2020/04/06

段級グレードの考察

■ 段級グレード

段級グレードのメモリを見ていると、明らかなことは、

級 vs 段

の、対立構造、だ。

一方、Vグレードには、この対立構造がない。

なにしろ、Vグレードでやっていれば、ただV0からスタートするだけなのだ。

V0、V1、V2、V3、V4、V5‥‥と延々と続く。

1級と初段に境目がない。今世界の最難は、V17で、そこから見れば、V10(3段)であっても、まだヒヨコ。

だから、 有段者という言葉、も生まれないし、有段になることで、ステージが上がった感もない。

つまり、あっち側とこっち側がない。

日本人はあっちとこっちを作りたがる国民性ではないだろうか?

■ スタート位置感の違い

まぁ、段級システムでは、初段からが、外ボルダリングのスタートだということが、この区切りから訴えられている。

そこから、初段、2段、3段…と段をあげていく。日本のトップクライマー小山田さんは、今6段くらいなのだろうか?

私の観察では多くの男性が、2,3段で行き詰まる。たぶんそこら辺からは、肉体改造もしくは、豊富な才能のどちらかがないと先へ行けない。

一方、Vグレード採用なら、V0からだ。比較すると、どうみても、スタート位置は、かなり低い。

つまり、Vグレードのほうが、スタート位置が低いわけで、よりインクルーシブなモノサシと言える。より初級者に優しい。

このスタート位置感は、デシマル変換した場合の5級…5.9が始まる位置と呼応していると感じられる難易度だ。 

段級のスタートは10級からだ!と反論がでそうだが、インドアジムの10級や9級は、とってつけたような、どうでもいいグレードで、黙っていても、誰でも登れる。実質は、インドアでも、あるいはハンデがある人で7級あたりからしかスタートしない。

同じ、よんきゅう、と言う言葉を使うせいで、RCCIIのグレードとの混乱も大きい。山岳部出身者のような、アウトドアからスタートした人たちには、滑らかな滑り出しがしにくく、混乱を招いている。

《参考》
Decimal grade vs RCC grade(Japanese grade)
Ⅵ=11a
Ⅵ-=10d
Ⅴ+=10c
Ⅴ=10b
Ⅴ-=10a
Ⅳ+=5.9
Ⅳ=5.8
Ⅳ-=5.7
Ⅲ+=5.6
Ⅲ=5.5

この上、デシマルは避けて通れないわけで、段級グレードは

 混乱
 階級感

を加えるだけで、あまり、大きなメリットがないように思う、どうだろうか?上手くいかない仕組みなら、返上したらいいのに、と私などは思う。

■ 劣等感を植え付ける仕組み?

日本の段級システムだと、段以前の人は、まだ級の段階だね~みたいな感じに、どうしてもなってしまうし、なにより、グレーディングも、級のグレーディングは、かなりいいかげんなんだそうだ。

つまり、当てにならない。

というわけで、ここでも一般社会と同じことで、より力や知識のある者から、より力や知識のない者に対する搾取が起きている…。

より低グレードの人たちのほうが、正確なグレーディングを必要とするのは当然だ。

しかし、それがおろそかになっている。これは、5級以下の課題は、きちんとしたルートセッターに作らせず、適当にやっています、というジムと同じだ。

強者がより富み、弱者がより弱くなる仕組み…

■ 内弁慶 

より高グレードを登る人たちのほうのグレーディングが正確か?というとそうでもなく、

前の課題より辛かったから

という主観オンリーで、そのグレーディングが、第二登という客観性によってテストされていない。

当然だが、力が落ちていれば、以前、簡単だった課題も難しく感じるもの。人間は年を取るので、50代まで成長し続けるとは言われているが、実際は、20歳以上の人間は、すべて成長期ではなく、老化に向かって流れており、つまり、流れに反して泳ぐ魚のようなものだ。誰かほかの人のチェックがなければ、主観はすぐに間違う。

第2登の価値が、あいまいにされているため、本当に初登グレードがあっているか?

という議論はほとんどされないようだ。

これは、どう表れるか?というと、内弁慶、として現れるようで、Vグレードに直したら、いきなり世界最難とかだ。

そうなると、内輪の人しか見ていないから、みたいな甘々な理由で発表したグレードが、いきなり世界の注目を浴びることになる(笑)。そうなると、実はそれほど難しくはなく、もっと簡単だったりすれば、かなり恥ずかしい事態だろう。

というようなことは、古いロクスノによると、たびたび起きていることのようである。

それもこれも、Vグレードをつけないがため。

段級でのグレードを世界に換算すると、ステップアップの速度が世界と足並みがそろわないらしいのだ。

だから、段級グレードは、世界最高レベルの日本のトップクライマーたちを利しているわけではない。

じゃあ、誰の利益になっているのか? 

うーん。もしかして、俺は有段者だ、と言いたいオジサンたちのささやかなエゴ?

■ 多数の意見を反映するとより正確になっていく系

おそらく、一般的なグレードは、多くの人の平均的な意見を反映すれば、するほど、正確になっていく、という性格のものだ。

グレードなんて、目安なのだから、登った人にアンケートを取り、その平均を当てはめて行けば、自動的に正確になるようなものだ。

だが、なぜかすでにVグレードはあるのに、段級が採用されてしまっている。

というので、その意図は何か?ということになってしまうんだが…。意図はわからないが、結果どうなったか?は分かる。

それがおそらく、日本ガラパゴス化の原因…ということなんだろうなぁと。

■ Vグレードのメリット

Vグレードでやっていれば、ただV0からスタートするだけなのだ。

V1、V2、V3、V4、V5‥‥と延々と続く。1級と初段に境目がない。

だから、有段者という言葉も生まれないし、ステージ上がった感もない。あっちとこっちがない。

あるのは、トップのV17以外は、みんな押しなべて、自分の限界と戦っているんだなぁという、

”やっていることはグレードが違っても同じ”、という連帯感

のほうだ。

トップ以外は、みな結局のところ同じでないかという連帯のほうが強く出る。

私としては、こっちのほうがうんといい世界観のように思う。

この動画は、V17と検索した時に表示される現在のトップクライム。