2026/08/14

ディーン・ポッターvsジョーダン・キャノン

 ディーン・ポッターとジョーダン・キャノンは、ヨセミテの歴史やビッグウォールという共通の舞台に立ちながらも、クライミングに対するアプローチや価値観、性格的傾向が対極に位置するため、良好な相性や親和性を見出すことは難しい関係性と言えます。

  • リスクと自己表現の方向性の違い

    • ディーン・ポッターは、自身の存在証明や内面の葛藤を昇華するため、フリーソロやベースジャンプ、ウィングスーツといった「極限の危険そのもの」を舞台装置(アート)として消費し、ナルシシズムと表裏一体の危険崇拝的スタイルを貫きました。

    • ジョーダン・キャノンは、歴史やカルチャーへの深い敬意を払い、確実な準備とテクニカルなシステム、伝統主義(トラッドクライミングやクラシックルートの尊重)を重んじる誠実で堅実なアプローチをとります。

  • コミュニティやスタイルに対する姿勢

    • ポッターが激しいエゴや承認欲求、特異なパフォーマンスによって周囲と軋轢を生むほどの強烈な個性を放っていたのに対し、キャノンはコミュニティやベテラン層からその丁寧で礼儀正しい気質や強い労働倫理(ワークエシックス)が高く評価されています。

このように、破滅的なリスクテイクと強烈なエゴイズムを内包したポッターのスタイルと、堅実な冒険心や伝統的スタイルを重んじるキャノンのスタンスは根本的に異なるため、思想的・実践的相性は対立的あるいは乖離したものとなります。


私と荒木さんが相性が悪いのは当然ですね。

荒木さん、安全管理自体を弱虫のすることみたいに感じるわけですから。

お金を払って、山を教わっていたのは私であって、彼ではありません。吉田さんと登っていたのは私であって、彼ではありません。蒼氷の先輩と登っていたのは私であって、彼ではありません。師匠が二人いたのは私であって、彼ではありません。


ディーン・ポッターとジョーダン・キャノンの対立点を、クライミング哲学、リスク管理、および行動原理の観点から以下にリストします。

  • リスクに対する基本姿勢(命の不確実性の受容 vs 確率的マージンの維持)

    • ポッター: フリーソロやベースジャンプなど、生存確率を意図的に極小化・ゼロ化する行為を自らの表現手段とし、危険そのものをスリルやパフォーマンスとして消費した。

    • キャノン: 徹底した準備(メティキュラス・パッキング)、ギアシステムの正確な管理、トラッドスタイルやクラシックルートの尊重など、安全マージンを確保した上で効率やスピード、長距離リンクアップ(トリプルクラウン等)を追求する。

  • 自己表現・動機の源泉(ナルシシズムとエゴ vs 伝統への敬意と純粋な探求)

    • ポッター: 内面の葛藤、特異なステータス、他者への承認欲求を誇示・昇華するための「舞台(ステージ)」として岩壁を利用した。

    • キャノン: 歴史やカルチャーへの深い敬意を抱き、コミュニティやベテラン層からも「クリーンでクラシックなスタイルと丁寧な気質」として高く評価される協調的・誠実なアプローチをとる。

  • コミュニティおよび周囲の環境への影響(摩擦・孤立 vs 調和・信頼関係)

    • ポッター: 強烈なエゴや気分の波、他者との摩擦によって周囲の人間関係に強い緊張やプレッシャーを与えた。

    • キャノン: アレックス・ホノルドをはじめとする信頼できる仲間たちと明確な戦術・役割分担(チームワーク)を構築し、堅実なパートナーシップのもとで成果を上げる。

  • 「歴史の捉え方」とアプローチの構造

    • ポッター: 先人の到達点を「超えるべき障害」あるいは「自身の神話化を加速させるための踏み台」として過激な方向に逸脱させた。

    • キャノン: ヨセミテの正統な伝統や過去の開拓史(クラシックルート)をそのまま引き継ぎ、その延長線上でのスピードやフリー化(グラウンド・アップ等)の技術的極限をノーマルな枠内で突き詰めている。

