

■ 振り分け

登山の場合、ロープは振り分けで束ねるのが普通です。

これはあまりにも当然だからか、講習会でもちゃんとは教えてくれません。 

なので、現場で教わっていてもいなくても、自分で人のしぐさを盗み見て、身に着ける必要があるのは同じようです。

■ 振り分けの仕方 

手で振り分ける方法です。懸垂下降などでロープを投げるときは、これが便利です。



■ロープの束ね方 肩で束ねる方法

手でもてないほど、コイルが太くなったり、径が太くてそもそも重い場合は、肩で束ねます。

これも練習して、素早く出来るようになるのが重要です。ロープがあれば、家で練習することができます。

逆にいうと、ロープがないと家で練習することができません。のでロープを買わない人は、万年セカンドを自ら宣言していることになります。



参考:
非常によくまとまっているビデオつきサイト

■ その他

自分が、スポーツクライミング志向なのか、フリークライミング志向なのか、アルパイン志向なのか、まずは分かるくらいになってから、ロープを買いましょう。

■ ロープへ心遣い

昔ながらのスタイルの講習会では、ロープの長さがきちんと揃っていないような、汚い束ね方をすると叱られます。またロープを踏むことを嫌う人は多いです。

これは、細かなことを軽視しないで、細心の注意を払う、ということが、のちのちの岩登りにおいて、命を守る、ということになるからではないか?・・・と思います(^^)。

■ 購入先

クラミングドットコム
カラファテ

今はアマゾンでも売っています。が、商品知識がないと買いづらいと思います。

基本の岩セット

初心者がアルパインクライミングをスタートするにあたって、最低限必要なものは

 ・ロープ
 ・確保器+安全環付カラビナ
 ・ハーネス
 ・ヘルメット
 ・自己確保用のランヤード(PASかスリング) + オートロック(または安全環付)のカラビナ
 ・ビレイグローブ

です。

1)ロープはダブルを買います。フリークライミングで登攀力をあげてから、山岳地帯でのクライミングを行いたい人は、シングルを先に購入します。詳細はこちら

ロープは最初の数か月は何を買って良いのか分からない上、実際の山行は先輩のロープを使うことになりますので、後で購入しても良いですが、古いロープで良いので、誰かからもらうか何かしないと、ロープワークの練習やロープをまとめる練習ができません。

2)確保器は、ATCガイドまたはルベルソ4を買います。ハーネスに接続する用の安全環付カラビナも買います。

3)ハーネスは、厳冬期の手袋をしても着脱できる物を買います。

4)ヘルメット、は山岳用であれば何でも良いです。見えない箇所でも良いので、名前と血液型を書いておきます。

5)自己確保用のランヤードは、PASを購入するか、120cmのスリングに環付ビナを付けて代用とします。デイジーチェーンは間違って解除されてしまうケースがあるため、おススメできません。

6)ビレイグローブは、手のひら部分が皮であればよく、ワークマン等で売られている、数百円の物で良いです。ハーネスにぶら下げやすいよう、細引きを付けておきます。




確保器はセカンドの確保機能付きを

■ビレイデバイス

このような形をしているもの
確保器のことをビレイデバイスと言います。これは、

 ATCガイド
 またはルベルソ4

のどちらをまず購入します。アルパインクライミングでは、リード・フォローで登るためです。

■ ATCガイドは2006年から

ブラックダイヤモンドのATCガイドが発売されたのは、2006年です。

ATCガイドはマルチピッチクライミングで使用するのに、もっともオーソドックスな確保器

です。

結論から言います。確保器は

 ・スポーツクライミング ⇒ バケツ型チューバ―
 ・マルチピッチクライミング ⇒ ATCガイド
 ・アルパインクライミング ⇒ ルベルソ4 (雪稜向けに軽量化。アルパインクライマーの花谷さんはルベルソ派でした)

です。本チャン、マルチピッチクライミングを目指す人は

 ・ATCガイド OR ルベルソ4

を、買いましょう。 マムートからも同等品が出ています。

■ガイドでなくても、ガイドモード必携

基本的に”ガイドモード”とか”セカンドの確保機能”と呼ばれるものが付いているものを買っておかないと、後で買い直しになります。

アルパイン系の人には、チューバ―と言われる、バケツ型のビレイデバイスはダメです。

チューバ―はフリークライミングのショートピッチ用です。

一番無難なのは、発明した、本家本元のブラックダイヤモンド社のATCガイドを買うことです。

■ エイト環は下降器

実は、エイト環も持っています。

エイト環は、ATCガイド以前の確保器の標準、デファクトスタンダードです。

セカンド確保のセット

エイト環とATCガイドを比べます。

≪エイト環≫
・本来の用途は下降器
・ビレイにも使える
・ビレイ時、ロープが双方向に流れる
・制動力は比較的低い
・使用に慣れが必要

≪ATCガイド≫
・用途はビレイ用
・懸垂下降にも使える
・セカンドの場合、手を放しても確保されるので安全性が高い
・制動力は比較的高い
・使用に慣れが必要だが比較的楽

