■ 自己敗北性
これかもしれません。
事故敗北性パーソナリティ障害(Self-defeating Personality Disorder)を持つ人物の行動として、良い出来事の後に抑うつ、罪責感、または苦痛を感じ、その結果として自分に対してネガティブな行動を取るようなケースを以下のように例示できます。
物語の例
登場人物: 山本さん(仮名)、30代前半、広告業界で働く女性
シナリオ
山本さんは、長年の努力が実を結び、念願のプロジェクトマネージャーに昇進することが決まりました。この成功は、彼女にとって大きな喜びであり、同時に長年の苦労が報われた瞬間でした。しかし、彼女の心の中にはすぐに不安と罪悪感が湧き上がりました。
成功のニュースを同僚に伝えると、彼女はみんなに祝福されますが、その祝福の言葉の裏に潜む「自分は本当にこのポジションにふさわしいのか?」という不安が彼女を押し潰します。心の中で、「私は他の人よりも優れていないのに、こんなに大きな役職をもらってもいいのだろうか?」と感じます。
数日後、山本さんは突然、プロジェクトの進行中に必要な資料を提出し忘れてしまいました。それにより、チームの一部で作業が遅れ、会議で上司から軽く注意されました。彼女はその失敗に激しく自己批判し、「どうして私はこんなにダメなんだろう」と深い罪悪感に苛まれます。
さらに、彼女は以前、上司から自分に対して期待されることにプレッシャーを感じたことがあり、そのプレッシャーが再び心の中で膨れ上がります。「私はただ失敗してしまっただけなのに、それを恐れて仕事に集中できなかった」と感じ、自己批判は強まるばかりです。
その夜、山本さんは普段なら絶対に取らないような行動を取ってしまいます。彼女は飲み過ぎ、無理に自己を忘れようとします。普段なら真面目で計画的に過ごしていたはずが、突然の反動で自己破壊的な行動に走ってしまいました。
結果とパターン
この物語で見られるのは、山本さんが成功を手に入れた際、素直にその喜びを受け入れられず、自己批判や不安、罪悪感に苦しんでしまうパターンです。彼女は自己価値感に大きな不安を抱え、良いことが続くと「それにふさわしくない自分」を感じ、無意識にその成功を自己破壊的な行動で無理にでも抑えようとしてしまいます。これが事故敗北性パーソナリティ障害の典型的なパターンです。
このような人は、自己否定的な思考パターンが強く、幸福や成功が自分には「不相応だ」と感じ、無意識にその幸せを遠ざけようとする傾向があります。彼らは自己批判に基づく強い罪悪感を抱き、成功に対して報いを感じることが難しくなります。
■ クライマーバージョン
クライマーバージョンの物語例(自己敗北性)
登場人物: 高木さん(仮名)、30代後半、クライミング歴15年の中級クライマー
シナリオ
高木さんは、長年挑戦してきた高難度の課題をついに成功させました。この成功は彼にとって夢にまで見たもので、クライミング仲間からも大いに祝福されました。当初は達成感を感じていた高木さんですが、その感情はすぐに複雑なものに変わっていきました。
「自分がこんな課題を成功させるなんておかしい。本当に実力があったわけじゃないのかも」と、自分の成功を疑い始めるのです。さらに、「他のクライマーが努力しているのに、自分が先に達成してしまって申し訳ない」という罪悪感まで抱くようになります。
数日後、彼は練習中に注意を怠り、普段なら問題なく登れる簡単なルートで手を滑らせ、足を捻挫してしまいました。この怪我は結果的にトレーニングを休む口実となり、彼は「やっぱり自分はこの程度のクライマーなんだ」と自己否定の気持ちを強めます。
その後、彼は仲間との交流を避け、「自分の成功が他のクライマーを不快にさせているかもしれない」と勝手に思い込み、孤立していきます。また、新しい課題への挑戦も避けるようになり、「無理をして怪我を悪化させたら困るから」と自分に言い訳をしますが、実際には新たな失敗への恐怖と罪悪感が影響しています。
結果とパターン
この物語では、高木さんが自己敗北性パーソナリティの典型的な行動パターンを示しています。成功により一時的に幸福を感じても、それを素直に受け入れることができず、自ら罪悪感や不安を増幅させる行動(怪我や孤立)を取っています。
彼は無意識に自分の成功を否定し、「自分にはそんな価値はない」という思いを強化しています。これにより、達成感を得るどころか苦痛を感じる結果となり、クライミング活動そのものへの意欲も低下しています。
このケースは、自己敗北性パーソナリティの特徴をクライミングの文脈で示しており、個人の心の葛藤がどのように行動や結果に影響を与えるかを浮き彫りにしています。
■ 考察
これが、
- せっかくUIAAに誘ってもらったのにBMCトラッドフェスに行かなかったり、
- 翻訳の申し出を断ったり、
- その後、怪我を作ることになった
原因であるような気がします。