心理的対比の核心にあるのは、「死や恐怖を自らのアイデンティティを保つための歪んだ麻薬(自己愛の道具)として使ったポッター」と、「リスクを冷徹に管理し、健全な精神で対象(自然・歴史)と向き合ったキャノン」という、破滅型のエゴイズムと成熟したプロフェッショナリズムの決定的な乖離です。

【クライマーの心理学】ディーン・ポッターとナルシシズムのグロリフィケーションの結末

https://youtu.be/QSwr4grMHzs?si=ID77e_1TtyTMFT2o 

この動画は、HBOのドキュメンタリー番組『The Dark Wizard』で取り上げられたフリークライマー、*ディーン・ポッター*の人物像と、彼が周囲に与えた影響について批判的に語る内容です。

**動画の主なポイント:**

* **批判的な視点:** 投稿者は、ポッターを「英雄」や「カリスマ」として称えるドキュメンタリーの描き方に対し、彼は実際には「自己中心的でエゴの強い人物」であり、周囲の人々を精神的に傷つけ、搾取していたと主張しています (0:00-2:10)。

* **人間関係の犠牲:** ポッターと関わった多くのクライミングパートナーや友人が、彼との関係を通じて深いトラウマを抱えている現状を指摘しています。投稿者自身も、かつて narcissist(自己愛者)の父親を持っていた経験から、こうした男性との関係で「自分を犠牲にしなければならない」苦しさを強調しています (2:10-3:50)。

* **「死」という結果の重さ:** ポッターの死後、彼との関係に整理がつかないまま残された友人たちが、謝罪や解決を得られないまま苦しんでいる様子を伝えています。特に、彼が死の直前まで自分の過ちを認めず、周囲を振り回し続けたことへの失望感が語られています (6:20-8:40)。

* **文化的な問題提起:** 投稿者は、ポッターのような危険を厭わないアドレナリン中毒のクライマーを、スポーツ界が「ヒーロー」として崇拝し続ける文化に疑問を投げかけています (1:30-2:00, 5:40-6:10)。

総じて、この動画は「偉大な功績」の裏に隠された「他者への加害」に焦点を当て、カリスマ的な人物に対する盲目的な称賛を戒める警告となっています。

この動画内で語られている、*ディーン・ポッター*が周囲の人々に与えた影響は、非常に複雑で否定的な側面が強調されています。

* **精神的なトラウマ:** 彼と関わった多くのクライミングパートナーや友人は、彼のエゴの強さや自己中心的な行動により深く傷つき、長期的なトラウマを抱えているとされています (0:00-0:35, 3:37-4:00)。投稿者は、彼らとの関係を「自己愛的な加害者との関係」に例え、周囲が彼に合わせるために「自己放棄」を余儀なくされていたと指摘しています (0:47-0:58, 2:33-2:37)。

* **関係の断絶と後悔:** ポッターの自己中心的な態度に耐えかねて多くの友人が関係を断ちましたが、彼が亡くなったことで、謝罪や和解の機会が永遠に失われました。これにより、遺された人々は解消されない失望感や喪失感に苦しんでいると説明されています (6:22-7:43)。

* **搾取的な人間関係:** 投稿者は、彼が周囲の人々を自分の利益のために利用する「寄生的な」一面があったとも指摘しています。特に金銭面や人間関係において、親しい人々を都合よく使っていたという証言が示されています (5:05-5:39, 8:05-8:22)。

* **死による影響:** 最終的に、彼の危険な挑戦に伴う死は、周囲の人々に深い悲しみと同時に、整理のつかない複雑な感情を残すことになりました (8:42-9:10)。