つまり、8環は懸垂下降のために開発された道具、確保器はビレイのために、開発された道具です。

結論を言うと、ATCガイドがあれば、エイト環はだんだん使わなくなります。というのは、確保器でラッペル(懸垂下降)できるので。

リードのビレイで制動手(ブレーキハンド)を離すことができないのは、どちらも同じです。

が、セカンドのビレイでは、ATCガイドの場合は、両手を離したとしても、フォローの墜落を止めることができます。

どちらのデバイスを使ったにしても、荷重がかかった状態で、解除するのは、大変なのは、当然のことで、よく言われるように「解除が難しい」という欠点の指摘は欠点に当たりません。

何しろ、エイトカンやムンターでの確保で荷重がかかったまま失神でもされたら、制動手も離せず片手しか使えません。それなら、せめて両手があくATCガイドのほうがマシです。

エイト環であっても、カラビナでの確保であっても、ボディビレイでも、荷重がかかったら、身動きがとれないのはみんな一緒なので…。

たとえば、セカンドが墜落し、宙吊りになり、自分でマッシャーで登り返せない、となると、リードクライマーが引きあげなくてはならなくなりますが、その際、テンションがかかったロープをどうするか?というと大変難しい技術になってしまいます。

≪セカンドビレイ中のビレイヤーの自己脱出≫

肩がらみ・腰がらみ → どうにもならない。動いたら相手を落としてしまう。相手の墜落で自分も落ちる可能性が強い。
エイト環 → 固定して、徐々に荷重を固定先に移す。
ATCガイド →固定不要。すでに固定されていて、ビレイヤーは自由になっている。

なので、「セカンドの確保に使えるけど、解除が難しいよね」は、ATCガイドを使わない根拠にはならない。

解除は使わない方がベターなので、再度登れるならセカンドが登り始め、テンションを解除した方が良い。 

つまり、すぐ落ちて「引き上げてください」というような性格のセカンドクライマーなら、最初からムンターで確保した方が、セット方法を変えなくて良いので楽です(笑)

セカンドの安全性が最も高いのは、やはりATCガイドです。落ちても固定されるとわかっていると、セカンドの人は心が穏やかでいれます(笑)

自分はパートナーをカラビナで確保できるベテランも、今日クライミングを始めましたという新人にきわどいラインを確保してもらう時は、ATCガイドで確保してもらいたいと思うと思います。

ただし、私はエイトカンも持っています。時々は練習しておくといいです。落としたときの保険になりますし、沢登りではエイト環での確保でなければダメな場合があります。


クライミング用のロープについて

■ロープの種類

スタティック=伸びない=補助ロープ用
ダイナミック=伸びる =クライミング用

スタティックをリードのクライミングに使用してはいけない

■ 使い方の種類

①シングル 
 ・一本で使う
 ・スポーツクライミング
 ・もっとも一般的
 ・径は9.0mm~10.0mm

②ダブル(ハーフ)
 ・二本束ねて使う
 ・支点が分散する。
 ・マルチピッチやアルパインでよく使われる
 ・ロープ操作が煩雑になる
 ・径は8.0~9.0mm 

③ツイン
 ・2本を1本として使う使い方
 ・アイスクライミングで使われる
 ・ダブルより軽量
 ・下降に便利
 ・径は7.4mm ~ 8mm (細い)

■ 用途にあったロープを購入しましょう

人工壁などのスポーツクライミング → シングルロープ 30m
フリークライミング(外岩) → シングルロープ 50m、または60m
アルパインクライミング → ダブル 50mまたは60m

ダブルを購入する場合は、ザイルパートナーと

 色違い
 同じ径
 同じ長さ

になるように購入します。 一般にクライミング用品全般に言えることですが、何を購入すべきか理解できるようになったときが購入しどきです。

アルパインを目指す人は、50mのダブル1本は最低所有しているのが普通です。最近は60mを所有している人も増えてきているそうです。

■性能

・衝撃荷重 : 値が小さいものほど衝撃の吸収力に優れている=よく伸びる →リード向き
・伸び率: トップロープでの使用が多い場合はこの値が低いロープの方が扱いやすい
・外皮の厚さ: 厚いほうが耐久性が高い。通常は40%
・外皮のズレ: ラッペルがある場合はずれがゼロのもの。
・コーティング: 外岩で使用する場合は重要。
・しなやかさ: しなやかなほど操作性が高い。

(『クライミング用具大全』より抜粋要約)

■補助ロープとは?
 
・8㎜以下の細い径のもの。
・リードでは使わなくて、傾斜のないところで万が一に備えて使うもの

■ 新しいロープには新しいビレイデバイスを

新しいロープはより細く高性能=古いビレイデバイスとは合わない

■ 参考

http://column.kojitusanso.jp/ksguide/2010/08/post-20.html
http://www.youtube.com/watch?v=-bTbJczTYSE

■まとめ

アルパインを志す人は、最初にダブルのロープを一本買います。ザイルパートナー同士で一人一本持ち寄って、山行が成立します。