1. 共感の種類
心理学では共感は大きく2種類に分けられます。
認知的共感(Cognitive Empathy)
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他者の立場や状況を理解する力
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「頭で理解する」タイプの共感
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例:背の低いクライマーが手の届きにくい位置で苦戦していることを理論的に理解する
情動的共感(Affective Empathy)
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他者の感情や恐怖を自分の感情として感じ取る力
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「体感として共鳴する」タイプの共感
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例:背の低いクライマーの恐怖や緊張を、自分も体感的に感じる
2. 身体差による共感の制限
ケース:背の高いクライマーと低いクライマー
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背の高いクライマー(A)が背の低いクライマー(B)のクリッピングの難しさを理解できるか?
認知的共感の視点
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Aは理論的に「Bは手が届きにくい」と理解可能
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安全指導や助言に活かせる
情動的共感の視点
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Aは身体的に同じ恐怖を体験できない
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「危険だろう」と思っても、Bの不安を完全に体感できない
→ つまり、身体差によって情動的共感には限界があるが、認知的共感は十分に活用可能
3. 実践への応用
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安全指導の工夫
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身体差を踏まえて指示を出す
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「ここは手が届きにくいので注意」と認知的に伝える
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ペアリングと役割分担
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身体条件が異なるペア同士でクリップやムーブを補助し合う
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観察とフィードバック
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高身長クライマーは、自分の身体感覚だけでなく、低身長クライマーのムーブを観察して理解する
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言語化したフィードバックで情動的共感の補完を行う
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4. まとめ
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クライミングでは身体差が共感に影響する
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認知的共感は頭で理解する力として活用可能
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情動的共感は身体差によって制限されるため、観察・言語化・補助行動で補うことが重要
身体差による危険察知や安全行動は、心理学的な共感の理解と実践の組み合わせで強化できます。