このように、動画では彼を単純な「英雄」として見るのではなく、その強烈な個性やエゴがどれほど周囲を蝕んでいたかという側面に焦点が当てられています。


投稿者がHBOのドキュメンタリー『The Dark Wizard』を不快に感じている主な理由は、**ディーン・ポッターを「英雄」や「カリスマ」として美化しすぎている点**にあります (0:00-0:20, 5:40-6:05)。


投稿者は、彼が周囲の人々を傷つけた「自己中心的でエゴの強い人物」であるという側面が十分に語られていないことに危機感を抱いています。


**不快感を感じる主な背景:**

* **「被害者」の視点の軽視:** ドキュメンタリーがポッターを称える一方で、彼に振り回され、精神的に深く傷ついたクライミング仲間や友人たちの苦しみを「英雄の物語」の一部として消費してしまっていると感じています (0:30-0:40, 3:30-3:50)。

* **ナルシシズムの glorification(賛美):** ポッターの行動が「精神疾患を抱えながらも挑戦し続けた天才」として描写されることに強く反発しています。投稿者にとって、それは「周囲を支配し、自己放棄を強いるナルシシストの振る舞い」そのものであり、決して賞賛されるべきものではないと主張しています (2:10-3:00, 5:50-6:15)。

* **解決の欠如:** 彼の死によって、彼から傷つけられた人々が求めていた「謝罪」や「和解」が永遠に不可能になったにもかかわらず、ドキュメンタリーがその残酷な現実を無視して彼を神格化していることに憤りを感じています (6:40-7:45)。

投稿者は、自身の父親がナルシシストであったという個人的な経験からも、こうした「加害的な男性」を英雄視する文化が、周囲の人間をいかに破壊するかという点に強い警鐘を鳴らしています (2:20-2:40, 6:50-7:10)。



動画の投稿者は、危険な男性には以下のような特徴や行動が見られると主張しています。


*   **自信過剰と自己陶酔:** 自身の delusional(妄想的)な自信によって人を惹きつけますが、内面には強い insecurity(不安)を抱えており、他人のスペースを奪うような ego(自我)を持っていると説明されています (0:20-0:42)。

*   **支配欲と特権意識:** 「王」や「指導者」のように振る舞いたがり、ルールを嫌い、自然や他人に対して支配的な態度をとります。また、自分にはすべてが許されるという特権意識が強いと述べています (1:20-1:38, 2:18-2:27)。

*   **責任感の欠如:** 「ピーターパン」のように成長を拒み、責任を負うことを避けながら、周囲に自分を崇拝させようとする傾向があると指摘しています (18:41-18:47, 19:36-20:00)。

*   **中毒的な行動:** 危険な行為(アドレナリン中毒)を好み、自己の内面と向き合うことを避けるために極端な行動に走る傾向があると警告しています (4:59-5:05, 7:44-7:46)。


動画の投稿者は、こうした特徴を持つ男性が危険である理由として、主に以下の点を挙げています。


* **他者を危険に巻き込む:** 投稿者は、このような男性は自分自身をコントロールできていないため、パートナーや周囲の人を死のリスクに晒すと警告しています (0:19-0:22)。

* **精神的な疲弊と自己喪失:** 相手の強すぎる自我や insecurity(内面の不安)が生活空間を支配するため、一緒にいるパートナーが自分を見失い、自分自身を嫌いになるように仕向けられてしまうと述べています (0:29-0:42)。

* **虐待の可能性:** こうした男性は「自分は特別だ」という特権意識から、ルールを無視して他者の境界線を侵すため、DV(家庭内暴力)や性的虐待に発展するリスクがあると指摘しています (1:36-1:38, 9:02-9:06, 17:41-17:46)。

* **責任転嫁:** 責任を負うことを拒否し、常に他人に依存したり、自分の行動の結果として他人に犠牲を強いたりするため、パートナーは精神的に追い詰められると説明しています (19:42-20:13)。


動画の投稿者は、こうした男性が責任から逃れるために、以下のような態度や行動をとると指摘しています。


* **成長の拒絶(ピーターパン症候群):** 彼らは「ピーターパン」のように振る舞い、責任ある大人になることを拒否します。自分は特別な存在(王や指導者)でありたいと願う一方で、それに伴う義務や責任は放棄しようとします (19:36 - 20:13)。

