すっぽ抜け事故の報告があります。
こうした事故報告は、自分に引きつけて考えておくことが大事です。
こちらのリンクは、森田勝さん『狼は帰らず』も所属した、社会人山岳会の老舗中の老舗、緑山岳会の報告です。
http://www.tokyomidori-ac.org/?p=6321
ロープの長さは足りている、と思っていたが、実際は足りず、すっぽ抜けが起ったようです。
ロープ長は、(登る課題の長さの2倍の長さ) + (ゆとり) が必要です。
ショートだと、アンザイレンをするときにビレイヤーが自分に結ぶわけではないので、末端は、ロープバッグに結ばれているか、もしくは末端処理しないといけません。
■ 末端処理しない習慣がどう出来上がるか?の考察
基本手順である、末端処理をしない習慣がどのように形成されるか?を考えると、人工壁が浮かびます。人工壁に慣れていると、末端処理をしない癖がつくような気がします。
一般的なロープ長50m、もしくは60mに対し、人工壁での課題は、10~15m程度と長くないので、大抵は大幅に余るからです。
この状況下で、末端処理をイチイチ言うなど、ありえません。変な人になってしまいます。
しかし、外の課題では、長い課題はカンタンにロープの長さが足りなくなってしまいます。
昨今は人工壁から外岩に入る人が多く、末端処理について教わっていない人が多数いる可能性もあります。こうした人はクライミング自体は非常にうまいので、それを見て、安全についての知識も伴っていると周囲の人が誤解してしまうリスクもあります。
まとめ: 人工壁慣れしている人と登るときは、末端処理についてはよく気を配ってやる必要がある
■ ヘルメット
一般に、外岩でもフリークライミングでは、被らないことが多いです。
・自然落石
・自分が落ちたとき、さかさまになる
がヘルメット着用の2大理由です。 ヘルメットをかぶらないベテランは多数です。理由は、
・自然落石 → 上部に落石可能性があるかないかを確認してから登攀すれば問題なし
・落ちたときさかさま → これはロープをまたいで落ちるという、かなり初歩的なミスで、きちんとしたビレイヤーであれば、下から何か言うハズです
これらの根拠になっている条件はなんでしょうか?
基本的にビレイヤーもクライマーも危険予知がきちんとしている、という前提
です。これらの前提があるため、フリーではヘルメットを付けない経験者が多いです。特に開拓などではない、著名な岩場は落石が起らないので、クライミングはヘルメット無しが多いです。
私はロープをクライマーがまたいだら、その都度、声をかけます。
まとめ: 前提になっていることが出来ているか?
■ 記憶違いについて考察
記憶を当てにしてしまったことがミスの原因と究明されています。が、
経験とはなんでしょうか?
経験とは、まさに記憶を根拠に物事を判断すること
ではないでしょうか?! 記憶を当てにしないというのは、現実にはありえないものでは?!
記憶していることを当てにしない、という態度を撮った場合、その態度を取られた人は、おそらく気分を害すことでしょう。
つまり、経験を軽視された、と受け取ることでしょう。
まとめ: 経験を水戸黄門の印籠にしてしまわない
■ ベテラン度
さて、まとめますと、
・ヘルメットをかぶっていなかった=ビレイヤーもクライマーも危険予知できているという前提
・記憶違い=経験がある
ということで、こちらのパーティは、そこらの初心者グループ、ではないことが自明でしょう。緑山岳会がガチで老舗であることはそのことを後押しする事実でしょう。
ということは、得られる教訓はなんでしょうか? やはり、経験は山の世界では、過大評価のきらいがあるかもしれません。
■ まとめ
1)ロープ長の確認をしよう
2)末端処理の確認をしよう
3)それができていないかもしれないという前提で、ヘルメット(最後の砦)