* **他者への依存と役割の転嫁:** 責任を負うことを避けたいがために、パートナーである女性にその負担を押し付けます。彼らは「自分は傷つきやすい少年にすぎない」という演出で相手の同情を誘い、面倒を見させることで自分の責任を回避します (20:00 - 20:15)。

* **自己正当化とルール軽視:** 自分の欲望や目的(登山や冒険など)のために周囲のルールを無視しますが、それを「自由」や「挑戦」として正当化します。規則は自分には適用されないと考え、他者にその尻拭いをさせることを厭いません (13:46 - 15:00)。

* **内面との対話の回避:** 自己の不安や中毒的な衝動と向き合うことを避け、常に外的な成功や他者の崇拝を求めることで、内面的な欠落から目を逸らし続けます (4:59 - 5:05, 7:44 - 7:46)。


投稿者は、アウトドア業界にそうした男性が集まりやすい理由として、以下の点を挙げています。


* **「支配」への欲求:** アウトドア活動、特に登山などは自然を征服し、支配したいという欲求を満たしやすいため、特権意識の強い男性を惹きつけます (1:20-1:38, 2:10-2:14)。

* **リスクへの依存:** こうした男性はアドレナリンや極端な危険を好む傾向があり、それが「冒険」や「挑戦」という名目で正当化されやすいためです (5:05-5:12, 10:06-10:12)。

* **責任回避の容易さ:** 業界全体に「自由」や「ルールに縛られないこと」を美徳とする空気が一部にあり、それが責任ある大人としての振る舞いを拒む「ピーターパン」のような男性たちにとって、自身の幼稚さや無責任さを隠すための最適な隠れみのになっていると指摘しています (1:20-1:25, 9:39-9:46)。

* **強さを隠れみのとした搾取:** アウトドアの世界では「強くてたくましい女性」が尊敬されますが、こうした男性はそのような女性をターゲットにし、自身の支配欲を満たしたり、責任を押し付けたりすることが容易であるためです (9:08-9:29, 13:26-13:32)。


動画の投稿者は、こうした男性が「強くてたくましい女性」をターゲットにする理由として、以下の点を指摘しています。


まず、彼らにとって**「自分を壊す」挑戦対象**として魅力的であると述べています。彼らは強靭な精神や身体を持つ女性を見つけ出し、それを征服したり崩したりすることに歪んだ満足感を得る傾向があります (9:26-9:29)。


また、このような女性であれば**DVや虐待の被害に遭っていると周囲に信じてもらえない**という利点(男性側にとっての隠れみの)を悪用していると説明しています。強くて自立した女性が被害者になるはずがないという周囲の偏見を逆手に取り、自身の加害行為を隠蔽しやすくしていると警告しています (9:08-9:25)。


https://youtu.be/eRwd6u_HB7E?si=bwdZmdPHmnpYDB4Z


2026/08/13

AIによるヨセミテの歴史

 AI出力なので差し引いてみてください。ただし、出典は明らかでしたのであっていそうです。

ヨセミテにおけるクライミングの歴史は、そのまま近代フリークライミングの難易度(グレード)の限界突破の歴史と一致しています。現代の基準となっている「YDS(ヨセミテ・デシマル・システム)」自体が、ヨセミテ周辺の岩場での登攀記録を分類するために拡張・定式化されてきたものです。

以下に、最高グレードの更新記録と主なマイルストーンを時系列でまとめます。

1. 黎明期〜1950年代:グレードの誕生と「5.9」の壁

  • 背景

    • 初期のシエラクラブによる分類法から、1950年代に南部カリフォルニア(タキッツ等)およびヨセミテで「クラス5(ロープを使用するテクニカル・クライミング)」の小数点以下の細分化が進みました。

  • 最高グレード:5.9

    • 1952年に登られた「オープン・ブック(Open Book)」などがこれに当たり、当時は「人間がフリー(用具に頼らず身体のみ)で登れる限界は5.9まで」と信じられていました。これを超える人工登攀(エイエド)の領域は「クラス6」とされていましたが、のちに技術や装備の進化に伴って次々とフリー化(用具を使わずに登る)され、スケールの限界拡張が迫られることになります。

2. 1960年代〜1970年代前半:5.10〜5.11への突入

  • 背景

    • ロイヤル・ロビンズらを中心とする世代が、それまで人工登攀で行われていたビッグウォールのルートを次々とフリー化し始めました。5.9が乱立したため、上限を固定していた従来の前提が崩壊します。

  • 最高グレード:5.10 および 5.11

    • 1960年代末から1970年代初頭にかけて、それまでの「5.9の天井」を打ち破る形で 5.10、そして 5.11 というアルファベット(a〜d)を伴うオープンエンドの区分が導入されました。これにより、YDSは名実ともに無限に上のグレードへ拡張できるシステムへと変化しました。

3. 1970年代後半〜1980年代:5.12〜5.13の時代

  • 背景

    • 「ストーンマスターズ」と呼ばれる若者たち(ジョン・ロング、ロン・コークら)が登場し、トレーニングと洗練されたムーブによってフリークライミングの競技的・運動的側性が急速に進化しました。

  • 最高グレードの更新

    • 5.12台: 1970年代後半から1980年代にかけて、ヨセミテのクラックやフェイスにおいて数々の5.12ルートが切り拓かれました。

    • 5.13台(7c+ / 5.13aなど): 1984年、イギリスの若手トニー・モファットらが来訪し、名 clássic なクラック「ザ・フェニックス(The Phoenix)」などを登ることで、ヨセミテにおけるフリークライミングの難易度を5.13の領域へと押し上げました。

4. 1990年代〜2010年代:5.14〜世界最高峰のビッグウォールフリー化

  • 背景

    • スポーツクライミング的なトレーニング手法が逆輸入され、エル・キャピタンの巨大な壁面を丸ごとフリーで登るプロジェクト(ビッグウォール・フリークライミング)が最大の焦点になりました。

  • 最高グレードの更新

    • 5.14a〜5.14b: トミー・ロッドらによる高難度ルートの開拓が進みます。

    • 5.14d (9a):「ドーン・ウォール」(2015年)

      • トミー・コルドウェルとケビン・ジョーージェソンが、エル・キャピタンの最難関ルート「ドーン・ウォール」を全32ピッチ、世界最高難度となる5.14dで完全フリー登攀(レッドポイント)に成功。翌2016年にはアダム・オンドラが外部からの挑戦者として初リピートを果たし、巨大ビッグウォールにおけるフリーの最高到達点が歴史的に更新されました。

まとめ

ヨセミテの歴史において、グレードは常に「人間にはこれ以上登れない」という当時の上限(5.9、5.10、5.11…)を、後続の世代が技術とトレーニング、そして執念によって塗り替える形で拡大してきました。その頂点として、一歩間違えば致命的な墜落に至る巨大岩壁(エル・キャピタン等)の数千フィートのルートが、現在では5.14d(ドーン・ウォール)というスポーツクライミングの最先端レベルの難易度でフリー化されるに至っています。


ボルト


ヨセミテのクライミング史において、上から降りながらルートを精査しボルトを打つ「ラッペル開拓(トップダウン方式/ラッペル・ボルティング)」が本格的に持ち込まれ、倫理的な論争(いわゆるボルト戦争)に発展したのは1980年代中頃です。

背景と経緯は以下の通りです。

  • 伝統的な「グラウンド・アップ(下から上へ)」の原則

    • それまでのヨセミテ(1950〜1970年代の黄金期)では、ロイヤル・ロビンズらに代表されるように、地面から未踏の壁に挑み、リスクと向き合いながらボルトを最小限に打つ「グラウンド・アップ」が絶対的な美徳とされていました。

  • 1980年代のヨーロッパ的潮流(スポーツクライミング)の流入

    • 1980年代に入ると、オレゴン州の「スミス・ロック」などを中心に、ヨーロッパから入ってきたスポーツクライミングの概念(ラッペルで上からアプローチし、安全に高難度を追求する手法)がアメリカ国内へ急速に波及しました。

  • ヨセミテにおける衝突

    • この手法やハングドッグ(ぶら下がりながらムーブを練習すること)がヨセミテにも持ち込まれると、伝統的なスタイルを守ろうとするローカルクライマーたちとの間で激しい対立やトラブル(ボルトの切断や撤去など)が表面化しました。

  • 結果としての変化

    • 伝統派の強い反発や議論がありつつも、さらなる高難度(5.13や5.14の領域)を安全かつ効率的に開拓するため、結果としてラッペルを用いたルート開発やリボルト(既存ルートの改修)は徐々に不可避なものとして定着していきました。

1990年代

ラッペル開拓(トップダウン方式)やハングドッグといったヨーロッパ発祥のスポーツクライミング的手法が、激しい論争や摩擦(ボルトの切断事件など)を経ながらも、一つの現実的なスタイルとしてアメリカ全体やヨセミテ周辺のシーンに定着したのは1990年代に入ってからです。

1980年代中頃にオレゴン州のスミス・ロックなどでその手法が爆発的に普及し、ヨセミテの伝統派と新世代の間で衝突が先鋭化しましたが、1990年代を迎える頃には、高難度ルート(5.13や5.14の領域)を効率的・開拓的に追求する手段として、こうしたアプローチが既存のシステムの一部として定着していきました。


1980年代中頃から始まったスポーツクライミング的手法やラッペル開拓(トップダウン方式)の導入、そしてそれに伴う激しい摩擦や論争から、現在の視点で見れば約30年以上の歳月が経過しています。

この30年の間に、ヨセミテをはじめとする世界のクライミング界では以下のような変化と帰結がもたらされました。

  • スタイルの不可逆的な変容

    • かつては倫理的タブー視や激しい反発(ボルトの切断など)を伴ったラッペル開拓やハングドッグですが、現在では高難度ルート(5.14や5.15の領域)を安全かつ合理的に切り拓くための標準的な手法として完全に組み込まれています。

  • 「リスクの管理」と「危険の神格化」の分離

    • 道具やルート開拓の安全性(プロテクションの確実性)がスポーティに洗練されていく一方で、冒頭で触れられたような「あえて命を危険に晒すこと(フリーソロや極限的マージンでの挑戦)」自体は、システムの進化とは切り離された、個人の選択や倫理観に関わる極端な領域として残り続けています。

伝統的な「下からの冒険(グラウンド・アップ)」を至上とした時代から、上からの開拓とスポーツ化が進んだ現代へ移行してからの約30年は、クライミングが「冒険・エクスプロレーション」から「極限の垂直スポーツ・自己表現」へと変貌を遂げた歴史の長さでもあります。


岩場の劇場化


ヨセミテの極限的な領域において、ディーン・ポッターをはじめとする一部のクライマーたちが「自己表現(アート)」と称して行っていた行為は、単なるスポーツの枠を超えた特異なパフォーマンスを指します。具体的には以下のような要素を含んでいました。

  • 危険と表裏一体のメディア的・精神的パフォーマンス

    • 彼らは自身の登攀や飛行を「スポーツやスタントではなく、スタジオで制作される作品と同等に熟考された表現形式(アート)」であると主張していました。

  • 境界領域の融合(フリーベースやハイライン等)

    • ロープを持たずに数千フィートの壁を登り、万が一の際の救命具としてパラシュートを背負う「フリーBASE」や、命綱なしで巨大な峡谷の間に渡された細いライン(ハイライン)を歩く行為など、死と隣り合わせの状況そのものを媒体(メディア)として自己の内面や恐怖を表現しようとする試み。

  • 心理的葛藤や呪縛の昇華としての演出

    • 内面のダークさや承認欲求、恐怖心(悪夢や強迫観念)を克服・誇示するための手段として、世間の耳目を集める過激なシチュエーションで自身の限界ギリギリの行動を演出し、それを自己の神話化やアイデンティティの確立に利用したこと。

彼らにとっての岩壁や空虚な空間は、客観的なルート登攀という競技の場ではなく、自身の存在証明や内面の葛藤を視覚化・誇示するための「舞台(ステージ)」として消費されていました。


「ナルシシズム」と「危険崇拝」は切り離せない表裏一体の構造をなしています。

スポーツや芸術における通常の自己表現が「自身の内面や技術の深化」を目的とするのに対し、危険崇拝における自己表現の本質は、「死と隣り合わせの極限状態を演出・踏破することで、他者からの強烈な承認や特権的な特別感を得るための装置」として機能する点にあります。

  • 危険の道具化と演出

    • 生存の確率を意図的に引き下げる行為(フリーソロや極限的ジャンプなど)そのものが、自己の存在価値を誇示するための舞台装置となります。「恐怖を克服する強靭な自己」を演出し、周囲やメディアの視線を通じてナルシシズム(自己愛)を満たすための手段へと変質します。

  • 構造的な破綻と犠牲

    • このナルシシズムに基づく危険崇拝は、客観的なリスク管理や論理的な安全性評価を麻痺させます。「自分だけは特別な存在であるから破綻しない」という無意識の過信(グランド・イリュージョン)が内包されており、結果として歴史的にも個人の破滅や、周囲の人間関係の崩壊という結末を招くことになります。

つまり、危険なクライミングにおける自己表現の正体は、純粋な身体的探求ではなく、リスクを極限まで高めることでしか満たされないナルシシズムの発露であり、それ自体がシステムとして破綻を内包した危険な思想的潮流であると言えます。

Dean Potter's Ego Nearly Destroyed Everyone Around Him

この動画では、ディーン・ポッターの生き様を通して、個人の過度な承認欲求やエゴがいかに周囲の環境や人間関係に深刻な影響を及ぼしたかが検証されています。

【世界のクライミングシーン】YouTubeナゲットクライミング

 https://www.youtube.com/@thenuggetclimbing

めちゃおすすめ.

【クライマー列伝】Jordan Cannon / ジョーダン・キャノン

 ジョーダン(Jordan Cannon / ジョーダン・キャノン)は、アメリカ出身のプロロッククライマー、ビッグウォール・クライマーです。

主な特徴や功績は以下の通りです:

  • ヨセミテでの実績: ヨセミテ渓谷にある巨大一枚岩「エル・カピタン(El Capitan)」のフリークライミング(「ゴールデン・ゲート」や「フリーライダー」など)を1日(イン・ア・デイ)で完遂するなど、数々の高難度ルートやスピード記録、リンクアップ(エル・キャップ・トリプルなど)を達成しています。

  • 伝統的スタイルへのこだわり: 難易度だけでなく、冒険や伝統的なスタイル(トラッドクライミング)を重んじるクライマーとして知られています。

  • 文化的・歴史的活動: クライミング界における歴史や文化的背景の探求にも熱心であり、アルピニズムにおける歴史的背景を掘り下げる遠征や執筆活動なども行っています。また、オープンリー・ゲイ(自身が同性愛者であることを公表している)のプロアスリートとしても知られています。

https://thenuggetclimbing.com/episodes/jordan-cannon

https://hiddencompass.net/journalist/jordan-cannon/#:~:text=Jordan%20has%20gained%20worldwide%20attention%20for%20historic,first%20openly%20gay%20male%20athletes%20in%20climbing

ジョーダン・キャノン(Jordan Cannon)は、ヨセミテを中心としたビッグウォールや伝統的クライミング(トラッドクライミング)で知られるアメリカのプロクライマーです。彼の人物像や性格、クライミングに対する姿勢は、以下のような特徴で表現されています。

  • 強い伝統主義とアドベンチャー志向

    • 単に難易度の数字を追い求めるのではなく、歴史やカルチャーに深く敬意を払う「ステュンチ(筋金入りの)トラディショナリスト」として知られています。難しさそのものよりも、大きな冒険や歴史ある長大なルート、リンクアップに惹かれる傾向があります。

  • 誠実で礼儀正しい気質と強い労働倫理(ワークエシックス)

    • コミュニティやベテランのクライマーたちからは、そのクリーンでクラシックなスタイルや、丁寧で礼儀正しい気質(テラパメント)、そして徹底的に準備された細かい荷造り(メティキュラス・パッキング)に至るまで高い評価と敬意を受けています。

  • 尽きない情熱と前向きな姿勢(インサティアブル・サイク)

    • 山や広大な自然に対する深い愛着と、クライミングに対する尽きないエネルギー・食欲を持っており、常に限界を押し広げようとするアグレッシブな挑戦心を備えています。

  • 探求心と自立心

    • 大学で英語と美術を学んだ後、クライマーとしてのキャリアやガイド活動に専念するためにヴァンライフ(バンでの生活)を選択するなど、自身の信念に基づいてライフスタイルを貫く行動力を持っています。また、AMGA認定のガイド資格や野外救急の資格(WFR)を取得するなど、安全性や技術に対しても堅実に向き合っています。


【人工壁】欧州安全規格(EN 12572-1)

 欧州安全規格(EN 12572-1)とは?

EN 12572-1とは、人工クライミングウォール(Artificial Climbing Structures: ACS)の設計・施工における安全性と試験方法を規定した欧州規格(CEN規格)です。特に、保護ポイント(ビレイ点やボルト)が設置されたリードクライミング用の人工壁を対象としています。

https://pyramide.eu/en/standards-information/specific-standards/

世界中の商業ジムや競技用施設の安全基準として広く採用されており、構造物の強度からボルトの配置に至るまで厳格な基準を定めています。

人工登山構造物(ACS)– ビレイポイント付きACSの安全要件と試験方法

要件

  • ビレイポイントがある場合の個々のビレイポイントの配置
    • 最大3。10mの1点目。
    • ポイント間の最大距離(マージン10%):
      • 高さ ≤ 4 m の場合、1。00 m。
      • 高さ > 4 m の場合、1。10 m。
      • 高さ > 5 m の場合、1。20 m。
      • 高さ > 6 m の場合は 1。30 m。
      • 高さ > 7 m の場合、1。40 m。
      • 高さ > 8 m の場合は 1。50 m。
      • 高さ > 10 m の場合は 2。00 m
    • 永久クイックドローが取り付けられている場合(ツールでのみ取り外し可能)、クイックドローの下端間の最大距離を測定するものとします。
  • ロックナットによるビレイポイントの取り付け。

主な規定内容

  • 保護ポイント(ボルト)の配置と間隔の制限

    • 墜落時の安全性を確保するため、1ピン目の最大高さ(3.10m以内)や、壁の高さに応じたボルト間の最大許容距離(例:高さ6mを超える区間では最大1.30mなど)が細かく規定されています。

    • ボルトの緩みや脱落を防ぐため、ロックナットの使用などが義務付けられています。

  • 構造強度と耐荷重性能

    • ウォール本体やフレームが、クライマーの墜落衝撃荷重(破断荷重や運用荷重)に対して十分に耐えられる構造であることが求められます。

    • ホールドを固定するインサートナットの強度試験(例:12 kNまでの引き抜き試験)や、パネル表面の耐衝撃テスト(重りによる落下試験)が課されます。

  • ランディングゾーン(着地・落下空間)の安全性

    • 墜落時にユーザーが重大な負傷をするような危険な突起物や障害物が、落下想定エリア内に存在しないことが要件として定められています。